異世界帰還もの   作:Wakuto

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6話 戸口

日本に帰ってきて1ヶ月くらい経った。

早朝、俺は日課のトレーニングで走っていた。

 

問題は多い。

俺がいなかった10年間の空白はやはり大きく、何もかも元通りとはいかない。

とーるとかず、相良徹(サガラ トオル)と勅使河原和也(テシガワラ カズヤ)は俺が帰ったことを知ると泣いて喜んでくれた。

俺と別れた日、どうも2人とは喧嘩別れのような感じだったらしい。

正直異世界転移のインパクトのせいで覚えていないが……

2人は大学進学目前で忙しそうだ。

……俺はこの先、まともな就職先が見つかるのだろうか……?

 

フォルトナ達のことも気になる。

日本に帰れたことは嬉しい。

でも俺は本気で異世界を生きていた。

フォルトナにプロポーズしようとしたのは、まさに俺が日本へ帰るなんて思わなかったからだ。

皆どうしてるかな……無事、だよな……

立つ瀬のないクェトの枝はまだ俺の手元にある。

 

「君、トレーニング?」

 

突然男に話しかけられた。

俺と同じでトレーニング中なのか、額に汗を滲ませ、動きやすい服だ。

30代ぐらいだろうか?

 

「あ、ごめん?気になっちゃってさぁ。」

「いえ、何か?」

「何かってほどじゃないんだけど、いい筋肉してると思ってね。」

 

確かに異世界での兵士訓練と合わせて、ギィの教えるノストの鍛錬は続けていたが……

 

「うん、自衛隊か何かだったりする?君の筋肉はスポーツや武術とは違う。長時間重い荷物を持って行軍する持久力と対人格闘に特化した筋肉だ。」

「……」

「あ!ごめん、前の職場が警察関係でさ?キモかった?」

「いえ、トレーニングは……趣味ですよ。」

「そっかー。俺、木戸才人(キド サイト)っていいます。トレーニング仲間が減るのは嫌だから、さっきの質問は忘れてください。」

「空野光です。」

「光くん!トレーニング頑張って!」

 

彼は去っていった。

 

 

 

***

 

 

 

バイトは配達パートナーにした。

好きな時間に働けるし、街に詳しくもなれる。

何より体を動かすのが俺には合っていた。

 

日本語に慣れない俺は、もう少し客と話したりするかと思ったが、置き配が多くて驚いた。

盗まれるとか思わないんだろうか。

飯冷えるし。

 

自転車はいい。

異世界なら馬は揺れるし道は泥濘むが、日本の整備された道は風を切るように走れる。

俺は信号を見て止まる。

 

「あの、空野光さんですか?」

 

歩道から学生服の男に話しかけられる。

何故名前を知っているんだ?

彼は真剣な表情だ。

 

「俺は神代大勇(カミシロ タイユウ)っていいます。貴方、もしかして異能者じゃないですか?」

「異能?」

「はい、不思議な力っていうのかな。人によって全然違うんで説明は難しいんですけど……」

「……」

「うぅ……」

「とりあえず、この配達が終わってからでいいか?ピザが冷える。」

「あ、はい。」

 

 

 

***

 

 

 

「それで、なんか増えてないか?」

「勧誘でしょう?神代くんだけでは心配でしたので。」

「アンタが一番新参でしょ!私と大勇に任せておきなさいよ!」

「私はカフェに行くって聞いたから来ましたぁ!」

「えーっと、すいません。俺の仲間がうるさくて……」

 

女三人寄れば姦しいというやつだろうか。

 

「赤須朱寧(アカス ジュディ)よ!」

「青藤鈴奈(アオフジ レイナ)と申します。」

「黄瀬さくら(キセ サクラ)でーす!」

「……空野光だ。」

 

カラフルで美しい女性達だが、目にも耳にも痛い。

高慢そうなのが赤須、育ちが良さそうなのが青藤、元気そうなのが黄瀬といったところか。

俺が覚えようとしている最中も騒がしく会話している。

 

「とにかく!俺、光さんも異能使いだと思ったんですよ。俺の異能の影響でなんとなく分かるというか……」

「そもそも異能者か分からないのに連れ出していたんですね。しかも自身の異能まで喋るとは、一度喋るのをやめたほうがいいのでは?」

「大丈夫だよ、光さんは悪い人って感じじゃないし。」

「……ええ、だといいですね。」

 

やはり話しすぎだったのか。

俺としても、こんなことで「知られたからには殺すしかない!」なんて言われるわけにはいかない。

 

「その異能というもの、心当たりはある。しかし君達を信用は出来ない。」

「ま、でしょうね。でもアンタはもう目をつけられてる。大人しく受け入れたら?」

「ジュディ、その言い方は酷いよ。光さん、俺達の目的は異能者の保護でもあるんです。世の中には異能を悪用する人もいるし、利用するために他国へ誘拐しようとする人もいる。お願いします!信じてください!!」

「……」

 

受け入れるしかない、か……

俺は異能のことを知らなすぎる。

弱いのは俺だ。

何よりも……

 

「協力する。だから両親の安全を保証してくれ。」

「っ!はい!では案内させてください、内閣府直属の異能対策室へ!」

 

 

 

***

 

 

 

「やぁ、覚えてくれてる?」

「まぁ、印象的でしたから……」

「そっかー……なんか、ごめんね?」

 

案内されたビルには、木戸才人が座っていた。

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