ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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新作を作っていたために投稿が遅れました。
さて、いよいよ魔法の登場です!
感想で色々と予想していただいて本当にありがとうございました^^


第17話

「がっ!」

 

 

「見つけたぜ〜。まさかこんな簡単に見つかるとはな。」

 

 

キリトから剣を奪い、地上に戻ろうと階層を上がるとそこにいたのはソーマ・ファミリアのメンバーだった。

 

 

まさかこんなにタイミングよく出くわすなんて…。

いや、おそらくこれは計画されていたものなのだろう。

あの時彼に話しかけていたのはこれが目的だったのか?

 

 

痛みで思考がまとまらない。

なんとかしてこの場を切り抜けなくてはならないのに。

すると、彼らが持つ袋がなにやら動く。

 

 

 

「ん?これが気になるか?」

 

 

言うより早いかその袋の中身を見せてくる。

すると中に入っていたのは、

 

 

「キラーアント?!そんなキラーアントは…」

 

 

「そうだ、瀕死になったこいつからの体液は仲間を引き寄せる。これだけやればわかるだろ?死にたくなければ、お前が溜め込んでる金品全部よこしな。」

 

 

「くっ…」

 

 

リリが今まで何のためにお金を溜め込んだのか?

それはこのファミリアを抜けて自由になるためだ。

それなのに、そのファミリアの人間にお金を渡すとはなんて皮肉だろう。

だが、ここで死ぬわけにはいかない。

彼を裏切ってここまで来たのだ。今さら引けない。

 

 

「これを…。ノームの貸金庫の鍵です。お金は全て宝石に変えています。」

 

 

「それだけか?」

 

 

「あと、この魔剣です。」

 

 

「あとはないのか?!」

 

 

「ひっ!あ、ありません!」

 

 

「嘘つくんじゃねえ!その背中にある剣はなんだ?!」

 

 

リリの背中にあるキリトの剣を無理やり奪う。

鞘を抜いて剣を調べるが刀身が死んでおりただのガラクタだと感じたのだろう。

機嫌を悪くして、剣を叩きつけようとする瞬間鞘にあるエンブレムが目に入った。

それはあのヘファイストス・ファミリアのエンブレムであることはすぐに分かった。

 

 

「なんだ?この珍品は?なんでこんなクソ武器にヘファイストスのエンブレムがあるんだ?答えろ!」

 

 

「その剣を返してください。」

 

 

「あん?」

 

 

「その剣に触るなぁぁぁぁぁ!」

 

 

リリ自身も初め自分の行動を理解できていなかった。

しかし、身体は勝手に動く。

だけど、ホントは心の奥底ではわかってた。

ホントは誰かに認めて欲しかった。自身の存在を。

彼は、キリトは認めてくれたのだ。サポーターである自身を。同じ冒険者だと。

あの剣まで取られたら全てをなくす。そんな気がしたのだ。

 

 

リリは必死に剣を奪った奴の腕にしがみつく。

だが、奴らの方が当然ステイタスが上だ。

すぐに振り落とされる。

けれど、めげずにまた腕にしがみつく。

 

 

「しつけえ!」

 

 

「ぐふっ!」

 

 

いよいよ痺れを切らしたのか、リリに殴りかかる。

それを奇跡的にうまくかわすと、殴りかかる動作のために剣を持つ手が緩んだところに噛みつき、剣を奪い返す。

 

 

「テメエ!殺してやる!」

 

 

「おい!そろそろここを離れないと俺たちまでやばいぞ!」

 

 

「ちっ!まぁ、いい。せいぜいアリンコどもの餌にでもなるんだな。」

 

 

奴らは今のやりとりの間で集まったキラーアントに囲まれる前に逃げ出していく。

すでに逃げるだけの体力も気力も残っていない。

ここでどうやらリリの人生は終わるのだろう。

出来ることなら彼に謝りたかった。もちろん許されるとは思っていない。

人間死ぬ間際には走馬灯を見ると言うが、本当だった。

彼との冒険があんなに楽しかったなんて、この瞬間まで気づかなかった。

あんなに辛い人生だったのに今は彼との楽しい思い出しか浮かんでこない。

最後まで最悪だ。

死ぬなら死ぬでそれでいいとも思った時期もある。

それなのに、今はもっと生きたい彼に会いたいと思ってしまうのだ。

 

 

「さよなら、キリト様。ごめんなさい。」

 

 

迫り来るキラーアント。

だが、唐突に歩みを止める。リリを囲むキラーアント後ろの方でいきなり仲間が消えたのだ。

キラーアントにとって脅威としての認識がそちらの方に移ったのだ。

その者とは、

 

 

「リリ!生きてるか?!」

 

 

「キリト様…。…なんで。なんで?!」

 

 

「待たせたな!」

 

 

☆★☆☆★★☆

 

ー死なせない。

 

 

『ありがとう、キリト』

 

 

死なせない。

 

 

『ごめんね、キリト君。』

 

 

ー絶対に死なせない!

 

 

キリトは走る。

今までリリとのダンジョン攻略での経路の傾向からどの道を通るかおおよその予想を立てる。

そこに向って走り出す。

 

 

『ー燃やせ』

 

 

心の中で何かが語りかける。

その正体をなんとなくはわかっている。

 

 

『ー己の想いを剣に込めろ』

 

 

これは自分の声だ。

自分では気づいていなかった新しい自分。

あの本は確かに自分の中の何かを変えていたのだ。

 

 

「待たせたな!」

 

 

どうやらギリギリ間に合ったらしい。

しかし、状況は危険だ。

キラーアントの数が異常だ。

 

 

「燃やせ、己の想いを込めろ…か。」

 

 

やってみる価値はある。

己の闘志を刀身に込める。

剣は武器である。しかし、ただの道具ではない。

自分の命を預けるパートナーのようなものだ。

 

 

『それが答えか?』

 

 

ーそれが答えだ!

 

 

「はあああああ!」

 

 

キリトが自身の答えを見出したとき刀身に炎が纏っていく。

キリトの答えは結局は自分の力は剣であるということだ。

剣の力をさらに高めること。

 

 

さらにここで剣技を発動させる。

水平四連撃スキル《ホリゾンタル・スクエア》

キラーアント4体にそれぞれ攻撃を当てると、刀身からの炎がキラーアントに燃え移り他のキラーアントを巻き込んでいく。

 

 

ーこれならいける!

 

 

キリトは再び、剣技を発動させる。

今度は違うイメージをする。

そうだ、予想が正しければイメージするもので魔力として送られる種類が変化し剣に付加される魔法も変わる。

今度は静かなる闘志をイメージし、敵の弱点に正確に射抜く。

剣先をキラーアントの甲殻の隙間に突き刺し、抉っていく。

その際に刀身から冷気が発し、キラーアントの体内が凍りついていく。

凍りついたものを体術スキルである《閃打》で打ち砕いていく。

 

 

ー次!

 

 

次々とモンスターを倒していく。

その度にキラーアントらはキリト対しての脅威度を上げていく。

そして、いつの間にかリリの周りにいたモンスターはキリトを標的に変えて襲ってくる。

リリからヘイトを稼ぐことに成功した。それはいいことなのだが…

 

 

「少し多すぎるな…」

 

 

ダンジョンの地面から壁まで視界がキラーアントでいっぱいだ。気持ち的にはしばらくはこいつの姿を見たくはない。

そんな悠長なことを思っている場合じゃない。まず、手数がこのままじゃ足りないのだ。

いくら魔法を剣技に付加させようとしても、発動させると硬直が発生してしまう。

それを《体術》のスキルで補っていくには限界がある。

一体どうすればいい?

 

 

★☆★☆★

 

(凄い!)

 

 

 

リリは子供みたいな感想だがそう思わずにはいられなかった。

初め魔剣を使っているようにしか見えなかったが、剣から直接魔法が出ているのではなく彼の魔力を剣に纏わせているみたいだ。

その圧倒的な威力にキラーアントが倒されていく。

それにしたがってリリに集まっていたものが減っていく。

だが、反対にキリトのほうに次々と群がっていく。

 

 

そうだ。確かにあの魔法は凄い。

だが、通常の魔法と違い剣で当たる範囲でしか効果がない。

このままじゃ単純な数が原因でいずれ限界がくるだろう。

 

 

(何かないだろうか?)

 

 

リリにできること。

それが彼を救うこととなると思い浮かばない。

 

 

(どうしたら…)

 

 

ふと手にある重さを感じた。

そう、先ほど彼から奪ったもの。彼の剣だ。

リリが一人で持っていても何も力を発揮しないこの剣が彼を救う切り札になる。

問題は彼がこれを手にしたところで手数が増えないといううことだ。

彼が剣を二本扱えるというなら話は別だが…

 

 

(賭けてみるしかない!)

 

 

彼は冒険者になってからたった半月ここまで成長している。

それにこれはリリの偏見だが剣での技術だって新人とは思えないものだ。

キリトを信じるしかない。

 

 

「キリト様!これを!これを受け取ってください!」

 

 

 


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