ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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再び少しづつ書いていこうと思います。


第27話

「…っ」

 

 

どうやらうまく下の階層に来れたようだ。

あとは、この階層を抜けるだけだ。

 

 

「リリ?ヴェルフ?」

 

 

「んっ…リリはなんとか。」

 

 

リリは無事みたいだ。

ヴェルフもリリが持つバックパックがクッションになり助かったみたいだ。

あとは、この階層を抜ければ安全地帯である18階層に行ける。

現在遠征中のロキ・ファミリアがここの階層主を倒して進んだので、復活にはもう少し時間がかかるはず。

キリトたちは気力を振り絞って最後の階層踏破に挑む。

しかし、

 

 

「なんで…このタイミングで…」

 

 

そこに見えた光景は階層主が今まさにダンジョンの壁から生まれ落ちようとするものだった。

あと一歩でこの階層を安全に抜けられたものを。

ダンジョンはひたすらにキリトたちを排除しようとするような意思があるようにすら思える。

けれど、キリトは諦めない。

生き残る可能性があるなら、貪欲に生にしがみつく。

そのための可能性として、

 

 

「リリ、俺が奴のタゲを取る。その間に安全地帯に向かってくれ。」

 

 

 

「そんな!一人で階層主なんて無理です!」

 

 

「頼む!なんとか時間を稼ぐ!その間に応援を呼んできてくれ!」

 

 

キリトは必死にリリに頼み込む。

だが、タゲを取るといっても簡単じゃない。

奴の狙いを確実にキリトだけに向けさせなければ、リリたちにも危険があるのだ。

 

 

「……」

 

 

一緒目をつぶって考えたのち、リリは答える。

 

 

「…絶対、死なないでください。」

 

 

「死ぬ気なんて毛頭ないよ。ただ、死ぬ気で挑まないと耐えられる相手でもないけどね。」

 

 

「この状況でまだそんな軽口いえるなら大丈夫そうですね。いいです。その作戦でいきましょう。」

 

 

そして、巨大な体を持つ階層主がキリトたちに立ちふさがる。

キリトは背中にある二本の剣を抜いて構える。

 

 

「いいか?俺がある程度引きつけてから向こう側に走るんだ。いいか、今できる全速力でだぞ。途中で何があっても止まるな。」

 

 

「わかってます。」

 

 

「3カウントで戦闘を開始する。3、」

 

 

緊張が走る。

階層主も雰囲気を感じ取ったのか、動きを見せない。

 

 

「2、」

 

 

手に持つ剣に力が入る。

額からはうっすら既に汗が滲んでくる。

 

 

 

「1、」

 

 

つま先に力を込める。

体を前傾にし、

 

 

「GO!」

 

 

一気に加速し、階層主に突っ込んでいく。

階層主は向かってくるキリトに目標を定めて向かってくる。

この階層主であるゴライアスは巨人のモンスター。

その巨大な手や足から繰り出される攻撃は今のキリトにとってはかなりの脅威だ。

一瞬でも気を抜けばすぐにあの世いきだ。

ゴライアスは足を大きく上げて、そのままキリトめがけて踏みつけようとしている。

それをキリトは大きく転がって回避する。

回避したあとに、踏み込んできた足にむかって斬撃を食らわせる。

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

人間でいう足の健の部分を斬ったせいか、ゴライアス大きな叫び声を上げる。

だが、切り込みが浅いかそれでゴライアスが倒れこむ様子はない。

追撃しようと再度距離を詰めるが、腕を地面に向かって叩きつけるゴライアスの足になかなか近づけない。

ならばと、振り下ろした腕を狙って斬撃を繰り返す。

攻撃を加え続けるキリトにゴライアスは狙いを完全に絞り狙ってくる。

タイミングを見計らってリリが、ヴェルフを抱え18階層への入り口へ向かう。

キリトもそれを感じ取ってかひとまず安心する。

あとは、このままこいつを足止めすればいい。

逃げ切ったリリを追えばそれで終了だ。

そのはずだった。

 

 

__________ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!

 

 

突然の地震にキリトも驚く。

直後地面に大きな割れ目が生まれ、ゴライアスは手を入れる。

そこから出てきたのは、

 

 

「…剣?」

 

 

それは巨大な剣だ。

まさかとは思うがあんなものを振り回されたらとてもじゃないが回避も防御も無理だ。

少なくとも"今のまま"では。

現状、キリトのレベルでは階層主をソロで絶対倒せない。

それがこの世界での普通だ。

だが、それはキリトには当てはまらない。

なぜなら、彼にはどんな逆境をも跳ね除ける神のような力を今身につけたからだ。

《心意》。それがこの世界でレベルという圧倒的な力の差を埋める

キリトはイメージする。

強く。今より強く。

ゴライアスが大きく剣を振りかざす。

それをキリトは二本の剣を交差させそれを受け止める。

 

 

「ぐっ!!!!」

 

 

凄まじい重量感にキリトはすぐにでも潰れてしまいそうになる。

けれど、キリトはやめない諦めない。

今度は明確にイメージする。この大剣を跳ね除けるイメージを。

 

 

 

「……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

二本の剣が黄色の光を放つ。

徐々に交差していた剣の均衡が崩れていく。

キリトの剣がゴライアスの大剣を押し返していく。

しかし、跳ね返すほどまで力が湧いてこない。

いや、事象を上書きできない。

ここ数日のダンジョン探索による弊害からなのか。

 

 

「ぐっ……この!」

 

 

剣でこのまま受けきるのは不可能だと感じたキリトは、少しづつ身体を右にずらしていく。

そしてタイミングを見計らって力を緩め、全力で右に回避する。

しかし、ゴライアス攻撃の余波がキリトを襲う。

右に避け、直撃は免れたがその余波を受けて身体がうまく動かない。

キリトは剣を杖代わりにして、身体を支えるがこのままでは明らかなジリ貧だ。

撤退を即座に行わなければ、明確な死が待つだけだ。

リリとヴェルフの姿があるか横目で確認し、すでに視認できないところを見るとうまく逃げ切れたようだ。

キリトは今ある力全てを使ってゴライアスからの撤退をする覚悟を決めた。

ただ、ここから出口に向かって走ったところで必ず追いつかれる。

なので、

 

 

(マインドの疲弊が怖いが、全力の心意を乗せたソードスキルを奴の足にぶつけるしかない。)

 

 

全力の心意攻撃によって足を攻撃し、一瞬の動きを止めての脱出。

キリトにはもうこの手しか生き残る可能性がない。

覚悟を決め、奴にもう一度接近するしかない。

その際、相手の攻撃を心意で防いだら攻撃に回すマインドが足りない。

必ず奴の攻撃を回避し、攻撃を加える。

レベル2になったばかりのキリトがこれを成功させるのは至難の業だ。

 

 

(それでも…やるしかない!)

 

 

キリトは一気に走りだす。

先ほどの衝撃でイメージよりうまく足が動いていない。

それを考慮に入れ、回避しなければならない。

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 

ゴライアスが大剣を横に大きく振るう。

それを姿勢を低くして、回避する。

攻撃はそれだけでは終わらず、何度も大剣を振るってくる。

一撃でももらえば終わり。

そんな恐怖が頭によぎる。

だが、キリトは止まらない。

まだ、こんなところでは死ねない。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 

紙一重で回避し続け、ついに足元にやってくる。

止まってる時間はない。

キリトは突進しながらソードスキルを発動する。

右手にある《牛鬼》をゴライアスの左足に向かって突き刺す。

さらに身体を時計回りに回転させ左手の《黒い剣》で再び突き刺した。

二刀流突進二連撃剣技《ダブルサーキュラー》

奴の足を切断するようなイメージで発動させた剣技はゴライアスの足首にある腱のような部分をきずつけれたようで、ゴライアスは膝をついて動きを止める。

その隙にキリトは今できる全速力で出口に向かった。

しかし、階層主の再生力が高いのか傷つけた箇所がどんどん治っていく。

ある程度距離を離したが、ゴライアスは再び立ち上がってキリトに迫ってくる。

しかし、今から再び対峙する余裕はない。

走る、走る、、、

あと、少し!

 

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

 

 

奴の叫び声が聞こえた瞬間、背後から大きな衝撃がキリトを襲った。

身体は大きく吹っ飛び、キリトは意識を失った。

 

 

 


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