ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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長かった…
多分今の話数の中で一番長く書いた。
この回はやっぱり一気に書かないと!という使命感。


いろんな話をこのハーメルンで読んでて、よく1話を一万字とか平気で書いてる人いて凄いと思いました(小並)
そして、いよいよ彼女登場!
一体誰なんだ?!(白目)


第8話

「いつまでそうしてるのよ…。」

 

 

「………」

 

 

 

あの神の宴から2日程経過した。

現在はヘファイストスのホームにある自室でヘスティアが地面に座って頭を下げている。

ここに来てからずっとこの姿勢のままだ。

 

 

 

「いい加減やめなさい。このままで居られるのは私にとって迷惑でしかないのよ。大体、その姿勢はなんなのよ?」

 

 

 

「タケから聞いた。これはドゲザといって、お願いをするときの最終奥義だって。」

 

 

 

「はぁ…余計なことを。何が貴方をそこまでさせるのよ。」

 

 

 

「キリト君はいま急激に成長している。その成長速度に装備のレベルが追いついていないんだ。このままじゃ、彼の成長を妨げることになってしまう。彼は近い将来必ず一級冒険者になれる才能を持っている。だから、僕は今の彼に何か出来ることをしてあげたいんだ。そのためならいくらでも頭を下げたり、恥をかく覚悟がある。」

 

 

 

あの下界から降りてきて、ダラダラとヘファイストスのホームで過ごしていた時からそこまで時間は経っていない。

それにもかかわらず、ヘスティアをここまで変える存在。

キリトとは一体どんな子なのか。

ヘファイストスは個人的に気になってきた。

それでも、それとこれとは別の問題なのだ。

ここで、武器を作る事は他の客に示しがつかない。

 

 

(やはり、ここは諦めてもらうしかないわね…)

 

 

「ヘスティ「ヘファイストス様、ちょっといいですか?」

 

 

ヘファイストスがヘスティアの願いを再度断ろうとした時、部屋のドアから声が響いた。

 

 

「ええ、入ってちょうだい。」

 

 

「失礼します。…って、どんな状況ですか?」

 

 

入ってきた人物はピンクの髪に、髪留めをしている。

服装は赤い色のメイドのようなかっこうだ。

顔にはそばかすが見える、しかしそれが愛嬌を感じさせる。

 

 

「私の知神が少しね…。それでリズ、なんの用かしら?」

 

 

リズと呼ばれた子は不審に思いながらも、ヘファイストスの方に顔を向け直す。

 

 

「店の売り上げの収支の計算が合わないんですよ。誰か間違えたんじゃないかと。それでどうするか困っていて…。」

 

 

「私が後で調べておくわ。わざわざ手間を取らせたわね。ご苦労様。」

 

 

「いえ、そんないいですよこれくらい。では失礼します。」

 

 

用が済んだ彼女は頭を下げてからもう一度ヘスティアを見てから、ドアに向かって歩き出す。

 

 

「頼む!キリト君に武器を作って下さい!」

 

 

「しつこいわよ。無理よ。私にも立場というものがあるの。それに、お代を返すあてはあるの?」

 

 

ガタッ!っとドアの方から音がした。

どうやら、リズという子が音の原因のようだ。

彼女は再び部屋に入ってきて、ヘスティアに尋ねた。

 

 

「今、キリトって言いましたか?それってもしかして、キリト・クラネルのことですか?」

 

 

「え?!ああ…そうだけど、どうして?」

 

 

いきなり詰め寄られたヘスティアはたじろぎながらも答える。

それで気付いたのか、彼女は距離を置いて自身の自己紹介をする。

 

 

「失礼しました!私は、リズベット・シノザキと言います。あいつとは、旧い友人でして。」

 

 

「もしかして、彼の故郷でよく遊んでいたっていう?」

 

 

「ええ、その一人です。」

 

 

ヘスティアはこんな偶然があるのかと思った。

しかし、彼女がこのファミリアにいるという事は鍛治師であるということ。

さらに、店の収支を確認できるほどの子だ。

腕もあるだろう。

こに好機を逃したらダメだとヘスティアは悟る。

 

 

「そんな君に頼みがある!キリト君の武器を作ってはくれないか?」

 

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

ここで先ほどまで黙っていたヘファイストスが話を遮る。

 

 

「うちの子まで巻きこまないでちょうだい。これは私と貴方の話でしょう?」

 

 

「ぐっ…そうだけど…」

 

 

確かにヘファイストスの言う通りなのだが、ここで引き下がるわけにはいかない。

彼のためならここでヘファイストスの子に頼み込むのは千載一遇のチャンスなのである。

ヘスティアがなんとか食い下がろうとすると、

 

 

「いいですよ。」

 

 

「へ?」

 

 

「ですから、あいつの為に武器を作ってもいいと言ってるんです。」

 

 

なんとリズベットからの思わぬ援護射撃にヘスティアは驚く。

ヘファイストスもこれには唖然とする。

 

 

「待ちなさい、リズ!そんなことしたら、顧客に対して示しがつかないわ!」

 

 

ヘファイストスはリズベットに武器の作製にやめるように促すが、彼女は首を横にふる。

そしてリズベットはヘファイストスの目をしっかりと見据えて話す。

 

 

「確かに店商売としてはいけないとは思います。ですが、私は決めていました。あいつがまた前を向いて歩き出した時、あいつの武器を作って戦ってもらうと。」

 

 

 

彼女たちは見つめ合う。

しばらくしてヘファイストスが痺れを切らして溜息をつく。

彼女が本気であることがわかったからだ。

子は神には嘘がつけない。

つけないのではなく、ついたことを神はわかるのだ。

 

 

「わかったわ。私がダメだと言っても、その様子じゃ勝手に作ってしまいそうだし。ならいっそ、私もその武器作成に立ち会うわ。」

 

 

「それじゃあ、武器を作ってくれるんだね?」

 

 

ヘスティアが顔を上げて、再度ヘファイストスに確認する。

ため息を一つ漏らしながらも、諦めたように苦笑いしながら、ヘファイストスは頷く。

 

 

「ただし、お代はキッチリ払ってもらうわ。何年かかってもね!」

 

 

「うぐっ!も、もちろんだとも!」

 

 

「そこは心配ないですよ。あいつならバンバン稼いで来ますから!それで私にどんどん貢いでもらわないとね!」

 

 

「ははっ…ハハハハハー…」

 

 

こうして、ヘスティアはキリトの武器を作ってもらうことに成功したのだ。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

「さて、それでどんな素材で作るつもり?」

 

 

現在、ヘファイストスの工房にやってきて武器の製作に取り掛かろうとしている。

リズベットは自分の工房からなにか素材を持ってきていて、ヘファイストスは尋ねてみる。

 

 

「これは、私たちの故郷で何百年もその地に立っていた大樹、その長年に渡って周りの地面から栄養を吸収し成長を続けた超硬度の巨木『ギガスシダー』。それを2年前から少しづつ削って、この間やっと剣一本作れる程度まで削れたんです。」

 

 

「2年って、そんな樹がホントにあるのかい?!」

 

 

「Lv.3の貴方が2年かけてそれだけしか取れない樹って…とんでもないわね。それがホントならきっと素敵な剣になるわね。」

 

 

ヘスティアは信じられないというような顔をし、ヘファイストスは興味深そうにギガスシダーの欠片を眺めている。

リズベットもこの素材の採取の苦労を思い出したのか、苦い顔をしている。

 

 

「それじゃ早速…」

 

 

「ちょっと待ちなさい。」

 

 

作業を取り掛かろうとしようとするリズベットをヘファイストスが止める。

そして、ギガスシダーの欠片に向かって工房にある棚から取り出した宝石を掲げる。

するとその宝石が光りだし、ギガスシダーの欠片も光に同調する。

しばらくすると、光が弱まり宝石が突然消えた。

それに伴って、欠片の色が先ほどの漆黒から黒紫色に変化した。

 

 

「ヘファイストス様、これは一体…?」

 

 

「この素材の能力を制限したのよ。それをしないと、貴方の作る剣ではLv.1の彼の力に合わない。だから、私が天界から持ってきた『呪縛の宝石』で力を抑えさせてもらったわ。」

 

 

「『呪縛の宝石』って…それじゃあ、剣はどうしたら元の力に戻るんですか?」

 

 

「簡単なことよ。ヘスティア、この欠片に神聖文字(ヒエログリフ)を刻んで頂戴。」

 

 

「え?でも、それがなにを意味するんだい?」

 

 

神聖文字(ヒエログリフ)を刻むことでこの素材にもステータスが生じる。そして、経験値(エクセリア)を積むことでこの素材の本来の力が解放していくはずよ。それに伴って剣の色がより漆黒に近づいていくでしょうね。」

 

 

「なるほど、それはいい考えですねヘファイストス様!それならあいつもこの剣でずっと冒険できそうね!」

 

 

ヘスティアもそれに納得し、欠片に神聖文字(ヒエログリフ)を刻んでいく。

それに反応して、欠片も一時青白く光る。

これでこの欠片はヘスティアの眷属(ファミリア)でないと力が解放されないようになった。

 

 

「あとはリズ、貴方の役目よ。最高の剣を作りなさい。貴方の想いを乗せてね♪」

 

 

「はい!…ってちょっとヘファイストス様!あいつはそんなじゃないですって!」

 

 

「はいはい、そういうことにしておいてあげるわ。ヘスティア、一度ここから出るわよ。」

 

 

「わかった。君、確かリズベットだったね?キリト君の武器頼んだよ!」

 

 

「任せてください!」

 

 

「それと、キリト君に色目使うんじゃないぞ!」

 

 

「ははは…もう突っ込むのも疲れたよ。」

 

 

こうして、キリトの武器作成依頼のミッションはクリアした。

ヘファイストスの部屋に戻ると、気が抜けたヘスティアはその場で倒れてそのまま寝てしまった。

ヘファイストスはやれやれと思いながらもソファーに運んで、毛布をかけてあげるのだった。

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「出来た!」

 

 

「おお!」

 

 

出てきたのは黒紫色一色に染まった一本の片手剣。

リズベットが工房に篭ってから1日経ってようやく完成した。

やはり、あの硬さに苦戦したらしく途中ヘファイストスも加勢してようやく今朝方に完成した。

そのせいかヘファイストスは眠そうにしていたが、反対にリズベットは完成した喜びで今がテンションMAXのようだ。

 

 

「さて、それじゃあこの剣に名前を付けないといけないわね。」

 

 

ヘファイストスがそう提案すると、

 

 

「僕とキリト君の愛の結晶ってことで、ラブ・ソードなんてどう?」

 

 

「駄作臭しかしないからやめてちょうだい。」

 

 

ヘファイストスはヘスティアがここにきてから何度目かわからないため息をつく。

そこにリズベットが話の間に入ってくる。ー

 

 

「名前は実は考えてるんですよ。」

 

 

 

「あら、用意がいいわね。聞かせてくれるかしら?」

 

 

「僕の採点はキビシイよ!」

 

 

「ヘスティアは黙ってなさい。」

 

 

リズベットは一度わざとらしくコホンと咳払いをして発表する。

 

 

「《夜空の剣》名前の由来はこのギガスシダーの色が私たちの故郷で見た夜空と同じって理由です。まぁ、今はその色じゃないですけどいつかその色を取り戻すって意味も込めて。」

 

 

リズベットの答えを聞いても二人の反応がない。

不安になったリズベットは顔を赤くして何かごまかそうとしようとすると、

 

 

「いいじゃん!よし、それでいこう!」

 

 

「私もそれでいいと思うわ。」

 

 

「ほ、ほんとですか?よかったぁ〜。」

 

 

この黒紫色の剣は《夜空の剣》と命名された。

そしてリズベット心の中で思うのだ。

 

(ホントは私の命名じゃないんだけどね…。あいつが考えた名前。キリトは気付くかな?)

 

 

ヘスティアはよっぽど嬉しいのか、さっきから夜空の剣の何度も何度もなでている。

顔には早くキリトに渡したくてウズウズしているようだ。

ヘファイストスはそれを悟ってかヘスティアに帰って早く手渡すように提案する。

 

 

「わかった!いろいろありがとう!それじゃ、またね!」

 

 

「さっき部屋で話したローンの返済の件忘れるんじゃないわよ。」

 

 

「うっ…わかってるよ〜」

 

 

恨めしそうな声を出してヘスティアはこの場から去っていった。

リズベットもさすがに眠気がきたのかあくびをしながら後片付けをしていると、ヘファイストスから声がかかる。

 

 

「それにしても、キリトって子は一体どういう子なの?」

 

 

その質問をされたリズベットは一度固まって、考えた。

そして、笑いながらこう答える。

 

 

「なんかとんでもないことを平然とやってのける変人ですかね?」

 

 

そにリズベットの反応にヘファイストスもつられて笑うのだった。




というわけで彼女に参戦してもらいました。
まぁ、普通わかっちゃいますよねw


そして、あの剣も登場!
キリト君にはもっとあの剣で戦って欲しいという作者の願望から生まれちゃいました!
頑張って活躍してくれ!

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