30代男性Vtuberが、自分を愛せるようになるまでの話   作:物怪相談

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09_授業開始

 片手間に動画の改善案を指摘していくミコトに、何と返そうかと考えているうちにゲームは目的地にたどり着いた。

 ……正直、助かったとホッとする。

 

 たどり着いた屋敷は、現代の建築様式からは大きく異なる、三階建ての建物だった。

 

 

「ここがクマソの御屋敷かぁ……。 なんか、博物館か資料館でミニチュアを見たことがある気がする」

「それは羨ましいですね、立体物の方が理解が深まりやすいですし。 私は再現写真やイラストしか見たことが無くて。 これは掘立柱高床建物と言われる、古墳時代の建物ですね。 ……流石にこの大きさはゲーム的な誇張ですけど」

「現代のお屋敷でもここまで広いのって中々ないよね。 ……なんでこれ、地上から離してるの? 一階に車庫がある家みたいになってるけど」

 

 

 ミコトがゲーム内のスクリーンショット撮影機能を使い、遠くから熊襲の屋敷の根元を映す。

 そこは高床の名の通り、およそ二メートル半程の高さの柱が組まれ、その上に住居が乗る形になっていた。

 

 

「いくつか理由があるのですが、地上から離すことで通気性が上がり、虫やネズミを避けられるのが大きいですね。 倉庫として使われることが多いですが、その利点から住居としても使われています」

「あぁ、高床式倉庫! 小学校で習った気がする」

「もう二十年くらい前ですから、流石に忘れますよね」

 

 

>コメント:小学校のこととかもうほとんど覚えてないや

>コメント:年齢とか逆算できるけど言っていいの?

 

 

「年齢言っていいの? ですって」

「初見さんかな? ボクらの生年月日は公開情報としてSNSに乗せてるしね。 不用心かなーって思ったこともあるけど、デビュー当時に言っちゃったからもうそのままだね」

「二人とも三十一歳です、よろしくお願いします」

 

 

>コメント:オバサンじゃん帰るわ

>コメント:オジサンやぞ

>コメント:画面に映ってるの、オウス含めて全部オスなんだよなぁ(激うまギャグ

 

 

 年齢を言ったのは失敗だったか、一人初見の人が帰ってしまった。 普段の自分の配信ではあまり見ない光景なので対処に困るが……、こういう失礼な人もくるくらいには注目度が高いという事なのだろう。

 だがコメント欄がその話題を流すように、質問を振ってくれる。

 

 

>コメント:他に利点はないんですか?

>コメント:登ったり生活に不便そうに見える

 

 

「他の利点ないですか? 生活に不便そうってコメントが来てますね」

「確かにそうだよねー。 ボクのおばあちゃんの家とか、階段が辛いから二階はもう何年も入ってないって聞くし。 ……ああでも、昔は平均寿命が短いから気にならないのかな」

「この時代でもこういった高床式住居が全てというわけじゃないんです。 基本は竪穴式住居と呼ばれる、地面を掘り下げて作る屋敷ですね。 なので、もし老後があるならそこに住居を移すとかも出来たかもしれませんね」

 

 

>コメント:懐かしい言葉が飛び交うなぁ

>コメント:マジで小学校以来聞いてないわ

>コメント:授業中はノートに漫画描いてたので全然記憶にないです

 

 

「へぇ、じゃあなんでこんなに高い屋敷なの?」

「諸説あるのですが、高いほど神性という価値観があったようですね。 伊勢神宮とか、神社は今も高床式の神明造になっています。 高床式住居は権力者の家が多いそうですから、権威付けの側面があったのでしょう」

「あ、そっか。 熊襲兄弟はこの地の権力者になるのか」

「あとこれは根拠はないのですが、敵を警戒してるのかもしれませんね。 階段を使って登らないといけないので、ルートは絞れるし迎撃しやすい。 それに、高所なので遠方からの襲撃も察知しやすい」

「確かにそれもあるかも! ゲーマー視点だと、プレイヤーの侵入経路を一本に絞れた方が敵の配置をしやすそう、ってのは思ったかな」

「面白いですね、時代的・ゲーム的に良さそうだったのが採用されたってことかもしれません」

 

 

>コメント:普通に勉強になるな

>コメント:何も考えずにアクションRPGとして遊んでた

>コメント:今のゲームってちゃんとその辺の考証しっかりしてるんだなぁ……

 

 

「歴史考証については、ちゃんとしてたら面白いってわけでもないですけどね。 あくまで隠し味程度で、別に違ってても目くじら立てるようなものではない、と私は思います」

「まあそうだよね。ゲーム的には面白さや見栄えが最優先だし、独自設定や時代を混ぜるのもいいと思ってるよ。 ……このあたりちょっと意見は分かれそうだけどね」

 

 

>コメント:ゲームやドラマって影響力が高いから、独自設定が定着するのはちょっとモヤるとこもある

>コメント:創作物をそのまま信じる方が悪いのでは

>コメント:私は面白さ最優先派

 

 

 ミコトの言った通り、コメント欄では各々の考え方が書き込まれており、その意見は色々と別れている。 流石にこれらを拾うと対立構造が生まれてしまいかねないので、コメントは一旦スルーすることにした。

 そうしているとミコトが口を開く。

 

 

「さっきの説明、敵に警戒って部分でちょっと思ったんだけどさ……これ階段に火を付けたら逃げ場無くなるんじゃない?」

 

 

 ミコトはそういうと、流れるような動作でインベントリから矢と焚火を取り出し、火矢を作って建物の屋根や階段へと射かけた。

 しかし、中から兵が出てきて、射かけた火はすぐに消し止められてしまう。

 

 

「あちゃー、やっぱり対策はされてるか。 そりゃそうだよね、この方法で倒しちゃ盛り上がりに欠けるし」

「ならなんでやったんです?」

「面白そうなことを思いついたら、とりあえずやって試さなきゃ。 映え意識だよ」

「確かにさっきから解説でちょっと画面が固定気味でしたもんね。 話が長いって怒られそうです」

「わかって呼んでるから気にしない気にしない」

 

 

>コメント:解説面白いよ

>コメント:解説部分タイムスタンプ貼っとくね

>コメント:アーカイブだとスキップできるから気にしないで

 

 

 解説を面白いと言ってくれてホッとする。 自分に出来ることで楽しんでもらえるのなら嬉しい限りだ。

 

 

「しょうがない、正攻法で行くか。 ……あ、そういえば出発前に叔母から女性ものの服を貰ったんだった。ゲームで出来るかわからないけど、確か女装して油断させたところを懲らしめるんだったよね」

「私の紙芝居だとそうですね」

「……あぁ、そこもマイルドになってるんだ」

「まぁはい……。 古い話なので、殺しちゃうんですよ」

「命軽いなぁ……」

 

 

 ミコトはインベントリから装備品を給仕衣装(女)へと変えた。

 すると操作キャラクターであるオウスの見た目にも反映され、先ほどまでの少年的カッコよさから、少女の様な愛らしい姿に変化した。

 白を基調にした短いスカートに上着、そして首元には勾玉のネックレスを身に着けている。

 

 こころなしか立ち姿も若干女の子らしくなっている。

 

 

「うわー! かわいー! 弥生時代風?」

「いえ、その少し後の古墳時代の衣装を現代的にアレンジしてますね。 実際にはもう少しスカートは長かったんじゃないかと思われます。 素肌を出し過ぎていると草木で怪我しちゃいますから。 二次色先生も平野先生もですけど、元のデザインを取り入れつつ現代で可愛いデザインに作り変えるのってホントに凄いですよね」

 

 

 ミコトはそのままオウスを屋敷へ潜入させると、給仕だと勘違いしたクマソ兄弟はオウスにデレデレになり、近づいて酌をすることを命じていた。 その懐に剣を隠していることに気付かずに。

 

 

「年齢的にこのくらいの丈のスカート履かなくなっちゃったなぁ。 ……カクシ君は見たい?」

「…………あ、オウスが敵を刺してボス戦始まりましたよ」

「話の逸らし方下手すぎー!」

「だってそれ、どう答えても燃えませんか?」

「いつの話だよー。 四、五年くらい前には結婚や出産を発表したVTuberも居たよ?」

「え!? そうだったんですか?」

 

 

>コメント:割と彼氏報告してる女性Vtuberいるよ

>コメント:個人勢だと結婚とか子供とか公開してる人割といる

>コメント:元々既婚って言ってる人……は別か。

>コメント:未だに女性Vに、男と配信しないで欲しいっていう人はいるけどね

>コメント:良かったな、ここは両方男だ。

 

 

 確かに、これまでの配信で俺とミコトの距離が近くはあっても、別に燃えることはなかった。

 一万人記念でアップされた動画で少数ながらそういう人が現れたくらいか。

 なら、そこまで気にしすぎなくてもいいのかもしれない。

 

 

 画面ではクマソタケル兄がオウスによって刺され、HPが七割削れた状態からスタートしている。

 おそらく女装しなければHP満タンの兄弟が二人という戦闘なのだろう。

 

 ミコトは軽快に攻撃を避けながら、綺麗に反撃をして体力を削っていく。

 

 

「……私、この手のアクション全然だめなんですよね。 クリアできる気がしません」

「苦手な人は低い難易度のゲームで遊ぶと良いと思うよー。 ゲームの難易度は辛い料理みたいなものだからさ。 苦手な人が無理して激辛行くことないとボクは思うな」

 

 

>コメント:私も全然ダメ。気になるゲームとかもクリアできないから実況見てるところある

>コメント:難易度設定ないゲームとかに限って高難易度なんだよな

>コメント:私は難易度調整あるとそっちに逃げちゃいそうだから、難易度設定ない方が好き

 

 

 ミコトは俺と軽く雑談しながらも、まるで巨人のように誇張されたクマソ兄弟の攻撃を回避していく。

 舞うようにステップを踏むたびに、スカートのような布がひらひらと舞い、視覚的に大変よろしくない。

 

 

 ……丈の短いスカートか。 確かに学生の時や、社会人になって家に遊びに来ている時は度々目にしていた。 だがここ何年かは全然見ておらず、ロングスカートかパンツルックだ。

 

 

「こういうアクションゲームはね、まず回避に専念して敵の攻撃パターンを覚えること。敵の攻撃後の隙に、何回まで反撃できるかを覚えて欲張りすぎない。 そうすれば意外と勝てるんだよ」

 

 

 隣で回避のコツについて解説しながら、楽しそうにプレイしているミコトを見てふと思う。

 きちんと手入れされた肌は今もきれいだし、長い髪はふわふわとして、俺の固くまっすぐな髪質とはまるで違うものだ。 確かに年齢で言えば、俺と同じ三十一なんだけど……。

 

 

「…………今着ても、可愛いと思うけどなぁ」

 

 

 ……不意にそんな言葉が口から洩れてしまった。

 配信ソフトのサウンドミキサーを見る限りでは、ノイズキャンセリング機能により配信には載っていない。 エアコンなどの雑音と同じく処理されたのだろう。 けど……。

 思わずチラリと隣を見ると、顔を真っ赤にしているミコトの姿。 どうやら聞こえてしまったらしい。

 

 

「……えっとそうそう。 慣れない間は攻撃も隙の少ないものを使用するのがいい……! あぁもう一人が横から来た! ………………ごめんちょっと黙って集中する! リスナー君の相手してて!」

 

 

>コメント:連続で喰らっちゃってない?

>コメント:一度崩れるとボロボロになるのあるある

 

 

 先ほどまで回避や隙を作った後の攻撃について説明するため、あえて両方の敵を同時に残していたミコトだったが、それが原因で攻撃を受けてしまう。

 流石にゲームも上手という一面も売りにしているミコトとしては、第一ステージで倒れたくないのだろう。 ゲームに集中すると、一体ずつ丁寧に倒して無事にクリアした。

 

 

「……あぁっぶない!!! 油断してホントに負けるかと思った!!」

「流石に兄弟同時戦闘は厳しかったですね。 ……この辺りは古事記をベースにしてるみたいです」

 

 

 そんな様子を見ながら解説へと移行すると、ミコトも同じく話題に乗ってきた。

 

 

「キミの紙芝居だと一人だったよね」

「日本書記だと兄弟じゃなくて一人の男なんですよ。 ……二人も描くの大変だったので、その部分だけ日本書紀を使わせてもらいました。 ヤマトタケルの話はココからもどんどん続きますからね」

 

 

>制作の都合で消された片割れに涙

>確かにここまだまだ序盤だわ。配信もまだ二時間ぐらいだし

 

 

 ゲームの画面上では、致命傷を負ったクマソ兄弟が、オウスへとヤマトタケルの名を送り息絶えた。 そして主人公の名前が先ほどまでオウスノミコトだったのが、ヤマトタケルへと変化している。

 

 

「おおー、ボスを倒して初めてタイトルの主人公名になるんだ」

「終盤でタイトル回収される作品も面白いですが、この作品の場合はここまでがプロローグということかもしれませんね」

「にしては敵の殺意高すぎると思うんだけどね、ステージ一でボス二体同時はゲームが得意じゃない人には厳しいよ」

 

 

>コメント:実際このゲームかなり難しい。

>コメント:ゲーマー評価は高いんだけど、序盤のボスを倒したってトロフィー取れてない人多いから、クリアできてないユーザーの方が多いみたい。

>コメント:サクサク進むから見てて気持ちよかった

 

 

 コメントではゲームの難易度について盛り上がっている。

 ミコトはアッサリと進めていたが、どうやらかなり難易度が高めのゲームらしく、軽々と進めていく様子に配信としては高評価だったようだ。

 

 

「よしよし、時間も二十二時を少し回ったところだし、今日はこの辺りで終わりにしようか。 これからも定期的にカクシ君を呼んで、お話を解説してもらいながら遊んでいこうと思うからよろしくね」

「それまでに私ももう一度勉強しなおしておきますね。 古事記や日本書紀以外に、各地にも神社縁起としていろんな話が伝わっていますから。 もし興味が出た方は現代語訳なども有るので買ってみるか、図書館などで読んでみるのも面白いですよ」

 

 

>コメント:解説も面白かったです

>コメント:とりあえず現代語訳版ポチってみた。

>コメント:久しぶりに図書館行ってみます!

 

 

 コメントには何件か購入したという報告と、図書館に行ってみるという物が見られて嬉しくなる。

 

 

「カクシ君が嬉しそうなのはいいけど、自分のチャンネルじゃなくて本をオススメしてどうするの」

「……あ。 でも本を楽しんでくれるのが好きなんですよね、私」

「それはわかるけどさー。 もう、自己アピールが下手なんだから。 ……良かったらカクシ君のチャンネルも見てあげてね」

「読書雑談もしていますが、動画では色んな昔話を紙芝居にしています、今回のヤマトタケルのお話もありますよ」

 

 

 ミコトが俺のチャンネルへの誘導をし始めたため、俺も慌ててチャンネルのメインコンテンツを紹介する。

 

 

「それでは、今日はここまで!みんなも明日お仕事頑張ってね?おやすみー」

「皆さん、おやすみなさい」

 

 

 コメントには『お疲れさまでした』や、『お休みなさい』などが並び、ミコトはエンディング画面に移行させると配信を閉じた。

 

 

 

***

 

 

 

「ふう……お疲れ様。 うん、楽しんでもらえて良かったね。 企画は大成功って感じかな」

「どうなんだろう。 リスナーとしてはやっぱりミコトと話が出来た方がうれしかったんじゃないか?」

「そういう考えもあるだろうけど、コラボ配信なんて殆どコメント拾えないのが当たり前。 そっちより、普段見てる姿とは違う面が見えた方が嬉しかったりするものだよ。 ボクとお話したいならコラボじゃない配信の方に遊びに来ればいいんだし」

 

 

 ミコトは配信終了画面の最大同時接続数や、平均視聴時間を見せながらそう話す。

 瞬間的な同時接続数は七千二百人。 人気のゲームということも相まって、俺の3Dお披露目の三倍程になっている。 平均視聴時間も三十分と高い。 つまり、ミコトがコメントと話せないからすぐに立ち去ったという人が少ないことを証明している。

 

 確かに配信としては成功と言ってよさそうだ。

 

 

「ボクは好きな人の色んな面を見たいと思うんだ。 多分それはリスナーも一緒で、尊敬してる人に会った緊張してる姿、友達との気の置けないやり取り、リスナーに向ける姿。 推しの好きな物、嫌いな物、昔の思い出。 ……そういう生きた人間の全てが、推しを推せる理由になっていくと思ってる」

 

 

 もちろん、明かされた一面に幻滅することだってあるだろうけどね。 と笑いながら話す。

 

 

「キミは殆どコラボもしない、自分のことも話さない。 ……それは、決して悪いことじゃないけど、キミじゃなきゃダメだと思ってくれる人を減らしてしまうと思う。 同じように本が好きなVTuberに流れてしまうことだって有ったでしょ?」

 

 

 それを聞いて、俺は黙ってうなずいた。

 

 確かに、八年でそういうことは何度も有った。

 俺が他の人の配信を積極的に見に行くことはないが、今まで遊びに来ていた人が突然来なくなったりすれば、大体他の推しが出来ている場合が多い。

 

 

「だからキミは伸びようと思うなら、もっとリスナーとの距離を縮めた方がいい。 関係性は人によって違うけど、友達なのか。 同行の士なのか。 疑似的な恋人なのか。 いろんな関係を作って行けばいいと思う。 コンテンツを提供するだけじゃなく、キミ自体がコンテンツになれるようにね」

 

 

 ミコトの言葉を咀嚼し、心の中で紙に記す。

 

 

「自分の想い出、他の人と会うときの姿、リスナーとの距離、か……」

 

 

 確かに、言っていることは理解できる。

 だが、何を話せばいいのだろう。

 誰と繋がり、リスナーとどのように接すればいいのだろう。

 これまでリスナーの好きな本を聞いて、自分の好きな本を紹介して……。 確かに思えば、そこで止まっていたかもしれない。 リスナーに、俺はもう一歩踏み込むべきなのだろうか。

 

 だけど……新しく何かを変えるのは勇気がいる。

 

 思い悩む俺を見て、ミコトは口を開く。

 

 

「……まだ難しいかな。 キミはあまり自分のことを話すのが得意じゃないもんね。 ……だったらさ、まずは新しい企画に挑戦してみなよ」

「新しい企画?」

「キミは色々と挑戦して、伸びたコンテンツを残して今の形になったけど、最近じゃ固定化しすぎてると思うんだ。 新しい企画からまた何か見つかるかもしれない」

「……わかった、考えてみるよ」

 

 

 ミコトは3Dお披露目の翌日にはこの企画の案を送ってきていた。 流石に俺にはそこまでのことは出来ないだろうけど、確かに何か自分で考えてみるのは悪くない。

 

 

「しかし今日は珍しいな。 動画の改善案とか、配信の忠告とか。 これまでそういうことは俺に言ってこなかったのに」

 

 

 ミコトの言葉を聞きながら、ふとした疑問を口に出す。

 

 

「……せっかくキミと一緒に配信できるようになったんだもん。 キミと一緒にチャンネルを育てる案を話し合うのも、楽しそうだと思ってね」

 

 

 多分、ミコトが俺に色々と教えてくれるようになった理由は、何か他にもあるのだろう。 長い付き合いだからそのくらいはわかる。

 だが誰にだって触れられたくないところはある。 俺はあえて何も聞かないことにした。

 

 

「話し合うというか、完全に教えてもらってるようなものだと思うけどな」

「ふふ、そうかも」

 

 

 そういってお互いに笑って、遅くなりすぎないうちに帰路につく。

 その日教わった様々なことは、明日からの配信に繋げていける気がした。

 

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