いつの間にか決闘中心社会   作:不死鳥の導き手

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ついに投稿してしまった……。
この小説を開いて下さりありがとうございます。
処女作なので色々ごちゃごちゃしていますが出来る限り整頓はしました。
楽しんで読んで頂けると幸いです。


第1話『アタリ』

 俺は三伏 修(ミフシ シュウ)、至って普通の中学生だ。

 趣味は遊戯王、環境についていけてないのでガチなデッキはない。今は学校帰りに寄ったコンビニで買ってきたパックを近くの公園で開封している。

 

「ガトムズ、サフィア、ラズリー、セイクリッドテンペスト……ヴァルカン出ねぇ!」

 

 出たカードに愚痴を言いつつも内心は納得していた。なぜかパックで買うとスーパーレア以上のカードが出ないのだ。今度箱で買ってみようかと考えながら、セイクリッドテンペストを指でどけて5枚目のカードを確認する。だがそこには白紙にでかい文字で『アタリ』とだけ書いてあった。真っ白いイラストのカードではなく、文字通り真っ白い紙にである。

 

「……は?」

 

 俺は「手抜きじゃねぇか!」と握られた『アタリ』を近くにあったゴミ箱に全力でぶち込もうとした。だがゴミ箱の前には誰かがいたので何とか踏みとどまった。ゴミ箱の前に立っていたのは二十代後半のおっさんだった。ただのおっさんではなく、左腕にはデュエルディスクがついているおっさんだった。成人男性が腕にデュエルディスクをつけて公園で散歩しているなんてとてもじゃないが考えられない。

 

「おい少年、デュエルしろよ」

 

 不審なおっさんはまるで当然のことを言うように、公園ではまず聴けない言葉を放ってきた。カードで遊びたいならカードショップへ行くのが常識であるはずなのだが、この男はそうはしないようだ。デュエルをするなら屋外で、ルールを破って激しくデュエル!がこのおっさんのモットーなのだろう。

 

「んだよおっさん、おもちゃ付けて外でデュエルとかバカか?カードゲームはちゃんとした場所……そうだな、カードショップとかでやれよ」

 

 俺はおっさんをカードショップに行くよう促しておいた。そもそも、外でカードゲームすること自体がおかしいことだとこの成人男性は気付かないのだろうか。

 

「ハッハッハッ!バカは少年、お前だ。腕についたデュエルディスクは飾りか?」

 

 俺の考えなど知らぬとばかりにおっさんはアクセル全開だ。何言ってんだおっさん、危ない薬でもやってんのか?と言いながら何気なく頭を掻こうとしたら、視界の端に変なものがある。デュエルディスクだ、しかも俺の右腕に装着されている。当然こんなもの付けた覚えなんてないので、いつの間にかついていたのだろう。いや、どこでだよ。

 

「な、なんだこりゃ!?」

 

「デュエルディスクを付けているということはいつ何時でもデュエルを受けるという証!逃げ出すことは許さんぞ!あ、俺が勝ったらお前のデッキからカードを1枚いただくからな!」

 

うろたえる俺を無視し、おっさんは手慣れた手つきでズボンのポケットからデッキを取り出しデュエルディスクにセットする。しかもおっさんはお互いのカードを賭ける『アンティルール』をお望みだ。まさにバトルシティ状態、こんなアンティなんざ丁重にお断りしよう。

 

「いやいやいや、カード賭けてデュエルすんのは駄目だろが!」

 

「ふん!カードも賭けれぬ腑抜けデュエリストか貴様は!」

 

 あー、ここまで言われちゃやるしかないな。でもおっさんのカードなんていらないしどうすっかな。お、いいこと思いついた。

 

「わぁーったよ!受けてやんよ!」

 

「だが、俺が勝ったらテメェを不審者として警察に突き出すからな!」

 

 右手の人差し指でおっさんを指差し宣言してやった。ガキに大口叩いた結果、惨敗して牢屋にぶち込まれるかもしれないなんて哀れである。

 

「いいだろう、ガキが粋がり負ける様は最高に無様だからな!」

 

 おっさんも自らを豚箱にぶち込む悪魔のアンティルールを快く了解してくれたので、かばんからデッキケースを取り出してデッキをデュエルディスクにセットした。

 

「「デュエル!!」」

 

謎のおっさんvs三伏 修

 

「先行は俺だ!俺のターン、ドロー……できないだと!?」

 

 おっさんが勝手にドローをしようとしたが、デッキがロックされていてドローができなかったようだ。さり気なく先行ドローしようとするなよおっさん、マスタールール3はもうとっくに適用されてるぞ?

 

「まあいい、俺は手札から《ジャイアント・オーク》を攻撃表示で召喚!」

 

ジャイアント・オーク

★4:ATK/2200

 

 おっさんがデュエルディスクにカードを出すと、おっさんの前に全身灰色で醜悪な姿をした魔物が現れた。

 

「うおっ!?モンスターが実体化した!?」

 

「ソリッドビジョンを知らないとはとんだ田舎者だな、ターンエンド」

 

 おっさんからすれば当然なのだろうが、俺からしたら驚くのは当たり前だ。○○NAMIもやるじゃないか、まさか本当にソリッドビジョンシステムを完成させるとは。リアルKCを名乗ってもいいぞ。

 

おっさんLP:8000

手札4枚

 

「お、俺のターン、ドロー!」

 

 実体化には驚いたがジャイアントオークは攻撃力が高いだけのモンスターだ、恐れることはない。俺のデッキは攻撃力は自信があるのだ。

 

「俺は手札から《聖刻竜-ドラゴンヌート》を攻撃表示で召喚する」

 

聖刻竜-ドラゴンヌート

★4:ATK/1700

 

 俺がデュエルディスクのモンスターゾーンにドラゴンヌートを攻撃表示で出すと、目の前に黄金色の鎧を身に着けた青色の竜人が現れた。

 

「攻撃力1700か、だが俺のジャイアントオークの攻撃力は2200だぞ?」

 

 おっさんがしたり顔でためになる解説を行ってくれた。

 だがそんなこと知るか、殴るだけだ。

 

「バトル!ドラゴンヌート、そこのブサイクに攻撃だ!」

 

「バカな、攻撃力の劣るモンスターで攻撃だと!?やはり田舎者の素人か!返り討ちにしろジャイアントオーク!」

 

 右手の人差し指でブサイクなジャイアントオークを指差し、攻撃宣言を行った俺におっさんは驚いたようだ。素人扱いは勝手だが、こんなリアクションはアニメ以外で見たことないぞ。おっさんは迫ってくるドラゴンヌートを返り討ちにするべくジャイアントオークに指示を出す。

 

「ダメージステップに速攻魔法発動!《蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス)》!」

 

「何!?」

 

 おっさんには悪いが俺は無策で突っ込んでやるほど優しくない。こういう自爆特攻には裏があることを教えてやる。

 

「バーサークスケールスは俺の場のモンスター1体の攻撃力を1000ポイント上げるカードだ!だが、エンドフェイズに攻撃力が2000ポイント下がってしまうがな、じゃあダメージ計算行くぞ」

 

 自身に叩き付けられた混紡を右腕を一振りするだけで撥ね除けるドラゴンヌート。そのままジャイアントオークに肉薄し、アッパーの構えに入ると飛び上がった。

 

聖刻龍−ドラゴンヌートATK/2700

ジャイアントオークATK/2200

 

おっさんLP:7500

 

 ドラゴンヌートがジャイアントオークのアゴに見事なアッパーを見舞うと、ジャイアントオークの体は宙に浮き、地面に叩きつけられ消えた。それにしてもすごい迫力だ。これがカードのおまけなのだ、まさにびっくりクリエイティブである。

 

「ぐおおおお……おのれぇ……ん?」

 

 おっさんが忌々しそうな目でドラゴンヌートを睨み付ける。だがその視線はすぐにその隣にいる小さい竜に移った。その竜は目があったかと思うと、驚いたかのように炎を纏い身を守るかのように体を丸めた。

 

「おい!そのドラゴンは何だ!?いつの間に出した!?」

 

「ドラゴンヌートの効果はカードの効果の対象になった時、俺の手札・デッキ・墓地からドラゴン族通常モンスターを攻守を0にして特殊召喚すんだよ。」

 

「その効果により、デッキから《ガード・オブ・フレムベル》を特殊召喚『していた』ってことだ」

 

ガード・オブ・フレムベル

★1:DEF/0

 

 事後報告になってしまったのは悪いと思うが、一度でいいからやってみたかったからしょうがないよな。俺の周りに遊戯王やってるのは二人ぐらいしかいない上に、片方はノリが非常に悪いのでこういうことをさせてもらえないのだ。

 

「な……んだと……戦闘補助に加えて戦線補強までするとは、貴様はただの素人ではないな!」

 

 おっさんがいかにも騙されました、と言いたげにこちらを睨んできた。騙した覚えはない、むしろ勝手に勘違いされたこっちが文句を言いたい。

 

「だがそんな雑魚に何ができる!御自慢の守備力も0になっているようだしな」

 

「まあ、そうなるな。だがガードオブフレムベルはチューナーだ」

 

 確かにこのままにしておけば何の役にも立たない攻守0のマスコットだ。エンドフェイズにドラゴンヌートの攻撃力も2000下がり、状況は更に悪化することだろう。

 

「チューナー……だと?貴様のような芋デュエリストがあのカードを持っているはずがないだろう」

 

 チューナーという単語を耳にしたおっさんは少し驚いていたが「どうせガキ特有のハッタリだろう」と吐き捨て次のターンに備えてデッキトップに指をかけている。待てよおっさん、俺のメインフェイズ2はまだ終了していないぞ。

 

「俺はレベル4のドラゴンヌートにレベル1のガード・オブ・フレムベルをチューニング!」

 

 ガードオブフレムベルが一つの星のような光に姿を変え、ドラゴンヌートの周りを飛び回る。煌めく星が光の輪に姿を変え、ドラゴンヌートの姿が4つの星々へ変化すると天から光が降り注いだ。

 

「輪廻転生を司る古の竜よ今ここに!シンクロ召喚!廻れ、《転生竜サンサーラ》!」

 

 光を切り裂き現れたのは胸から光を放つ神秘的なドラゴンだ。その光は、エジプトで生命を象徴する『アンク』の形状をしている。

 

転生竜サンサーラ

★5:DEF/2600

 

「なっ……なぜ貴様のようなガキがそんな高価なカードを持っている!?」

 

 どうやらおっさんは俺がシンクロモンスターを持っていることを想定していなかったようだ。だがサンサーラが高価だという発言は理解できない。紙切れ1枚にしては少々高いが、それでもシングルで100~200円程度だ。

 

「ハァ?シングルで100円くらいのカードだろが。どこが高価だふざけんな、高価っつーのは米ウルのトリシュとかレリの開闢するマンとかだろ」

 

「シンクロモンスターが100円だと?ふざけているのは貴様だ!」

 

 俺の言葉を真っ向から否定するおっさん。どうやらおっさんの脳内ではシンクロは100円では売っていないようだ。

 

「シンクロ、エクシーズモンスターはその強さのせいで十数万円レベルの価値にまで上がっているのだぞ!少しは勉強しろ田舎者め!」

 

 興奮冷めやらぬおっさんが続けて放った言葉に俺は驚いた。どうやらおっさんの脳内世界は遊戯王がすごいレベルにまで発展しているようだ。現実と妄想の区別がつかないのは危険だ。早めに警察にぶち込まないと。そんなことを考えていると、おっさんが無言の圧力でターンエンドを促してきたのでカードを2枚伏せてターンを終了した。

 

修LP:8000

手札2枚

 

「俺のタァーン!ドロォー!」

 

 おっさんがものすごい大声を上げ、すごい回転をかけながらカードをドローした。加齢臭を漂わせ、錐揉み状態で上昇しながら三回転し着地を華麗に決める様はただの変態だ。

 

「……クックック、ハッハッハ!俺の手札にはそのモンスターを倒すカードが来た!行くぞ、《九蛇孔雀》召喚!」

 

九蛇孔雀

★3:ATK/1200

 

「んだよ、チート効果でも持ってんのか?」

 

「慌てるな少年、更に俺は手札から《スワローズ・ネスト》発動!これは俺の場の鳥獣族モンスターをリリースし、同じレベルの鳥獣族をデッキから特殊召喚するカードだ!九蛇孔雀をリリース!」

 

「現れろ!《BF-疾風のゲイル》!」

 

BF-疾風のゲイル

★3:ATK/1300

 

 尾羽根に九つの頭の蛇の模様が描かれた孔雀が現れ、すぐ消えたかと思うと、顔が気持ち悪い鳥人がおっさんのデッキから飛んできた。その眼力は凄まじく、まさに準制限カードの貫禄だ。

 

「九蛇孔雀の効果発動、デッキからレベル4以下の風属性モンスターを手札に加える。デッキからドラゴンフライを手札に加えさせてもらうぞ」

 

 だがおっさんの狙いがわからない、ゲイルの気持ち悪い効果でもサンサーラは倒せないはずだ。サーチしたドラゴンフライとゲイルを合わせれば倒せるかもしれないが、このターンでは無理だろう。

 

「おっさん、サンサーラの守備は2600だぞ、ゲイルじゃ倒せないはずだ。何が狙いだ?」

 

「そう焦るな、すぐに見せてやろう。俺は墓地のジャイアントオークと九蛇孔雀を除外し、手札のモンスター効果を発動!」

 

 おっさんの目の前に黒い風が集まっていき、それはやがて竜巻に変わる。

 

「現れろ!《ダーク・シムルグ》!」

 

 おっさんの呼び声に答えるかのような鳴き声と共に竜巻が消し飛び、漆黒の巨大な怪鳥が出現する。今気づいたが黒い霧が俺のフィールドに漂っている。どうやらこれが「セットを封じる能力」というわけらしい。

 

ダーク・シムルグ

★7:ATK/2700

 

「へぇ、そっちもいいもん持ってるじゃねぇか」

 

「余裕かましているのは今のうちだぞ、俺は更に手札から《BF-黒槍のブラスト》を特殊召喚!こいつは俺の場に他のBFがいると手札から特殊召喚できる!」

 

BF−黒槍のブラスト

★4:ATK/1700

 

「更にゲイルの効果発動!サンサーラの攻守を半分にする!食らえ!」

 

 転生竜サンサーラDEF/2600→1300

 

 ゲイルの形相がより一層気持ち悪くなったかと思うとサンサーラの周囲を覆うかのように風が奔り、その力を消耗させた。

 

「ふはははは!これで貴様のシンクロモンスターもゴミ同然というわけだ!」

 

「ゴミクズとは随分バカにしてくれるじゃねーか、覚えてろよ」

 

 自らの操るカードへの侮辱、それは自分自身を貶されたのと同然。このおっさんにはたっぷりと仕返しをしてやりたいが、場の状況はこちらが圧倒的に不利だ。

 

「クズまでは言った覚えはないがバトルだ!まずはブラストでサンサーラに攻撃!」

 

「特に何もないぜ」

 

「ならばダメージ計算適用だ!」

 

BF−黒槍のブラスト:ATK/1700

転生竜サンサーラ:DEF/1300

 

修LP:7600

 

 ブラストがサンサーラに向かって飛翔し、槍でサンサーラを貫いた。貫いた際に発生した衝撃が俺のライフポイントを削る。

 

「うおっ!貫通持ちかよ……」

 

「おおっと説明し忘れていたな、ブラストが守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていればその差分のダメージを相手に与える!」

 

 想定外のダメージを貰ってしまった。

 だがサンサーラがただの壁モンスターだと思ったら大間違いだぞ。

 

「サンサーラの効果発動!こいつが戦闘で破壊され、または相手の効果により墓地へ送られた場合にサンサーラ以外の自分か相手の墓地のモンスターを俺の場に復活させる!」

 

 地面に落ちたサンサーラが最期の力を振り絞り咆哮すると胸のアンク型の輝きがより一層激しくなる。だがサンサーラの体が崩れていく。

 

「俺が復活させるのは、ドラゴンヌートだ!」

 

 フィールドに残ったのはアンク型の光だけだった。そしてその光が墓地よりドラゴンヌートを蘇らせた。

 

 聖刻龍-ドラゴンヌート:ATK/1700

 

「なるほど、胸の死者蘇生のマークは伊達ではなかったということか。ならばダークシムルグで攻撃!邪悪旋風《イービル・ストーム》!」

 

 ダークシムルグが空を舞い、天からドラゴンヌートに黒い暴風を叩き付ける。

 ドラゴンヌートは無謀にも迎え撃つべく構えた。

 

「ダメージステップにリバースカードをオープンする!《竜魂の城》!

 

 俺の後ろから巨大な山が迫り上がってきた。その山頂にはまるで西洋の城のようなデザインの建築物が建っている。

 

「こいつは俺の墓地のドラゴン族を除外することで俺の場のモンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで700上げる!墓地のサンサーラを除外して発動だが、それにチェーンしてドラゴンヌートの効果だ!」

 

「俺のデッキから《ドラゴン・エッガー》を攻守を0にして特殊召喚し、ドラゴンヌートの攻撃力を700アップ!」

 

ドラゴン・エッガー

★7:DEF/0

 

 ドラゴンヌートの隣には、サイズの大きい卵が出現した。

 その卵からは手足と翼がはみ出ていた。

 そして竜魂の城から光がドラゴンヌートに向かって放たれた。

 その光がドラゴンヌートに接触するとドラゴンヌートの全身からオーラのようなものが湧いてきた。恐らくパワーアップしているのだろう。

 

 ダーク・シムルグ:ATK/2700

 聖刻龍−ドラゴンヌート:ATK/1700→2400

 

「だがそれでもダークシムルグの方が攻撃力は上だ!粉砕しろ!」

 

「ちっ……」

 

修LP:7300

 

 黒き暴風は城から発生している光により力を得ていたドラゴンヌートを易々と押しつぶした。

 

「ふふふ、ゲイルでドラゴンエッガーに攻撃!」

 

 ゲイルが殻に籠っているドラゴンエッガーに向かって飛んだかと思うと、そのまま飛び蹴りの体勢に入った。

 

「くそが、速攻魔法発動!」

 

「無駄だ、粉砕しろ!」

 

 だがゲイルの飛び蹴りでは卵を砕くことができず、弾き飛ばされてしまった。

 

「何故だ、何故破壊できない!?」

 

「《ドロー・マッスル》発動……危ねぇ危ねぇ」

 

 本当に危なかった、発動タイミングを踏み倒されたかと思った。こいつを発動できなかったら作戦がパーだからな。

 

「こいつは俺の場の守備表示モンスターで守備1000以下のモンスターをこのターン中戦闘から守り、ついでにカードを1枚ドローさせてくれる速攻魔法だ」

 

 頭を傾げるおっさんに俺がドローしながら説明してやると、おっさんは納得したかのように俺に視線を移す。

 

「なるほど、呼び出したモンスターの攻守が0になることを生かしたカード……ここまでの流れを読んでいたわけか。だがそんな雑魚を残したところで何になる?」

 

 おっさんは攻守0の雑魚モンスターに厳しい評価を下す。こいつも好きで雑魚になってるわけじゃないんだがな。

 

「……まあいい。カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 おっさん

 LP:7500

 手札1枚

 

「俺のターン、ドロー!おっさん気になるか?こいつを残した理由が」

 

「まあな、そのモンスターに価値を見出すことができないのでな」

 

 俺の問いにおっさんは腕を組みながら答える。ステータスしか見てねぇのかよこのおっさん。

 

「じゃあ答え合わせだ、手札から《トランスターン》発動!」

 

「こいつは俺の場のモンスターを墓地へ送って発動する魔法だ。レベル7のドラゴンエッガーを墓地へ送る!」

 

 ドラゴンエッガーの体が突然発光し始めた。

 

「そして発動するために墓地へ送ったモンスターと同種族同属性でワンレベル上のモンスターをデッキから特殊召喚するカードだ!」

 

 ドラゴンエッガーがより巨大な卵に姿を変える、そして内部から卵を砕いてそれは現れた。

 

「現れろ俺のデッキのエース!全てを砕く最凶の暴君!《タイラント・ドラゴン》!」

 

 まさに『ドラゴン』そのものと言える姿の暴君が卵の殻を完全に破壊した。それにしてもタイラントドラゴンのソリッドビジョンが見れたことに俺は感動している。俺は今日という日を忘れないぞ、おっさん?知らねぇ。

 

タイラント・ドラゴン

★8:ATK/2900

 

「ほう、いいモンスターではないか」

 

 おっさんが俺のエースモンスターを賞賛する。だが賞賛したところで焼かれる対象が変わるわけじゃないけどな。

 

「更に《一族の結束》発動!」

 

「俺の墓地の種族が1種類のみの場合、俺の場のその種族の攻撃力を800上昇する永続魔法だ!これによりタイラントドラゴンの攻撃力は3700にアップ!」

 

タイラント・ドラゴン:★8:ATK/2900→3700

 

「更に手札から《ジュラック・グアイバ》を攻撃表示で召喚する」

 

ジュラック・グアイバ

★4:ATK/1700

 

 光と共に背びれが燃えている橙色の肉食恐竜のようなモンスターが現れた。一族の結束の効果を受けていないので、こいつはドラゴン族ではなく恐竜族だ。

 

「バトルだ、タイラントドラゴンでダークシムルグに攻撃!タイラント・バースト!」

 

 俺の命令を受けたタイラントドラゴンの周囲が揺らめく。恐らく体温が上がっているのだろう。そしてダークシムルグに向けて息でも吐き出すかのように赤色の熱線を吐き出した。

 

タイラント・ドラゴン:ATK/3700

ダーク・シムルグ:ATK/2700

 

おっさんLP:6500

 

 タイラントドラゴンの熱線はダークシムルグに直撃し、大爆発を起こす。対象が存在しないのに熱線は出しっ放しだ、止めろよ。

 

「こんなもんじゃねぇ、タイラントドラゴンは相手の場にモンスターがいる時、2回攻撃できる。ブラストに攻撃!タイラント・バースト第2打!」

 

 タイラントドラゴンは出しっ放しの熱線を、そのままブラストに向けて薙ぎ払った。

 

「2回攻撃能力持ちだと!?まずい!」

 

 落ち着き払っていたおっさんが急に慌て始める。俺のエースがただの2900のバニラなわけないだろう。

 

タイラント・ドラゴン:ATK/3700

BF-黒槍のブラスト:ATK/1700

 

おっさんLP:4500

 

 圧倒的熱量を誇る熱線は地を焦がしながらブラストに向かって薙ぎ払われた。ブラストを切り裂くように熱線が薙ぎ払われ、斜線上は2度目の爆発に包まれた。

 

「くっ……」

 

「んじゃ残ったゲイルにグアイバで攻撃だ!」

 

 ジュラックグアイバがゲイルに向かって駆け出すと、燃える顎でゲイルの頭に噛み付いた。ゲイルはしばらく抵抗していたが、すぐに砕け散った。

 

 ジュラック・グアイバ:ATK/1700

 BF-疾風のゲイル:ATK/1300

 

 おっさんLP:4100

 

「グアイバの効果発動、こいつが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、デッキから攻撃力1700以下のジュラックを呼び出す。《ジュラック・グアイバ》を呼び出す!」

 

 ゲイルを倒したゲイルが咆哮をあげると、どこからともなくグアイバと同じ姿の恐竜が走ってきた。

 

「この効果で呼び出したモンスターはこのターン攻撃できねえから、メインフェイズ2に入るぞ」

 

「だがいいのか?恐竜族が墓地へ行けば貴様の一族の結束は意味を成さなくなるのだぞ」

 

 確かにその通りだ、次のターンでグアイバが墓地へ送られれば一族の結束の効果は消える。だが逆に考えればいい、墓地へ送らなければいい。

 

「ご心配どうも、でも余計なお世話だ。俺は2体のジュラック・グアイバでオーバーレイ!」

 

「お、オーバーレイだと!?貴様まさかあのカードまで……」

 

 2体のジュラック・グアイバが朱色の光となり昇っていく。

 

「2体の恐竜族モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 天に光の渦が現れ、一対の光はそれに吸い込まれていく。そして朱色の光を飲み込んだ渦は大爆発を起こし、周囲を眩い光に包み込む。

 

「これぞ現代に蘇りし進化の炎!《エヴォルカイザー・ラギア》!」

 

 天から降りてきたのは渦巻く炎を纏った6つの翼を背負う純白の竜。周囲に飛び交う2つの朱色の光はこのモンスターの素材となったモンスターたちだ。

 

エヴォルカイザー・ラギア

☆4:ATK/2400→3200

素材:2

 

「くっ、エクシーズモンスターまで持っていたか……いやそれよりも、こいつはドラゴン族か!」

 

「その通り、グアイバは墓地へ落ちていないため、一族の結束の効果は適用されてるってわけだ」

 

 こうなったラギアを打点で突破するのは中々に面倒だ。しかし一度効果を使うと結束は腐ってしまう、後々に響きかねない危険な状態だ。だがそれでも、そのデメリットを踏み倒す手は用意してある。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

LP:7300

手札:1枚

 

「なるほど、アンティを設定した甲斐があるというもの!貴様のデッキにはどんなカードが眠っているのだ?俺のッタァァーン!ドロォー!」

 

 前のターンよりも更にうるさく雄叫びを上げドローするおっさん。正直恥ずかしくなってくるレベルだ。

 

「ふっふっふ、その布陣崩してくれる!手札から《ブラック・ホール》発動!効果は説明するまでもないな?消し飛べ!」

 

 ブラック・ホール、フィールドのモンスター全てを破壊する魔法カードだ。

 フィールドに超重力の塊である小さな黒い球が出現する。その黒い球は全てを素粒子レベルに分解する為に範囲を広げていく。

 

「食らうかよ、ラギアの効果発動!」

 

「素材2つを使うことで魔法・罠の発動、モンスターの召喚・特殊召喚のどれかを無効にして破壊する!」

 

 ラギアが右腕を振り上げると飛び交っていた2つの光がラギアの右腕に集まり、弾ける。その瞬間超重力の塊が炎に包まれ、そのまま消え去った。

 

「強力な効果だな。だが結局パワーも下がったか!今がチャンスだ!」

 

 これでラギアの素材は0、結束も腐ってしまった。こればっかりは仕方ない。

 

エヴォルカイザー・ラギア

☆4:ATK/2400

エクシーズ素材:0

 

タイラント・ドラゴン

★8:ATK/2900

 

「《強化蘇生》を発動!こいつは俺の墓地のレベル4以下のモンスターのレベルを1つ上げ、攻守を100上げた状態で特殊召喚するカードだ!来いゲイル!」

 

BF−疾風のゲイル

★3:ATK/1300→★4:ATK/1400

 

「更に手札から《ドラゴンフライ》を召喚!」

 

ドラゴンフライ

★4:ATK/1400

 

 おっさんの場に現れたのはトンボを巨大にしたようなモンスターだ。更に横のゲイルは頭身が上がり、全身の筋肉が隆々と盛り上がっており更に気持ち悪くなっていた。

 

「ではゲイルの効果発動!貴様のエースの攻撃力を半分にしてやろう!」

 

タイラント・ドラゴン:ATK/2900→1450

 

 筋骨隆々なゲイルがタイラントドラゴンを睨みつけると、発生した旋風がタイラントドラゴンに纏わり付き力を奪った。だがそれでもゲイルに殴り倒されるほど下がったわけではない。

 

「ではバトルフェイズ……の前に俺の切り札を紹介してやる!レベル4のドラゴンフライにレベル4となっているゲイルをチューニング!」

 

 ゲイルの体から4つの輪が出現し、ドラゴンフライがその輪を潜る。ドラゴンフライは4つの星となり、天から光が降り注ぐ。

 

「魔神を束ねし蠅の王よ!ムシズの走る世界に陰りを!シンクロ召喚!全てを砕く暴君すらも喰い殺せ!《魔王龍ベエルゼ》!」

 

 その龍はまるで悪魔のような姿をしていた。頭は2つ、胸部は蠅の頭部のような形をしており、その上には人の姿をした何かが腰から上だけ生えている。

 

魔王龍ベエルゼ

★8:ATK/3000

 

「ハッハッハ!どうだ、これが俺の切り札、魔王龍ベエルゼだ!」

 

「攻撃力3000だと……?」

 

 その禍々しい見た目もだが、青眼の白龍に匹敵する攻撃力は驚かざるを得ない。

 

「行け、ベエルゼ!貧弱な暴君を食い殺せ!魔王の赦肉祭《ベエルズ・カーニバル》!」

 

魔王龍ベエルゼ:ATK/3000

タイラント・ドラゴン/ATK/1450

 

修LP:5750

 

 ベエルゼの2つの頭がタイラントドラゴンに噛み付くと、食い始めた。そして「ごちそうさま」と告げる代わりにドス黒いブレスを吐き出し、残った尻尾や翼などを消し飛ばした。

 

「くそ、タイラントドラゴンが……!」

 

「ハハハハハハ!俺はこれでターンエンドだ!」

 

おっさん

LP:4100

手札0枚

 

「俺のターン!」

 

 あいつを戦闘で消し去ることはそう難しいことではない。俺の場には竜魂の城があるし、そもそもおっさんに手札は存在しない。とはいえ俺も仕掛けるのは難しいしこのままターンを終了することにしよう。

 

「ターンエンドだ」

 

LP:5750

手札2枚

 

「ならば俺のターン!このままバトルだ、ベエルゼでラギアに攻撃する!」

 

 おっさんはベエルゼに攻撃命令を出した。竜魂の城の効果は先ほど説明した筈だが、覚えていないのか?

 

「なっ!?竜魂の城の効果を忘れたのか?」

 

「ふっふっふ、どうだろうな」

 

 おっさんは余裕の表情を浮かべている。とはいえ自爆特攻に無警戒だった男だ、忘れているだけだろう。

 

「んじゃ思い出させてやるよ、竜魂の城の効果で墓地のドラゴンヌートを除外して攻撃力を700上げるぜ」

 

 ベエルゼがラギアに接近し、双頭で噛み付こうとする。だがラギアはその攻撃を躱し、口から紅の炎を吐き出しベエルゼを焼いた。

 

魔王龍ベエルゼ:ATK/3000

エヴォルカイザー・ラギア:ATK/2400→3100

 

おっさんLP:4000

 

 だが、ベエルゼはおっさんのフィールドに立っていた。しかも何やらドス黒いオーラを漂わせてだ。

 

「な、なんで破壊されてねぇんだ?」

 

「ハハハハハ!こいつはあらゆる手段で破壊することが不可能なモンスターだ!」

 

「は、破壊不可能なモンスターだと!?」

 

 おっさんは笑いながらベエルゼの効果を説明する。あらゆる手段ということは、恐らく戦闘と効果によって破壊されないのだろう。

 

「更に!ベエルゼの戦闘により俺がダメージを受けた場合、そのダメージ分攻撃力アップ!」

 

魔王龍ベエルゼ:ATK/3000→3100

 

 ダメージを受けると強化される能力。これはおまけだが無いよりはマシだろう。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

おっさん

LP:4000

手札0枚

 

「ドロー!」

 

 欲しいのはこのカードじゃない。だが守備にして耐えれば俺にダメージはない。ブラストを引かれたとしても、ブラストの攻撃力ではラギアを倒せないだろうし深手は負わないだろう。

 

「俺のターンは、ラギアを守備にしてターンエンドだ」

 

LP:5750

手札3枚

 

「防戦一方か?ドロオオオオォォォーッ!……手札から《BF−極北のブリザード》を召喚するぞ!」

 

BF−極北のブリザード

★2:ATK/1300

 

 おっさんのやかましいドローと共に場に水色の鳥が出現する。その鳥が妙に高い声で鳴くと、墓地から焼き殺したはずのブラストが蘇ってきた。

 

「ブリザードの効果により墓地のブラストを守備で呼ばせてもらう」

 

BF−黒槍のブラスト

★4:DEF/800

 

「行くぞ!レベル4のブラストにレベル2のブリザードをチューニング!シンクロ召喚、吹き荒べ!《BF-アームズ・ウィング》」

 

 BF-アームズ・ウィング:★6:ATK/2300

 

「バトル、アームズウィングでラギアに攻撃!」

 

「アームズウィングは守備モンスターに攻撃した時、攻撃力を500上げる!更に貫通効果もある!」

 

「んなっ!?」

 

 守りを固めるラギアに突撃するアームズウィング。手にした銃剣でラギアを容易く貫くと、引き金を引き、俺に弾丸を浴びせてきた。弾丸が俺に直撃すると、ライフポイントが減少し始めた。

 

BF−アームズ・ウィング:ATK/2300→ATK/2800

エヴォルカイザー・ラギア:DEF/2000

 

 修LP:4950

 

「更にベエルゼでダイレクトアタック!魔王の赦肉祭《ベエルズ・カーニバル》!」

 

「くそが……だがまだライフは十分残るぜ」

 

「ふっふっふ、リバースカードオープン!速攻魔法《イージーチューニング》発動!」

 

「墓地のブリザードを除外し、ベエルゼのパワーを除外したチューナーの攻撃力分強化する!」

 

 魔王龍ベエルゼ:ATK/3100→4400

 

 修LP:550

 

 二つの頭が同時にこちらを向いたかと思うと大きく口を開け、ドス黒いエネルギーをこちらに放ってきた。まともに喰らってしまったせいでライフが大きく削られてしまった。

 

「……ちっ、こりゃまずいな」

 

「ふははは、これで貴様のライフは風前の灯火だ!ターンエンド」

 

 おっさんの笑い声と共にこのターンは終了した。

 

 おっさん

 LP:4000

 手札0枚

 

「……俺のターン、ドロー!」

 

 悪くない引きだ。

 

「《一時休戦》発動!お互いにカードを1枚ドローし、次の相手ターン終了時までお互いに受けるダメージは0になる。ドロー!」

 

「ふん、時間稼ぎのカードか。ドロォォォーーッ!」

 

 俺とおっさんが同時にカードを引く。しかし一時休戦は相手にもドローを許すカードだ。1ターンを確実に凌げるなら1ドローくらい安いものだが。

 

「ターンエンドだ」

 

 修

 LP:1950

 手札4枚

 

「ドロォォォー!」

 

「ならば伏せカードを2枚場にセットしターンエンドだ」

 

 おっさんは一時休戦で引いたカードと普通に引いたカードをそのままデュエルディスクに裏向きではめ込んだ。

 

 おっさん

 LP:4000

 手札0枚

 

***

 

 この2枚の伏せカードは《次元幽閉》と《威風堂々》だ。攻撃モンスターを除外する強力なカードとバトルフェイズ中に発動したモンスター効果を無効にするカード。リクルーターに逃げるのなら無効にし詰む、殴ってくるのなら異次元行きだ。

 とはいえ、中学生程度のガキにここまでするのは大人げないかもしれない。ならばサレンダーくらいなら認めてやることにしよう。

 

「宣言しておこう少年、このデュエルは俺の勝ちだ。今敗北を認めるなら、サレンダーすることを許してやってもいいぞ」

 

「……バカが、ここまで耐えたんだ。今更勝負を捨てるわけねぇだろが!てめぇをブタ箱にぶち込んでやるから首洗って待っとけ!」

 

 少年は第一印象通りにこちらを口汚く挑発しながらも俺の提案を蹴ってきた。どうやらかけた情けも解らないような愚かな少年だったようだ。ならば望み通り、無様な敗北を叩き付けた後、デッキからカードを頂くまでだ。

 

「……愚かな、サレンダーしておけばよかったと後悔するがいい!」

 

***

 

 何がサレンダーを認めてやる、だ。ライフが残ってて自分から負けを認めるなんて恥ずかしいことだろが。負けたらデッキからカードを1枚取られてしまうが、怯むわけにはいかない。次のドローが状況をひっくり返せるカードのはずだからな。

 

「行くぞ、俺のターン!ドロー!」

 

 来た、それも想定よりもいいものが。2枚の伏せが怖いがやるしかないな。

 

「手札から《竜の霊廟》発動!デッキからドラゴンを墓地へ送り、通常モンスターを墓地へ送ったならもう1枚だけドラゴンを墓地へ送れるカードだ」

 

「この効果により《ヘルカイザー・ドラゴン》を墓地へ送るわけだが、霊廟の効果によりもう1枚《焰征竜−ブラスター》を墓地へ送る」

 

「墓地のブラスターの効果を発動、こいつは墓地・手札の炎属性かドラゴン族を合計2枚除外することで特殊召喚できる。グアイバ2枚を除外する」

 

 俺のデッキに《一族の結束》が入っているのに《ジュラック・グアイバ》が入っている理由がこれだ。墓地にいると邪魔なら除外すればいい、簡単なことだ。

 

「ブラスターを特殊召喚!」

 

 現れたのは首長で全身がマグマのように赤く光っている竜だ。かつて環境をカオスに陥れた「四征竜」の一頭である。

 

焰征竜−ブラスター

★7:ATK/3600

 

「攻撃力3600だと!?だがベエルゼには届かない!」

 

「まだだ、手札から《ラヴァル・ランスロッド》を召喚。こいつはリリース無しで召喚できるが、その場合エンドフェイズに墓地へ送られる」

 

ラヴァル・ランスロッド

★6:ATK/2100

 

「更に!手札から《銀龍の轟咆》を発動!こいつは俺の墓地のドラゴン族通常モンスターを特殊召喚する、蘇れ《ヘルカイザー・ドラゴン》!」

 

ヘルカイザー・ドラゴン

★6:ATK/3200

 

 現れたのは赤く燃え滾る槍を持った岩石のような外見をした大男と、かの有名なヘルカイザーと似たカラーリングをしたドラゴンだ。

 

「レベル6のモンスターが……2体!?」

 

「行くぞ、レベル6のヘルカイザーとランスロッドでオーバーレイ!2体の炎属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

「現れろ、《陽炎獣 バジリコック》!」

 

陽炎獣 バジリコック

☆6:ATK/2500

エクシーズ素材2

 

 現れたのは炎のように燃え上がる鶏冠、揺らめく炎のような翼、水生生物のような尾、燃える8つの足、これら全ての特徴を持った胴長の鳥のような生き物だ。ぶっちゃけるとキメラって奴だな。

 

「ランク6のエクシーズまで……貴様の財布は底なしか!?」

 

「うるせーな、よく見ろ!字レアだろうが!高くても50円くらいだっつーの!」

 

 このおっさんの脳内はすごく都合がいい世界のようだ。

 

「……バジリコックの効果でオーバーレイユニットのヘルカイザーを使って効果発動!」

 

「相手の墓地かフィールドのモンスターを1枚除外する。消えろベエルゼ!」

 

陽炎獣 バジリコック

☆6:ATK/2500

エクシーズ素材1

 

 バジリコックが目を光らせ、ベエルゼを睨みつける。するとベエルゼの体が石化し、端からゆっくりと砂になって消えていった。

 

「くそっ、俺のベエルゼが……」

 

「まだ終わりじゃねぇ、手札から《トランスターン》を発動だ、ブラスターをコストにデッキからタイラントドラゴンを特殊召喚!」

 

タイラント・ドラゴン:★8:ATK/2900→3700

 

 ブラスターが光を放ち、ベエルゼに食い尽されたはずの竜に変異した。その双眸は怒りに燃えており、おっさんが視界に入った瞬間に耳を劈くほどの咆哮をあげた。

 

「ぐっ……また貴様か!」

 

「エースだしな。んじゃお楽しみのバトルフェイズだ」

 

「タイラントドラゴンでてめぇのアームズウィングに攻撃!焼き尽せ、タイラントバースト!」

 

 タイラントドラゴンが口を大きく開け、眼前の敵を消し去るために熱線を吐き出した。

 

タイラント・ドラゴン:ATK/3700

BF−アームズ・ウィング:ATK/2300

 

おっさんLP:2600

 

 熱線はアームズウィングに直撃し、その身を一瞬で焼き払う。タイラントドラゴンは鳥の死を見届けると、口角を吊り上げた。

 

「ぐおおおおおおおおおっ!?」

 

「んじゃ仕上げといくか。墓地のタイラントドラゴンを除外し竜魂の城の効果を使うぜ。対象はタイラントドラゴン!」

 

「なっ!?攻撃が終わったモンスターの攻撃力を上げるだと!?」

 

「まあ見てな。タイラントドラゴンにはもう1つ効果がある。」

 

 タイラントドラゴンがあげた咆哮によって城は崩壊し、跡形もなく消えてしまった。

 

「竜魂の城が破壊されただと?」

 

「ああ、タイラントドラゴンは自身を対象にした罠カードの効果を無効にし破壊する効果がある」

 

 罠への耐性、特定条件下での二回攻撃能力、この要素が弱いわけがない。墓地からの特殊召喚にデメリットがあるのだったら墓地以外から呼べばいい。俺は除外ゾーンとデッキから呼ぶことを思いつき、アドバンス召喚軸だったデッキを大幅改築したのはちょっと昔の話だ。

 

「ならばこの勝負は俺の勝ちのようだな……ふっふっふ」

 

「そして無効化は墓地までは及ばねぇ、墓地へ送られた竜魂の城の効果発動!除外されてるタイラントドラゴンを選択して特殊召喚するぜ」

 

 俺がそう言うと次元の裂け目からタイラントドラゴンが飛び出してきた。先ほどからいるタイラントドラゴンの隣に地響きとともに着地し咆哮した。

 

 

タイラント・ドラゴン:ATK/3700

 

「んじゃとどめだな。タイラントドラゴン、おっさんにダイレクトアタック!タイラントバースト!」

 

 その命令を受けたタイラントドラゴンは熱線を放つために自らの体温を上昇させる。

 

「甘いな!《次元幽閉》発動!消え去れタイラントドラゴンよ!」

 

 おっさんに向けて口を開こうとしたタイラントドラゴンの眼前に次元の裂け目が出現する。裂け目はタイラントドラゴンを周囲の大気ごと吸い込もうとする。

 

「俺の話を聴いてなかったのかよ?タイラントドラゴンの効果により次元幽閉の効果を無効にし破壊する!暴君の圧倒《タイラント・オーバーウェルム》!」

 

 突如現れた次元の裂け目に対し、タイラントドラゴンは雄叫びを上げた。すると次元の裂け目にヒビが入り、ぼろぼろと崩れていく。

 

「馬鹿なのは貴様だ!その効果に対しカウンタートラップ発動!」

 

 おっさんがしたり顔でデュエルディスクについているボタンを押す。だがカードは発動せず、明らかなエラー音にしか聞こえない電子音が聞こえるだけだった。

 

「……ん?おかしい、なぜ発動せんのだ?」

 

 まさかこのおっさん、タイラントドラゴンの効果に対してカウンターカードを使うつもりだったのだろうか。ならば教えてやることにしよう。

 

「ああ、タイラントドラゴンの効果にチェーンブロックを組むものは存在しないぞ。それが天罰みてぇなカードなら発動できねえから」

 

「なんだとぉ!?」

 

 二回攻撃と罠無効は永続効果、墓地からの特殊召喚にドラゴンのリリースを要求するのは効果外テキストである。跡形もなく崩壊した次元の裂け目を見届けたタイラントドラゴンは、おっさんに向け大口を開ける。

 

タイラント・ドラゴン:ATK/3700

 

おっさんLP:0

 

 放たれた熱線を浴びたおっさんは大きく吹っ飛んだ。

 

「うわあああぁぁぁぁぁ……」

 

緑丘 大黒vs三伏 修

 

Winner:三伏 修

 

 

 デュエルディスクにデュエル終了が表示され、俺の名前とおっさんの名前まで表示された。いやいやいや、いくらなんでもハイテクすぎだろこれ。まるで本物……へぇ、戦闘履歴なんてものもあんのか。便利すぎだな。まあ勝ったからにはこいつには交番へ行ってもらおう。犯罪者は、面倒だからその道のスペシャリストに丸投げしよう。

 

「んじゃ約束だ、俺と交番まで来てもらうぞ」

 

「くっ、まだ俺は捕まるわけにはいかん!」

 

 おっさんはそう言うと驚異的な早さで立ち上がり、背中をこちらに向けると走って逃げ出した。「さらばだ少年よ!」と叫ぶその背中はどんどん小さくなっていった。

 

「んだよ、デュエリストがデュエル関係の約束破ってんじゃねぇっつーの」

 

 次見つけたら絶対に交番へ連れて行くと心に堅く決めた。だがちょっと疲れたのでもう帰ろうかな。俺はそう考え公園を後にした。

 

 公園の出口で見かけたのは何の変哲もない事務所だ。以前から建っていたものだ、何の問題もない。だがそのビルの看板に書いてある文字が信じられなかった。

 

「デッキビルダー派遣事務所……だと!?」

 

 全力で見なかったことにした俺は帰り道を急ぎ足で歩いた。だが頻繁に聞こえてくるのは『デュエル』という単語。看板に書かれているのは『デュエリスト急募!』の文字。挙げ句の果てには歩道でデュエルディスク着けたカップルがいた。これは明らかに異常だ。まさか、世界の常識が書き換えられてしまったのか?

 

『誰のせいで?』

 

『どうやって?』

 

『いつの間に?』

 

 絶対に許さねぇ!ドン・サ……のせいではないだろう。余計なことは考えず家へ戻ることにしよう。

 

 

***

 

 

 家へ戻り色々調べてみたら頭が痛くなってきた。検索エンジンの上位は『デュエル・モンスターズ』とその関連ワードが独占。夕飯食いながら見ていたニュースの内容はプロデュエリスト紹介、プロリーグ詳細、天気予報だった。資本主義国家よ、それでいいのか。

 

 「親父、お袋、ちょっといいか?」

 

 両親に『デュエルモンスターズなんていつの間に流行り出したんだ?』と聞いてみたら大笑いされてしまった。両親が言うには、俺が生まれる前から政界・財界・デュエル界というものが存在していたそうだ。

 

「はぁ、わけわかんねぇ……」

 

 部屋に戻っていた俺は頭まで布団を被りながらそう漏らす。もしかしたらこれは悪い夢であり、起きたらいつも通りの日常が待ってるのではないかと淡く期待していたら瞼が重くなってきた。俺は『明日はいつも通りでありますように』と願うと瞼を閉じて意識を手放した。




初デュエルの相手はまさかのおっさんでした。
美少女とどちらがいいか真面目に悩んだのですが、おっさんにしました。
遊戯王の最初の対戦相手の切り札は基本的に攻撃力3000なのでベエルゼ様に登場して頂きました。
第二話でまたお会いしましょう、それでは。
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