口調エミュちゃんとできてないまま書きました。直す可能性はあります。
00
「心臓ドクン病? なにそれ?」
場所は公安。デンジは学校に出現した悪魔討伐の報告をナユタへしていたのだが、最後にふと気になったことを聞いてみた。
学校で女の子にお礼を言われて心臓が変になったというとナユタは不機嫌そうにしたが、母親が心臓の病気で血を吐いて死んだ話をすると、また少し不機嫌さの質が変わった。
「自分のモノの面倒はちゃんと見ないと……」
「だからオレは──」
文句を言うより先に、ジャラリと鎖がデンジの胸を突き抜けて
「おい、ナユタ?」
「…………なるほど……」
「えぇ……やっぱり病気かぁ?」
「いいえ。病気じゃない……いや、病気かも」
「どっちだよ」
チェンソーマンを格下とは思えない。ただ、存在しない相手だからこそ記憶を読める。ナユタ本人もそのあたりの理屈はわからないのだが、チェンソーマンの存在がいなくなっても、チェンソーマンの心臓が残っているために起きた現象……
心臓が残っていたのか、何かのきっかけで復活したのかまではわからないが。
01
「それで? 未来の悪魔と契約した囚人たちは全員、7月に死ぬと?」
「そ! 本当は部外者に話しちゃダメだけど」
「お姉ちゃんにならいいんじゃない?」
キガちゃん……その正体は死の悪魔。
チェンソーマンが自らを食べる前の世界で、ナユタは死の悪魔をどう認識していたのかはわからない。飢餓の悪魔だと思っていた可能性のほうが高いだろう。
事実、彼女は死の悪魔ではなく、飢餓の悪魔を名乗った。
「私の目的は世界が変わっても、変わらない。7月のノストラダムスの大予言を止めること」
「そのために三鷹アサ? って人間を瀕死に追い込もうとしたわけ?」
「上手くいくと分かっているから。核爆弾も第二次世界大戦も吐き出さずに彼が消滅した以上は、戦争の悪魔を育ててうまくいくかはわからないけど」
「……? かくばくだん?」
「気にしなくていい。第二次世界大戦はどうしようもないけれど、核爆弾はアメリカが作るから」
核爆弾……その名を冠する悪魔の力のほどはわからない。だが、核爆弾が復活した世界の戦争の悪魔の強さはチェンソーマンに匹敵していた。
それで予言に対抗しようというのは確かに、死の悪魔の考えも理解できる。
「……」
「支配? 老いの悪魔についてだけど」
「接触には成功したらしい。ただ──」
「いや、今の戦争だと役者不足にもほどがある」
読み取った記憶を探る。
「老いの悪魔を支配できるかやってみる?」
「できないよ」
ナユタの提案に、死の悪魔はバッサリと否定したが、実は勝算があった。
老いの悪魔はほんのわずかであってもデンジに対して少しビビってた。ナユタはデンジにビビったりしないから、ナユタのほうが格上なのだ。
少なくともナユタはそう思っている。
03
「前の世界では、岸辺隊長は私に対抗したらしい」
「……それを本人に話してどうするつもりだ?」
「今でも、私を排除しようと思う?」
岸辺に取らせた高級料亭。死の悪魔とは別のやり方で人間の世界を守るとすると、妨害される可能性がある。場合によっては、デンジが殺されてしまうかもしれない。
チェンソーマンが復活することは、必ずしも歓迎されるとは限らないのだから。
「お前が──」
「人間様の味方でいる内は見逃してやるよ?」
岸辺が言うであろうことを先んじて言うと、ほんの僅かにため息を吐いて、
「今の話が本当だったとして」
岸辺がメモ帳を取り出そうとするのを止める。
「会話は誰にも聞かれてない」
「そうかい。チェーンソーマンとやらの力が本当にあったとして……ナユタの読み取った記憶だと死の悪魔を捕食したみたいだが」
「私も分からないけど! チェンソーマンは食べるべき存在をきちんと判断していたみたい。戦争の悪魔に対抗するために一時的に死の悪魔を食べたんだと思う。死は、自分を食べる前に吐き出したんだ」
老いの悪魔にどれほど追い詰められても、老いの悪魔を食べることはしなかった。支配という存在も食べず、戦争は削っても消さない。
「それこそ、チェーンソーマン? の記憶を見たんじゃなかったのか」
「前の世界のデンジが見たものを見ただけ。チェンソーマンが何を考えていたのかはわからないし、デンジと契約してからのことしかわからない」
それだけデンジがチェンソーマンにとって大切な存在だったのかもしれない。チェンソーマンを消すことが正しいとは思えないが、結果としてデンジは普通の人生を歩み始めた。
チェンソーマンにならなければ、きっとあのデンジは幸せになれなかった。チェンソーマンがいたから、夢を見ることができた。
チェンソーマンが存在しなければ、デンジは普通に生きられた。
「それで? 死の悪魔の対処はどうするつもりだ?」
「それが……そもそも7月に何があるのかデンジの記憶を見ても分からない。死の悪魔が考えていた作戦? それもデンジがパンツに夢中で聞いてなかったし」
「……パンツのせいで人類が滅んだら笑えないな」
04
三鷹アサは自室でうずくまっていた。
「アサ! なんかわからないけど! なんかわからないから外に行け!」
「意味が分かんない!!」
正義の悪魔とやらに体を乗っ取られた委員長に殺されたかと思うと、戦争の悪魔を名乗る存在に体を半分乗っ取られてしまった。
思ったよりは可愛げがある悪魔なのだが、朝から晩までうるさい。
曰く、何かに大事なものを奪われたから何とかしないといけない。
何か、体の一部のような何かが、なにかなにかなにか。
まったく要領を得ないのに、行動をしたがるから手に負えない。
あまりに騒ぐので適当に外を歩き回ることにした。
いつもの学校までの道を行き、夜だから誰もいないと思っていたのだが、思った以上に人通りがあった。
「アサ。急いで逃げろ」
「は? 急に何? 逃げろって何から?」
「人間から! 身体を貰うぞ」
意識が身体から押し出されたと思うと、体の制御を戦争の悪魔に奪われていた。
跳躍と同時に、刀が振り落とされた。手首を取り、捻り、落とした刀を拾う。
「日本刀ハリセン」
即座にギラギラと金属質なハリセンに変わる。頭を叩きつけて、背後から鉈をもって近づいてきた別の男を蹴り飛ばす。
「な、ナニコレ!?」
「人を殺すとアサがうるさそうだしな」
落とした武器を拾い、殺傷力のない武器に変え。
「キリがないぞ!?」
何人も何人も襲い掛かってくるのだ。
倒す、襲われる、倒す、襲われる。武器を変えて逃げて、倒す、また襲われる。
「戦争の悪魔のことがバレたってこと!?」
「……まった、何か、下からくる!」
アサの質問をあえて無視して。今この状況でアサの協力を失うのは避けたかった。
ただ、下から何かが高速で近づいてきているのも本当だ。
コンクリートが割れて鋭く触腕が伸び、戦争の悪魔の足に絡みつく。地下、おそらくは下水道に悪魔が潜んでいたのだろう。
上着を思いっきり引き裂いて。
「寝間着ソード!」
絡みついた腕は……
「タコ?」
「戦争の悪魔……ヨルちゃんだっけ?」
「誰だ?」
「覚えていないのか。支配でも覚えていなかったから仕方ないか」
ピアスを多くつけた、学生服姿の男。武器の類は持っていないが、戦争の悪魔の動きを警戒するようにタコの足が学生を包んだ。
「あ、あの人……前にデビルハンター部にいた……吉田ヒロヒコ!」
となりでおびえた様子のアサだったが、知人らしく少し落ち着いた。
「吉田ヒロヒコ?」
「ヒロフミなんだけど」
05
前回とはまた違った形で戦争の悪魔に力をつけさせる必要があるが、核爆弾の開発は順調だと聞く。
アメリカとソ連の戦争が起きれば、落下の悪魔にすら負けないほどの力を手に入れられるだろう。
それまではしーちゃんに支配下に置いた方が無難。吉田ヒロフミのやるべきことは、三鷹アサの両手を潰し追いつめること。
戦争の悪魔はまだ、触れずに武器に出来ないはず。
逃げる戦争の悪魔を追いかけながら、ふとデンジのことを思い出す。
「デンジ君には少し、かわいそうなことをしたかな?」
今頃は、三船フミコになっているはずだ。
そろそろ「彼女」から完了の連絡が来てもおかしくない。
邪魔をするであろう支配の悪魔と、血の魔人には任務が与えられ、岸辺隊長も休暇で北海道にいるらしい。
順調。順調なのは今この瞬間もそうだ。
蛸の足が三鷹アサを……戦争の悪魔を袋小路に追い込んだ。
あとは蛸で両手を奪い、拘束する。
「あまり痛い思いをさせたいわけじゃないんだけど」
コンクリートの破片をナイフに変えて投げてきたのを掴み、蛸に指示を出す。
その瞬間、三船からの連絡が入ってきた。
「先輩! 失敗しました! 支配の悪魔が、デンジとセックスする予定だった三船フミコを支配したみたいで!」
「は? 支配の悪魔には、別の悪魔が──」
「クァンシです! クァンシが支配の悪魔に対処させる予定だったゴキブリの悪魔を殺してっぁっ」
ガチャンと何かが壊れる音がして、通話が切れた。
「……やられたな」
支配の悪魔は、チェンソーマンのことを覚えている。
それでもやるべきことは変わらない。
不測の事態に備えて、すでに三船フミコの許可は取っていた。
「蛸。三船の心臓を三つやる。丸吞み」
即座に蛸の巨体が顕現し、唖然とした様子の戦争の悪魔に向かう。
夜空に花火が咲いた。
光に目を向けると、連続した爆発が遠くから直上にまで続き、人影が落ちてくる。
「あああぁっ!!? 痛ってぇええええええ!!!!」
血をまき散らしながら、血液色のチェーンソーが腕で回転していた。
「な、なんだそれは!?」
「武器忘れたからよぉ! いつもパワーに武器作ってもらってるから思いついたぜ! ゾンビの悪魔の時! オレん中にもパワーの血があるってなぁ!!!」
両腕から生やしたチェーンソーは蛸の足を割き、暴れ。
「蛸。潰せ」
プチ、と。デンジは蛸の足で地面にたたきつけられた。
「あ……」
戦争の悪魔がやけに悲痛そうに声を零した。三鷹アサの記憶からデンジのことを読み取って、見知った人間が死んだからなのか。つまりは、善良な心によるものなのか、助かると期待してたものが無くなったからなのか。
どちらにせよ、戦争の悪魔からはもう、繊維を感じられなかった。どこか縋るようにヒロフミを見て。今にも命乞いをしそうだ。誰か、まったく見知らぬ人間が通りかかっても助けを呼びそうなほどに弱弱しく。
「いってぇええ……」
驚いたことに、蛸の足の隙間からデンジが這い出てきた。
この世界のデンにジは、右目がない。
今地面に落ちた衝撃で左目もつぶれたらしく、血に交じって白濁した塊が顔を流れた。
チェーンソーを作った両腕はずたずたに割けて、遠からず失血死する。そもそも、普通の人間ならあれで立ち上がれるはずがない。
「……まさか」
ボロボロになったデンジのシャツから、スターターの紐が垂れていた。
「蛸! 丸吞み!!」
ヒロフミが慌ててそう叫ぶのと、まったく同時。
「助けてチェンソーマン」
蛸は確かにデンジを丸呑みにして、しばらく静寂が続く。ただ、ヒロフミには聞こえてほしくない。聞こえるはずのないエンジン音。
蛸が恐怖と痛みに震えたのが分かった。
大量の血を吹き出しながら、両断され。
「思い出したああああ!!! アサとヨルがオレとエッチしてくれるんだったぜぇええ!!」
「は?」
ヒロフミが怯えて、戦争の悪魔が呆けた様子で見つめるその先に。
こうなって
第死《よん》部に続いてほしい
勝ったッ! 第3部完!