ジム巡り?コンテスト?そんなことより観光だ!   作:そじゅ

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最初はこの子でしょ


OP-02 ポケモンに好かれる人

 夢を見た。

 

 前世の夢だ。

 

 なんてことない社会人。

 

 大手でもなく小さくもない会社に勤める社会人。

 

 出社して、疲れて帰って、寝て、出社して。

 

 休みの日はゲームが趣味の普通のオタクな社会人。

 

 でも、ミーハーなものが好きではなかった。

 

 みんながやってる、流行ってるゲームはやる気が起きなかった。

 

 そう、例えば、

 

 ポケモンとか。

 

 ――――――――――――――――――――

 

 久々にこの夢を見た。

 今はカントー地方へ向かう飛行機の中だ。

 

 初めてこの夢を見たのは4歳の時。

 最初は夢だから〜と思ってた。でも妙にリアルだし、知らないものもいっぱいあったから変だなって。

 で、ふと気づく。「あれ?俺ってこんな考え方したっけ?」「俺、4歳らしくなくね?」「ここ、どこ?」

 我ながらめちゃくちゃ怖い。というか本当に恐怖で具合が悪くなって寝込んだ。さすがに父さんに心配され、研究所からすっ飛んで帰ってきてくれたのを覚えてる。あの時は本当に申し訳ないことをした。

 

「どうしたレイン、渋い顔してるぞ」

「ん?いや、なんでもない。」

「……ハハァン、マオちゃんのこと考えてるな?モテ男はつらいな!」

「父さん、声デカイ。隣の人睨んでるよ」

「……申し訳ありませんでした」

 

 基本的に放任主義な父さんは別にネグレクトしてるわけではない。家にいる時間が少ないが、一緒にいる時はよく話すし、遊んでもくれるいい父親だ。普通に尊敬してる。

 

 そんなことより夢の話だ。

 あれが夢であり現実でもあると気づいたのは回復してすぐだった。

 だって、テレビにピカチュウが映ってるんだもん!あんな可愛い頬袋は忘れない!凛々しい姿で徒競走のコースのようなところをビュビュビュっと走ってる!それがもう堪らなく…………うむ、そういうことだ。

 さすがの俺もピカチュウは知ってる。ポケモンをやったことがないという絶滅危惧種に指定されそうなオタク日本人の俺でもピカチュウくらい知ってる。

 伊達にオタクはしていなかった。ある程度の情報は入ってくる。

 

 例えば、

 赤緑のリメイクはFRLGである、だとか。

 赤緑の2年後の話が金銀である、だとか。

 大誤算がチャンピオン、だとか。

 ポケモン世界の創造主はアルセウス、だとか。

 ポケモンに育てられた少年がいるらしい、だとか。

 メガシンカってなんかややこしそうなやつがある、だとか。

 なんか地方によって姿が違うポケモンがいる、だとか。

 剣と盾を持った犬がおる、だとか。

 嫉妬深い手品師みたいな猫のポケモンがおる、だとか。

 

 噂くらいは聞く。

 なにより、それぞれの時代は繋がってて、時系列が違うというのをきいたことがある。

 じゃあこの時代はどの時代なんだろうか?赤緑?金銀?なんだっけ?アクアマリンだっけ?あ、ガーネットか!(※違います)

 

 なんにしても、俺には関係ないことか。と思ったんだけど。

 カントーに行くってなると話が変わってくる。

 そう!数少ない俺の知っているキャラ!

 

 レッドさんに会えるかもしれないのだ!

 

 

 ゆーて、これまでも見たことあるような、ないようなキャラに会ってきたけどね……

 

 ――――――――――――――――――――

 

 到着。長かった。どんだけ田舎だマサラタウン。

 

 というか飛行機乗って1回ジョウト行ったよね?そっからリニア?カントーって関東モデルでしょ?ないの!?空港!?

 

「いやぁ、長旅お疲れさんレイン。今日からここが君の城になる!」

「マジで父さん帰ってこない前提で話してるな」

「……すまん、父さんは研究の虜なのだ。許せマイサン」

「はいはい、自分の人生楽しんでくれ」

「さすが!よくわかってる!まぁでも、今回は本当に長くなるだろうし、お前が10歳になって旅に出るまでいるかもしれないな」

「じゃあ1年半もいる可能性があるのか、ここに……この……田舎に……」

「……おいおい、いいだろう!?ここは自然豊かで、ポケモンだっているぞ!」

 

 この世界は10歳で1人前と認識される。つまり、正式に自分のポケモンを連れて歩けるのは10歳からだ。

 だが、俺は8歳になって半年くらい。まだ自分のポケモンを持っていない。外に出て野生のポケモンがいる場所へ向かうのは危険である。

 

 ちなみにリザードやトゲデマルと一緒にいたカキやマーマネは、親登録を自分の父親や母親にしてもらい、10歳になったら晴れて自分に譲渡される形になる。

 

「……まぁ言いたいことはわかる。だがよく考えろ。ここにはあのオーキド博士の研究所があるのだ!ということは…」

「いろんなポケモンに会える!!!」

「……お、おう、急に元気になったな、父さん嬉しい」

 

 そうか!アニメで少し見たことあるぞ!オーキド博士の研究所には大きな庭みたいなところにいっぱいのポケモンが!!ケンタロスの群れ!ポッポにピジョン!そしてカントーと言えばピカチュウ!会えるかな!?会えるよな!?会わなきゃな!?

 

「見るからにテンションが上がってるが息子よ、まずはオーキド博士本人に挨拶しないとな」

「おう!」

「情緒おかしくて父さん少し心配だ」

 

 楽しみだ!

 

 ――――――――――――――――――――

 

「こんにちはー」

「失礼します」

 

 やってきましたオーキド研究所!さぁ!最初に会えるポケモンは……

 

「……ブイ?」

「ん?ブイ?」

 

 奥の方で影に隠れるようにしてこちらを見るあのポケモンは!?

 もしかして!もしかしなくても!イーブイでは!?

 んぎゃわいいいいいいいいいいああああああああああ!!!!!!

 

「……お?おお!君がナリヤが言っていたウェザー博士かね!?よく来てくれた!」

「オーキド博士でいらっしゃいますか!?お噂はかねがね!こうしてお会いできてとても光栄です!」

「いやいやこちらこそ!ウェザー博士は地方によって異なるポケモンの特徴について研究してるのでしたな!とても興味深い!」

「私の研究にも関心を抱いてくださっているとは…感動です!」

「ここではなんですから、奥で話しましょう。おや?そちらは?」

「ああ、この子は私の息子のレインです。ポケモンのことが大好きなので挨拶も兼ねて連れてきました」

「そうかそうか、レイン君、ポケモンが好きかね?」

「はい!!!!」

「ほぉ、とても元気でいい返事じゃ」

「こんな元気なレイン久々に見たよ父さん」

 

 そんなことより後ろでコソコソしてるイーブイが気になる。好奇心は隠せないようでチラチラとこちらを見てくるけど、初めての見た人で警戒してるのかな?なんか声も弱弱しいし、少し震えていて怯えてるようにも見える。

 

「うん?おお、そうか!あのイーブイは初心者トレーナー用の1匹じゃ」

「初心者用ポケモン?」

「レイン君も10歳になったら旅に出るんじゃろ?その時に渡す最初の1匹は地域ごとの担当者が選ぶんじゃ。今回選ばれた中の1匹があのイーブイじゃな」

 

 そんな制度があるのか。あれか?前世で友達が言ってた御三家ってやつか?でも、『ほのお』と『みず』と『くさ』タイプだったような?まぁ、全てがゲーム通りってわけじゃないか。

 

「で、今年の初心者トレーナーは既に全員旅立ってしまっての。あのイーブイは最後に残った1匹となった」

「え?」

「どうやらトレーナーの数の計算にミスがあったようで1匹余ってしまったんじゃよ」

 

 そうか、怯えているというより落ち込んでるのか。

 ふむ……

 

「……おい!今あのイーブイはトレーナーに選ばれずに落ち込んでおるのじゃ!あまり刺激しないでくれ!」

「レイン?」

 

 少しだけイーブイに近づいて床に座る。

 ジーッとイーブイを見る、優しく、でも力強く、目を離さない。

 イーブイもこちらを見ている。お互いの視線が合う。一瞬かもしれないけど、今2人の間には何分何時間かにも思えるようなほど時間がゆっくり進んでいる。

 イーブイは落ち込んで、人に怯えて、二の足を踏んでいる。でも、確実に1歩踏み出そうとしてる。あとはその勇気に後押ししてあげるだけ。

 

「……おいで」

 

 できるだけ優しく声をかけてあげる。

 声を聞いたイーブイはビクッと一瞬反応するもまだ動けない。でも逃げない。

 

「……ふむ、これはもしかして」

「オーキド博士?」

「いや、今は見守っている方がいいかもしれん」

 

 オーキド博士と父さんも止めずに見てくれている。

 

 ふとイーブイがこちらの顔を見てきた。俺は優しく微笑んでやる。怖くないよって。

 ついに勇気が出たんだろう、ゆっくりとこちらへ歩いてきた。

 

「うん、大丈夫。俺は君の味方だ」

「………………ブイッ!」

 

 あぐらをかいていた俺の足の隙間にスポッと収まった。んぎゃわい……まてまてまて、今暴走するな、まだ我慢だ俺。

 

「可愛いなぁ…よしよし、いい子だなぁ…大丈夫、君は選ばれなかったんじゃないよ、君は君の人生(ポケモン生)を生きるためにあえて旅に出なかっただけだよ。君の冒険は君が決めていいんだ。君の物語の主人公は君なんだから」

「ブイブイ…」

 

 それにして感動だ……イーブイの毛ざわり……めちゃくちゃ柔らかい……きもちいい……意識が飛びそうだ……

 

「……す、すごいですな。あのイーブイはトレーナーに選ばれずに残されたことで落ち込んでおった。元はこちらのミスでもあるし我々で育てようと思っていたんじゃが中々心を開いてくれなくてのぅ……」

「レインは昔から人やポケモンに好かれますから。もう特殊能力なのではないかと思うくらいに」

「ほぉ、それは……このマサラタウンにも同じようにポケモンによく好かれる子がおるのですよ。最初はその子に頼もうと思ってたくらいです」

「なんと!?それはレインとも気が合いそうですね」

「ええ、ぜひ会わせてあげてください」

 

 オーキド博士と父さんがなんか俺の話をしてる気がするが、そんなことよりこの俺の足の上で気持ちよさそうに寝ているイーブイちゃんが可愛すぎて俺はもうどうにかなっちゃいそうでというか鼻血が出そうなくらいめちゃくちゃ可愛いんだけどこのイーブイちゃんうちに連れ帰っちゃだめかなあわよくば一緒にベッドで抱き合って寝たいくらいなんだけどそして毎日起きて顔合わせておはようの挨拶をして朝ごはんもあ〜んってしてあげたりしてそしてこの毛並みも毎日ブラッシングを………………………………




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