ジム巡り?コンテスト?そんなことより観光だ!   作:そじゅ

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伝説のポケモンではありません


OP-03 伝説に懐かれる人

 

 ポケモン。興味がなかったわけではない。

 むしろ興味津々だった。昔から可愛いものが好きだったからだ。

 

 だからゲームをやらなくてもぬいぐるみやシールなんかはちょくちょく持ってたりした。

 まだオタクに対して厳しい時代は、親から「女の子みたいな趣味やめなさい」なんて言われたものだ。

 

 だけど頑なにゲームはやらなかった。

 何故と言われても、何故かやる気になれなかったと言うしかない。強いて理由を作るなら、周りが大盛り上がりしすぎているから。その会話の輪に入れない陰キャと言われたらそれまでだが。

 いや、友達がいなかったわけじゃない。むしろいっぱいいた。強がりでもなんでもなく事実として。

 でも、何故か昔から流行ってる物には手が出にくかった。なんとかの巨人とか、なんちゃらの刃とか。

 

 でも、この世界に転生して心理を知ってしまった。

 何故こんなにもポケモンが人気になったのか。

 

 そりゃあもうこのイーブイのように、こんなにもきゃわいいなら……!!!

 

 ――――――――――――――――――――

 

「レイン」

「…………」

「レインくーん」

「……ハッ!」

 

 ついイーブイの可愛さにトリップしてしまった。妄想の俺はイーブイと公園でキャッキャウフフしているところだった。

 

「ごめん、父さん。どうしたの?」

「だから、そのイーブイの親登録を父さんにしてきたからウチに連れて帰れるぞって」

 

 ウチに連れて帰れるぞ

 ウチに連れて帰れるぞ

 ウチに連れて帰れるぞ

 ウチに連れて帰れるぞ

 

 頭の中でやまびこが発生した。

 

「……な、なんて?」

「レインーそろそろ父さんも怒るぞー、言うの5回目だからな」

「……この子を……連れて……帰れる……だと……」

「聞こえてるじゃん」

「……ゆめ?」

 

 頬を引っ張る。それはもうちぎれるほど。

 

「おいおいおい!やめろレイン!引っ張りすぎて唇切れて血が出てる!」

「ホント?」

「ホントに血が出てるから!父さんが悪かったからやめてくれ!」

「ホントにイーブイをウチに連れて行けるの?」

「そっちかよ!」

 

 父さんの叫び声を聞いてイーブイが起きてしまった。そして俺の顔を見た。最初はニコーと可愛い笑顔だったが、すぐに心配そうな顔になった。あ、ホントに血が出てるわ。

 

「その子があまりにもレインに懐いてたみたいでな。オーキド博士と相談してお前のポケモンにしようって話になったんだ。今更離すのも可哀想だしな」

「……で、俺はまだ10歳じゃないから一旦父さんを親登録したわけか」

「話がはやーい」

 

 そうか、そうなのか。でもそれは俺たちが決めていいことなのか?

 

「イーブイ、君はどうしたい?」

「ブイ」

 

 そう聞くと、いや、そんなこと聞かなくてもそうしてくれたかもしれない。イーブイは血が出た俺の唇をペロッと舐めてくれた。まだ心配そうな顔で俺を見ている。

 

 そっか、俺と一緒にいてくれるんだな。

 

 ありがとう。

 

 でもな。

 

 唇にペロッとって。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

「レイーン!!!」

 

 幸せで気を失う寸前、最後に聞いたのは父親の悲鳴でした。

 

 ――――――――――――――――――――

 

「うん!?レイン君はどうしたんじゃ!?」

「いや、幸せのあまり気を失ったみたいで」

「どういうことじゃ!?」

 

 心配そうに息子の顔を舐めまくるイーブイを見て、ハァとため息をついた。

 

 息子、レインは幼い頃から大人しかった。だが、ポケモンのこととなるとどうも情緒のコントロールが出来なくなることがあるらしい。

 ただそれも息子の個性だし、ポケモンが好きだから故のことだから、そこについては心配はしていない。

 今後この子が持つであろうポケモンたちは、この子からの愛情をたっぷりと注がれ、必ず幸せになるだろうと。そんな未来が確定的だろうと思えるくらいだから。

 

「そ、そんなに嬉しかったのじゃな」

「ええ、まぁ。ただイーブイに舐められたのがトドメだったようですが」

「へ?」

 

 そう、()()()心配していない。

 私が心配しているのは、ポケモンが好きすぎて一線を超えてしまわないか……頼むぞマイサン、歴史に名を残すなら真っ当に残してくれよ……!

 

 ――――――――――――――――――――

 

 ……ん

 知らない天井だ。

 

「ブイ!」

「……イーブイ?」

「ブイブイ!」

 

 どうやら俺はあまりの幸福に気を失っていたらしい。俺が起きたことが嬉しいのか、イーブイは俺のお腹の上でぴょんぴょん飛び跳ねている可愛い。

 というか、ベッド?ここどこ?

 

「気がついたようじゃの」

「えっと、オーキド博士?」

「うむ、意識もハッキリしておるようじゃ。よかった!」

「あの、ここは?」

「ここはオーキド研究所じゃよ。出入口で気を失ったまま放置するわけにもいかんからの。奥に移動させたのじゃ」

「……あー、ありがとうございます。ご迷惑おかけしました」

「ええんじゃ、イーブイを元気にさせてくれたしの!」

「ブイー♪」

 

 オーキド博士の話を聞いている間もイーブイは俺の体から離れなかった可愛い。体をスリスリと俺に擦り付けてきて、先程までの落ち込みようが嘘のようである可愛い。

 

「さて、ウェザー博士との挨拶も一通り終わったから今日はもう帰りなさい。イーブイにも家を見せてあげた方がいいだろうし」

「はい、ありがとうございます。ん?あれ、父さんは?」

「ああ、ウェザー博士はさっそく私の研究所で資料を漁っとるよ……レインなら1人で問題ないと言っていたが、大丈夫かね?」

「あーなるほど。はい、いつも通りなので」

「それもどうなんじゃ」

 

 では今日は帰りますか。今後またここに来ていろんなポケモンを見せてもらえる機会があるだろうし。

 

「今日はありがとうございまし「じいさん!連れてきたぞー!」ん?」

「あ!あの子を呼んだの忘れておった!」

 

 なになに?え?もしかして?

 

 ――――――――――――――――――――

 

「じいさん、ここに居たか」

「こんにちは……」

「おじゃましまーす!」

 

 さすがにゲームをやったことのない俺でも知ってる。

 ツンツン頭の子がグリーン。

 落ち着いた雰囲気の男の子がレッド。

 あと……女の子はわからん。

 というか、俺が知ってる容姿より少し幼いか?

 

「あー!イーブイだぁー!」

 

 女の子の方が、俺が抱き上げているイーブイを見つけて走って近づいてきた。イーブイも自分が見られていることに気づいているようで俺の腕の中で丸まってしまった。

 

「まてまてまて、そんなにがっついたらイーブイがびっくりしちゃうよ」

「えー!でもイーブイ可愛いからー!」

「……そっか、君は可愛かったら怯えさせてもいいと思うんだね」

「あ……いや、違くて……その、ごめんなさい」

 

 しょぼんとしちゃった。わかってくれたならいい。

 俺は女の子の頭に手をおいて優しく撫でた。

 

「次から気をつけようね、ポケモンだって感情があるんだ、こっちがちゃんと接してあげたら答えてくれるよ」

「……うん!」

「イーブイ、この子はもう大丈夫、怖くないよ」

「……ブイ?」

 

 首を少し動かし女の子の方を見るイーブイ。まだ他の人には気を許しきってないみたいだが、先程のように極端に怯えることはないようだ。

 

「……イーブイ、驚かせてごめんね」

「……ブイ(コクリ)」

 

 可愛い。

 

「あの、撫でてもいい?」

「どうするイーブイ?」

「……ブイ」

 

 イーブイは頭を女の子の方に向けた。これはあれだな。ちゃんと謝ってくれたから、少し信用したって感じなんだろうな。

 

「いいってさ」

「!」

「優しくな」

「うん!うわぁ、かわいい!やわらかーい!」

 

 うんうん、わかるぞ少女よ!この触り心地は天国に行くようだよな!

 

「なんかリーフがまた暴走したと思ったらすぐ鎮火したな、珍しいこともあるもんだ」

「……」

「お前はお前で相変わらず無口だな」

 

 どうやらこの子はリーフというらしい。知らないキャラだ。

 そしてなんかレッド君(らしき人)はこちらをジーッと見てくるが、なにかあるんだろうか?あ、レッド君もイーブイを撫でたいのかな?

 

「どうしたの?」

「ん?お兄ちゃん?なんでこの人のことジーッと見てるの?」

「……」

 

 え?無言のまま近づいてくるの怖いんですけど。なんかただでさえ迫力あるのに。というかお兄ちゃん?レッド君(らしき人)の妹なの!?

 

「あの……」

「ん?」

「なまえ……」

「え?あー、俺の?」

「うん……」

「俺の名前はレイン。今日からマサラタウンに住むことになったんだ」

「レイン……ボク、レッド……よろしく……」

「お、おう、よろしくね」

 

 なんかよくわからんが、イーブイじゃなく俺に興味を持ったらしい。リーフを叱ったからかな?

 

「お前が真っ先にポケモンじゃなく人に興味持つの珍しいな。あ、俺はグリーン!この街に住むならたぶん近所だな!」

「私はリーフ!レッドお兄ちゃんの妹なの!さっきはごめんなさいっ!」

 

 うんうん、なんか3人ともちゃんといい子そうだな。よかった。

 それにしてもレッド君は貫禄あるなぁ……たぶん俺の今の歳とそんな変わらんよな?さすが将来伝説のトレーナー。赤緑の主人公は伊達じゃないね。

 

「そんなに人に懐いてるポケモン初めて見た……すごい……」

「俺はお前がそんな長文喋るとこ久々に見たよ」

「レイン君すごいよね!私尊敬しそう!」

 

 まぁ、みんな近所になるみたいだし、これからいっぱい会う機会があるだろう。今日はこれくらいにして、後日また挨拶に行こう。

 

「ごめんな、今日はもう帰るところなんだ。また後日あらためて挨拶にさせてもらうよ」

「おう、そうか。じゃあまた今度な」

「またねレイン君!イーブイ!」

「まって……」

「へ?」

 

 なんかレッド君に呼び止められたんだけど。なに?俺悪いことした?

 

「ど、どしたん?」

「おしえて……」

「へ?」

「どうするの……?」

「なにが!?」

 

 難解系男子っすかレッド君!?

 

 ――――――――――――――――――――

 

「ふぁぁ!オーキド博士!とても有意義な時間を過ごせました!ありがとうございます!今日はそろそろ失礼しようかと……ん?」

「ああ、ウェザー博士。それはいいんじゃが……」

「子供たちで集まって何してるんです?」

「先程話したマサラタウンにいるポケモンに好かれる子というのが、今レイン君に話しかけてるあの子、レッド君じゃよ」

「あー、元々イーブイを任せてみようとお話してた」

「そうじゃ。その話をするために今日呼んだんじゃが、その前にレイン君に懐いてしまったじゃろ?」

「ええ。それで揉め事にでもなってしまったんですか?」

「いや、レッド君はそこまで短絡的ではないわい。むしろレイン君にとてつもなく懐いていることに興味を持ったようでの。どうしたらそんなにポケモンと仲良くなれるのかとレイン君に詰め寄って、議論が大盛り上がりしてるところのようじゃ」

「ハハハ!なるほど!」

「笑い事じゃないわい……君が資料を漁っている間ずっとあの状態なんじゃぞ……?」

「ハハ……え?もう数時間経ってますが?」

「だから笑い事じゃないと」

 

「すごい……レインさん……」

「レッドもすごいよ。こんなにポケモンのこと想えるなんて。才能なんて言葉じゃ物足りないくらいだ!」

 

「これ、止めないと止まらないですね」

「気が合うとは思ったが、レッド君があんなにレイン君に懐くとは……」




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