マサラタウンに来て1年と半年が経とうとしていた。
たしかに他の地方にいた時と比べてこの地方にいる期間は長い。俺もそろそろ10歳になり、旅に出られる歳になる。そうすると父さんについて行くことなく、自分の足でポケモン世界を巡ることができるわけだ。
また会うと約束した人達、ポケモン達にまた会いに行ける。そして様々な地方を観光できる!
ん?ジム?殿堂入り?あんまり興味がない。
観光スポットを見に行ったり、その場所にいるポケモン達と戯れたり、ご当地の美味しいご飯を食べたり、イーブイとキャッキャウフフしたり、そっちの方が重要だろ!
「で、もう1回言って?」
「いや、その、あのなレイン。怒らないで聞いてほしいんだけど」
「父さん、前置きはいいよ。もう1回言って?」
「めっちゃ怒ってる!(泣)」
どうやら俺は旅に出られないらしい。
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「えー!?レイン君と一緒に旅するの楽しみにしてたのに!」
「いや、どちらにしても一緒に旅はしないだろ」
「さみしい……」
あの後、父さんにあらためて簡潔にしっかりと聞いた。
来月ホウエンに行くことになったと。
「いや、すまん。俺も昨日聞かされてびっくりしてる」
「まぁしょうがねぇよ!一生会えないわけじゃないしな!」
「なんか嬉しそうだなグリーン」
「そんなことないぜ〜?」
「グリーン……レインさんに勝ったことない……だから……ライバルが減って助かると思ってる……」
「おいレッド、久々の長文それかよ!」
「うぅぅ……レイン君ホントに行っちゃうの?」
「10歳になってからならなんとでもなるんだけどなぁ、その前にここを発たなくちゃいけなくて」
「嫌だぁ!レイン君と離れたくない!」
「おー、女泣かせだなぁレインは!」
「茶化すな」
でもたしかに、俺の旅の始まりはカントーだと思ってたからなぁ、リーフの気持ちもわからんくもない(1ミリもわかってない)
「じゃあ予行練習でプチ旅行でもするか?」
「「「え?」」」
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「というわけですオーキド博士。一緒には旅に出ることができないので、ここを発つ前にみんなでトキワの森にピクニックしようかと」
「なるほどの。いいんじゃないか?もちろん引率者はおるんじゃろ?」
「ええ、ナナミさんがついてきてくれるそうです」
「ナナミか。なら安心じゃな。気をつけて行ってくるんじゃぞ」
「はい」「ああ」「はい……」「はい!」
グリーンのお姉さんであるナナミさんに引率してもらう約束をして、オーキド博士から許可ももらった。うちの父さんは「いてら~」くらいだった。
グリーンの家に向かい、ナナミさんと合流する。相変わらずナナミさんのピッピは愛らしい...ギネス級だと思う。指を上にあげてる姿なんて!その指にしゃぶりつきたくなるような…
「レイン君?大丈夫?」
「…はい、大丈夫です。ありがとうございますナナミさん」
このトリップする癖は治らないかもしれない。
「あらためて今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします……」
「お願いします!」
「頼むぜ姉ちゃん」
「ええ、まかせて!私も久々のピクニックではりきってお弁当なんか作っちゃった!」
それはとても楽しみだ。ポケモンコーディネーターでもあるナナミさんが作る料理だ、ポケモンも人も喜ぶもの満載だろう。
さてさて、準備は大丈夫かな?うんうん、リュックの中身はばっちりだ。傷薬も持った。
「ブイ!」
「おっと」
イーブイも俺の肩の上に乗って楽しそうにしている!あぁぁぁんぎゃわいいいいい!!!
よし整った!いろんな意味で!
「みんな準備は大丈夫?じゃあ行きましょうか!」
こうして俺たちはマサラタウンを出た。これが俺たちの旅の第一歩となるのだろう。そんな気持ちで。
もちろん日帰りです。
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1番道路を抜けて、到着したのはトキワシティ。
ここまで来るのはみんな初めてではない。よく来ると言うほどでもないが、マサラに一番近い街ということもあって、何回か来たことがある。
「さて短い道のりではあったけど一度ポケモンセンターに寄っていきましょう」
「えー!俺疲れてないぜ姉ちゃん?」
「あら、街に着いたらポケモンセンターに寄る。これは癖にしといた方がいいわよ?あなたが疲れてなくても、ここまで頑張ってくれたポケモンたちを少しでも休ませてあげなきゃ」
「ちぇー」
いい考え方だな。確かにポケモンたちを休ませるのもそうだが、新しく来た街でポケモンセンターの場所を把握するためにも行っといたほうがいいだろう。何かあってからじゃ遅いしな。
それに基本的に旅に出た時に泊まることになるのはポケモンセンターだ。今後お世話になるかもしれないところに挨拶に行くという意味でも正解なのだろう。グリーンは不服そうだが。
ナナミさんはそこらへんの説明をレッドとリーフ、ついでにグリーンにしている。
「……だから最初はポケモンセンターに行っといたほうがいいのよ」
「はぁい!」「はい…」「へいへい」
「もう!はいは一回!」
「へぇ~い」
まったく相変わらずだなぁ、それでも仲がいい事はよく知ってるけどね。
そういえばこの街にもジムがあるけど、開いているところ見たことないな。まぁ俺はジムにあんまり興味ないんだけどさ。
……ん?あそこにいる人って、なんか前世で見覚えが…
「……ん?なにかね少年」
「え?あ、いえ、あまり見かけない人だなぁと」
「ふむ、そうか。それにしては私のこと知っていそうな顔をしていた気がするが」
鋭いな、なんだこの人。でも実際は見たことある気がするだけで確証はないので噓は言っていない。
「いや、そんな全身黒スーツの人とか、こんな田舎の方じゃ珍しいですよ?」
「…なるほど、服装に目がいってたのか」
「で?おじさんはこんなところで何してるんですか?ジムの方見てましたけど」
「いやなに、少しジムの様子を見ていただけだ」
「……ここのジム、空いてるところ見たことないんですけど」
「そのようだな。ジムに挑戦したいトレーナーいるだろうに」
「おじさんは違うってことですか」
「……ふふ、君もなかなか鋭いところを突くじゃないか」
「………」
思い出した。この人あれだ。ロケット団の……
「レイン君?おいてくよ~!」
「ほら、お連れさん方が呼んでいるぞ」
「……ええ、失礼します」
「ふふ、君とはまた会う気がするよ」
俺は会いたくないなー。
そういえばイーブイはずっと俺の肩に捕まったまま寝てる。
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「わぁ!キャタピーだ!ビードルだ!虫ポケモンがいっぱい!」
「リーフちゃん!あんまりはしゃいで野生のポケモンを怖がらせたらダメよー!」
「はぁい!」
「かわいい……」
「ああ!可愛いな!そこのビードルなんて一生懸命這って進んでる!健気だ!神秘だ!偉大だ!元気に育って立派なスピアーになるんだぞ!!!」
「ブイブイ!!」
「レインはトキワの森についてからテンションがおかしくなってやがる」
リーフは初めてくるトキワの森に大はしゃぎ。レッドはトランセルを愛でていた。
そして俺は例に漏れず可愛い虫ポケモンたちを見てテンションが上がっているのである!グリーンには毎回白い目で見られる。というかグリーン!お前は可愛いと思わないのか!?
「虫ポケモンは弱くてなー、俺の趣味じゃねぇんだよ」
「バカヤロウ!強いだけがポケモンじゃない!どんなポケモンでも愛情を注ぐのがトレーナーの義務だろうが!!」
「ケッ、言ってろ」
こんなことを言っているグリーンだが、自分のポケモンには厳しくも優しく愛情を注ぐことを知っている。バトルに関しては厳しいので、照れ隠しでもなんでもなく本気で言葉通りに思ってそうなのが怖いところだが、ポケモンの好物も覚えてるし、休憩中のポケモンを見る目は優しい。
「……あんだよ、その目」
「いんやぁ~、なんでもな~い」
「なんか気持ちわりぃからそのジトーっとした目をやめろ!」
「レイン君!一緒に遊ぼ!」
「おー!じゃあレッドも呼ぶか」
「ダメ!二人で遊ぶの!」
「お、おぅ」
「……ニブいやつ」
なんかリーフの勢いがすごくて一瞬後ずさってしまった。さて、何して遊ぶか。
「ねぇねぇ!あそこにいっぱいぶら下がってるのコクーンじゃない!?」
「おお!ホントだっ!コクーンがいっぱいだ!これから進化して立派なスピアーになるんだろうな!」
「……うん」
「ん?どしたリーフ」
「うん、あのね、レイン」
なんかいつにもまして真剣な表情なレイン。さっきまでの大はしゃぎはどうしたんだ?
「本当にホウエンに行っちゃうの?」
「……そうだなー、こればっかりはしょうがない。1人前の10歳になるまでは父さんについていかないと」
「……そっか」
「大丈夫だって。たぶん俺の旅の始まりはホウエンからだけど、そっちの冒険が終わったらカントーに戻ってくるよ。元々カントーからのつもりだったから俺だって旅したいしな」
「そう、そうだよね!これが最後ってわけじゃないもんね!」
お?少しずつ元気が戻ってきたか?
「あのね!レイン!ずっと言いたかったんだけど、言えなかったことがあって」
「ん?なんだ?」
「ありがとう!あの時叱ってくれて!」
「……?」
いつの話だ?リーフを叱ったことなんかあったか?
「初めて会った時、私はしゃぎすぎて失敗しそうになったでしょ?イーブイを怖がらせて」
「ブイ?」
「あー、そんなこともあったなぁ」
「あれからね、気を付けてるんだ、ポケモンにも感情があるって考えるようになって、怖がらせないようにって」
「……そっか、成長だなリーフ!」
「これからはポケモンを楽しませられるように!幸せにできるようにって!全部レインのおかげ!」
そっか、あの言葉でそこまで考えてくれたのか。友達がどんどん大人になっていくのを見るのはなんか眩しいものを感じるな。
「よかったな、イーブイ。あの時のことでリーフは成長できたみたいだぞ」
「ブイ?」
「う~ん!わかってないみたいだけど首をかしげるイーブイも可愛い!撫でちゃお」
「ブイブイ~♪」
「それでね!あのね!」
「ん~?」
イーブイを撫でながらリーフの話に耳を傾ける。
「あの時から……その……レインがね……s「あ!!!!!」え?」
コクーンが進化しそうだ!!
「もう!!!なんで今なのぉ!!!」
「スピアーだぁ!!かっこいいいいい!!」
うお、こっち見たっ!おおおおおお凛々しいよおおおおおおお!!ああ!なんかこっち突っ込んできた!!ハグか!?ハグなのか!?喜んでハグするぞ俺は!!
「ちょ!ちょっとレイン!スピアーがめっちゃこっち来てるんだけど!!」
「よしこい!俺がお前の体を受け止めてやるぞおおお!!」
「危ないよおおおおおお!」
ガシィ!おお!力強い!これがスピアーのたいあたりか!両手の針もしっかりしてて堪らん!こりゃたまりゃんんんんんんん!!
「……えー……なんか心なしかスピアーの方が困惑してるんだけど……」
あの後、あのスピアーとは仲良くなり、レッドも混ざって一緒に遊んだり、イーブイやピッピを含めて一緒にお弁当を食べたりした。みんなのポケモンフーズを頬張るところとか尊い……
マサラに帰る時は寂しくて俺の方が泣いてしまった……スピアー、また会おうな……
「そういえばリーフ、なんか言おうとしてた途中じゃなかったか?」
「……もういいもん!レインのバカ!」
「はいぃ?」
「鈍感……」
「ニブちん」
「青春ねぇ」
「ブイ」
なに?
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あっという間にホウエンへ行く日が来た。
「オーキド博士、みなさん、息子ともどもお世話になりました」
「ありがとうございました」
「またね……」
「それだけかよレッド!……レイン!今度会う時は俺の方が強くなってるからな!」
「おう、レッドも元気でな!グリーンは相変わらずバトル脳だなぁ、俺はそんなにバトル好きじゃないって言ってるだろ?」
「そんな奴に負け越すとか意味わかんねえんだよ!」
「そんなこと言ったって」
「……レイン……グスッ」
「お、おお、リーフや、泣かないでおくれ」
「なんでお爺さん口調なんだよ!涙を返せ!」
「ハハハ!リーフはそうやって元気にはしゃいでる方が可愛くて好きだぞ!」
「なっ!?も、もう!早く行っちゃえ!」
「え?なんで?」
なんか怒られたんだけど?
「おいレイン……毎回毎回お前はどこの地方でも女の子をひっかけてくるなぁ」
「え!?おじさん!それどういうこと!?他の地方にもレインを狙ってる人が」
「しまった!!それではみなさん!またいずれ!!!」
「なんで毎回俺は腕を引っ張られて地方をでなきゃいけないんだぁあああぁぁ!」
「どういうことなのおじさああああああああん!!!!」
こうして一番長くいたと思われるカントー地方を旅立ち、ホウエン地方へ行くことになったのだった。
ホウエン地方も久々だ。ユウキとハルカは元気かなぁ?
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気が向いたら書く小説なので続きが気になる方は気長にお待ちください。