上空。
目には見えないが気配があった。
無垢な気配だ。
その気配は何故か地上をすごく気にしていた。
ある一点を見つめていた。
カナズミシティのとある一角、とある人を。
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着いたぁ〜!ホウエン地方!
カントーでは山!森!一応海……って感じだったが、ホウエンは海!海!火山!海!って感じだな!
そういえばホウエンに行くことは聞いてたが目的を聞いてなかったな。
「父さん、今回ホウエンに来た目的はなんなの?」
「あー、今回はなデボンに呼ばれたんだ」
「デボンって、モンスターボール作ってる会社だよな?」
「そうそう、そこだ。さすがよく知ってるな」
「伊達に父さんの出張に連れ回されてないさ」
「いや、ホントごめんって」
なるほどな、ほんとどこにでも呼ばれるなぁ、器用貧乏な父さんらしいが。
「だからしばらくはカナズミシティにいることになるな」
「了解」
「でも、お前もあとひと月しないうちに10歳だ、ずっとしたがってた旅に出られるようになるなぁ」
「そうだな」
「父さんは息子が独り立ちして嬉しくもあり、寂しくもあるぞぉ!」
「よく言うよ。基本的に放任で、朝起きて夜寝るまで1人のことなんでザラだったのに」
「いや、ホントごめんって」
今日謝ってばっかりだな父さん。
「いいよ。俺のために働いてくれてるのも知ってるから」
「レイン!!」
「今後は家事も1人で頑張ってね」
「レイン!やっぱり行かないでくれ!」
「はいはい、仕事頑張ってね」
なんだかんだ話しながらカナズミシティに到着してた。ここ1年半くらいはずっとマサラにいたからなぁ、大都会に来た気分だ。
目の前にはデボンコーポレーションのビルもあり、最上階を見ようとすると首が疲れそうだ。
「というか、来て早々に仕事か。家は?」
「はい、これ地図と鍵。あとは任せた!」
「……おいおい、ホントに俺が旅に出て大丈夫なのか?」
父さんは住む家の地図と鍵を渡されて、そのままスタタターっとデボンのビルに走っていった。いや、いいんだけどさ。
さて、建物が多いなぁここは。家すぐ見つかるかな?
「地図見ながらでも迷子になりそうだな。家探すかイーブイ」
「ブイ!……ブイブイ!」
「キャッ」
「おっと」
曲がり角を曲がったところで人とぶつかってしまった。俺の方は問題ないが、相手の方は尻もちをついてしまっている。イーブイに教えてもらったのにかわしきれなかった。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ、ありがとう」
手を差し出すとそれに掴まり起き上がる。キチッとした格好で厳格そうな顔つきのツインテールが可愛らしい女の子だった。
「あらイーブイ!可愛いわね!」
「そうでしょうとも!うちのイーブイは世界一可愛いんだ!な?イーブイ!」
「ブイ!」
イーブイを褒められてテンションMAXだぜ!イーブイも嬉しそうに俺に顔を押し付けてくる、愛いやつめ、撫で回してやる!ほれういうい!
「あはは!あなたたち面白いわね!ここらへんでは見ない顔だけど、観光?どこから来たのかしら?」
「ああ、今日ちょうどカントーから来たんだ。父さんの仕事の都合だから観光ってわけではないのかな」
「あら、そうなの?でもお父さんはお仕事でも君は観光できるじゃない」
観光か。そうだなぁ。
バトルへの興味は実はそれほどない。コンテストってのは気になるけどウチのイーブイが優勝するに決まってるし、そんなのめりこむほどでもない気がする。会う人会う人みんなが10歳で旅に出るって言ってたからそれに流されて俺も旅に出たいと言っていたような気もする。
「観光……いいな!」
「ええ!ホウエン地方には見所がいっぱいあるわよ!ぜひ楽しんで!」
元々旅をしながら観光をする予定ではあった。でも目標というか、なにか目的があるかと言われると……友達に会いに行くくらいの目的だった。
そうだな!俺は観光のために旅に出よう!様々なポケモンに会いに行き、その地方の名所を見て、特産品を楽しむ!俺にピッタリな気がする!すごい楽しみになってきた!
「なんか目がランランとしてるわね。観光スポットとか知りたいなら教えてあげるわよ?」
「本当か!?」
「ええ!今日はちょっとこれからスクールに行かなきゃ行けないから難しいけど…なにかあればあそこに来てちょうだい!」
「あそこ?」
女の子が指をさした場所は、どう見てもジムにしか見えないんだが……
「あそこでツツジに会いたいって言えば伝わるから!遅刻しそうだから今日はごめんね!」
「あ、ちょ!」
そう言ってツツジさんは走っていってしまった。
ジムトレーナーとかなのかな?でもスクールに行くって言ってたし、生徒ならジムの誰かの娘さんとか?わからんが、困ったことがあれば頼りにさせてもらおう!
「おっと、家を探さなきゃな」
「ブイ〜……」
「ありゃりゃ、イーブイも疲れちゃったか。早く帰って休もう」
――――――――――――――――――――
無事に家にも到着し、ゆっくり休んで1日経った。結局父さんは昨日帰ってこなかったな。
「ただいまー」
「噂をすれば」
マジでワーカーホリックが止まらない父さんに苦笑しつつ、玄関からこちらへ向かってくるのを見てみると……ん?なんか珍しく大荷物やね?
「おかえり。どしたのその荷物」
「お!これか?これはお前のだ!」
お前のだ!って。急に渡されても困るというか、その荷物の内容を聞いたんだけど?
「いや中身なんだよこれ?」
「旅に必要なもの全般って感じかな?」
「ん?」
そう言われて荷解いて行くと……
「モンスターボールにキズぐすり、これはポケナビ?」
「おう!これでどこにいても父さんと連絡が取れるぞ!」
「キャンプ用品に……ん?リュック?荷物量に対して小さくないか?」
「あー、そっか。そこら辺の説明はしてなかったなぁ」
え?何?なんか俺の知らん情報でも出てくるの?
「まぁ、まずは登録からだ!」
「はい?」
よくわからんうちに父さんがパソコンを繋げてピピピと何かを打ち込んでいく。
「ほいこれ」
「ん?え?これって……」
ポケモン図鑑!?
「旅に出るトレーナーはこれにトレーナー登録することで、いろんな施設を無料で使えるようになる。あとショップのトレーナー用商品が割引になるな、モンスターボールが例だ」
たしかにモンスターボールを買うことが許可されているのはトレーナー登録をしている人と成人を迎えている人、これは聞いたことがある。そもそも成人を迎えていないとポケモンの親登録ができないしな。でも割引もあるのは知らなかった。
「上手く活用しろよー?9割引だからな!」
「は?9割引!?なんだその破格な値段!?」
「だからみんな10歳になったらまずトレーナーになって旅に出るのさ!そこでいろいろ学び、自分のやりたいことを見つける。父さんは研究者だったがな」
「な、なるほど」
全然知らなかった。
「今話したのはフレンドリーショップについてだ。ポケモンセンターについてはもう知ってるな?次はジムだな」
「ジムか。あんまり興味無いんだよなぁ」
「まぁそういうなって。なにかの役に立つかもしれないだろ?」
ジムはトレーナー登録をした人が挑戦できる仕組みだ。地方ごとにジムは基本的に8つ存在し、ジムリーダーとのバトルに勝利すればバッジが貰える。8つバッジを揃えるとポケモンリーグに挑戦できるってわけだ。
「っと、ジムはこんなところかな?」
「まぁ、たぶん俺は挑戦しないぞ?」
「まぁまぁ。あとは定期船とかだな。これは無料にはなるが、許可証やチケットが別に必要になるから注意だ」
「それはどっか別のところで手に入れなきゃ行かんわけだな」
「そうそう、危険地域に行く船とかもあるから、未熟なトレーナーが興味本位で行かないように管理されてるわけだな」
「で?このリュックは?」
「……ふふふ、最近デボンとシルフが共同開発して作られた優れもの!電子工学式多次元収納鞄だ!」
「なげぇ」
字面から想像すると、要はド〇えもんの四次元ポケットか。よく完成できるなそんなん。
「元々構想はあったのさ!ポケモンを転送する時なんか電子に変えて転送してるだろ?それを応用して道具なんかも電子に変えることで小さなリュックに収められるようにするってわけだ!」
「どんな道具でも入れられるの?」
「鋭いなレイン。もちろん無理だ!だが基本的には入れられる。複雑な機械製品や、食料品なんかは電子化できなかった」
食料品が電子化できちゃったら確かに大革命だな。
「ただし例外もある。あらゆるものの素材となる『きのみ』は、きのみのみを入れる機能に絞ればなんとか作れた。ということではい」
「はいって……話の流れ的にこれがきのみ入れか?」
「そうそう!きのみぶくろ!」
安直だな!
「もう1つ例外はわざマシンだな。これはリュックに拡張機能をつける必要がある」
「で?このリュックは?」
「もうついてる!」
「さすが父さん」
「もっと褒めろ!」
それがここか。わざマシン専用のケースみたいになってるな。
「で、最後にだ」
「まだあるのか」
「ここが1番の目玉だ!」
「おお!?」
今まで聞いたのでも十分すごいが?
「最初に図鑑にトレーナー登録をしただろう?」
「う、うん、したな」
「図鑑と紐づけることで、そのリュックはそのトレーナー専用となる!出し入れは本人しか行えない!」
……つまり防犯か!とんでもないぞこれ!というかなんでもありだなこの世界!
「……一応確認なんだが、これって俺だけが持ってるとかじゃないよな?」
父親が研究職で、いろんな所にコネがあるから〜ってわけじゃないよな?そうだったら出し入れ云々じゃなく、リュックごと貴重品じゃん危ない。
「大丈夫だ。今年旅立ったトレーナーたちは既に持ってる。去年以降のトレーナーたちも順次手に入れられるよう用意している」
「どっからそんな予算出るんだ……」
「ハッハッハ!そんなこと子供が気にする必要ないさ!」
流された。大人な対応なのか、若干目が泳いでるから空元気なのか。お金の話はシビアだからね。
「というわけで、お前も旅に出られるぞ!……と言いたいところだが」
「へ?」
「初心者トレーナーは地方担当の博士に1回顔を見せに行かなきゃ行けない」
あー、あれか。カントーだとオーキド博士に顔見せして、初心者用ポケモンを貰うっていう……でも俺にはイーブイがいるぞ?
「言いたいことはわかる。だがそのイーブイ、今親登録は私にしてある」
「……あー、なるほど」
俺に親登録を移すためにも1度担当者のところに行かなきゃ行けないわけね。
「どちらにしても準備期間は必要だろうし、10歳になるまでは旅に出られないだろう?出発は何時でもいいから決まったら相談してくれ!旅に出られるようになったら、予定を合わせて行こう!」
「うん、ありがとう」
何もかも準備してもらっちゃった気がするけど、ありがたく受け取ろう。今後なにかで返せたらいいな。
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1週間後。
いよいよ旅に出られるぞおおおおおぉぉぉぉ!!
「うおおおおお!!!」
「ブイイイイイ!!!」
「テンション高くて結構!いざ、ミシロタウンへ!」
ということは担当者はオダマキ博士か!ユウキの父さんだな!元気かなぁ……
オオスバメタクシーを使いミシロタウンへ。
さっそくオダマキ博士の研究所に行く。
「こんにちはー」
「失礼します」
「……ん?お?あ!?ウェザー博士ではないですか!ご無沙汰しております!」
「オダマキ博士!お久しぶりです!お元気そうで」
大人トークが始まってしまった。少し長くなりそうか?
ん?あの帽子は……
「ユウキ?」
「え?」
やっぱりユウキじゃないか!
「久しぶりだなユウキ!」
「え?……あっ!レイン!?もしかしてレインか!?」
「そうだよ!いやぁ大きくなって!」
「なんで大人目線なんだよ!お前と歳変わらないだろ!」
以前ホウエン地方にいた時に仲良くしていた友達の1人、ユウキだ!オダマキ博士の息子さんでもある。
茶化し合いながらも笑って肩を組む。懐かしいなぁ!
「ハルカは?」
「ああ、ハルカはこの前トレーナーの旅に出てからまだ帰ってきてないよ」
「あれ?じゃあユウキは?」
「俺は旅に出ながらお父さんの研究を手伝ってるから、ちょくちょくミシロに帰ってきてるんだ」
「なるほど。じゃあ今日会えたのは偶然なんだな」
「でもまた会えて嬉しいよレイン!」
「ああ!元気そうでよかった!」
そしてちゃんと覚えててくれて嬉しい!
残念ながらハルカは旅に出ちゃったかぁ……ん?何か違和感が……
「元気……元気かぁ〜」
「……なんだよ?」
「お前が別の地方に行ったあと、大変だったんだぞ?」
「え?」
「ハルカがしばらく塞ぎ込んでなぁ」
「え!?なんで!?」
「……本気で言ってるのかそれは」
違和感について考えているとそんな話を聞かされた。
あんな元気ハツラツだったハルカがか?想像できないんだが?
「今は元気だから大丈夫だよ。むしろお前に会うために張り切って旅立ってった」
「お、おう」
なんか一瞬底冷えするような寒気が走ったんだが……風邪か?
もしかしたら違和感を感じた人もいるかもしれません。
そうです。今作ではORAS主人公は引っ越しでホウエンに来たのではなく、そもそもホウエンにいた設定です。
評価・感想いただけると励みになります。
気が向いたら書く小説なので続きが気になる方は気長にお待ちください。