再び上空。
今気配は人を追って、ミシロタウンの上にいた。
厳密にはオダマキ研究所の上にいた。
そこには様々なポケモンがおり、楽しそうに庭で遊んでいるようだった。
その様子が楽しそうで、羨ましくて……空間が少しブレて見えた。
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「いやぁ、すまないね!話し込んでしまって」
「いえ、大丈夫ですよ。俺もユウキと話してましたし」
ようやく大人たちの再開トークが終わったようだ。まぁ、待ってる間に俺も旧友との親交を深めていたので問題ない。
「それにしても大きくなったねぇレイン君!」
「さすがに数年会ってませんからね」
「それもそうか。いや、ウチのユウキやハルカちゃんもそうだが、子供っていうのはあっという間に成長するんだなぁ」
うんうんと頷きながら感心しているオダマキ博士。相変わらずフィールドワークで体を動かしているのだろう、めっちゃパワフルだ。
「ではさっそくイーブイの親登録だな」
「ブイ……」
「おや?このイーブイ人見知りかね?」
「ええ、ちょっといろいろありまして」
「そうか。ならレイン君が抱き上げててもらえるかい?」
「わかりました」
オダマキ博士が手を伸ばすが、イーブイは俺の影に隠れてしまった。初対面の人と接するのが苦手なのは変わっていない。これも性格なんだろう。
そこを含めても宇宙一可愛いけどな!
「うん。こーして。これだな。おっけー。よし!できたよ!これでそのイーブイは正式にレイン君のポケモンになった」
「ありがとうございます!」
「よかったなレイン」
「ああ!父さんもありがとう!」
自分のポケモンってだけでテンション上がるのに、初めての自分のポケモンがこのイーブイになるって、ようやく実感が湧いてきて……ああああぁぁぁぁあ!イーブイ可愛い!ホントお前と一緒の空気を吸えるだけで俺は幸せだぁ!こんな愛らしい見た目でいつも俺に顔を擦り付けてくる仕草なんて天使としか言いようがない!これからも一緒にいような!そして俺が絶対お前を幸せにしてやるからな!俺なんてもう既に幸せの絶頂で……
「……イン……レイン!」
「ハッ!」
「大丈夫か?」
「幸せの絶頂過ぎてトリップしてた」
「お、おう、よかったな」
なんだよ父さん、そんな白い目で見るなよ。
「これからもよろしくな!イーブイ!」
「ブイ!」
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「っと、これである程度説明したかな?」
「ありがとうございます」
新人トレーナー用の講習を受け、晴れてトレーナーとなった俺。講習の内容も予め父さんから教えてもらった内容と違いもない。
「ああ、もうひとつ」
「え?」
「レイン君はミシロに来るためにオオスバメタクシーを使用しただろ?」
「はい」
「あれには使用制限がある」
聞いてないが!?
ちょ、父さん!目を逸らすな!あからさまに「やべっ、言うの忘れてた」って顔しとるやないか!?
「おいおい、ウェザー博士から聞いてないのかい?」
「聞いてないですよ。じゃあ今回乗れたのは」
「ウェザー博士がいたからだね。基本的には条件を満たしたトレーナーしか使用できないが、研究職や特定の職に就いている者は許可を得て使用することができるのさ」
「……その条件というのは?」
「それは簡単さ!それぞれ街のポケモンセンターにトレーナー登録をするのさ!そうすると登録した街へはオオスバメタクシーを使用することができる」
逆に言えば登録していないところは徒歩や他の手段で行く必要があると……
「オオスバメタクシーはポケモンセンター前や私の研究所のような特定施設の前じゃないと人を下ろしてはいけないルールになっているからね」
「なるほど」
結構重要な話だったじゃないか……
「あと、なみのりを使用して水辺を渡ることや、ダイビングを使用して海を潜ることも条件がある。これは地方に沿った特定のジムバッジを所持していることが条件だ。ホウエン地方だとなみのりはトウカジム、ダイビングはトクサネジムになるな」
「……安全面ですか?」
「さすがレイン君、頭の回転が早い!その通り!川やちょっとした水辺であれば、陸が近いのでポケモン達に助けてもらえばまだ大丈夫だが、海はそうはいかない」
だから、ある程度トレーナーとしての力量があることを証明しなければならないということだな。これはバトルに限らず、旅に慣れているかどうかというのもあるだろう。
「……父さん?」
「すまんレイン!すっかり忘れていた!というかいつも使っているので頭からすっぽり抜けていた!」
「まぁまぁ、でも、これで本当に説明することはあらかた終わったよ」
「ありがとうございます」
父さんのうっかりは今に始まったことではない。いざ使いたい時に知るより、今知れてよかった。
「それでは今日から君は正式にポケモントレーナーとなる。野生のポケモンの捕獲も許可されるが……レイン君なら大丈夫だと思うけど念を押しとくぞ?」
「はい」
「ポケモンを捕まえるということは、ポケモンを育てるということ。ポケモンにも感情があり、意思があり、生きている。捕まえたポケモンは大切にしてあげなければならない。これはポケモントレーナーの義務だ。肝に銘じるように」
「もちろんです!」
「よろしい」
最近はポケモンを犯罪に使ったり、弱いポケモンを無理に逃がしたり等、褒められた行為じゃないことをしている人もいるからな。そんなやつコロコロしてやりたい。
「さて、一通りの説明は終了だ。……リュックも持って準備万端って感じだな」
「ええ、このあとすぐに旅に出るつもりでしたから」
「そうか。そうだな。ポケモントレーナーは1度旅に出てこそだな!」
「……う、うぅぅ……レインがついにたびにでるんだなぁ……」
「何泣いてんだよ」
「だっで〜……!!」
急に父さんが泣き始めてしまった。ずっと一緒に暮らしていたからな、気持ちはわからなくもない。だが……
「そのためにポケナビ持たせてくれたんだろう?しかも最新機種のカメラ付き高性能のやつ」
「毎日夜には電話してくれるよな!」
「めんどくさい彼女か!?」
嫌だよ気持ち悪い。
「彼女といえば、ハルカちゃんは一足先に旅に出てしまってね。今日レイン君が来ることを知っていたら待っていただろうに」
「ええ、ユウキから聞きました。なので最初の目標はハルカに追いつくことにします」
「そうか、早く会ってあげなさい。レイン君と別れてからはしばらく塞ぎ込んで……」
「はい、聞きました……」
なんか早く会っといた方がいいと思うんだけど、会うの怖いような気もするんだよなぁ……
「では、オダマキ博士!ありがとうございました!」
「ちょっと待ちなさい」
「……え?」
いざ出発!って時になぜ呼び止められるし。
「今日はもう遅いから、旅の開始は明日にしたらいいよ。ちょうど明日ユウキにもフィールドワークに出てもらおうと思ってたから、一緒に出発するのがいいんじゃないかな?」
「なるほど!いい考えだねお父さん!」
「え、でも泊まる場所は……」
「今日はウチに泊まっていきなさい。ユウキと久々に会って積もる話もいっぱいあるだろうし、ウェザー博士との最後の夜「いや、すみませんが私はこの後仕事が!」……そうですか」
うん、このタイミングでそれは睨ませても仕方ないよ父さん。いや、オダマキ博士も哀れみの目でこっち見なくて大丈夫です、ホント、慣れてるんで。
「まぁ、うん、じゃあ、とりあえずユウキ、ウチに連れて行ってあげなさい」
「うん。行こうレイン」
「おう」
こうして旅に出る前、最後の夜は過ぎていくのだった。
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ついにこの日がやってきた!空は晴天、隣には友達、後ろには見送りに来てくれたオダマキ博士とその奥さん、なぜかハルカのお母さんもいる。
「昨日はありがとうございました。ご飯もとても美味しかったです」
「あら、いいのよ!これからもうちの息子と仲良くしてね!」
「オダマキ博士もお世話になりました」
「うん。旅に出たら楽しいことも辛いこともいっぱい出会うと思うけど、その一つ一つが君の力になるはずだ!頑張るんだよ!」
「はい!」
そしてなんだか心配そうな顔をしているハルカのお母さんが近づいてきた。なに?怖いんだけど……
「レイン君」
「は、はい?」
「ハルカに会った時、なにか失礼なことしたらごめんなさい」
「……へ?」
「あなたと別れた後ずっと泣いてて、吹っ切れたと思ったらなにやらずっと勉強や特訓をしてたの」
「な、なんの特訓っすか?」
「トレーナーとして強くなって、有名になったら自分からレイン君に会いに行くんだって」
「……んー?それが失礼なこととなにか関係が?」
「たぶんあなたに会ったら、あの子感情が抑えられなくなりそうで……」
「レイン!そろそろ出発するぞ!」
「あ、引き止めちゃってごめんなさい。今言ったことはあまり気にしなくていいわよ!レイン君はレイン君の旅を頑張って!」
「え、えー……あ、ありがとうございます?」
ユウキに呼ばれて話は中断してしまったが、内容的に気にしないわけにもいかず、思わず疑問形でお礼を言ってしまった。
「それではいってきます!」
「お父さん、またレポートがある程度書き終わったら戻ってくるよ」
「うん、2人とも気をつけてな!」
こうして心配事が増えつつも、自分の意思で初めて旅へと出るのであった。
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「ところでユウキはどこに行くつもりなんだ?」
「今回俺の目的地はトウカの森だな」
「遠いのか?」
「元々レインがいたって言うカナズミシティのすぐ南にあるよ。ミシロから出発したこっちから見ると、トウカの森を抜けてカナズミシティに行くってルートになるな。マップで言うとここだ」
そう言ってユウキはポケナビを取りだし、タウンマップを見せてくれた。こんな機能もあるのか。
というかそんなすぐ側に森があったのか。カナズミシティは建物も多くて都会チックだったから、自然なんてあまり目に入らなかった。
「俺の目標はハルカに追いつくことだけど、今どこらへんにいるかわからないしなー」
「ハルカはジム巡りをしていると思うから、まずはカナズミシティのジムを目指してみるのがいいと思うよ」
「……あれ?マップだとその前にトウカシティに通るよな?なみのりの説明の時トウカジムって言ってた気がするが」
「あー、ここはジムバッジが4つないと挑戦できないんだ」
「なるほど、順番があるのか。でも俺はジムに興味無いし、ハルカも寄ってる可能性があるだろ?だから1度寄っておこうかな」
「あー、んー、そ、そっかー、うーん」
「……なんだよ?」
「トウカジムのジムリーダーって誰か知ってる……わけないよなぁ」
「知らないよ、今日初めてマップなんて開いたし」
「……センリさんだよ、ハルカのお父さんの」
「へぇ!ハルカのお父さんってジムリーダーだったのか!尚更挨拶しなきゃダメじゃん!」
「……マジかこいつ」
この時俺はハルカを落ち込ませてしまったことなんて頭になかったわけなんだが。
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気が向いたら書く小説なので続きが気になる方は気長にお待ちください。