『虚飾』から始めるヒーローアカデミア 作:百合カプはいいぞ
私がパンドラに成り代わって十年。パンドラのような丁寧な言葉遣いと微笑みを絶やさないことにようやく慣れてきた頃、私は無事に国立雄英高校ヒーロー科への入学を果たした。それと同時に地方から引っ越して一人暮らしも始めたが、これまで自炊をあまりしてこなかったので大変な思いをしている。パンドラらしさを醸し出すために部屋にほとんどものを置いていないから掃除が楽なのは有難かった。
……え、幼少期の話はどうしたのかって?時間飛びすぎ?前回のタイトル?……そんなものはなかった、いいね?
話を戻すが、今日は雄英に入学して二日目の朝である。どうやら私の学年は緑谷達主人公の年代よりも一つ上のようで、担任は相澤先生でクラスもA組だったが見知った人物は一人もいなかった。そして例の如く体力テストをしたのだが……結果は察してほしい。一応この体がパンドラのものだからか、ゲートはあるし魔法も使える。でも私は陽魔法なんて一つも知らないのだ。マナを使って擬似的に身体強化はしたものの、本職に敵うはずもなく。総合では一位だったが各種目は思ったよりも記録が伸びなくて心の中で泣いてました。
……まあ、権能使えば誰にも負けないから気にしてない。
さて、主人公達の一つ上の学年には大きな問題がある。それは『クラス全員が除籍される』ということだ。無論諦めなければ復学させてもらえる。除籍させることで中途半端な覚悟で命を賭けるヒーローにならないようにという、相澤先生なりの優しさだ。
しかし、嫌な予感がする。今日はちょっと遅めに家を出たはずなのだが、未だに教室には誰もいない。
「……皆さん、今日は遅いですね」
昨日はこのくらいの時間には結構人がいたはずだ。入学式だったことを加味しても、この時間に誰もいないのはおかしい。
……まさか、もう全員除籍したとか?確かに昨日の様子を見て「この子達、大丈夫かな?」とは思ったけど。流石に早すぎない?
私がそんなことを考えながら不安にしていると、しばらく経って教室のドアが開く音がした。
「ホームルームを始める。虚、号令」
扉を開けたのは私の同級生……ではなく、担任の相澤消太先生。プロヒーロー『イレイザーヘッド』として活動しており、メディアを避けるアングラヒーローでもある。ちなみにヒーローの間ではその個性の有用性から重宝されている様子。実際にAFOにも狙われるくらいには強いからね、『抹消』。
「……起立、礼。よろしくお願いします」
そして、先生が入ってきて私は全てを察した。察したからこそ、諦めて何も言わずに挨拶をしたのだ。
……これ、私以外みんな除籍されてるわ。
「はい、よろしく。お前は合理的だな、色々と気になるだろうに」
「確かに気になりますが、急いでも結果は変わりませんから。それに、今から説明していただけるのでしょう?」
「あぁ、そうだ」
丁寧な口調を心がける。パンドラらしさが出てるのかは判断できないが。
相澤先生は一つの紙をこちらに差し出し、話を始めた。
「まず、このクラスはお前以外『見込みなし』として除籍処分となった。今年は一クラスしか取れていない影響で一学年はお前一人……つまり」
「留年……ですか?」
こうして前回の冒頭に戻るわけである。ちなみに渡された紙には留年と、それに伴う補填のことが書かれている。具体的には今年からの施設利用の許可、学費免除と一年間の生活金援助など至れり尽くせりだ。
ちなみに留年に関しては現状どうにもならないらしい。
「……いくつか、質問させていただきたいのですが」
「構わない、答えられる範囲で答えよう」
「ではまず、他の方々が復学した場合はどうなるのでしょうか?私の記憶では、先生は除籍した生徒を復学させた例もあったはずですが」
相澤先生は半端にヒーローを目指すことを残酷なことと言っており、生徒のためを思って除籍処分を下している。故に再び『見込みあり』と判断されれば復学させる……そういう事例は原作にもあった。
これで私だけ留年だったら抗議してやる。
「よく知ってるな……その質問には『状況による』としか答えられない。一人二人程度であれば、お前と同じような処置を取る。大半が復学できるようなら、先程の留年の話や補填はなかったことになる、といった感じだ」
まぁ、それならいいか。
「……ありがとうございます。では二つ目に、今年の仮免試験は受けさせていただけるのでしょうか?」
「今年の仮免?まだ一年だぞ」
「早めに仮免は取っておいてしまいたいのです……もしものために」
確かに、本来のカリキュラムであれば仮免を取るのは二年次だ。しかし仮免があれば、USJ襲撃の時や神野時変で合法的に動ける。実力も問題ないだろうし、取れるなら取っておきたい。実際、実力のある生徒は一年から仮免を取るっていう事例もないわけではないし。
「……仮免前に、ヒーロー情報学のテストを受けてもらう。法律やヒーローの心構え、入学試験ではそこまでは見れないからな。お前の実力は入試を見る限り問題ないだろうから、そのテストの結果次第では、俺が掛け合ってやる」
「それで構いません。寛大な処置に感謝します、先生」
試験とか余裕だし、実質受けさせてもらえるのと一緒だな!パンドラが馬鹿なのは解釈違いだからめっちゃ先取りでヒーロー情報学の勉強してて助かったー。
「では最後に……これは質問ではなくお願いなのですが、捕縛布の使い方を教えていただけませんか?」
相澤先生はヒーローとして活動する際、移動や拘束として捕縛布なるアイテムを使っている。正直、超使ってみたい。相澤先生は推しの一人だし、私自身ヴィランを無力化する手数に乏しいのだ。魔法はまだ調整が慣れないです。
「捕縛布?別に教えることは構わないが……何故だ?お前の個性なら、別に捕縛布を使わなくても問題ないだろう」
私の個性は一応『魔女』で登録している。本当は『魔法』にしようかと思ったが、両親曰く個性発現と同時に見た目が変わったそうなので恐らく異形型の個性なのだろうと当たりをつけての判断だ。
「私の魔法も万能ではありません。制御もまだまだ甘いですし、その点拘束に加えて移動補助もできる捕縛布は、私の個性と相性が良いと考えました」
「……わかった。授業の合間や放課後に指導してやる」
「ありがとうございます」
マジでありがとう相澤先生!一生ついていきます!!
そんなこんなで留年はしたが、主人公達が入学してくるまで修行期間を確保できたと考えれば悪くないだろう。
そう思いながら、私は次の時間空いているということで早速相澤先生に捕縛布の扱い方を教えてもらうのだった。
……ちなみに捕縛布の扱いはめちゃくちゃ難しかった。心操君ほど酷いことにはならなかったが、狙ったところには飛ばない、上手く絡まないなどなど……相澤先生って凄いんだな。
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相澤消太にとって、『
しかしどこか、危うい雰囲気を持っていた。
「実技総合成績、結果出ました」
「……今年は、ヒーロー科は一クラスしか取れなかったんだな」
「確実に彼女の影響ですね」
暗い会議室にモニターで映像を映しながら、雄英のヒーロー科の実技試験の採点をしていたあの日。その日が、初めて相澤消太が彼女を認識した日だった。
「まさか
「確かに。ぶっ飛ばす子はたまに居たけれど、アレを壊した子は記録上この子が初めてね」
モニターが映し出す映像には、華奢で運動もできなさそうな美しい少女が、0ポイント敵ロボット――本来お邪魔虫として投入された巨大ロボットを破壊している様子が映し出されている。
「華奢な体格でも個性次第ではヒーローとしてやっていけるが……あの個性はなんだ?」
「炎に氷、土に……煙のようなものまで出してるわね」
「移動だって、ビルを軽々飛び移ってたぞ。彼女の個性は何なんだ?」
これまでの映像を見ても、少女の戦い方は多岐に渡っていた。炎や氷で攻撃したり、紫色の矢のようなもので攻撃することもあれば、弱点を的確に殴打し破壊することもある。
移動も、ジャンプ一つでビルを軽々と飛び移っており、個性の全容が見えてこない。
個性とはそもそも一人一つが原則である。AFOやOFAのような例外を除けば、個性はどうあっても一つまで……実質二つあるような個性でも、『炎と氷』のような親和性の高いものでなければ発現しない。しかし虚飾の個性は共通点がなさすぎる。炎と氷までなら事例もあるが、それらに加え土琉、煙、身体能力向上等など。
それを疑問に思ったが故の疑問である。
「事前申告では『魔女』とだけ書かれてあります」
「『魔女』?……つまりあれは魔法ってことか?」
「多分そうでしょうね」
「まぁ詳しい話は入学してからでも遅くないのさ!」
「それもそうですね。では、救助ポイント4、敵ポイント118!合計122ポイントで虚飾を今年の主席入学とする!」
「「「「異議な~し!!!」」」」
そんな光景を尻目に、相澤は映像を注視する。
(……なんだ、この違和感は?)
映像に映る飾の姿には、どこか違和感があった。まるで外皮に沿った行動を取っているような……何かを
(まぁ……教えていくうちにわかることか)
それほど気にすることでもない……相澤はそう結論付けて、他の生徒の映像を確認し始めた。
・パンドラ成り主
本名は『
この度相澤先生に師事することが決まった。
あくまでも言動がそれっぽさを追求してるだけで、行動は全然パンドラっぽくない。
・相澤先生
パンドラの言動に違和感を持った人。
別にそこまで深刻になる必要はない。