『虚飾』から始めるヒーローアカデミア 作:百合カプはいいぞ
というわけで、一年が経ちました。入学式を明日に控えた本日も相変わらず魔法と捕縛布の練習で学校に来ております。
え、飛ばし過ぎ?修行編はどうしたのかって?
……タイトルが全てです(白目)
遊んでいたわけではないが、かと言って特筆すべきこともない一年だった。魔法と武術の修行をしたり、捕縛布を教えてもらったり、先生と単騎で戦ったり、仮免取ったりしただけだ。
仮免試験こそ書けるかもしれないが、ぶっちゃけ一次試験を魔法で無双した後に、二次試験の救援でもこれまたパンドラの美しすぎる美貌で無双するだけだった。やっぱり顔が良いって正義なんだなって。
つまり、この一年は特に何も起こらなかったということだ。逆に今年は濃密すぎると思う。USJでのヴィラン襲撃に始まり、保須でのヒーロー狩り、林間合宿でのヴィラン連合襲撃にその後の神野事変……他にも色々あると思うと辟易としそうだ。『虚飾』の権能があるから死ぬ心配がないだけが救い。
そんなことを考えながら相澤先生を探しに職員室へ向かっていると、前から特徴的な金色のトサカが歩いてきているのが見えた。
「ヘイ、虚リスナー!」
「山田先生、おはようございます」
山田ひざし、ヒーロー名『プレゼントマイク』。轟音の音を武器に戦うヒーローであり、雄英高校の教師でもある人物だ。相澤先生の同級生でもあり、その関係か相澤先生によく教えてもらっている私にもこうして廊下で会ったら話しかけてくれる。
「明日は入学式だってのに今日も訓練か?」
「そうですね。明日以降は授業も始まりますし、時間のある間に鍛えておきたいのです」
「相変わらず勤勉だな~、いつも頑張ってんだから一日くらいサボったって問題ないんじゃねえの?」
「それはいけません。その小さな『怠惰』の積み重ねが、いずれ人を破滅に導くのです」
パンドラなら多分こういうこと言うでしょ、知らんけど。正直「愛。素晴らしいですね」以外の台詞はほとんど知らないから判断できない。それにしても勤勉と怠惰ってペテルギウスを思い出すな。どうやってあの温厚なジュースをあそこまで堕としたんだパンドラ。
「そういえば、相澤先生は職員室にいらっしゃいますか?」
「あぁ、いるぜ……もしかして、明日の話か?」
「えぇ……個性把握テストだとは思いますが、一応質問しておこうと思いまして」
「……今年は、去年みたいにならねえといいな」
山田先生が痛ましいものを思い出すように目を閉じ、少し気まずそうにそう零す。ちなみに去年の同級生は一人として復学してこなかった。原作ではクラスとして成り立つ程度には復学していたはずだが……こんなのが初の原作崩壊って……地味すぎる……。まあ気にしても仕方がない。というか見込みがあるなら復学してきただろうし、気に病むなどそれこそ無駄な行為だ。
「そうですね。流石の私も、二年連続で同級生がいなくなるのは勘弁願いたいものです」
「今年はお前の年と違って二クラスあるから、それは大丈夫だと思うぜ」
その後、軽く山田先生と会話をして別れ、再び職員室に向かった。
ちなみに明日の個性把握テストだが、相澤先生曰く私は去年受けたからとか関係なく受けさせられるらしい。なんでも去年からどの程度成長したのか見たいのだとか。流石、合理的を地で行く人だ。
本当はサボりたかった……いや、それはそれで目立つのでは?ボブは訝しんだ。
ともかく、明日からは真に高校生活が始まるのだ。いきなり留年を言い渡され、一年のほとんどを先生との訓練に使ってきた私にとっては、とても楽しみなのである。
原作介入は不安だけど、頑張るぞー!おー!
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国立雄英高校入学式当日。雄英には今まで一年間通ってたとはいえ、いつも直接職員室に行ったり訓練場に籠っていたから教室に無事に辿り着けるか不安になった私は、いつもより早く家を出た。雄英って広いから未だに行ったことのない場所が沢山ある。特に教室とかは用事がなかったからほとんど行ったことがない。
いつものように校門をくぐり抜け、1-Aの教室へと向かう。去年入学した時と同じ教室ではあるが、留年を言い渡されて以降行った記憶がないため校内地図で確認しておいた。
(異形型の個性の人に配慮した結果だろうが私からすれば)無駄に大きいドアを開け教室に入ると、既に何人かの姿がいるのが見えた。えーっと、いるのは青山君、芦戸ちゃん、梅雨ちゃん、切島君に耳郎ちゃん。原作は大きく崩壊していないようで安心した。
今年は私の留年の影響でA組B組共に二十一人になるように枠を取ったらしい。私の知らないB組メンバーが増えているから今日の個性把握テストが終わったら見に行きたいな……誰が増えたのかわからないかもしれないけど……。
ちなみに私の出席番号は5番。原作ではお茶子ちゃんの番号だった場所だが、この世界ではお茶子ちゃん以降が一つズレる形になる。
「あなた、凄い綺麗だね!私は芦戸三奈、これから三年間よろしくね」
席は出席番号順になっているようで、自分の場所を確認してから向かっている途中に芦戸ちゃんに話しかけられた。
「ご丁寧にありがとうございます。私は虚飾……こちらこそ、よろしくお願いしますね」
「うわ、声もいい!」
うひゃ~、というような表情な顔を両手で覆う芦戸ちゃん。ふふん、そうだろう。なんせこの声はその依存性から『釘宮病』とまで呼ばれたのだ。この美貌もパンドラのものなのだから美しくて当然だ。
ちなみにパンドラの顔を見た者はこれ以上ない幸福に包まれる、みたいな話があるのだが、昔それが原因の事故を起こしてからは『見間違え』で魅了の力を消している。それでも普通にナンパされるのはパンドラ様クオリティということで……。
「ケロッ、私は蛙吹梅雨……梅雨ちゃんって呼んで」
「梅雨さんですね。虚飾と申します……お好きにお呼びください」
「すごく丁寧なのね、貴女」
芦戸ちゃんと話していれば、当然後ろの席の梅雨ちゃんも興味を持つわけで。梅雨ちゃんも交えて話をしていれば、いつの間にか原作で見たかっちゃんと飯田君の言い合いが始まっていたし、気づけば主人公である緑谷君が扉の所にいた。ということは……
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
ここからでもぎりぎり見える範囲に、寝袋に入りながら朝食であろうゼリー飲料を流し込んでいる相澤先生の姿が見える。いつも思うけど職員室では普通なのに何で教室に来るときは寝袋なんだろう……?もしかして特殊な訓練を積んでるから寝袋の状態でも歩行と変わらないスピードが出せたりするのかな……。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」
正直10秒かからず静かになるのは優秀な方だと思うんですよ先生。中学の時とか静かになるまで一分くらいはかかってたし。この話しても他所は他所、家は家みたいなこと言われるだけだから言ったことないけども。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
相澤先生がそう言うと途端に教室がざわつく。まぁ、確かにあんなくたびれた人が担任なんて言われたら驚くわな。
「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」
そう言いながら取り出したのは雄英指定のジャージだ。小ネタではあるが、白い模様で『UA』と書かれている。
これ以上は合理的ではない、とでも言うようにそれだけ言い残して相澤先生は教室を出ていった。一瞬こちらを睨んだ気がするのは気のせいだと思う。最悪『見間違え』にする。
「お二人とも、行きましょうか」
教室でみんなが唖然とする中、机に荷物を置いた私はジャージを持って芦戸ちゃんと梅雨ちゃんにそう行って教室を足早に去る。あの人結構ねちっこいから私が遅れたら嫌味を言われるだろうと思っての行動である。
「……さて、更衣室は」
ようやく始まった原作に顔をニヤつかせながら、私は着替えるために女子更衣室へと向かっていった。
・パンドラ成り主
留年生。初日は新入生っぽく振る舞えと脅されてるので、そのままずるずる留年した事実を隠そうとしている。