『虚飾』から始めるヒーローアカデミア 作:百合カプはいいぞ
あと今話と次話は地雷要素というか、作者の趣味100%なので特に自衛推奨
「っ!……アル・ヒューマ!!」
僅かに呆けていたエキドナが、我を取り戻したかのように魔法を放つ。巨大ではないものの、私一人を殺すには十分な大きさの氷が、私を一度殺した。
「ちょ、神蛇さん!?」
無駄だと知っているのになぜ私を攻撃するのだろうか。条件反射か?エキドナはパンドラを嫌っているらしいしね。サテラ程じゃないと思うけど。
どちらにせよ、彼女が
「少々、驚いて不意を突かれました」
権能で『私が死んだ』という事実を『見間違え』にする。というか痛い。普段の戦闘中は陰魔法で痛覚を鈍くしてるからそこまで痛みは問題にならないけど、不意打ちだったから間に合わなかった。
「……ボクは今、最悪の気分だ」
「おや、酷いですね。私達にはお互い、積もる話もあるでしょうに」
「…………どうして君がここにいるのかな、パンドラ」
私達の間に、極寒のような空気が流れる。いつ殺し合いが始まってもおかしくないような、そんな空気が。
「それはお互い様でしょう、エキドナ」
「できれば『見間違え』であって欲しかったね」
「……私の因子でも奪ってみますか?最も……『強欲』な貴女では、適応できないでしょうけど」
エキドナは私を警戒している。まぁそうだろう、原作のパンドラはどうしようもない異常者だ。全てを台無しにした上で綺麗事を並べ、「無駄な犠牲は好まない」と言いながら虐殺を行う。
対する私もそうだ。目の前にいるのが『本物』であれば、ここで処分したい。彼女は知識を得るためなら他の全てを犠牲にする、倫理観の欠片もない女だ。AFOなんか目じゃないくらい、邪悪な存在になるだろう。特に『シャリオ』が不味い。あれは簡単に都市を滅ぼす。『見間違え』にできるとはいえ、使われたくない。
それに……エキドナは恐らく、
さて、どうしようかと思っていると、エキドナに声をかける人がいた。
「え、えっと……神蛇さん、知り合い?」
拳藤さんである。よくこの空気の中入っていけたな、流石クラス委員長。……というか、エキドナの名字『神蛇』って言うのか。神話の方のエキドナ由来か?
「あぁ、なに。昔ちょっと色々あってね、腐れ縁みたいなものだよ」
「そ、そうなんだ……えっと、パンドラさん……だっけ?大丈夫だった?」
「えぇ、わざわざありがとうございます」
普通に感謝を述べていると、私と拳藤さんの間にエキドナが割り込んでくる。
「……悲しいですね、そんなに警戒されるとは」
「自分の所業を省みたら?警戒しないわけないだろ」
「……なるほど。もしやこの場が『エリオール大森林のようになる』、とお考えで?あぁ、もしくは先代『剣聖』の件ですか?」
どちら側かを見極めるためにも、敢えて揺さぶりをかけるようなことを言う。こちらの意図が伝わってくれればいいが。
パンドラの所業は、まぁ酷い。エリオール大森林の永久凍土、ルグニカ大征伐隊、八つ腕のクルガン……他にも魔女教の乗っ取りなど。控えめに言って地獄に落ちろが正論になるくらいには。
「………………君は、もしかしてボクと『同じ』なのかな?」
「その話も含めて、一度お話でもどうです?近くに行きつけのカフェがあるのですが」
「……わかった、乗ってあげようじゃないか」
どうやら私の意図は伝わったようで、あっさりと引いてくれる。拳藤さんは何が何だかわかっていない様子で、オロオロとしていた。
「……みなさん、『エキドナが私に向けて魔法を放ったのは、何かの見間違え』ですので、よろしくお願いしますね」
後で先生に怒られるのが怖いから一応権能で隠蔽改ざんをしておく。
「……準備できたよ」
「では、行きましょうか」
そのままエキドナと教室を出て、私は行きつけのカフェへと歩を進める。道中、エキドナとの会話は一切発生しなかった。
¥¥¥¥¥
カフェに辿り着き、互いに向かい合うように席に座る。私はいつものようにダージリンティーとケーキのセット、エキドナは少し迷った後に私と同じものを注文した。
「……それで、先ほどの質問には答えてくれないのかい?」
「せっかちですね。折角こうして出会えた『同族』なのですから、もう少し会話を楽しんでもいいのではないですか?」
「互いの情報交換が先だ。
確かに、一理あるな。
「では、お互いに一つずつ、満足するまで交互に質問し合うという形でどうでしょう?お互い、黙秘はありでも虚偽はなしという条件で」
「……いいよ、君のその提案に乗ろう」
僅かに逡巡した後、エキドナはそう答える。
「では、お先にどうぞ。それとも先ほどの質問に答えた方がいいですか?」
「いや、改めて質問しよう。君はボクと同じ『転生者』だね?」
「えぇ、そうですね。私には所謂『前世の記憶』が備わっています。当然、『パンドラ』ではない別の人間の記憶が」
エキドナの質問には、当然肯定。そもそもお互いにそう確信があっての話だ。しかも、エキドナも『成り代わり』であろうことは簡単に予測できる。
「次は私ですね……では、エキドナは『この世界』についてどの程度知っていますか?」
「……オールマイトをテレビで見て、ここが『ヒロアカ』の世界だとは知っている。でも残念なことに、アニメも原作も見たことがない。ボクがこの世界について知ってるのは、この約十年間で読んで、見たものだけだ」
……ふむ。彼女はヒロアカ未履修の民だったか。まぁ彼女なら余程の事がない限りこの先死ぬことはないだろう。『強欲の魔女』の名は伊達ではない。レグルスさんにはボコボコにされる?あれは権能がチートなだけだから仕方ない。それを言ったらこの世界でレグルス倒せる人間なんてほとんどいないよ……全盛期オールマイト……でも無理か。アメリカのスターならワンチャンあるか?程度の話だ。サテラなんて以ての外。彼女がいるなら私は諦めて引きこもるしかない。
「……逆に君はどうなんだ?」
「ヒロアカについては、ファンと言って差し支えないですね。原作もアニメも映画も追っていました。……ですがお恥ずかしいことに、リゼロについては未履修でして。少々二次創作を嗜んだり、ピ◯シブ大百科で僅かに知っている程度でしかないのです」
「そうなのか?……リゼロファンのボクから見ても、随分パンドラっぽいと思うけど」
「そうですか、それなら良かったです」
どうやら目の前のエキドナ成り主さんはリゼロファンらしい。正直リゼロエアプだからこういう存在は助かる。私の中で彼女の株が急上昇した。
「お待たせいたしました。ダージリンとケーキのセットでございます」
次の質問は何にしようかと考えていると、注文した品が届いたらしい。お互いの前に、紅茶のカップとケーキが置かれる。
「……次の質問に移る前に、頂いてしまいましょうか」
「あぁ、それもそうだね」
そう言って私はティーカップを持ち上げ、ダージリンを口に含んだ。……うん、いつも通り美味しい。
このカフェは去年の初夏の頃にたまたま見つけた店だ。大通りにも面しておらず、静かで落ち着くような音楽と雰囲気が好みで、定期的に通っている。色々とメニューを開拓してみたが、個人的にこのダージリンとケーキのセットが一番好みだったのだ。ショートケーキのイチゴは最後に食べる派です。
私が紅茶を楽しんでいると、エキドナがカップを持って固まっていることに気づいた。魔女が差し出したものに警戒してるのだろうか?別に私が淹れたものではないのだが……。
「どうしたのですか、エキドナ?別に誰かの体液が入っているわけではありませんから、飲んでも問題ありませんよ」
「……君、本当に未履修なのかい?『ドナ茶』とか、『エリオール大森林』……ラインハルトはともかく、『先代剣聖』もだ。そのパンドラらしい振舞いを見ても、とてもじゃないが未履修の者が持つ知識とは思えない」
「二次創作は少々嗜んだ、と言ったでしょう?……それに、私は『大罪』というものが元から好きなのです。パンドラやエキドナについては、ある程度知っているつもりです」
逆にそれ以外はあまり知らない。特にオットーとかガーフについては、加護なんかは知っているが過去は全然知らない感じだ。何でガーフって『聖域の守護者』名乗ってるの?ってくらいには知らない。なんなら王選候補者なんてエミリア以外名前すらよくわかってないのだ。強いて言うならプリシラみたいな名前の人がいたような気がするなってくらい。
「なるほどね。つまりは知識の偏りが激しいわけだ」
「そうですね。コルニアス司教の妻の人数は知っていても、オットー商人がなぜ彼の英雄の仲間になったのかは知りません」
「本当に偏りが激しいな……それで、君は他に質問はあるかな?」
「では……貴女、『強欲』の権能は使えますか?」
これは重要な話だ。魔法が使えることは知っているが、権能が使えるかどうかはわからない。
私の質問にエキドナは言い淀んだものの、黙秘せず回答を口にした。
「……ボクが今まで試してきた中だと、『多分できる』というのが結論だ」
「『多分』?……確信はないのですか?」
「逆に聞くが、君はエキドナの権能を知っているかい?」
「……いいえ」
エキドナの権能は私が知る限り判明していない。魔法を行使していることから『憂鬱』や『怠惰』のような攻撃的な権能ではないこと、『叡智の書』が権能によってできた産物であることがはわかるが、肝心な内容はわかっていないのだ。
「そう、エキドナの『強欲』の権能は判明していない。だからきちんと発動しているかどうかわからないんだ」
「……ですが、ある程度予測は立てているのでしょう?」
「まあね」
リゼロでもスバル君は何度か繰り返したことで『死に戻り』を(完全とは言えないが)理解できていたし、私と同じように五歳頃に自我が芽生えたと仮定しても十年はあるのだ。おそらく色々試しているだろう。
「ボクの推察ではあるが……『自身の望む知識の創造』、それがボクの『強欲』の権能の正体だと思う」
「『知識の創造』……?」
「あぁ。例えば、ベアトリスのような人工精霊の作り方なんてこの世界の書物には載っていないから知ることはできない。当然だね、そもそも精霊という存在がいないのだから。でもボクは作ろうと思えば作れるし、既に知識として作り方を理解している。何故かわかるかい?それは権能が『知識の創造』だからだ。だからボクはこの世界にどこにも情報がない筈の『魔法』も『精霊』も知識として知ることができる。当然乱用はしないとも。ボクもエキドナと同じで知識を追い求めているが、同時に『知る』という過程が好きなんだ。この権能は『知る』という過程を飛ばして『知っている』という状態にしてしまう。それはとてもつまらない。知識とは『知るという過程』が醍醐味なのだから!他にも色々試したんだよ?例えば――」
……急に早口になったな。多分今までこうして実験して知りえた知識を話せる相手がいなかったのだろう。気持ちは凄くよくわかる。
それにしても、こうして楽しそうに語っているエキドナを見ているとこう……なんかむず痒い気持ちになるな。
「……あぁ、すまない。ボクとしたことが語り過ぎてしまったね。こうして権能の話ができるなんて思ってもみなかったから、つい」
「いえ、構いませんよ。それで、『知識の創造』が貴女の権能なのですね?」
「ボクの結論としては、そうだね。一応根拠もある……『叡智の書』は知っているかい?」
「確か、エキドナの権能によって意図せず生まれたものですよね。白紙のページに事実だけを自動的に記していく歴史書のようなもので、常人では情報量に耐えきれませんが、読むことで『知っていた』というか結果を生み出す。貴女にとってはあまり好ましいものではなかったはずですが」
「そこまで理解しているとは、やっぱり本当に未履修なのか気になるな……まぁそれは置いておこう。『叡智の書』については概ねその認識で合っているよ。そしてここからが仮定なのだが、あれはボクの権能の恩恵を他者が受けるための媒介なのではないかなと思っている」
なるほど、確かに面白い考察だ。確か『叡智の書』はエキドナの渇望から生み出されたという設定もあったし、『知りたい』という渇望が『知っている』という結果を生み出す書物を生み出していても不思議はない。魂の蒐集だって、権能によって知識を得れば問題なく行えることだろう。
「……確かに辻褄は合いますね」
「そうだろう?だからそう結論付けた。最も、ボクという存在になって権能が変化しているという可能性は否めない。ボクはエキドナではあるが、同時にエキドナではない『ボク』という存在でもあるのだから。『
……エキドナは凄いな。私は、その可能性を見ないふりをしてきた。私の権能は、確かに『パンドラ』のものであるはずだ。この十年間、違和感を抱いたことは一度もない。でも、エキドナの話が真実ならば……私の権能も、本来なら別のものなのだろうか。
「パンドラ?」
「……っ、ごめんなさい。少し考え事をしていました」
「そうかい。あまり人と話してる時に考え事をするのはよくないと思うが……」
「その通りですね。留意します」
気付けば、それから私達は他愛もない会話を広げていた。いつ記憶が戻ったのかとか、何故雄英に入ったのだとか、他にもこのカフェのおススメを聞かれたり。いつの間にか紅茶は冷めきっていたが、それに気付かないほどに私達は会話を楽しんでいた。
……こうしていると、長年の友人と一緒にいるような感じがする。とても……とても、楽しい。
「……え、君年上なのかい!?」
「えぇ、昨年は私以外の生徒が除籍処分されてしまいまして……留年という扱いになったのです。当然学費や生活費の補填などはありましたが」
「なるほど……除籍処分、そういうのもありえるのか」
「こちらの担任だけの話なので、B組は問題ないと思いますが」
「魔法が使えるのか……チート過ぎるだろう。まぁ、理屈はわからないでもないが。それよりも全属性に適性があるのが納得いかないな」
「それでも貴女と魔法だけで戦えば勝ち目はありませんよ。『シャリオ』はまだ使えませんし」
「そう易々と使われてたまるものか。一応極大魔法の一つなんだから」
「『アル・ジワルド』は使えますよ。制御できてませんが」
「頼むから人は殺さないでくれよ?一応ボク達はヒーロー科なんだ」
「陽魔法だけ知らないって……逆に他は知ってるのか」
「正確に言えば、『ジワルド』は知っています。ですが身体強化の魔法の名前がわからなくて……」
「あぁ、『アクラ』のことか」
「『アクラ』というんですか。ありがとうございます、長年の疑問が解けました」
「ここの紅茶はどうでしたか?」
「美味しかった。家は裕福な家系だから舌は肥えている自覚はあるが、これを淹れている人は随分といい腕を持っているんだね」
「ふふっ、気に入っていただけたようでなによりです」
「『
「逆に貴女の『
「恐らくね」
「それで、母様に『もっと外で遊んできなさい』って怒られたんだ。だけどこの身体、運動神経を前世か母様のお腹の中に置いてきてしまったようで、怪我をしてしまってね。それ以降は特に怒られることもなかったけど」
「私はそういったことはなかったですね。放任主義だったもので」
「いやね、なにも『電子書籍をなくせ』とは言わないよ。確かに持ち運びが容易であったり嵩張らないというのは魅力的だ。だが紙には紙でしか得られない感覚や空間があるのだから、紙の本を完全に廃止するなんて頭がおかしいとしか思えないんだ」
「一理ありますね」
「そうだろう!?そもそも電子書籍はセキュリティの問題もある。電子系の『個性』も珍しい話ではないのだから余計にこの世界では管理が難しいんだ。その点、紙の本は長年の智慧で十分管理が整っていると言えるし――」
「……しまった、もうこんな時間か」
話に夢中で、いつの間にか辺りも暗くなってしまった。私は一人暮らしだから問題ないが、エキドナはそうもいかないだろう。いいところのお嬢様の様で、別荘ではあるが使用人が常駐しているらしいし。
「申し訳ありません。わざわざこんな時間まで付き合わせてしまって」
「謝らなくて構わないとも、ボクも楽しかったからね」
「それなら良かったです」
そう言って、立ち上がり会計を済ませる。あの後もお互いにお代わりをしたので、若干割高な値段だ。
「ここはボクが奢るよ。長ったらしい話を色々聞いてもらったし」
「え?……ですが」
「それに、出会いがしらに一度殺してしまったからね。あの後権能を使って隠蔽してくれたのだろう?そのお礼も兼ねて」
そこまで言われたら、何も言い返せないな。
「……分かりました。今回はお言葉に甘えるとしましょう」
「よろしい」
そうして、エキドナに奢られた私は、彼女と共に夜空の下を並んで歩いていた。
「……パンドラ」
「?……はい、何でしょう」
歩いていると、エキドナから急に声をかけられる。
「今日は楽しかった。まさかこうして『同族』に会えるなんて、思ってもみなかったからね」
「それはお互い様です。私も楽しかったですよ」
「それは良かった」
私は今、とても自然な笑みを浮かべているだろう。仕草はどうしても長年の癖が抜けないが、いつも張り付けている
「……エキドナ」
「なんだい?」
初めて会えた同郷の彼女に絆されてしまったのか。初対面はあんなに警戒していたのに。
……気が付けば、私はとんでもないことを口走っていた。
「私達、付き合いませんか?」
「………………へ…………?」
・パンドラ成り主
他者への権能行使に躊躇がない人。
そこまで書けるか分からないけど、前世が前世なので結構チョロい。
同性愛すること自体に忌避感はないタイプ。
実は権能が本物から変化しているが、今の所気が付く余地がない。
・エキドナ成り主
初手『アル・ヒューマ』ぶっぱした人。本名は『
初めて同類に会って、テンションが爆上がりだった。
あまり意識しなくてもエキドナっぽい言動が取れるくらい、感性が似てる。
前世の記憶があるから若干原作よりも運動神経が良くなっているが、ほぼ誤差。すぐ治せるがちょっとした衝撃で骨折するし、柔軟すら難しいし、筋トレなんて以ての外。
紙の本派であり、電子過激派は滅べばいいと思ってる。
同性愛どころか、恋愛にあまり興味がないタイプ。