TSアンドロイドメイドになったので異世界冒険します   作:Revak

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プロローグ
第1話


 

 

 声が聞こえた。

 

 ──選べ。

 

(選べ? 何を?)

 

 その女の声に男は問いかけた。

 

 ──このまま消えるか。私の元で蘇るか。

 

 消える、という言葉に男は強く反応した。

 

(いやだ。消えたくない。死にたくない)

 

 そう男は強く願った。

 

 ──ならば蘇れ。私の手足となって。

 

 

 瞬間男の意識は消えた。

 

 

 

 

「ん……」

 

 

 ──男だった者、個体名杉山充は目を覚ました。

 

「……どこここ」

 

 目に映ったのは異様な空間だ。

 真っ白な部屋だ。どこまでも広く、広大な白い世界。

 上を見る。そこには多数のケーブルがあった。

 野太く機械的なケーブル、配管だ。

 そのケーブルは自分が座っている椅子に繋がっているようだとわかり、なんとなくで右手を見た。

 

「は?」

 

 充の右腕は白かった。美しい白さだ。

 だが問題はそこではない。いやそれも問題ではあるが、問題は右手自身だ。

 何かケーブルがくっついている。

 右手の前腕部分が開きUSBコードのようなケーブルが四本刺さっている。

 

「なんだこれ?!」

 

 そうして叫んだ時、充は己の声に違和感を覚えた。

 声が可憐で、女の声に聞こえたのだ。

 

 そんな馬鹿な、と充は左手で己の喉に触る。

 そこにのどぼとけの感覚はなかった。

 

 充は女になっていた。正確には女のアンドロイドになっていた。

 短髪の銀髪碧眼の長身の女。身長は百九十二センチはある。

 スレンダーな体形をしておりどちらかというと中性寄りだ。

 顔つきは美人そのものでありはかなげな雰囲気を出している。左目の下に泣きほくろがある。

 手足の関節部分は丸い。

 

「何が……」

「目が覚めましたか?」

 

 充の上から声がかかった。

 

「はっ?!?!?!」

 

 出てきたのは巨大な球体だ。

 三メートルはある巨大な球体。緑色をしている。

 中心には赤いモノアイが光っている。

 

「おい。やはり初見にその外見は混乱するだろう」

 

 奥から別の女の声がかかった。

 白い部屋から扉が生成され、扉から女が出てくる。

 

 非常に美しい女だ。絶世の美女とはこの人を差すのだと混乱しながら充は思った。

 身長百九十八センチと女性としては非常に高身長。

 顔はダウナー系というのだろうか。少しだるそうな感じをしているが美人そのものだ。つり目である。

 傾国の美女とはこの人物を表すのだろうと思えるほどに美人である。

 胸はでかい。一メートルを超える爆乳に片足突っ込んでいるサイズだ。

 半面腰は細いが、尻も百センチ超えというデカ尻。安産型である。

 細い手足は箸すら持てなさそう。

 黒い腰まで届く艶めいた髪だが内側は赤い。右目は赤く血のようで左目は闇のように真っ暗である。

 

 赤いドレスに身を包んだとんでもない美女である。

 

「え、あの、その、これどういう状況ですか?」

 

 充は取りあえず人型の方に声をかけた。

 

「ふむ。君は死んだ。それは覚えているか?」

 

 女──ディ・フランケリヒはそう問いかけてきた。

 

「死んだって……」

 

 充は己の記憶を思い出す。

 最後の記憶は、病院の手術室の天井。その少し前は、車。

 

「ああ……死んだのか」

 

 夜中に上下真っ黒の服着てコンビニに行ったのが運の尽きだろう。

 一応信号を守って歩道を渡ったはずだが黒くて居ないものだと思われ車に引かれたのだと思い出せた。

 

「いや、自分が死んだってどういうこと?!」

 

 だが、現実を受け入れられず充は発狂した。

 

「死んだっていうのならなんで自分は今こうして意識保ててるん?! このケーブル何?! あんた誰?! この球体何?!」

「落ち着け」

 

 ディがそういうも充は黙らない。

 

「これが落ち着いていられるか! 明日も仕事なんだよ! 連絡なしで休んだら怒られる!」

「落ち着け」

 

 二度目の落ち着けという台詞と共にディは充の頭にデコピンを放った。

 鈍い音が響いた。まるで硬い金属を叩いたような音だ。

 

「いった……痛くない?」

 

 充は己のでこを叩かれ痛いと思ったが痛覚を感じなかったことにまた混乱しかけた。

 

「うーん。少し冷静になってもらいますね」

 

 球体がそういうと充は急に冷静になってきた。

 まるで思考を操られているかのように冷静沈着になる。

 

「……落ち着きましたがこれなにされたんで?」

「ちょっと思考を操作しただけですよ」

「麻薬か何かで?」

「いえ。今の貴女機械なので思考コントロールぐらいはできるんですよ」

「あっなるほどね。サイボーグ化したってわけだ」

「いえ。異世界の貴方の魂をサルベージしてこの世界のアンドロイドのボディにインストールしました」

「異世界転生……ってこと?」

「そう言う事になります。まぁ生物ではなくなりましたが些細な問題でしょう」

「言うて些細か?」

「些細でしょう。それで、君は死んでアンドロイドに憑依転生しました」

「……アンドロイドってスマホの?」

「いえ、わかりやすく言うならオートマトンとかです。人型の機械人形ですね」

「はぁ……なんで転生させたんです?」

「それはもちろんやってもらいたいことがあるからです。口頭で伝えるかデータを直接入れるかどっちがいいです?」

「データ直接とか怖いんで口頭で」

「わかりました。まずは過去から話しましょう。私は二百年前この世界に銀河の果てから来た機械生命体です。そしてこの星に着弾しこの星を支配下に置くべくアンドロイドやオートマトンの軍勢を構築。この大陸を支配しました。

 ですがその支配は緩く、レジスタンスを作られ最終的にここの吸血鬼とある少女によって私は一度倒されました。まぁそこからなんやかんやあって私は蘇ったのです。ここまでは大丈夫ですか?」

「……まぁ、なんとか」

「はい、では続きを、蘇った私はそこの吸血鬼、ディから過去にやらかした所業の清算をしろと言われ、そうすべきだと思いました。ですがまだ問題があります。私が直接動くと絶対にまたやらかします。ですが私は私の力で過去の問題をどうにかしなければならない。

 そう思った私は最強の体を作り出し、それに問題を解決させようと思いました。ですが中身も私が作れば問題が生じる。そのために異世界の魂を利用しようと思い貴女を私が作った最強のアンドロイドの体にインストールしました」

「過去の所業をどうにかするために転生したって事か。で、その過去の問題とは?」

「今も稼働している兵隊生産工場の停止です。独立稼働するように作ってしまったせいか大本である私の命令が届かず今も稼働している工場が七つあります。それをすべて停止、もしくは破壊してきてほしいのです」

「もし万が一断ったら?」

「その時は別の魂入れるために今の魂は破棄しますね」

 

 意訳:要するに殺します。

 

「謹んでお受けいたします……」

 

 やるしかねぇ、と充は死んだ目をした。

 

「それで、だ。一週間後に旅立ってもらうが、その間は戦闘訓練をしてもらう。わずかな間だがこの都市を満喫すると良い」

 

 ディがそう言い放ち、充の手を取った。

 

 充は立ち上がる。それと同時に腕のケーブルが外れ開いていた腕が閉じた。

 

「……なんか視線高くないですか?」

 

 地面との距離がいつもと違う事に気づいた充は問いかけた。

 

「ああ。身長は百九十二センチだ。だいぶ高いだろう?」

「すっげぇ高身長……」

「まぁ、色々兵器詰め込むと必然的に体積大きくなるので仕方がありませんね」

「それで、えっと、貴女たちは?」

「私はネオスフィア・コア。マザーと呼んでください」

「私はディ・フランケリヒ。ディでいいよ」

「わかりました、ディさん、ま、マザーさん……よろしくお願いします。俺は杉山充と言います」

「そうか……その名前は男の名前だろう?変えるかい?」

 

その提案に充は少し考える。

親からもらったが大切にしている訳ではないし、そもそも既に死んでいる。

ならば名を変えて心機一転するのもいいだろうと充は考えた。

 

「変えます……何かいい名前ありますかね?」

「でしたらE7はどうです?その機体の名前です」

「……鉛筆みたいな名前はちょっと……」

「じゃあE7からとってイナ、はどうだい?」

「じゃあそれでお願いします」

「わかりました。貴女は今日からイナです」

「さ、外に出ようか」

 

 そうしてディとイナは歩いて部屋を出る。

 

 白い部屋を抜けた先は普通の廊下だ。

 コンクリートで出来た壁と床を歩く。

 

「そういえば、まずは服を着ないとな」

「え、てことは俺全裸?」

「そうだが、気づいてなかったのか?」

 

 ディに言われることで充は己の体を見る。

 そこには少しだが確かにある胸のふくらみと筋のついたまたがあった。

 

「……女になってる?!」

「気づいてなかったのか?」

「いやうすうす感づいては居たけど現実を直視……してもいいな。女になったという事はあれやこれやし放題ということでは?」

「……羽目を外しすぎないように」

「あっはい気を付けます」

 

(しないとは言わないのか……)

 

 ディはまぁ自分も気持ちわかるしな、と深く突っ込むことはしなかった。

 

 暫く歩くと服が大量にある部屋に辿り着いた。

 クローゼットもいくつかあり、服屋のようにハンガーラックが幾つもある。

 

 部屋には金髪碧眼のメイド服を着た美少女が三人居た。

 全員顔のパーツが何から何までそっくり同じだ。

 イナは今更ながら裸を他者に見られたことが恥ずかしくて手で隠し始めた。

 

「こいつ……イナに相応しい服を選んでやって」

「わかった。それじゃあ、着替えるね」

「ああ。ごゆっくり。私は出かけてくるよ」

 

「では私共が服を選ばせていただきます」

 

 メイド型のアンドロイドが笑顔でそう言った。

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

 そうしてイナは着替えを始めた。

 

 

 

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