TSアンドロイドメイドになったので異世界冒険します   作:Revak

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chapter1 冒険者のすすめ
第4話


 

「準備万端だな」

 

 一週間後。プッペと地上を繋ぐ巨大昇降機の前にイナとボロ、ディ、マザーの四人は集まっていた。

 更に見学者のアンドロイドも居る。この都市の殆どのアンドロイドが背後に集まっていた。

 

 昇降機は広大だ。千人乗っても大丈夫な作りになっている。

 普段はこんなバカでかいの使わないが大事な旅という事であえて使うことにした。

 

 準備は万全に終わった。

 戦闘訓練もこなしオートマトン相手の一対多の戦いも積んだ。

 レベル百の地上を焦土に出来るスペックを遺憾なく発揮し最強のアンドロイドとして名実ともにイナはなった。

 

「ああ、けどこの格好でいいのか? 旅人がこの格好って変じゃないか?」

 

 イナは変わらず黒いメイド服にサイハイブーツを履いている。頭にはホワイトブリムを付けている。

 

「この世界ビキニアーマーとかボディペイントで戦う冒険者居るからまぁ問題ないでしょう」

 

 ふわふわと浮かぶ三メートルほどの巨大な球体がそう言った。ネオスフィア・コア、マザーだ。

 

「ビキニアーマーはともかくボディペイントって……」

「ちなみに男だぞ」

「女ならいいとかいう問題でもない気が」

 

 イナは渋い顔をするがまぁこの格好気に入ったしいいか、と頭を振りはらった。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

「ああ、いってらっしゃい。何かあったら戻ってくるように」

「はいっ!」

 

 そうしてイナとボロは昇降機に乗り込み、旅だった。

 

 

「うぉぉお……結構揺れるな」

 

 イナは昇降機内で揺れに耐えながら登って行っていた。

 ここは地下深くにあるため上るのにも時間がかかる。

 

 待つこと二十分。暇なのでイナはSNSを除いていたら登り終えた。

 

 イナとボロが昇降機から出るとすぐに引っ込んでいく。

 

 外は晴れ間。朝の七時半、太陽が昇っている。

 

 昇降機は荒野の中に隠される形であった。敵の侵入を防ぐために隠してあるのだ。

 すぐさま光学迷彩の技術で隠され、下降していった。

 

「じゃあ、ここから一番近い都市はどこだ? ボロ」

「回答。ここから北東に五百キロ進んだところにソドルという街。そこに向かう事を推奨」

「わかった。じゃあ飛ぶか──<スカイジェット>起動!」

 

 イナの背中が開いて中からロケットエンジンが二丁出てくる。

 ロケットエンジンが噴射することで空へと飛びあがった。

 最大時速マッハ十で飛べる飛行能力だ。といってもマッハ十は直線状の場合に限るが。

 

 ボロもそれにどうやってか遅れて着いて行く。

 約三分ほどで目的地のソドルの街に辿り着いた。

 

 ファンタジーにありがちな城壁の類はなく、代わりに人の腰程度までの高さの木の柵で囲われている。

 街並みは石造りの街で洋風だ。

 

 その前にズドンと着地、あるいは着弾しクレーターを残した。

 イナはクレーターから跳躍し這い上がる。

 

「おお、街だ」

 

 イナは興奮し、ボロに写真を撮らせつつ街へと進む。

 ソドルへと歩いて行くと街から何人かの武装した者たち──冒険者たちがやってきた。

 

 冒険者。百年前につくられた冒険者ギルドという組織に属する者たち。

 この世界にはモンスターという脅威が存在する。

 ダンジョンから湧き出る異形の怪物たち。亜人種や異形種などのクリーチャーだ。

 それらに抵抗するためにこの大陸の国家連合が作り出した組織だ。

 AからFランクまでの階級制。ランクが一つ違うだけで戦闘力は大きく変わる。

 

 このソドルという街の近くにはダンジョンがある。命夜廃坑というダンジョンだ。そのダンジョンからの産出品でこのソドルを維持している為冒険者も多い。

 冒険者たちは武器を抜いてイナの近くに来た。

 

 ある程度距離をとりながら集団の中からリーダー格……この街で最高位のBランク冒険者の男がイナに話しかけた。

 

「お前はなんだ、何者だ? さっきの音はお前か?」

 

 人間大の物がマッハ十で動けば当然轟音が鳴り響く。その音を聞いたのだ。あと着弾音。

 

「えーと、はい。そうです。空飛んでここに来ました」

「この街に何の用だ? 何をするつもりだ?」

「この街で冒険者登録して、路銀を稼ごうと思ってきました」

「……なんでこんな登場をした?」

「ここまで距離会ったんで空飛んで来たら必然的にこうなりました」

「えぇ……?」

 

 おいこいつどうする、と冒険者の男は他の者たちと相談を始めた。

 あまりにも怪しすぎる女である。貴族や商人を連れている訳でもないのになぜかメイド服を着ているし。

 更には浮遊している箱という明らかに機械文明の何かを連れている怪しさMAXの女だ。こんなの街にいれたら殲滅されそうである。

 

「……どうする?」

「追い出そうぜ」

「けどそれやったら敵対してこないか?」

「そもそもあんな轟音立てて飛んでくる時点でまともな奴じゃないから敵対してくるなら最初からしてるだろ」

「下手に機嫌損ねたら首ねじ切られそうなんだが」

「……監視つけるか?」

「それしかないんじゃないか?」

 

 などと冒険者たちは話し合い、最終的にこの場のリーダー格の男、マックスが監視をすることになった。

 

「それじゃあ……あー、まずあんた、名前は?」

「俺はイナ。こっちの四角いのはボロだ」

「そうか、じゃあイナ、一応街に入れてやるが……変なことするなよ。したら即たたっきるからな」

 

 マックスは腰に下げた剣に触れ、イナを睨んだ。

 イナにとってみれば雑魚、虫がなんか言ってる程度にしか感じなかったので「そうか」とだけ返しておいた。

 

「ついて来い」

 

 そうしてイナは異世界の街に踏み入れたのだった。

 

 

「おー」

 

 イナは街に入ると感嘆の声を漏らした。

 イナの中の人は国外旅行になど行ける金を持ってない貧乏人だ。

 日本以外の街並みが面白くて周囲をきょろきょろと見渡してしまう。

 その行動に若さを感じなんだいこいつ……とマックスは更に警戒心を強めた。

 

「それで、冒険者登録だったな。ギルドはこっちだ」

 

 取りあえず案内してやるかとマックスが先導する。

 

「さんきゅー」

 

 イナはそう言ってマックスに着いて行く。

 

(しかしほんとに外の人と言葉通じるんだな。加護ってすげぇ)

 

 この世界の住人は言霊の加護という物を持っている。

 これはどんな言葉でも通じるという言語理解の力だ。

 といっても相手の悪意や害意までわかるようなものではないが。

 それにより日本語を話しているはずのイナでも言葉がわかるのだ。

 文字については事前にこの大陸の言語をインストールしてあるので読み書きも問題ない。

 

 少し歩く事でギルドに辿り着いた。

 ギルドは二階建ての建物だ。横に大きい。

 

 ウェスタンドアを開けて中に入る。

 

 中はテーブルと椅子が幾つかあり、奥には受付が三つほどあった。

 

「登録はどこの窓口だ?」

「どこでもいいぞ」

 

 そうか、とイナは近くの受付に進んだ。

 受付には禿げた男が座っていた。

 

「冒険者として登録したいんだが」

「……わかった。登録料千セラだ」

 

 セラというのはこの大陸共通の通貨の事だ。

 だいたい一セラ一円で、日本と同じ紙幣を使ってもいる。

 

 イナはディから貰った一週間分の生活費から千セラ紙幣を出す。

 マザーは資金を持っていない。やろうと思えば地下にいるし超科学で宝石を生み出すことも出来るがそれをすると市場破壊になるのでディから禁止されている。

 貴重な千セラである。

 

「はい毎度。この書類に名前と職業を書け」

「わかった」

 

 イナは渡された書類に名前と職業、性別と年齢を書く。

 文字の読み書きは言語と翻訳機能をインストールしてあるので問題なく書ける。

 

「書けたぞ」

「おう……歳は十七、職業ガンナー……お前銃使うのか。金持ってんな」

 

 この世界にも銃がある。

 といっても大半がダンジョンから産出される魔法道具(マジックアイテム)であり二百年以上前から銃はある。

 この世界の銃はだいたい三つに分けられる。

 実弾を放つ物。一日の使用回数制限があるもの。魔力を消費する物。

 中には三つフルセットの仕様を持つ銃などもあるので一概には言えないが大体この三種だ。

 イナが持つ銃は一番目であり、実弾を消費する。

 ただ銃その物を魔法道具(マジックアイテム)にすることで攻撃に魔法道具(マジックアイテム)の武器と同じ仕様のダメージを与えれるようになっている。

 この世界魔法や魔法効果の付いた武器による攻撃以外無効化する敵も居るので魔法効果の付いた攻撃手段は必須だ。

 

「ああ。これでも銃の名手だぜ」

「名手は自らそう言わないもんだ。まぁいい、ほら、これがプレートだ」

 

 受付の男がテーブルの下から木の板を取り出しイナに渡した。

 

「ランクが上がることにプレートは変わっていく。次は銅、その次は鉄といった具合にな。まぁ、せいぜい頑張れや」

「おう。それじゃ早速依頼を受けてくるぜ!」

「あー、待て。Fランク冒険者は最初自分で依頼を受けることは出来ねぇ。こっちで用意する」

「え、なんで?」

「実力不明コネ無い経歴もよくわからん奴にいきなり依頼受けさせて実際に達成できるかなんてわからねぇだろうが。だから最初の内はこっちで面倒見てやるんだよ」

 

 優しいことである。といってもこれは余裕があるからできる事だ。

 ソドルではこうしているが他の街では放置することもある。

 

「わかった。じゃあ何が出来るんだ?」

「ダンジョンのボーダー……荷物持ちだ。パーティもこっちで選ぶ。選択肢はねぇぞ」

「わかった。荷物持ちぐらい軽くこなすさ」

「大言壮語じゃなければいいがな。おいマックス、お前のパーティで使ってやれ」

「え、俺のとこで?」

 

 マックスが聞いてないんだがと顔をしかめた。

 

「お前が連れてきた時点でこいつは只者じゃないんだろう。それを使えるか判断するにはこの街一番のパーティがいい」

「それもそうだが……はぁ、わかった」

 

 マックスはそれはそれは嫌そうな顔をして了承した。

 

「それじゃあ早速ダンジョン行こうぜ!」

 

 イナが笑顔でそう言い、マックスはその笑顔に少しくらっと来た。

 美人は得である。

 

 

 

 

 

 ■

 

 十分後。命夜廃坑の前にて。

 マックス率いるパーティ、プサイロンドの者たちとイナとボロが集まっていた。

 

「えー、これからダンジョンに入るが……今日はボーダーが居る。自己紹介しろ」

「はい。俺はイナ、今はボーダーとしてきたけど銃も使える。こっちはボロ、俺の……なんだ? 仲間? 従者? だ」

 

 イナはよろしくと小さく頭を下げた。

 

「はいはーい! 質問します! なんでメイド服着てるの?」

 

 金髪のチャラそうな軽装鎧を纏った男が問いかけた。

 背中には弓を持ち腰には短剣を差している。

 このパーティのシーカー役、パウルだ。

 

「メイド服着てるのはこの格好が似合うからだ!」

 

 きらっ★とイナはポーズをとった。

 

 その行動にこのパーティ唯一の女がイラついた。

 

「そんな恰好でまともに探索できると思ってるの? 冒険者は遊びじゃないんだよ」

 

 紫のローブを被った小柄な女だ。右手にはねじ曲がった鉄の杖を持っている。

 

「この格好割と動きやすい作りだから大丈夫! この格好で戦闘訓練もこなしたからな!」

 

 イナは小さい胸を張った。

 胸では勝ったな、と少女……アンナは小さくガッツポーズした。

 

「まぁ、おじさんとしてはこんな若くてきれいな子が冒険者目指してるってことを憂いちゃうんだけどね……冒険者が辛い仕事だってわかってるの?」

「そういうのはわかってる。俺旅に出たいから生活費稼ぎなら旅するなら冒険者がいいかなって思って」

「わかってるならいいけど……」

 

 心配そうな顔をしているのは森司祭(ドルイド)のルドルフだ。

 革の軽装鎧を纏っている。腰には剣ではなくメイスを下げている。

 

「ていうか荷物持ちなのにバッグ一つ持ってないが大丈夫なのか?」

 

 マックスが気になったことを問いかけた。

 

「大丈夫だ。うちのボロが異空間に収納できるからな!」

「てことは<小空間>(ポケットスペース)持ちか。容量は?」

 

 <小空間>(ポケットスペース)とは異空間に物資を仕舞うことが出来る魔法だ。

 容量は術者の技量に依存する。

 

「……どれぐらい入るんだ?」

「回答。容量は二千トン。現在の容量は三百キロを使用中」

「だって」

「……待て、二千トン? トンって、千キロの事だよな……どんだけ持てるんだ……こわっ……」

 

 マックスプサイロンドの一行は容量の大きさに怖くなった。

 

「ま、まぁ、それじゃあ命夜廃坑探索と行こうか」

 

 こうしてダンジョン探索が始まった。

 

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