暗殺教室ー月は何を見るかー   作:TKTK(2K2K)

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旅行の時間

理事長の思惑が炸裂した中間テストが終わり、しばらくゆっくり出来るかと思ったが体育の時間に烏間先生から全員集合の号令がかかる。

 

「さて、知っての通り来週から京都2泊3日の修学旅行だ。」

 

「あ…」

 

すっかり忘れてた。

いつもならすんなり過ぎて行った4月に味の濃い出来事が多過ぎて、中学生らしい行事の事を記憶の彼方に投げ捨てていたのだ。

 

「君等の楽しみを極力邪魔はしたくないが()()()()()()。」

 

「…てことは()()()でも暗殺?」

 

「その通り。京都の街は学校内とは段違いに広く複雑、しかも…君達は回るコースを班ごとに決め、奴はそれに付き添う予定だ。」

 

「…?」

 

暗殺と言っても人の視線がある所でナイフやエアガンを取り出す訳にもいかないだろう。

白利は手をあげて質問する。

 

「烏間先生、他の観光客の前でナイフやエアガンで殺せって訳じゃ無いですよね?」

 

「あぁ、君達にやってもらいたいのは奴の陽動だ。先ほども言ったが京都は段違いに複雑、狙撃手(スナイパー)を設置するには絶好の場所(ロケーション)。既に国は狙撃のプロ達を手配したそうだ。」

 

(なるほど…スナイパーが狙撃しやすい場所を選びつつ、殺せんせーの気をそらせる観光地を巡れって事か。)

 

「成功した場合、貢献度に応じて百億円の中から分配される。暗殺向けのコース選びを頼む。」

 

「「「はーい」」」

 

 

 

そんな話から数日が経ち。

 

「渚、月乃君、班の人数そろった?決まったら学級委員の私か磯貝君に伝えてね。」

 

「…班?」

 

片岡の問いに思い当たらない渚が困惑する。

そんな渚に

 

「忘れたの?来週の修学旅行のだよ♩」

 

「烏間先生が説明してたろ?」

 

茅野と白利が手に持った京都のガイドブックを見せつけるように広げる。

 

「あ…そっか。」

 

「まったく…3年生も始まったばかりのこの時期に総決算の修学旅行とは片腹痛い。先生、あまり気乗りしません。」

 

殺せんせーの呆れたような声が響き、少しムッとしながら殺せんせーの方向を向くと

 

山のように積まれたリュックサックの塊が横に置いてあった。

 

「「「ウキウキじゃねーか!!」」」

 

「どの口で言ってんだアンタ!!」

 

「たかだか修学旅行に荷物デカすぎ!!」

 

「明らかに必要ない物入ってるし!!」

 

リュックサックの山をよく見ると中には、ラジコン、けん玉、ロールケーキ、こんにゃく、ゲーム機、ネギに大根、プラモにミニ四駆など明らかに必要ないものが大量に詰め込まれていた。

 

「…バレましたか。正直先生、君達との旅行が楽しみで仕方ないです。」

 

頬を赤らめる殺せんせー、『初めからそう言えば良いものを…』と誰もが思ったが口には出さなかった。

 

 

 

「月乃、一緒の班にならない?杉野も誘ってあるよ。」

 

「良いぜ、さんきゅ。」

 

「おっ月乃も一緒かぁ〜やったぜ!」

 

「よろしくな杉野。」

 

班のメンバーを決める用紙を持った渚が名前の欄にそれぞれの名前を書き込んでいく。

今決まってるメンバーは渚、杉野、白利、茅野と

 

「あ、奥田さんも誘った!」

 

どうやら茅野が奥田を誘っていたそうだ。

手早く渚が書き込む。

 

「7人班だからあと男女1人ずつか。」

 

「あっそうだ。」

 

どうやら渚が思いついたようで席に座ったままのカルマのもとへ向かう。

 

「カルマ君!同じ班にならない?」

 

「ん、おっけ〜」

 

二つ返事で了承するカルマ。

確かにカルマなら気心も知れているし問題ないだろう。

と、そこで杉野が声を漏らす。

 

「ええー大丈夫かよカルマ、旅先でケンカ売って問題になったりしないよな?」

 

「へーきへーき。」

 

そう言うとカルマは懐から一枚の写真を取り出す。

そこにはボコボコにされた男子学生とゲンナリした女子学生が身分証を持って、にこやかなカルマに肩を組まれていた。

 

「旅先のケンカはちゃんと目撃者の口も封じるし、表沙汰にはならないよ。」

 

「おい…やっぱやめようぜあいつ誘うの!?」

 

「まぁ…基本カルマからケンカ売る事はそこまで…たぶん無いから…売られたケンカは買い占めるだけだから…」

 

「余計怖いよ!!」

 

杉野が恐怖のあまりガタガタ震えている。

何故だかカルマに悪魔の角と尻尾が生えているように見えた。

 

「それでカルマも入ったし後は女子1人か。」

 

「へっへ〜オレをナメんなよ、この時のためにだいぶ前から誘っていたのだ!」

 

杉野が笑顔で手招きした相手は

 

「クラスのマドンナ神崎さんでどうでしょう!」

 

「おぉ〜異議無し!」

 

「よろしくね、皆。」 

 

『神崎有希子』真面目でお淑やかでおまけに美人。

クラスの全員から好かれている彼女を引き込むとは杉野もやり手である。

 

「…杉野、お前まさか。」

 

「な、なんだよ月乃?」

 

「だいぶ前からって言ってたが…神崎さんの事狙ってるなぁ?」

 

「うぐっ!?」

 

図星を突かれた杉野の脇腹を膝でグリグリしていると

 

「月乃。」

 

「ん?速水と千葉か、どうした?」

 

「月乃が班決まってなかったら誘おうって思ったんだが…決まっちまったか?」

 

「すまない、先に渚に誘われてちまってな。」

 

「…そう、ごめん気を使わせた。」

 

謝罪の言葉を発し、千葉と速水が去っていく。

 

「…いいの〜月乃君?」

 

「何がだ?」

 

「せっかく速水さん達に誘われてたのに勿体無いな〜って。」

 

「先に渚に誘われたからな、無碍には出来ねぇよ。」

 

カルマと渚は顔を見合わせ『ダメだこりゃ…』と呆れたのだった。

 

 

 

皆がガヤガヤとどこへ行こう、どこで暗殺をしようと考えている中、ビッチ先生は腕を組み白利達に近づいてきた。

 

「フン、皆ガキねぇ。世界中を飛び回った私には…旅行なんて今更だわ。」

 

「じゃあ留守番しててくれよイリーナ先生。」

 

「花壇に水あげといてね〜」

 

「俺、本能寺行ってみたいな。」

 

「僕は近江屋跡地行きたいな。」

 

「こっちも楽しそうだね。」

 

「私、八坂神社行きたいです!」

 

「そのルートだとだいぶ歩くことにならない?」

 

「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

 

「行きたいのか行きたくないのか、どっちなんだよ面倒くさい!!」

 

無視されるのが嫌だったのか胸から銃を取り出し構える面倒くさいビッチ先生に呆れていると、

 

ドンッ!

 

と机の上に分厚い辞書のようなものが置かれた。

横を見ると、分厚い本を大量に持った殺せんせーが立っている。

 

「1人一冊です。」

 

「何これ?かなり重いけど…」

 

「修学旅行のしおりです。」

 

「こんなん持って旅行できるか!」

 

表紙に『修学旅行のしおり』と書かれた本は、分厚いし重いと嵩張る原因にしかならない邪魔な物と化していた。

 

「イラスト解説の全観光スポット、お土産人気ランキングトップ100、旅の護身術入門から応用まで、昨日徹夜で作りました。初回特典は組み立て紙工作金閣寺です。」

 

「最早しおりでもなんでないだろそれ!!」

 

「揃いも揃ってうちの先生は!!」

 

「大体殺せんせーなら京都まで1分くらいで行けるでしょ?」

 

「もちろん、ですが移動と旅行は違います。皆で楽しみ、皆でハプニングに遭う。先生はね、()()()()()()旅ができるのが嬉しいのです。」

 

「…そうかい。」

 

3-Eは暗殺教室。

普通よりも濃い時間になるであろう修学旅行に白利も心を躍らせた。

 

 

 

 

 

時は流れ修学旅行当日、東京駅

 

A組からD組はグリーン車、E組は普通車で移動することになる。

『学費の用途は成績優秀者に優先される』椚ヶ丘にはそんな素敵な校則が存在するのだ。

 

電車に乗り込み、出発したがふと気づく。

 

「殺せんせーどこ行った?」

 

「たしかに…どこに…」

 

渚が何気なく窓に視線を向けると

 

「うわっ!!」

 

窓に殺せんせーが張り付いていた。

急いでスマホを取り出し殺せんせーの携帯に電話をかける。

 

「なんで窓に張り付いてんだ国家機密!」

 

『いやぁ…駅中スウィーツを買っていたら乗り遅れまして…次の駅までこの状態で一緒に行きます。あぁご心配なく、保護色にしてますから服と荷物が張り付いてるように見えるだけです。』

 

「それはそれでダメだよ!!」

 

なんとか大事にならずに次の駅に着き、殺せんせーを急いで乗せる。

 

「いやぁ疲れました。目立たないように旅するのも大変ですねぇ。」

 

「駅中スイーツなんか買ってるから遅れんだよ…」

 

「ただでさえ殺せんせー目立つのに…」

 

先週ほどではないが大きなリュックサックを持って来てる上、スイーツを買い漁ったのでさらに別の袋を大量に積んでいる殺せんせーに頭を抱える白利と速水。

 

「てか国家機密が平気で駅中を歩き回るなよ。」

 

「その変装も近くで見ると人じゃないってバレバレだし。」

 

「……殺せんせー、ほれ。」

 

殺せんせーを詰めていると、菅谷が何かを殺せんせーに投げ渡す。

 

「これは…鼻?」

 

「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ、俺そんなん作るの得意だから。」

 

「へー凄いな菅谷。」

 

「うん、焼け石に水ぐらいには自然になった。」

 

「マイナスがプラマイゼロになっただけだけどな…」

 

 

 

 

 

 

 

「月乃、何してるの?」

 

「ん?これ読んでた。」

 

殺せんせーに一頻り構った後、席に戻って本を読んでいると速水がやって来た。

速水に本を持ち上げて表紙を見せると『修学旅行のしおり』

 

「それ…持って来たんだ…」

 

「まぁ一応な。宿に置いていくつもりではあるけど…」

 

「私、自分で日程まとめちゃったから読んでないや。何書いてあるの?」

 

速水が白利の隣の席に腰を下ろして本を覗き込むので、読みやすいように少し速水側に本を寄せる。

 

「なんでも書いてあるぞ。ほら、『京都で買ったお土産が東京のデパートで売ってた時のショックからの立ち直り方』とか。」

 

「『お土産を買ったのではありません。思い出と経験を買ったのです。』何手先を想像してるの…?」

 

「他にも『鴨川の縁でイチャつくカップルを見た時の淋しい自分の慰め方』とか。」

 

「『自分は平安貴族だと自分に言い聞かせましょう。平安貴族の求愛は人目を忍んで行うのですから、今この場で1人ぼっちでも何ら不自然ではありません。』……なんか無性に腹が立つ。」

 

速水と2人で読みながらペラペラとページをめくっていく。

 

他にも

 

『財布に二千円札しか無い時』

 

『五重の塔が倒れて来た時』

 

『クラスメイトが拉致られた時』

 

など、本当に必要か?と思えるほどの対処法が書かれていた。

 

「なんか…心配性ってレベルじゃないだろこれ…」

 

「それにこれ『クラスメイトが拉致られた時』って…」

 

「試しに見てみるか?…あ、拉致実行犯潜伏対策マップってのがあるぞ。」

 

「ちゃんとご丁寧に書かれてる…でもコレ…」

 

『やっぱ持ってくるもんじゃなかったな』と白利と速水は苦笑いするのだった。




ご覧頂きありがとうございました!

【月乃白利の秘密】

友達との修学旅行にワクワクしている
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