拉致事件が解決し、その後も旅行を続けて修学旅行2日目も幕を閉じ。
旅館へと戻り、食事と風呂を済ませたカルマを除く白利達は旅館に設置されている館内ゲームコーナーへ訪れ、そこで
「神崎さん凄いな…!的確に弾を撃ちながら自機の当たり判定ギリギリを攻めて相手の弾を避けてる…!」
「恥ずかしいな、なんだか。」
「おしとやかに微笑みながら手つきはプロだ!!」
神崎がシューティングゲーム筐体の前に座りプロ顔負けのレバー捌きを披露していた。
頬を赤く染めながらも、レバー捌きとボタンを押す指は鈍らず画面を埋め尽くす弾幕を避け、ボスを撃破する。
「すごい意外です、神崎さんがこんなにゲーム得意だなんて。」
「…黙ってたの、遊びが出来ても
「…まぁ、そんな事してる暇あるなら勉強しろだの言われるわな。」
「うん…でも、周りの目を気にしすぎてたのかも。服も趣味も肩書も逃げたり流されたりして身につけてたから自信が無かった…殺せんせーに言われて気づいたの、大切なのは中身の自分が前を向いて頑張る事だって。」
これが神崎が抱えていた一面なのだろう、だが殺せんせーの言葉で前を向いて進む事にしたようだ。
「…そんな事言いながら裏ボス出現の手順踏んでるの流石だな。」
「月乃君もゲームやるの?」
「やり込むまではしないけど格ゲーとかは結構やるぜ、カルマもゲームやるタイプ。」
「じゃあ次、隣の格闘ゲームで対戦しよっか。えーと…10先で。」
「オッケー、負けても恨みっこなしだぞ。」
この後死ぬほど神崎にボコボコにされる白利なのだった。
神崎にプライドをへし折られた後、白利、渚、杉野は岡島と合流し、旅館内を歩いていた。
「しっかし、ボロい旅館だよなぁ。」
岡島の言葉を聞き、見渡してみると床板は割れ、階段や壁にはヒビもありお世辞にも美しい旅館とは言えない所だった。
「寝室も男女大部屋2部屋だし、E組以外は個室だそーだぜ。」
「いーじゃん賑やかで。」
「そうそう、修学旅行で1人部屋って結構味気ないぜ?」
ブツブツと不満を漏らす岡島の言葉を聞きながら歩いていると、男湯の暖簾の前に佇む中村と不破がいた。
「中村さん達なにしてんの?」
「しっ!!決まってんでしょ、覗きよ。」
「覗きィ?それ
「かってにそんな
「アレを見てもそれが言える?」
中村が暖簾を掻き分け、その先を指差すとそこには殺せんせーの服がハンガーにかけられていた。
「なるほどな、風呂場に殺せんせーの服がかけてあって殺せんせーは風呂場にいるって事は…」
「えぇ今なら見れるわ、殺せんせーの服の中身。首から下は触手だけか、胴体あるのか、暗殺的に知っていても損は無いわ。」
「……この世にこんな色気ない覗きがあったとは。」
中村の先導の下、物音を立てないよう全員で風呂場の扉に近づいていく。
速る心臓の音を抑えながら、中村がゆっくりと風呂場の扉を開けると…
「「「女子か!!」」」
「おや、みなさん。」
泡風呂に入り、触手をブラシで洗っている殺せんせーがいた。
「なんで泡風呂入ってるんだよ…」
「入浴剤禁止じゃなかったっけ…」
「これ先生の粘液です、泡立ちの良い上にミクロの汚れも浮かせて落とすんです。」
殺せんせーのなんとも便利な身体に若干呆れながらも対先生ナイフを取り出す。
「まぁここまで来たんだ、せめて殺せんせーの裸は拝ませてもらおうか?」
「そうはいきませんせー!」
「「「煮こごりか!!」」」
殺せんせーが立ち上がると、粘液が混じった事でお湯がゼラチン質になったのか
浴槽の形をしたゼリーが殺せんせーの身体を隠し、殺せんせーは風呂場につけられた小窓から器用に逃げ出した。
その姿を見て白利達は唖然と立ち尽くすのみだった。
「中村……この覗き空しいぞ。」
「………」
「修学旅行で皆の事色々知れたが…」
「うん、殺せんせーの正体は全然迫れなかったな。」
「大部屋でダベろっか。」
空しい殺せんせー覗き作戦は失敗に終わり、それぞれ大部屋へ戻ろうとした時白利はカルマに呼び止められた。
「月乃君ちょっと良い?」
「ん?どうしたカルマ。」
「いや〜月乃君、俺にテストの順位負けたじゃん?前に変な事言っても良いって言ってたよなぁ〜てさ。」
白利は『ゲッ…』と嫌そうな顔をする、確かに全校集会をサボった時にそんな会話をしたがよく覚えていたものだ。
「……はぁ〜なんだよ、何がしたい。」
「そんなに身構えなくて良いよ、ちょっとジュース奢ってってだけ。」
「しゃーねーなぁ…」
自動販売機へ向かうカルマの後を追う。
「そういえばカルマ、お前後頭部は大丈夫か?」
「あー鉄パイプで殴られたとこ?へーきだよ俺結構頑丈だし。」
「……まぁ、お前がそう言うなら良いか。」
「さ、着いたよ。なに買ってもらおうかなぁ。」
ダベっていたらあっという間に自動販売機に着き、カルマは物色を始めた。
「お前そういうの好きだよなぁ。」
「だってせっかく京都に来たら飲みたいじゃん、月乃君も飲んでみる?」
「いらね、俺レモン系の飲み物苦手だし。」
大部屋へ戻る途中、カルマが白利に奢ってもらった飲み物を勧めてくる。
カルマが買わせたのは『レモン煮オレ』、白利はレモン系の飲み物が苦手なので普通のお茶を買った。
大部屋の扉を開けると、E組男子が一枚の紙を囲んで集まっている。
「何やってんだ?」
「月乃、カルマ良いとこ来たな。」
磯貝がその紙を持ち、2人に向ける。
紙には女子の名前とその横に正の字のカウントが書かれていた。
「お前らクラスで気になる娘いる?」
「皆言ったんだ、逃げらんねーぞ。」
「あ〜なるほど、修学旅行らしいな。」
木村と前原の発言で察した、どうやら気になる女子ランキングをつけているらしい。
どうやら今は神崎がトップのようだ。
白利が少し思案する中、カルマは先に答えた。
「うーん…俺は奥田さんかな。」
「お、意外、なんで?」
「だって彼女怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそーだし、俺のイタズラの幅が広がるじゃん。」
「……絶対くっつかせたくない2人だな。」
「奥田さんにヤベーの作ってもらって飲み物とかに混ぜ込んだりしそうだ…」
奥田が薬を作りカルマがばら撒く、というとんでもない景色を全員が幻視しつつ気を持ち直した千葉が口を開く。
「で、月乃はどうなんだ?」
「俺?俺は……」
『うーむ』と考え込む。
直近では格ゲーでボコボコにされた神崎や班を共にした茅野が浮かぶ、他には世話になってる学級委員の片岡や花壇の世話仲間である矢田や岡野が思い浮かぶが……
「俺は…速水だな。」
「お、理由は?」
「単純に射撃訓練で世話になってるってのが1番だがそれを除いて言うなら……単純に顔が好みだ。」
「「「はっ!?」」」
白利のあまりにストレートな発言に思わず大声を出す男子達。
「俺さ〜吊り目気味のクールフェイス好きなんだよなぁ。ゲームとかアニメでも顔が良いキャラ好きになっちまうんだよ男も女も関係なく。ま、もちろん性格も大事だけどな。」
「あぁ…そういうね…」
『ただの
「…ところで月乃君、君はアニメを嗜むのかい?」
「竹林、あぁ結構アニメとかはチェックしてるぜ。最近だと『俺の妹が突然広島ファンになったのは彼氏の影響に違いない件について』かな。」
「…ッ!?本当かい!僕のイチオシなんだよ!」
「マジか、なんだ結構趣味合うな俺達。」
仲良く語り始めた2人を尻目に磯貝は票を書き込んだ紙を持ち
「皆、この投票結果は男子の秘密な、知られたくない奴が大半だろーし。女子や先生に絶対に…」
全員を見渡すように視線を動かすと、部屋の入り口で正座をし何やらノートにニヤニヤと書き込んでいる殺せんせーがいた。
書き終わったのか『失礼しました』と丁寧に襖を閉めるのを見届け…
「メモって逃げやがった!!殺せ!!」
前原の声と共に全員がナイフとエアガンを手に廊下へ飛び出す。
「待てやこのタコ!!生徒のプライバシーを侵しやがって!!」
「ヌルフフフ、先生の超スピードはこういう情報を知るためにあるんですよ!」
「この下世話教師が!!」
時を少し戻して女子部屋ではビッチ先生を取り囲むように女子達の会話の声が響いていた。
「ねぇねぇ、ビッチ先生がオトしてきた男の話を聞かせてよ〜」
「あ、興味ある〜」
「それも良いけどせっかくのアンタ達の修学旅行でしょ?アンタ達の恋バナ…気になる男子でも良いわ、聞かせなさいよ。」
「気になる男子か〜」
「は〜い!烏間先生!」
「男子って言ってるでしょ、カラスマは除外。」
倉橋が烏間先生を挙げるが、ビッチ先生にあっさり除外させられる。
「カルマは?」
「今日は確かに頼りになったけど流石にちょっと怖いとかはあるよねぇ。」
「渚は女装すれば絶対世界とれる逸材だと思うのよね。」
「磯貝君は無難に完璧なイケメンって感じよね。」
女子達が男子の事をあーでもないこーでもないと言う中、ビッチ先生の視界にはあまり喋っていない速水が映った。
「凛香はどーなのよ?」
「私?」
「アンタ最近月乃といる事多いじゃない。」
「確かに、射撃訓練とか勉強してる所よく見るかも。」
「そういえば凛香、別の班だったのに電車でさらっと月乃君の隣の席に座ってたよね?一緒にしおり読んでたし。」
「ちょっと矢田…!」
気になる男子の話だったはずが、ビッチ先生の一言で速水と白利の関係について聞き出す尋問と化した。
ダンスをやっていた者同士仲が良い矢田にすら詰められている。
「で、どーなの!」
「…はぁ。」
観念したようにため息を一つ吐き、速水は口を開く。
「別に月乃が好きとか、そういう感情は無い。」
「「「えぇー」」」
「でも、他の人より月乃の事を頼りにしてる自覚はある。…月乃の方から私と友達になりたいって言ってくれたから、私は月乃の事を頼ってる。あくまで頼り頼られる関係ってだけ、これで良い?」
速水の答えに『嘘つけー!』『体育の時間の前に2人でアップしてるの知ってるんだぞー!』『男女の友情なんて成り立つ訳ないだろー!』とヤジが飛ぶ。
「ふーん…ま、良いわ。これ以上つついても何も出なさそうだし次は…」
そこでビッチ先生は気づく、女の園にさりげなく紛れ込んでいる黄色い巨体が
「おいそこォ!!」
ビッチ先生が指差す先、そこには普通に正座して聞き入っていた殺せんせーの姿が。
「いいじゃないですか、私も皆さんの男子評価聞きたいですよ。」
「殺せんせーはどうなの?自分のプライベートはちっとも見せないのに。」
「そーだよ!!人のばっかずるい!!」
「先生は恋バナとか無いわけ?」
「そーよ!巨乳好きだし片想いぐらい絶対あるでしょ!」
速水の一言で標的が殺せんせーに変わり、殺せんせーはタジダジになってしまい
「………」
「逃げやがった!!捕えて吐かせて殺すのよ!!」
無言で逃げた殺せんせーをビッチ先生の号令と共に廊下へ追いかける。
「いたぞこっちだ!!」
「にゅやッ!?しまった男女の挟み撃ちに!!」
場所が悪く、廊下の角で男女の挟み撃ちを喰らう殺せんせー。
どったんばったんと大騒ぎな中
「あ、月乃。」
「速水。」
2人は抜け出して、窓際へ寄る。
「大丈夫だった?そっちかなり大変だったって聞いたけど。」
「茅野達に聞いたのか。まぁな…まさか本当に拉致られるとは思わなかったよ。速水と読んだ『クラスメイトが拉致られた時』が役に立つとはな…」
「じゃあ…私のおかげ?」
「そうだな、速水のおかげかもな。あの時読んでなかったら助けに行くのが遅れてた可能性もある。」
「……そっか。」
嬉しそうに微笑む速水の顔を思わず見つめてしまう。
「………」
「…?どうしたの月乃?」
「ん〜?修学旅行楽しかったなぁって。」
「そうだね、明日が最終日なのが残念。…もう一回くらい行きたいね、修学旅行。」
「そうだな、…もしもう一回があったら、速水が良ければだけど今度は一緒の班になろうぜ。」
「…うん、良いよ。」
あるかもわからない未来を思いつつ、2人は星空を見上げた。
ご覧頂きありがとうございました!
【月乃白利の秘密】
速水の微笑む顔を見て不思議な感情が湧いた