暗殺教室ー月は何を見るかー   作:TKTK(2K2K)

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月乃白利の時間

生まれた時から俺の世界は真っ黒な箱の中だった。

 

乱雑に敷かれた布団と血のついた積み木、凹んだ壁、そして皮膚が擦り切れた腕の傷のことは今でも覚えてる。

 

血に塗れて、暴力に恐怖し、父親(アイツ)の気分を害さないように表情を消す(仮面で隠す)日々。

 

得体の知れない薬を打ち込まれて、視界が歪んで身体が麻痺して焼かれるような痛みに襲われる、そんな毎日に耐えられたのは母さんのおかげだった。

母さんの温もりだけが痛みを忘れさせてくれた。

 

……だけど、母さんは死んだ。

俺を連れて両親の元へ逃げた母さんは暴力で弱った身体と心労がたたって、目の前で死んだ。

 

今でも覚えてる、徐々に体温が失われて冷たくなっていく母さんの身体に…どうしようもない無力感が襲った。

 

最期まで母さんの笑顔を見る事が出来なかった、覚えているのは涙を目に浮かべて歪んだ顔だけ。

 

 

 

そこから…地獄のような毎日が始まった。

 

母さんが死んだ次の日、頭の中で声が響いて…同時に脳を有刺鉄線で縛られてるような激痛と腹の底から上がってくる不快感が襲いかかった。

 

脳がバチバチ痺れて、それが身体全身に広がって…激痛から逃れるために叫び続けたけど痛みは引かなくて、ずっと脳内で声が響いてた。

 

《そんなに辛いのなら忘れてしまえ》

 

《復讐を忘れるな》

 

《何者にもなれなかったお前に道なんてあると思うか?》

 

なんとなく気づいてた、この声は俺の本心なんだって。

…そして全て本心なら俺は誰なんだって…本当の俺はどれなんだってわからなくなった。

 

じーちゃんとばーちゃんは心配してくれたし、愛してくれていることもわかってた…けど、その目には月乃白利だけを映してなかった。

 

俺に…きっと『月乃満』の面影を感じて無意識に重ねてたんだろうな。

無理もないさ、2人だって目の前で実の娘が死んだんだ、責める気は無かったし、母さんを見殺しにした責任を俺は負わなければいけなかったから。

 

 

 

その後は…復讐をやり遂げる為に、そして母さんの代わりとしてじーちゃんとばーちゃんを支える為に…とにかく生きなきゃいけないと思った。

 

まず最初に取り組んだのは人格のコントロールだった、思考も発言も表情も肉体の操作も、全部誰にも悟られないように押し込めて取捨選択する方法を身につけて。

 

まだ対話のできる月乃白利を纏って、ただ普通の人間のように振る舞うデコイとしての役割を果たそうとした。

 

 

 

…でも消した表情はそう簡単に元には戻らなくて、小学校では誰にも話しかけられることも話しかけることもなく、…友達なんかできるわけなかった。

 

逃げ出したってのに…結局、箱の中から出れず仕舞いだった訳だ。

 

椚ヶ丘でもきっと同じだと思ってた…けど、渚と出会った。

 

俺の初めての友達、中々表情を表に出さない俺に声をかけ続けてくれた唯一の存在で…渚はそんなつもりじゃなかったんだろうけど、俺に色んなことを教えてくれた。

 

遊んで、勉強して、笑って。

 

本当、なんで仲良くなれたんだろうな?って今でも疑問に思っちまう。

 

そしてカルマと知り合って、首突っ込んで喧嘩して、家に行ったりして、本当に楽しかった。

 

敵意の無い渚と踏み込んで来るカルマには…人格は隠したままだったけど仮面を取った月乃白利のままでいれて、真っ黒だった俺の世界()の中で星のように眩しいくらい輝いてた。

 

 

 

そんな狭い世界にも3年になって、転機が訪れた。

 

月を破壊した殺せんせーがE組にやってきて、防衛省から暗殺を託されて、烏間先生からナイフ術や体術を教えてもらえることになった時、

 

《これはチャンスだ》

 

って、10年も経って余分な感情(モノ)を捨てて磨き続けた復讐心(殺意)が熱を持ったのを感じたんだ。

 

始めは全てを利用するつもりだった。 

 

暗殺で学んだもの全てを、殺せんせーも速水達も全部復讐の踏み台にする………そうするはずだったのに…

 

『君なりのペースで歩み寄れば他の皆も月乃君の良さに気付いてくれるでしょう。』

 

『見た目や噂に流されず、しっかり彼自身を見てあげて下さい』

 

初めてだった…月乃満の影でも表面上の月乃白利でもない、1部分だけとはいえ『箱の中の月乃白利』を初めて見てくれたのは……地球を破壊する怪物だったんだ。

 

手を伸ばしてくれたのが、すごく嬉しかった。

 

楽に…なりたかった、なりたいと思ってしまった…そんなこと許される訳無いのに『この先生ならきっと受け入れてくれる』って。

 

E組はどんどん居心地が良くなって、表情を隠した仮面なんていつのまにか壊れていて、毎日が楽しくて、いつしか『月乃白利(デコイ)』は『E組の月乃白利』として変わっていて、

 

俺を覆った世界()は開け放たれて、気づけば沢山の星に囲まれていた。

 

   俺の居場所はここなんだって()()()()()()()()()

 

 

 

《復讐を忘れることはお母さんを裏切ることだ》

 

《そこにいる『E組の月乃白利』は本当にお前なのか?》

 

囁く本心(言葉)に気がつかないように。

 

 

 

 

 

「……結局俺は『E組の月乃白利』ですらいれなくなったけどな。」

 

「………」

 

「でも大丈夫だ、元の…真っ暗な場所に戻るだけ……だから。とっくに慣れてる…から。」

 

子供が当然の権利として与えられるはずの『親の愛』を受けることなく生き続け、自己嫌悪と自己否定を繰り返し、復讐の炎で己を焼いて暗闇の中を1人彷徨い続けてきた。

 

…そして暗闇の中でE組()を見つけ、抜け出した。

 

それが月乃白利という人間なのだろう。

 

握る手にさらに力を込める、きっと離してしまえば白利はまた暗闇の中に戻ってしまうだろうから。

 

「…話してくれてありがとう、辛かったよね。」

 

でも、きっとこの話をしてくれたと言うことは白利は速水を頼ってくれたのだろう。

だから速水は彼の手を引いて、

 

「月乃はE組に戻りたい?」

 

「………」

 

「まだ…皆と一緒いたい?」

 

「……たい…」

 

「………」

 

「戻りたいよ…!やっと見つけた俺の居場所に…!でも、だからってこの殺意(思い)を捨てる訳にもいかないんだよ…!俺は月乃白利がわからない…それでもこの痛みは母さんが俺を愛してくれた証拠だってのはわかるから…!!母さんの息子の心なんだってわかるから…!!だから…!」

 

「捨てなくて良いの。」

 

「……え?」

 

これからも三日月に照らされた明るい道を歩けるように、

 

「切り離された月乃も自分に迷ってる月乃も関係無い、ただひたすらに自分を否定して、無理矢理縛りつけて、自分自身を傷つけるのをやめてあげて。ほんの少しで良い…自分を許してあげて、全部大切な月乃白利なんだから。」

 

優しい導きを。

 

「E組で見つけていけば良い、本当の月乃を、自分自身との向き合い方を。…それと忘れないで、E組にはそれでも月乃にいて欲しい人が沢山いるから…ね?」

 

見つめる速水の瞳はとても綺麗で、その言葉はとても優しくて、心が温かくなって。

 

「良いのかな…そんなこと…」

 

「良いの。」

 

「俺…E組に戻って…自分の居場所にいて良いのかな…?」

 

「うん、皆待ってる。」

 

締め付けられるような、だけどどこか心地の良い胸の痛みが身体を満たす。

 

「それに、私も月乃がいなきゃヤダなって思うから。」

 

「……なんだよ…それ。」

 

滑り落ちるように速水の腕から手が離れると、その手を優しく包み込んでくれて…速水の温もりは痛みを癒してくれた。

 

 

 

 

 

「はぁ〜、情け無いなぁ…俺。」

 

「そう?」

 

「ユキの時といい、速水に隠したい所を見られてる気がするから嫌なんだよ。」

 

少々悪態を吐きながらではあるがその口調はいつもの白利に戻り、正面から速水と向かい合っている。

 

「俺もさ、色々と多重人格について調べてたんだよ。そしたら『問題は複数の人格を持つということではなく、ひとつの人格すら持てないということなのだ』って言葉を見つけてさ、俺にぴったりだなって…いてっ」

 

持ち直したメンタルが再び落ち込みそうになると、白利の頭頂部に握り拳が緩やかに落とされた。

 

「月乃?」

 

「すんません……月乃白利を見つけられるのか、自分のことを許せるかはわからない…けど、頑張って向かい合ってみようと思う。」

 

「私も月乃のこと理解できてなかったから色々教えて欲しい、それに私のことをもっと頼って欲しい。」

 

「…俺は重いぞ?」

 

「だから私も月乃を頼る、だって私達友達でしょ?」

 

「そっか、そうだな…友達だもんな。あぁ、これからもよろしく速水。」

 

「うん、よろしく月乃。」

 

重ねた手をずらして手のひらを合わせながら力を込める。

まだ月乃白利(本物)はわからない、だがこの『E組の月乃白利』の心に従っても良いのだと今は思える。

 

「杉野達も来てくれたんだし謝りに行かないとな。」

 

「今は食堂にいるから一緒に行く?」

 

「ん…そうだな、早速頼っても良いか?」

 

「もちろん。」

 

2人揃って立ち上がる、ふと速水がある一点に目線を向けるので追うようにそちらを見ると白利の母『満』の仏壇があった。

仏壇に近づき満の写真を手に取って速水に見せる。

 

「結構似てるだろ俺と母さん。」

 

写真の中の満は少し若い頃のものなのだが、やや長い白い髪と切れ長の青い瞳を持ち、白利と並べると1発で親子だとわかるほど容姿が似ている。

 

「すごい綺麗なお母さんだね。髪の色はおんなじだし顔のパーツかなり似てるし………えいっ」

 

「ん?」

 

速水は満の写真と白利の顔を少し見比べた後、白利の瞳にかかる前髪を払った。

 

「月乃の目も同じ青色なんだ。」

 

「別に今までも見てきただろ?髪はちょっと伸ばし気味だったけど千葉みたいに完全に隠れてるわけじゃ無いし。」

 

「そうだけどそうじゃないって言うか…?」

 

「なんだそれ?」

 

曖昧な言葉に首を捻りながら母の写真を元の位置に戻すと、

 

「初めまして月乃のお母さん、息子さんにいつもお世話になっています。」

 

「……母さん、この人は速水凛香さん。俺が初めて自分から作った…大切な友達だ。」

 

速水が手を合わせて挨拶したのを見て、すぐさま手を合わせ母に友達の紹介をする。

母の声は聞こえないが、きっと聞いてくれてると信じて。

 

 

 

 

 

「……で、そこで月乃が言ったのは『良いと思う、可愛い』なんですよ!」

 

「俺がベース回ってる間にそんなことが…やっぱ気があるだろ月乃のやつ。」

 

「あのはー君が女の子にそんな事言ったの!?」

 

「白利はそういう事話さないから知らんかったが…そうかアイツもそんな歳か…」

 

「あんなに綺麗な子なら好きになるのもわかるけどねぇ、話を聞く限り凛香ちゃんも結構気がありそうだしくっつくのも遠くないかも知れないわね。」

 

「まだまだありますよ。この前だって…」

 

「千葉ァ杉野ォ随分楽しそうに人のこと話してるじゃねぇか。」

 

「「どわぁ!?」」

 

食堂に着くと何やら杉野達が祖父母や常連客達と楽しそうにお話ししていたので抱きしめるように2人の肩に腕を回す。

 

「つ、月乃…もう大丈夫なのか?」

 

「あぁ、心配かけてすまなかった。…あと、ごめんな?色々言ってくれたのに突っぱねちまって。」

 

「本当だよ、今度からちゃんと相談しろよな?勝手にいなくなるのは無しだぞ。」

 

「善処する……が、心配してた割には楽しそうに人のことについてお喋りしてたな?」

 

「「スーッ…」」

 

2人の首を両腕で絞める白利を見ていた速水の肩を暦がポンと叩く。

 

「凛香ちゃん、白利の事ありがとうね。」

 

「いえ、私がお願いして話させてもらったので気にしないでください。」

 

「謙遜するもんじゃないぞお嬢ちゃん。さて、白利も揃ったし4人で仲良くアイスでも食いなさい。」

 

「ありがとじーちゃん。」

 

十三は机にアイスを四つ置き、白利と速水は千葉達の対面に座り全員で手を合わせ、

 

「「「「いただきます!」」」」

 

器とスプーンを手に持ちアイスに舌鼓を打った。

 

 

 

「それで月乃は明日から学校復帰するんだよな?」

 

「そうだな、そのつもりではある。」

 

「なんだ煮え切らない言い方するな?」

 

「まぁその…吹っ切れはしたがそれはそれとして怖さがあると言うか…わかるだろ?」

 

この前のことを知らない祖父母や常連客がいるのでだいぶ濁した言い方で千葉達に視線を送る。

 

「あ〜なるほどな、確かに休んだ後の教室って入りにくいよなぁ。」

 

「なら、私が明日迎えに行こうか?」

 

「「「えっ!?」」」

 

その言葉に白利だけでなく千葉と杉野も素っ頓狂な声を上げながら首が千切れるのではという速度で速水に視線を向けた。

 

「は、速水…さん?どうして…でしょうか…?」

 

「どうせ通学する時に通るし、『やっぱり行けません』なんて言われたら困るし。」

 

「意地の悪い言い方するな…わかったよ!頼らせてもらいますよ!」

 

「ん。」

 

満足したのか速水は頷きながらバッグからクリアファイルを取り出して白利に渡す。

 

「これは?」

 

「月乃が休んだ分の授業を纏めたプリント、先生が渡してくれって。」

 

「本当にマメだなあの先生は。」

 

プリントを取り出して見てみると、

 

「………」

 

「月乃がすっげぇ微妙な顔してる…」

 

「何が書いてあるんだよ…」

 

一頻り目を通した後、書いてある内容に腹が立ったのでプリントを引き裂いて細切れにしておく。

 

「授業でなにやったのかはわかった、こんなんでもわかりやすいの無性に腹が立つ。」

 

「本当になにが書いてあったんだよ!?」

 

「杉野達が気にする内容じゃない。」

 

「……まぁ、気にはなるが元気になったなら良いか?それじゃ目標は達成したし俺達は帰るか。」

 

「そうだね、長居するのも悪いし。」

 

白利に合う大目標を達成した速水達は帰宅の準備をして席を立つ。

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

「お粗末さま。」

 

「皆今日はありがとね。はいこれ、もし良ければ次来た時使えるアイスのサービス券。」

 

「ありがとな、今日は正直かなり救われた。…また明日。」

 

「あぁ、また明日な月乃!」

 

「教室で待ってるからちゃんと来いよ?」

 

「じゃあ明日迎えに来るから。」

 

「マジで来るつもりなのか……わかった待ってる。」

 

3人に…喋りこそしてなかったが律も含め4人に手を振りながら『また明日』と別れを告げる。

 

「また明日…か。」

 

噛み締めるようにその言葉を呟く、まさか自分に明日があるとは思いもしなかった。

道路に出て背が見えなくなるまで手を振り続け、やがて見えなくなったところで『天ノ川』の入り口に顔を向けると、

 

「うっわぁ…」

 

祖父母達が好奇の目を白利に向けていた。

 

「それじゃあ白利、凛香ちゃんとのこと聞かせてもらおうじゃない?」

 

「まさかはー君に春が来るとは…子供の成長は早いねぇ。」

 

「しみじみしてんじゃねぇよ!別に俺と速水はそんな関係じゃねぇし!」

 

「「「ホントかなぁ?」」」

 

この後天ノ川の閉店時間までたっぷりと絡まれる白利なのであった。

 

 

 

 

 

今日も同じを時間に起きて弁当の準備を済ませて朝食を摂る。

自分との向き合い方はまだわからない、けれど頭と心はどこかスッキリとした初めての感覚にどこか物足りなさを感じなくもない。

 

「…そろそろか。」

 

縁側でのんびりしているとスマホには速水から『もうすぐ着く』との連絡が来た。

ちなみに律は空気を読んでか現れることはなく、『教室で待ってます』とだけメールが送られている。

 

「おはよう月乃。」

 

「よ、速水。」

 

インターホンを鳴らそうと玄関前まで来ていた速水と目が合い挨拶を交わす。

 

「良かった、ちゃんと行く意志があって。」

 

「行くだろそりゃ…なんか速水、だいぶ遠慮なく言ってくるようになったな?」

 

「そう?…友達だからいいでしょ?」

 

「友達は何言っても許される魔法の言葉じゃないんだよ。」

 

この前の事など何もなかったかのような明るい会話をしつつ、通学路を並んで歩いて行く。

 

休んでた3日間なにがあったのか、殺せんせーも烏間先生も申し訳なさそうにしてた事、ビッチ先生が白利の精神状態を案じていた事、さまざまなことを聞かせてもらいつつE組校舎前まで辿り着いた。

 

「ふー……」

 

校舎の扉に手をかけるが、ガタガタと震えて言うことを聞いてくれない手を速水の手が優しく包み込む。

 

「大丈夫、もし何か言われても私が守るから。」

 

「…カッコ良すぎないか?そのセリフ。」

 

「どう?落ち着いた?」

 

「あぁ、ありがとう…よし行くか!」

 

扉を開き靴を履き替え、そして開いていた教室の扉をくぐり、

 

「お、おはよーございまーす…」

 

「声ちっちゃ。」

 

限りなくか細い声で挨拶すると、全員の視線がこっちを向いて、

 

「久しぶり、月乃!元気そうで良かったよ!」

 

「言うて3日ぶりでしょ?ま、ちょっと長く休んだ感じかね?おは〜月乃!」

 

「よ、月乃!お前が鷹岡にビンタバシーンて当てた時スッゲェスッキリしたぜ!ありがとな!」

 

「ほら月乃、俺のオススメの本だ…お前にくれてやる!」

 

『月乃さんおはようございます!』

 

皆が白利に詰め寄り喜びの声をあげる事に困惑しつつ、とりあえず岡島の本は返却した。

 

「お前ら…」

 

「ヌルフフフ、しっかりと君が結んだ縁が力となりましたね。」

 

「殺せんせー…そっか、これが先生が言ってた力なのか。」

 

「えぇ、力とはなにも腕っぷしなどを指すだけの言葉ではありません。速水さんや千葉君と杉野君、律さん、そして今日とたくさんその力を感じたでしょう?」

 

「うん…そうだな、嫌と言うほど味わった。」

 

「それは結構!」

 

三日月型の口をさらに吊り上げ、白利の頭を触手で優しく撫でる。

 

「そしてこの前の事を謝らなければ。止める為とはいえ私は月乃君に…生徒に手を出してしまった、そして君が出したSOSに気がつけなかった…私は教師失格です。」

 

「謝らないでくれ、殺せんせーが止めてくれなきゃ俺はアイツを殺してたしここにも居られなかった。それに、俺がE組で友達を作れたのは殺せんせーのおかげだから…むしろ殺せんせーに感謝しないと、烏間先生とイリーナ先生にも。」

 

「別に感謝なんていいわよ、師匠(センセイ)との模擬暗殺の時アンタ応援してくれたでしょ?それでチャラって事にしてあげる。」

 

「元より防衛省(うち)が招いた事態だ、月乃君のことを見れていなかった俺の責任もある。だが…それでも、君さえ良ければこれからも力を貸して欲しい。」

 

「イリーナ先生…烏間先生…」

 

「これもまた、君が結んだ縁の力です。」

 

E組の皆と先生達、こんなにも多くの人の居場所に月乃白利は置いてもらえていたのだとようやく気づくことができた。

 

「これからも先生のことを殺しに来てくれますね?」

 

「もちろん、卒業までに殺すさ。」

 

殺せんせーが伸ばした触手に手を伸ばし、

 

「…にゅやッ!?」

 

その触手を袖に仕込んだ対先生ナイフで切り飛ばした。

 

「殺せんせーって表の殺意は感知できるけど裏の方は感知できないんだな。」

 

「た、多重人格をいきなり活用してる!?」

 

「まぁな、そう簡単に自分を見つけることはできないけど…向き合い方とかを色々考えようと思ったんだ、これはその一歩目。ま結局、殺せんせー殺さないと未来ないわけだし。」

 

袖からナイフを取り外している白利を見て、ガタガタと震えながら触手を再生させる殺せんせーを尻目にカルマが声をあげる。

 

「ねえ月乃君、結局本気出さない理由はなんだったの?殺せんせーからやり遂げたい事があるってのは聞いたけど、それってこの前の事だろうし。」

 

「あ〜…余裕が無かったってのもあるが…単純に殺意を鈍らせたくなかったんだよ、何かに夢中になって錆びないようにって。まぁ結局、3ヶ月しか経ってないこのクラスのせいで錆びまくったけどな。」

 

「なぁに〜?俺達のこと大好きってこと〜?」

 

「そこまでは言ってないだろ。」

 

「ごめんごめん、大好きなのは1人だけだもんねぇ。」

 

「おうカルマ表出ろや。」

 

「あれあれ〜?どしたのそんなに殺気立っちゃって、もしかして〜思い当たる人でもいるのぉ?」

 

「一回上下関係を『ストップ』……はい。」

 

売られた喧嘩を買おうとするが速水に引っ張られ大人しく従う白利の姿を見てカルマは『尻に敷かれてるねぇ〜』とニヤニヤ悪い顔をしていた。

…いつか絶対泣かす。

 

「ま、まぁ月乃君も無事復帰ということで、今日の日直は月乃君にやってもらいましょうか!」

 

「はいよ。」

 

たった3日しか空けていないはずなのにどこか懐かしさを感じてしまう自席にバッグをかけて、

 

「起立!!」

 

対先生ナイフを取り出し、

 

「気をつけ!!」

 

構えて、

 

「礼!!」

 

殺せんせーへと駆けて振り翳した。

 

 

 

月乃白利の暗殺教室は今日も始業のベルが鳴る!




ご覧頂きありがとうございました!

【月乃白利の秘密】

本当の自分はわからないが、今は『E組の月乃白利』として生きると決めた

【あとがき】

UA19000お気に入り300件とありがとうございます!まさか妄言垂れ流しがこんなに多くの方に見ていただけるとは…

物語の方はまだ1学期は終わってないし、特に区切りとかつけてる訳じゃありませんがここで第1章は終わりとなります。ナガカッタネ

この物語及び月乃白利の命題を発表しますと『壊れた月が満月へと戻る』というものになるのですがテスト対策の時のディケイド、アレ実は『本当の自分自身出会うため』(Journey through the Decade参照)を意識したものだったりします。

多重人格や復讐、自己意識のこともありますが、これから『E組の月乃白利』として過ごし共に試練を乗り越え、失った自分を取り戻す姿を優しく見守っていただければと思います!

皆さま、本当にご愛読ありがとうございました!!

【ちょっとした裏設定】

皆さんお気づきかも知れませんが月乃家の血統の名前は全員月から取っております。

十三→十三夜の月

満→満月

じゃあ白利は?と思われるかも知れませんが

白利→白月(古代インドの暦法で、月が満ち始めて(新月)から満月に至るまでの15日間の称)となります。

じゃあ『利』はなんやねんと思われるでしょうがこっちは本編でやると思います。タブンネ

重ね重ねではありますが、今までご愛読ありがとうございました!!そしてこれからもよろしくお願いいたします!!
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