暗殺教室ー月は何を見るかー   作:TKTK(2K2K)

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毎度ありがとうございます!

めちゃくちゃ私事ですが星の翼で魂のキャラが稲と秋雲に決まったのでブラホ目指して頑張ってます。(現在7300くらい)


期末の時間

期末テスト

 

椚ヶ丘中学校では成績が全て!

E組を誰に恥じる事もないクラスにする。そう目論む百億円の賞金首にとってこの期末は1学期の総仕上げ、決戦の場である!!

 

と、言うわけでE組は只今テスト対策の強化学習中であり木陰に集まり涼みながら殺せんせーの指導を受けている。

 

白利もまた問題集と向き合っているのだがペンは一向に進まず、ただ向き合って考え込んでいるだけである。

では何を考えてるのかというと、

 

(自分との向き合い方…か)

 

あの日速水に言われた『自分を許す』『自分と向き合う』ことについて思考を巡らせていた。

 

今も他の人格は息づいており確かにその思考も殺意も知覚しているが、かつての脳を縛り上げるような痛みも南雲と対面した時のような殺意の熱も無く、ただ不完全燃焼で燻っているような感覚。

 

(皆に多重人格であることも隠した殺意もバレてるからそこは楽だが…)

 

話す時に後ろめたさは一切無く『E組の月乃白利』でいられるのは嬉しい…が、それが許しや向き合いに繋がっているのかはイマイチわからない。

 

こういう時マンガなら『もう1人の僕』や『トラウマを抱えた幼い自分の幻影』と対峙し語り合う場面なのだろうが、白利の人格は結局どれも白利自身であり本人的には結局1人で立ち尽くしているだけなのだ。

 

「はぁ……」

 

ため息を吐きながら横に座っている速水に視線を向ける。

 

『殺意を捨てなくて良い』

 

その言葉にどれほど救われただろうか。

この殺意は南雲への憎悪であり母への愛だった、故に捨てられるわけがなかった。

 

(捨てるとか忘れるって選択肢しかないと思ってたんだけどな…)

 

白利の心に寄り添った言葉はとても優しくて新しい道を示してくれた、だが白利はその道の先にあるものを見出せていない。

 

寺坂が言っていた『目標もビジョンも無い』状態なのだ、村松に『身の振り方を考えろ』とよく言えたものだと思ってしまう。

E組にいる間はいい、だが卒業した後もこのままでいいのかと…どこかで割り切るべきではないのかと、

 

(殺せんせーを殺した先で俺は何をしたい…?)

 

考えれば考えるほど沈み込む泥沼、思考を巡らせすぎたせいかなんだか視界も身体もガクガクと震えて…

 

  乃!月乃!」

 

「……速水?」

 

「問題集にペンも進めず睨めっこしてたけど…殺せんせーの話聞いてた?」

 

「……ぜんっぜん聞いてなかった。」

 

「………はぁ。」

 

速水はまぁまぁデカめのため息を吐きながら殺せんせーが話していた内容を教えてくれた。

 

前回のように総合点で評価するのでは無く、最も得意な教科を評価に入れる事。

 

教科ごとに学年1位を取った者に答案の返却時触手を1本破壊する権利を与える事。

 

殺せんせーは触手1本失うと運動性能を20%失う事。

 

「…で、総合と5教科全てでそれぞれ誰かがトップを取れば6本触手を破壊できるって。」

 

「なるほどなぁ、()る気にさせるのが上手いなあのタコは。」

 

感心していると白利の周りにドサドサと教科書や問題集が積まれ、中間テストの時のように額にライダーカードを貼り付けた殺せんせーが目の前に立つ。

 

「月乃君、先生の見立てでは総合1位を問題無く狙える領域にいるのは君とカルマ君だと思っています。…さてそこで提案なのですが、ここらで一度()()でテストに臨んでみませんか?」

 

「本気で…か。」

 

殺意を鈍らせないように避け続けていた感情(モノ)だったが…見事に殺意は錆びまくっているので今更避けていても仕方無いだろう。

 

「わかった、浅野の奴を玉座から引き摺り下ろしてやるよ。」

 

「良い心意気です、ちなみに中間テストのこともあるので月乃君には少し範囲から外れたところも覚えてもらいたいのですが…」

 

「流石の理事長先生も狡いことを擦るタイプじゃ無いと思うが…ま、備えあれば憂いなしか。」

 

今は目の前のことに集中し、問題集とノートを開いて殺せんせーと向かい合いアドバイスや解説を聞きながらペンを進めているとふと殺せんせーが囁いてきた。

 

「ところで先ほどは随分浮かない顔をしていましたが大丈夫ですか?」

 

「…見られてたか。別に思い詰めてたわけじゃ無い、ただ少し…自分との向き合い方というか、自分について考えてただけだ。」

 

「そうでしたか…大いに悩みなさい、君に与えられた時間はたくさんある。今はわからなくても未来で気づく事もあるでしょう、その時に月乃白利として後悔しない決断をしてください。」

 

「月乃白利として後悔しない…ね、でも結局殺せんせー殺してからじゃないと未来がないんだよな。」

 

「ヌルフフフ、そうですねぇその未来の為にも暗殺もいつも通り…いえ、今まで以上に本気で取り組んでいきましょう!」

 

「おうよ。」

 

やっぱりこの教室はとても心地良く、楽しい居場所だ。

 

 

 

そんなこんなでそれぞれが殺せんせーの触手を狙い勉強していると、翌日磯貝が申し訳なさそうに全員に頭を下げていた。

 

どうやら昨日の放課後、図書室にてA組…浅野を除く五英傑とのイザコザで賭けをしたらしく全校生徒にこの賭けのことは広がっているらしい。

 

5教科トップをより多く取れた方が負けたクラスにどんな事でも命令できると。

 

「別に謝ることでもないだろ?勝ちさえすれば向こうに命令聞かせられるんだ、昔のE組(俺達)じゃないって立場をわからせるいい機会だ。」

 

「出たな時折見せる強者を引き摺り下ろそうとする月乃の悪〜い性格。」

 

「でもよ杉野、今回の俺はガチのマジで引き摺り下ろすつもりだぜ?目標は大きく総合と全教科で1位取って触手6本独り占めってとこか。」

 

「ヘイヘイつきの〜ん、私達だって負ける気はないよ?1教科限定なら上位ランカーは結構いるんだから、私だって英語は負けるつもりないしぃ?」

 

「私も理科だけなら大の得意ですから!月乃君にだって負けるつもりはありません!」

 

白利の全教科トップ目標に中村や奥田を筆頭としてクラス全員が目の色を変え『俺が』『私が』とトップを取らせまいと対抗心を燃やして声をあげていく。

 

「見ろ磯貝、これが今のE組だ。皆が殺せんせーを殺す為にトップ取ろうと勉強してて、そこにA組が加わってむしろ()る気は鰻登りってことだ。だから謝んないでくれ。」

 

「そっか…そうだな!よーし皆でA組に一泡吹かせよう!!」

 

「「「お〜!!」」」

 

「あと月乃!お前にも1教科くらい勝ってやる!」

 

「負けても文句は無しだぜ磯貝?」

 

「いいですねぇ、A組という共通の敵を見据えつつ月乃君という壁を越えようと皆で高め合いながら進んでいく、とても素晴らしいです!!……ですからカルマ君も真面目に勉強やりなさい!!君も充分総合トップを狙えるでしょう!!」

 

殺せんせーがピッと指差した先には教科書を顔に乗せ、いかにもやる気が無さそうに背もたれに体重を預けているカルマの姿が。

 

「言われなくてもちゃんと取れるよ、あんたの教え方が良いせいでね。それよりどーすんの?そのA組が出した条件って…なーんか裏でたくらんでる気がするよ。」

 

「心配ねーよカルマ、このE組がこれ以上失うモンありゃしない。」

 

「勝ったらなんでもひとつかぁ、学食の使用権とか欲しいな〜」

 

今度はA組に下す命令について色めき立つと、殺せんせーが待ってましたとばかりに懐から一冊の本のようなものを取り出しとあるページを開いて指差した。

 

「ヌルフフフ、それについては先生に考えがあります。さっき学校のパンフを見てましたがとっても欲しいものを見つけました。()()をよこせと命令するのはどうでしょう?」

 

「あ〜そんなのあったなそういや。」

 

「君達は一度どん底を経験しました。だからこそ次はバチバチのトップ争いを経験して欲しいのです。先生の触手、そして()()、ご褒美は充分に揃いました、暗殺者なら狙ってトップを()るのです!!」

 

 

 

それぞれの利害が交錯する期末テスト、ある者にとっての勝利は別の者にとっての敗北である!!

 

それぞれが自分にとっての勝利を求め…やってきた試験当日!!

 

 

筆箱を持ち本校舎のテスト会場へ向かうとそこには既に着席している1人の姿があったのだが…

 

「「「……誰!?」」」

 

髪型と制服には見覚えがあるが、顔は見覚えの無い誰かがポンコツAI()の席に座っていた。

白利達が会場の入り口で困惑のあまり硬直していると、見かねた烏間先生が口を開く。

 

()()だ、さすがに理事長から人工知能の参加は許されなくてな。ネット授業で律が教えた替え玉を使う事でなんとか決着した。」

 

眉間に皺を寄せ、額に冷や汗を浮かべながらプルプルと震える烏間先生の心労はいかほどだろうか。

 

「交渉の時の理事長に『大変だなコイツも』…という哀れみの目を向けられた俺の気持ちが君達にわかるか。」

 

「「「いやほんと頭が下がります!!」」」

 

理事長にすら哀れまれる烏間先生に全員で見事な直角のお辞儀をする。

 

「律と合わせて俺からも伝えておこう、頑張れよ。」

 

「はい!!」

 

律と烏間先生の激励を受け取り席に着く。

本来1人で受けるはずの試験だが、今回は多くの人と同じ舞台に立っているのを感じる。

 

共に闘う者達、

 

敵となる者達、

 

応援してくれる者達、

 

そしてその多くの者達に負けぬように、恥じぬようにと本気で磨き上げた武器を握り締め、殺し屋では無く今日は闘技者(グラディエーター)として、

 

戦いの場に身を投げた。

 

 

 

「随分な難問がやってくるもんだな。」

 

問スターのハンマーを回避しながら冷静に読み解いていく、辺りではラストの問題で多くの生徒達が潰されているようだが気にしている場合では無い。

 

「あれは…殺せんせーが言ってたサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を引用した問題…ってことは原文に沿った雑な口語体で書かなきゃ減点か。」

 

問スターの頭部を叩き潰して次の教科へと向かう。

 

「ダニエル電池が充電できてボルタ電池が充電できない理由…確かダニエル電池は逆向きの電流を流しても反応容器内に留まるけど、ボルタ電池は放電反応で正極から水素ガスが発生して系外に逃げるから逆向きの電流を流してもダメなんだったか。」

 

奥田を方を見ると問スターが自ら鎧を脱ぎ去って元気に奥田を乗せて走っていた。

 

「あれは国語力の賜物…なのか?」

 

その後も社会、国語とこなしていき最後の戦地、数学の舞台へ上がる。

 

戦場の中心に佇む、全教科(武器)を背に広げマシンガンを手に持った浅野の姿に『十徳ナイフみたいだな』と思いつつ白利もナイフを構え、

 

「本気で…勝ちに行く!」

 

こうして激闘の2日間を乗り越え全ての戦い(テスト)が幕を下ろした。

 

暗殺、賭け(ギャンブル)、全ての結果は◯の数で決まる!!

 

 

 

 

 

そして3日後。

 

「さて皆さん、全教科の採点が届きました。」

 

その時がやって来た。

椚ヶ丘中学校では学年内順位も一緒に届けられる為、テストの行方は一目瞭然となる。

 

白利とて今回のテストは本気で挑み、やれることは全てやって最善を尽くした。

今はただ腕を組み待つだけである。

 

「では発表します、まずは英語から…E組の1位…」

 

「………」

 

「そして学年でも1位!!中村莉桜!!完璧です、君のやる気はムラッ気があるので心配でしたが。」

 

殺せんせーからテスト用紙が返されたので確認すると英語の点数は『99点』ラスト問題は合っていたがしょうもないところで1点減点されていた。

 

「うげぇ…いきなり全教科1位は消えたか…」

 

「やり〜!とりあえず触手1本は私のものだから忘れないでよ殺せんせー?」

 

「月乃君と渚君も大健闘ですが月乃君は詰めの甘さが、渚君は肝心な所でスペルミスを犯す癖が出てますね。」

 

なんとも耳の痛い言葉である、ラスト問題に気を取られすぎて道端の1点を取り逃がして見事にすっ転んでしまった。

 

「さてしかし、1教科トップを取ったところで潰せる触手はたった1本。それにA組との5教科対決もありますから喜ぶ事ができるかは全教科返した後ですよ。」

 

殺せんせーは触手の1本に『破壊予約済』の旗を立てつつ、国語の学年順位表を取り出し…

 

「続いて国語…E組1位は…月乃白利!!99点!!」

 

「ッし!!」

 

「…がしかし、学年1位は浅野学秀!!」

 

「…だぁ〜あいつ100点かぁ。」

 

「神崎さんは96点で3位、2人とも充分すぎる大躍進ですよ。」

 

喜びのあまり立ち上がってガッツポーズをしてしまったが、浅野に負けたのを聞いてヘナヘナと机に突っ伏すと『ナイスファイト』と杉野が背中を摩ってくれた。

 

「…やっぱ点取るなァ浅野は。」

 

「五英傑なんて呼ばれてるが、結局浅野を倒さなきゃ学年トップは取れねーんだ。」

 

結局目の前の壁は浅野1人だけ、その事実を再確認しながら殺せんせーは社会のテストを返却する。

 

「…では続けて返します。社会!!E組1位は…磯貝悠馬97点!!そして学年では…おめでとう!!浅野君を抑えて学年1位!!」

 

「よっし!!!!」

 

「ダメかぁ…」

 

「E組2位の月乃君も磯貝君と1点差の学年2位で浅野君を抑えています!2人ともマニアックな問題が多かった社会でよくぞこれだけ取りました!」

 

白利の手元に返されたテストの点数は『96点』…ここまで100点を逃していると本当に詰めの甘さを思い知らされる。

 

「これで2勝1敗!!」

 

「次は理科!」

 

「理科のE組1位は…奥田愛美!!そして…素晴らしい!!学年1位も奥田愛美!!そしてE組2位は月乃君97点!浅野君と同点で学年2位です!」

 

「グエェ…」

 

ここもラスト問題はあっているのだが道中でやらかして減点されている。

 

「3勝1敗!!数学の結果を待たずしてE組がA組に勝ち越し決定!!」

 

「やったッ!!」

 

「仕事したな奥田!!触手1本おまえのモンだ!!」

 

「…てことは、賭けの賞品の()()もイタダキだな!」

 

「楽しみ〜!」

 

既に勝ち越しが決まったことに色めきつつ、殺せんせーは最後の数学を発表する。

 

「最後の数学、E組1位は…おめでとう!!月乃白利99点!!」

 

「…もしかしてこれも道中やらかしてる感じ?」

 

「えぇ、ラストは解けているのですが他の問題で減点をされていますね。そして学年では…浅野学秀100点!!ここでも残念ながら1位ならずですね。」

 

「ま、だよなぁ…」

 

自分の詰めの甘さに心底うんざりしつつ後頭部を掻きむしりながら点数の合計を計算すると合計点は『490点』浅野の合計で全てが決まる。

 

「さて、大トリの5教科総合の学年順位ですがE組1位は…月乃白利490点!!対するA組1位は浅野学秀491点!!残念ながら学年順位も1点差で2位です!」

 

「だぁっ!クソッ!!」

 

また1点差で思わず感情が昂ってしまい拳を勢いよく机に叩きつける。

こんなに悔しい思いをするのは初めてなんじゃないだろうか。

 

「ヌルフフフ、月乃君、君は今どんな感情を抱いてますか?」

 

「……スッゲェ悔しいよ。」

 

「それは結構!それほどまでに君が本気でテスト勉強に打ち込んできた証拠です、その感情を大事にしてください。」

 

「いやしかし…全教科1位どころか100点すら取れないとはなぁ…口は災いの元ってやつか?」

 

「しょうがないんじゃないか?月乃は理事長対策でテスト範囲外もめちゃくちゃ勉強してたんだし。」

 

「むしろ今までは本気を出さずに10位以内、今回もテスト範囲外まで対策して2位なんだから次は学年1位余裕なんじゃない?」

 

「千葉ぁ…速水ぃ…お前らもうだぁいすき!!」

 

「メンタルがおかしな方向に行ってるなコイツ。」

 

若干メンタルが崩壊気味の白利を労いつつ、皆でE組の勝利を噛み締めるのだった。

 

 

 

「あれ…?そういえばカルマどこ行った?」

 

「ん?本当だ、席にいねぇな。」

 

カルマの席は主が不在になっており、聞く限り皆もどこに行ったか知らないらしく黒板に貼られた学年順位を何気なく見てみると、

 

「赤羽業、総合13位…これのせいか?」

 

中間テストよりも順位を落としていた。

確かにテスト期間中カルマは真面目に勉強していなかったが…性格的に考えて『努力せず余裕で勝つ俺カッコいい〜』とか思ってたらやらかしたのだろう。

 

外にいるのだろうかと教室から出ようとすると、顔を真っ赤に染めたカルマと鉢合った。

 

「………」

 

「………」

 

あの様子では既に殺せんせーに何かしらつつかれた後なのだろう、白利は無言でカルマの肩を軽く叩き道を譲ると遅れて殺せんせーもやって来たので問いかける。

 

「殺せんせー、カルマがあんな調子になるって何言ったんだよ。」

 

「ご心配なく、立ち直りが早い方向に挫折させただけです。彼も月乃君も今まで本気でなくても勝ち続けて来たでしょう?」

 

「まぁ…10位以内はキープできてたからな。」

 

「今回君達の明暗を分けたのは本気を出したか否かです。確かに今回のテストで君達は負けたと言えるでしょう、ですが君は本気を出した上での敗北で悔しさと実力を身につけた。一方カルマ君は本気を出さずして敗北し実力は身につかなかった。」

 

「敗北として見れば一緒だけど負け方は違うってことか。」

 

「その通りです。月乃君もこの先挫折してしまう時が、悩んで立ち止まってしまう時があるかも知れません。ですがそれを一杯に吸い込んで…強くなりなさい。」

 

殺せんせーの触手が優しく白利の頭を撫でる。

 

「…わかった。」

 

本当にこの怪物は色んなことを教え導いてくれるから…どうにも殺しづらい。

 

 

 

 

 

「さて、皆さん素晴らしい成績でした。5教科プラス総合点の6つ中皆さんが取れたトップは3つです。早速暗殺の方を始めましょうか、トップの3人はどうぞご自由に。」

 

殺せんせーは緑の横縞、舐めている時の色を浮かべつつ『破壊予約済』の触手を差し出している。

大方『3本くらい失っても余裕でしょう』と思っているのだろう、苦笑いしながら見ていると寺坂組が声を上げて席を立つ。

 

「おい待てよタコ、5教科のトップは3人じゃねーぞ。」

 

「…?3人ですよ寺坂君。国・英・社・理・数全て合わせて…」

 

「はァ?アホ抜かせ、5教科っつったら国・英・社・理…あと家だろ。」

 

寺坂、吉田、村松、狭間がニヤニヤしながら教卓に『100』と書かれた家庭科のテスト用紙を叩きつけた。

 

「は…はっはは!マジかあいつら!!」

 

「あれはアリ…なの?」

 

「まぁ誰も()()5教科とは言ってないからな。」

 

「…ちなみに月乃の家庭科の点数は?」

 

「………」

 

白利は何も言わずに速水に家庭科のテスト用紙を見せると『99』と書かれている、ここでも詰めの甘さを隠しきれていなかった。

 

「………」

 

「………俺は今お前が考えてることがなんとなくわかるぞ。」

 

「…聞かせて。」

 

「『こいつ全教科1位取るってイキってたのに情けないな』だろ。」

 

「そこまで性悪じゃない、トップランカーもそういうトコロあるんだなって。」

 

「かなり濁した同じ文だろそれ!」

 

最近容赦無くなって来た速水の口撃に胸を刺されていると、なにやら千葉がカルマの方を向き『家庭科のテストなんて()()()でしょ!!』と叫ぶ殺せんせーを指差している。

恐らく『言ったれ』とか焚き付けているのだろう。

 

(なんつーか千葉もだいぶカルマの扱い方慣れて来たよなぁ。)

 

「…()()()とか家庭科さんに失礼じゃね殺せんせー?5教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんにさ。」

 

「そーだぜ先生約束守れよ!!」

 

「1番重要な家庭科さんで4人がトップ!!」

 

「合計触手7本!!」

 

触手7本に怯える殺せんせーと『なーなーほん!なーなーほん!』とコールが起こる中、磯貝が手をあげて席を立つ。

 

「それと殺せんせー、これは皆で相談したんですがこの暗殺に…今回の賭けの『戦利品』も使わせてもらいます。」

 

「…なるほど考えましたね。ですが、ひとまずは胸を張って終業式に行きましょう!!」

 

「「「はい!!」」」

 

と声をあげたは良いものの烏間先生が淡々と告げた。

 

「お前とイリーナは来るんじゃない。」

 

「「なんでですか!?/なんでよ!?」」

 

「貴様らは悪目立ちしすぎだ!!」

 

殺せんせーとビッチ先生が互いを責め合うのを聞き流しながら軽い足取りで本校舎へと向かう。

全校集会では白利が浅野と1点差の大接戦、その他のE組生徒もトップ争いを見せたせいでE組いじりも受けが悪く全員胸を張って前を向いていた。

 

 

 

「ひとり一冊です。」

 

「おっっっも!?」

 

全校集会から戻ると殺せんせーから恒例とも言える過剰しおり、それもアコーディオンのようなサイズのを渡された。

 

「これでも足りないぐらいです!夏の誘惑は枚挙にいとまがありませんから!」

 

「このサイズにすら収まらないって夏の誘惑魔境すぎるだろ…」

 

「さて、これより夏休みに入るわけですが皆さんにはメインイベントがありますねぇ。」

 

「あぁ賭けで奪った()()のことね。」

 

中村が椚ヶ丘中学校のパンフを掲げ、白利も手元にあるパンフのとあるページを開いた。

 

「本来は成績優秀クラス、つまりA組に与えられるはずだった特典ですが今回の期末はトップ50のほとんどをA組とE組で独占している、君達にだってもらう資格は充分あります。」

 

 

 

夏休み!!椚ヶ丘中学校特別夏期講習!!

 

沖縄離島リゾート2泊3日!!

 

 

 

「君達の希望だと触手を破壊する権利は教室(ここ)で使わず、この離島の合宿中に行使するという事でしたね。」

 

これがE組全員で決めた権利であり、殺せんせーを殺す為の絶好のロケーション。

 

「触手7本の大ハンデでも満足せず、四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島を使い万全に貪欲に命を狙う…正直に認めましょう、君達は侮れない生徒になった。」

 

ポリポリと頭を困ったように掻きながら呟くその言葉が今はとても嬉しくて、

 

「親御さんに見せる通知表は先ほど渡しました、これは標的(せんせい)から暗殺者(あなたたち)への通知表です。」

 

殺せんせーは大量の紙に赤ペンを走らせてそれらを教室中にばら撒くと白利の目の前にヒラヒラと舞い落ちる。

紙に記されたのは二重丸、見渡すと教室は大量の二重丸が舞い満ち溢れていた。

 

「1学期で培った基礎を存分に活かし、夏休みも沢山遊び、沢山学び、そして沢山殺しましょう!!」

 

暗殺教室基礎の1学期これにて終業!!

 

 

 

 

 

こうして様々な事が洪水の如く巻き起こった1学期は幕を閉じ、白利はバッグを持ち速水と千葉と共に山道を下って話していた。

 

「なぁ速水、暗殺旅行に行く時…自由時間とかあったら一緒に遊ばないか?」

 

「修学旅行の時のこと覚えててくれたんだ…うん、良いよ。」

 

「千葉もどうだ?修学旅行の時班に誘ってくれたし今回一緒に遊ぼうぜ。」

 

「別に気を使わなくて良いんだけどな…ま、せっかくだし遊ぶか。」

 

「さんきゅ、いや〜楽しみだなぁ。」

 

「だね。沖縄行くの初めてだし、殺せんせー殺してリゾート楽しもう。」

 

「そうだな、夏休みの訓練も気合い入れてくか。」

 

暗殺旅行の予定や夏休みの宿題のことなどを話しつつ本校舎の横を通ろうとした時、

 

「月乃。」

 

聞き覚えのある、しかしE組の生徒のものではない声に呼び止められた。

 

「…珍しいな浅野、お前が俺に声をかけるなんて。」

 

「別におかしな事でも無いだろう?…理事長が君のことをお呼びだ。」

 

理事長という言葉に思わず『ゲェ…』と嫌そうな顔が漏れ出てしまう。

 

「ちなみに聞くが…拒否権は?」

 

「あると思うか?」

 

「はぁ…わかったよ理事長室に行けばいいんだろ。…ったく、2人ともすまない先に帰っててくれ。」

 

「うん、じゃあね月乃。」

 

「夏休み暇だったら遊ぼうぜ。」

 

去っていく2人の背中を見届けて白利も嫌々ながらではあるが理事長室へと向かうことにする。…が、

 

「待てよ月乃。」

 

「…なんだよ、行けだの待てだの言いやがって。」

 

再び浅野に呼び止められ思わず前にツンのめる。

 

「…どうして急にやる気を出した?君が前に2位を取ったのは1年の最初のテスト、それ以降はずっと10位以内にはいるがのらりくらりだったのに急に僕と1点差の学年2位にまで噛みついて来た。」

 

「えっキッモ…ゔゔんッ、よく覚えてたな。ま、それもこれもE組で色々と変わったんだよ俺も。」

 

「変わった…か、そういえば笑うようになったんだな。」

 

「本来の俺がこっちなだけだ。要件はそれだけか?じゃ、理事長先生んとこ行ってくるから。」

 

「…キモい発言は目を瞑っといてやる。」

 

白利を見届けた浅野はひとり思う、かつてなぜ本気を出さないのか聞いた時返って来た言葉、

 

『俺には必要ないモノだ』

 

その冷たい言葉と表情とは裏腹に明るくなった彼の変化に浅野はまたE組への疑念を深めるのだった。

 

 

 

扉をノックするとフレンドリーな声で『どうぞ』と声が返って来たのでゆっくりと魔王城の扉…もとい理事長室の扉を開いた。

 

「失礼します。」

 

「やぁ月乃君、こうしてちゃんと顔を合わせるのは…中間テストの前以来かな?新任の先生の授業を視察に行った時、君は気絶していたからね。」

 

新任の先生…恐らく鷹岡の事だろう、速水達から聞いてはいたが本当にあの後理事長先生が訪れていたらしい。

 

「浅野君から聞きました、何かお話が?」

 

「そうだね…時に月乃君、烏間先生から君の身辺事情と精神状態については聞いているよ。なんでもかなり脳に負荷がかかっているとか。」

 

「まぁ…聞いての通り家庭が色々と複雑なもので…」

 

呟くと理事長先生は沈んだ空気を切り替えるようにパンッと手を一度叩き、白利の目を見据える。

 

「そこで提案があるんだ。君は今回のテストで私が最も長く教えた生徒の首元に迫るという優秀な成績を残した、つまりは元のクラスへ戻る権利は君にはある。」

 

「A組に戻れ…と?」

 

「君が望むなら記憶を消した上でね。もちろん君が記憶を消した後のアフターケアとして早くA組に馴染めるよう、私がしっかりと手を貸そう。」

 

この人のアフターケアとか十中八九進藤がやられたような洗脳だろう。

声と顔はカッコいいとは思うがありがたい洗脳(ASMR)は何がなんでも受けたくないので、断ろうと意を決して口を開こうとした瞬間。

 

「決めるのは今でなくても良い、人の心は時間が経てば簡単に変わるものだしね。そうだな…2学期が始まる前には答えを聞かせて欲しい。私が話したいのはここまでだ、逆に何か聞きたいことはあるかい?」

 

「…いえ、大丈夫です。これで失礼します。」

 

「あぁ、君は賢明な判断ができる人間だと信じているよ。」

 

表情を崩さず、だが逃げるように理事長室の扉を閉めて冷や汗を流しながら足早に離れると対面から見知った顔が歩いて来た。

 

「竹林?」

 

「月乃君…?君も理事長先生に?」

 

「『君も』って…竹林も浅野に捕まったのか…」

 

どうやら竹林も帰ろうとしたところを浅野に捕まったようで、白利と同じ目的なら理事長先生に似たような選択を押し付けられるのだろう。

 

「理事長先生にA組に戻らないかって…さ。」

 

「…なんて答えたんだい?」

 

「特には。2学期までには答えを出してくれって言われただけだ、まぁ今の所は戻る気はないが…多分竹林も同じこと聞かれると思うがお前はどうするんだ?」

 

「…僕はA組に行くよ。」

 

「……そうか、頑張れよ。」

 

何も聞かず選択を尊重するように応援の言葉と共に肩を軽く叩いて横を通り過ぎると竹林は振り向いて問うてくる。

 

「なにも…聞かないのかい?」

 

「聞いて欲しいなら聞くが…竹林にも色々あんだろ?自分が後悔しない選択をすれば良いさ。…言っておくが裏切り者だとか誰かに言ってやろうだとかは微塵も思ってないからな。」

 

「ふふっ…ありがとう月乃君。お互い頑張ろう…別の戦場で。」

 

「竹林も、下手やらかしてE組に戻ってくるなよ?」

 

振り向かず手を振り去って行く、この夏休みで殺せんせーを殺せても殺さなかったとしてもE組はきっと形を変えていくのだろう。




ご覧頂きありがとうございました!

【月乃白利の秘密】

あの後神崎にやんわりと台パンを嗜められた

【あとがき】

というわけで1学期終了となります!

これから暗殺旅行があるわけですが、その前に2話ほど夏休みでのオリジナル回をやらせていただきます。

夏休み編をお待ちいただけると幸いです!
  1. 目次
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