長らくお待たせしてしまって申し訳ございません!
これからはしっかり週一投稿は出来るようにしていきたいと思います。
コンサートホールでの銃撃戦を終え、非常階段を登って次なるフロア9階へと踏み込む。
黒幕が待つ最上階まであと1階、いよいよゴール地点が見えてきたが治療薬を奪取するまでは気は抜けない。
一歩間違えれば侵入が悟られて薬が爆破されてしまうだろう。
(黒幕の正体…なんとなく目星はついてるが、もう少し確証が欲しい…)
モヤがかかる思考を巡らせ鉛のように重い身体を引き摺りながら階段を上がっていくと、非常階段の出口の前に1人の見張りが背を向けて立っていた。
寺坂はリュックからスタンバトンを取り出して気絶させようと近づこうとするが、烏間先生は肩を貸していた磯貝から離れて白利達に待機しているようにハンドサインを送ると、
キュッ
男の首根っこを片手で掴んで物陰に引き寄せ、チョークスリーパーで素早く絞め落としてみせた。
…締められていた男の首がトンデモナイことになっていたのは見ないことにする。
「ふうぅ〜…大分身体が動くようになってきた…まだ力半分ってところだがな。」
「力半分ですでに俺等の倍強ぇ…」
「あの人ひとりで
精鋭部隊のエースであった事は重々承知しているが、いくらなんでも格が違いすぎて敬意を越して恐怖すら覚え始めてしまう。
麻酔ガスも宣言通り30分で動けるレベルまで回復させてる辺り、烏間先生も大概殺せんせーと同じアッチ側の存在なのだと改めて噛み締めていると律がスマホの画面に姿を現した。
『皆さん、最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました。上の様子が観察できます。』
「「「!!」」」
『最上階エリアは一室貸し切り、確認する限り残るのは…この男ただひとりです。』
仕事が早い律に感心しつつ自身のスマホに視線を落とすと、画面に映っていたのは暗い部屋でタバコを燻らせながらテレビの画面を見つめている大柄な男の背中だった。
「
「楽しんで見てやがるのが伝わってきやがる…変態野郎が…!」
男が見ていたのはウイルスに侵され苦しむ生徒達、確かに思い返せば白利達が宿泊するホテルには監視カメラがあったがそれすらも黒幕の手の内だったらしい。
暗がりで顔は良く見えないが覗く吊り上がった口角からニヤニヤと笑っているのがわかり、その姿に寺坂が怒りを顕にするが落ち着かせるように殺せんせーが口を開く。
「あのボスについて、わかってきた事があります。黒幕の彼は殺し屋ではない、殺し屋の使い方を間違えています。元々は先生を殺す為に雇った殺し屋、ですが先生がこんな姿になり…警戒の必要が薄れたので見張りと防衛に回したのでしょう。………でもそれは殺し屋本来の仕事ではない。」
「…確かに、さっきの銃撃戦も戦術で勝ったけど…あいつ、狙った的は1cmたりとも外さなかった。」
千葉が先ほどの戦いを回想しながら呟くと、殺せんせーは頷いてカルマに視線を向ける。
「カルマ君もそう、敵が廊下ではなく日常で後ろから忍び寄られたら…あの握力に瞬殺されていたでしょう。」
「……そりゃね。」
冷や汗を流しながら肯定するカルマ。
(やっぱり殺せんせーもそこに引っかかるか…)
スモッグもおじさんぬも銃使いの男も本来の暗殺術ではないのにあの強さだった、もし得意分野で戦おうものなら十中八九こちらが殺されていただろう。
故に、黒幕が殺し屋ではないのは白利も辿り着いた結論だ。
(ん…?)
ふと視界に絞め落とした男を見つめる烏間先生が入る。
特に持ち物や身元を探るでもなく顔をジッと見つめると、ごく微かだが何かに気づいたように眉を動かしたのを白利は見逃さず。
「…烏間先生、ひとつ聞きたい事があります。」
「月乃君…?どうした。」
「防衛省には…実銃は保管されていますか?」
「………ある。厳重に管理こそされてるが、俺のように
一瞬驚いた表情をしていたが、すぐさま白利の言葉の意味を理解し苦虫を噛み潰したような顔で話す烏間先生と納得したように頷く白利。
何かを察して苦い顔をする2人に何が何だかわからない速水達は困惑しながら問いかける。
「急にどうしたの?月乃も烏間先生も…2人して顔顰めて。」
「………俺も烏間先生も、黒幕の正体に行き着いたんだよ。」
「「「!?」」」
驚く皆の顔を見つつ、白利は自身の考察を語り出す。
1つ 黒幕は殺し屋ではないこと。
2つ 黒幕及びその手下は銃を簡単に手に入れられる立場にいること。
3つ 黒幕はE組が普久間島に行くことを事前に把握してた可能性が高いこと。
4つ 黒幕はE組の生徒に強い憎しみを抱いていること。
「月乃君の考察に付け加えるのなら……連絡がつかなくなったのは3人の殺し屋の他に
「俺達が思い描いてる犯人の顔が…もうお前等にもわかるだろ?」
「そんな…」
「マジかよ…」
「確定したわけじゃないが、その線で考えた方が良いだろう。とにかく今は時間がない、奴は我々がエレベーターで来ると思ってるはずだが交渉期限まで動きが無ければ…流石に警戒を強めるだろう。」
突入する前に烏間先生が個々に役割を指示していく中、壁に背を預ける白利の横に速水が並び立つとその手を白利の手首に添えさせる。
速水の手には銃撃戦の後よりも更に悪化している発熱が伝えられ、心配するような声で囁く。
「身体、大丈夫?」
「ん?平気だよ。こんぐらいの不調、小さい頃に慣れてる。」
「…月乃。」
速水は怒気が含まれた声色で一言呟くと、細腕から発されたとは思えない握力で白利の感覚が鈍りきった腕を握りしめる。
「過去に起きたことは変えられない……けど、そんな悲しいこと言わないで。そんなものに慣れちゃダメ、慣れていたとしても…それで無茶するのはもっとダメ。」
「別に俺は無茶なんか『してる』……」
「イトナの時も、プールの時も、今もずっと無茶して傷ついて…もっと自分の命を大切にして。…私が同じことをしてたら月乃は止めてるでしょ?」
「そりゃそうだが…」
速水の言葉に思わずどもってしまう。
確かに速水が無茶しようものなら死ぬ気で止めるつもりだが、それは
多くが欠けた月乃白利の過去、そこで培い白利に根付いた価値観。
命は等価値ではない。
尊ぶべき命、守りたい命、……あるいは許されざる命。
尊ぶべきは母、守るべきは
「とにかく、無茶しようものなら私泣くから。」
「……それは…嫌だな。」
流石に速水を泣かせるのはいただけないので一旦従うことにすると、指示を出し終えた烏間先生に号令をかけられ佇まいを正して後をついていく。
次の階層は黒幕が待つ最上階、白利及び感染した仲間達の生死はここで決まるだろう。
最上階へはカードキーが必要なようだが幸いにも9階の見張りが持っていたようで拝借できた。
どうやら黒幕は階段ルートで来るとは思っていなかったようだ。
烏間先生が音を立てないようにカードキーでロックを解除し扉を開くと、部屋の中はだだっ広いが遮蔽物が多いのが確認できる。
体育習ったモノを使えば最大限に気配を消しながら近くまで忍び寄れるだろう。
『ナンバ』なんでも忍者も使うと言われた歩法らしく、手と足を一緒に出す事で胴を捻ったり軸がブレる無駄がなくなり衣擦れや肩の音を抑えられるのだ。
「………」
烏間先生に変わってハンドサインを出す磯貝の指示に従いつつ男の背に近づくと、無造作に置かれたスーツケースとそれに付着する小さな物体、男の手元にはスイッチのような物が視認できた。
(スーツケースは治療薬、付いてる物体は…恐らく爆弾。手元に置いてあるのは起爆のリモコンか…?)
今にも倒れそうな身体を踏ん張って耐えつつ、打ち合わせ通りまずは可能な限り接近する。
取り押さえればそれが最善、しかし遠い距離で気づかれた場合烏間先生の責任で
一歩、また一歩と進んでそれぞれスタンバトンや銃、殺せんせーを構えて襲いかからんとした瞬間、
「かゆい。」
男が呟いたその一言に思わず足を止めてしまう。
「思い出すとかゆくなる。でも、そのせいかないつも傷口が空気に触れるから…感覚が鋭敏になってるんだ。」
途端、男が何かを大量にばら撒くと床に全く同じ形をした物体が転がった。
…起爆リモコンと同じ形の物が。
「言ったろう。元々マッハ20の怪物を殺す準備で来てるんだ。リモコンだって超スピードで奪われないよう予備も作る。うっかり俺が倒れ込んでも押す位のな。」
邪気、あるいは怒気隠しきれていない聞き覚えのあるその声の主に全員が顔を強張らせる。
白利と烏間先生もまた、己の予想が当たったことに眉を顰めつつ口を開く。
「やっぱり…お前か…!」
「…どういうつもりだ…鷹岡ァ!!」
烏間先生の声に振り向いた男、鷹岡はかつて教師をしていた時と違い顔面に多くの引っ掻き傷のようなモノが刻まれており、口角を吊り上げて凄まじい邪気を撒き散らした。
「悪い子達だ…恩師に会うのに裏口から来る。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ?仕方ない、夏休みの補習をしてやろう。」
グシャリと歪みきった表情で笑う鷹岡の目には狂気と憎悪が多分に含まれており、今なお父親面するその行為、その精神に何かどうしようもない不快感のようなモノを感じさせる。
突入する前に全員が『黒幕は鷹岡かもしれない』と察してこそいたがあまりの変貌っぷりに絶句する中、鷹岡は席を立ち起爆リモコンのボタンに指をかけつつ告げた。
「屋上へ行こうか、愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ。ついて来てくれるよなァ?お前等のクラスは…俺の慈悲で生かされているんだから。」
治療薬の入ったスーツケースを手に屋上のヘリポートへと歩む鷹岡の背を白利達は追う。
奇襲こそできるだろうが、もし鷹岡が自棄を起こしスイッチを押そうものなら治療薬は手に入らずここにいる全員がただでは済まないケガ…あるいは死に至ることだろう。
(…クソが。)
内心悪態を吐きつつヘリポートへと辿り着くと、空はぶ厚い曇が覆っており煌めく星も照らす月も隠されてしまっていてヘリポートを照らすライトだけが煌々と輝いている。
「気でも違ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウイルスで脅すこの凶行…!!」
「おいおい、俺は至極マトモだぜ!これは地球を救える計画なんだ、大人しく2人にその賞金首を持って来させりゃぁ…俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったのにな。」
(渚と茅野が…どういうことだ…?)
「計画ではな、茅野とか言ったっけ女の方。そいつを使う予定だった。対先生弾がたっぷり入れてある部屋のバスタブに賞金首を抱いて入ってもらう、その上からセメントで生き埋めにする!対先生弾に触れずに元の姿に戻るには生徒ごと爆裂しなきゃいけない寸法さ!生徒思いの殺せんせーは……そんな酷いことしないだろ?大人しく溶かされてくれると思ってな。」
「この……外道め……!」
今鷹岡を刺激するのは得策ではないのはわかっているが、そう漏らさずにはいられなかった。
茅野を守るように前に躍り出るが覗いた茅野の顔はあまりの恐怖に酷く歪んでいて、元より碌な奴ではないと思っていたがいよいよ一線を踏み越えた存在なのだと確信する。
「全員で乗り込んで来たと気づいた瞬間は肝を冷やしたがやることは大して変わらない、お前等を何人生かすかは俺の機嫌次第だからなぁ。」
「………許されると思いますか?そんな真似が。」
真っ黒にこそなっていないが、鷹岡語った全てに殺せんせーがブチギレているのがその一言、声色で把握できる。
「…これでも人道的な方さ、お前等が俺にした非人道的な仕打ちに比べりゃな。」
鷹岡が語った内容に白利達は絶句した、残酷だとかそういうモノではなく……あまりにも、あまりにも稚拙すぎて。
防衛省の同僚から中学生に負けて任務失敗したことについて陰口を叩かれた…つまるところ恥をかかされた、ただそれだけの理由で復讐を誓ったと。
(まるで小学生…いや、幼稚園保育園の子供のメンタルじゃねぇか…)
同情の余地もない子供の癇癪のような理由に呆れてしまう、そんな情けない理由で殺されそうになるとは堪ったものではない。
だが鷹岡は思い出しただけで怒り心頭のようで、引っ掻きの上からさらに激しく肌を掻きむしる。
「屈辱の目線と騙し討ちで突きつけられたナイフが頭ン中チラつく度に痒くなって、夜も眠れなくてよォ!!落とした評価は結果で返す、受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す!特に潮田渚、俺の未来を汚したお前は絶対に許さん!!」
「…!!」
背の低い生徒を要求したのは渚を狙ってのことなのだろう、自分で仕掛けた勝負で勝手に負けたのになんとも情けない逆恨み。
鷹岡から向けられた悪意に渚は息を呑むが、怒りを隠さないカルマが渚を庇うように進み出た。
「へー、つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ。その体格差で本気で勝って嬉しい?俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」
「イカレやがって…テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが!言っとくけどな、あの時テメーが勝ってよーが負けてよーが俺等テメーの事が大ッ嫌いだからよォ!!」
「大の大人が子供みたいな癇癪起こしやがって…お前本当に烏間先生の同期なワケ?マジで足元にも及んでねぇな…」
「ジャリ共の意見なんて聞いてねェ!!俺の指先でジャリが半分減るって事忘れんな!!」
我慢の限界が来た寺坂と白利もカルマの言葉に加担するように声をあげるが、それに対し鷹岡はこれまた子供が癇癪を起こしたように声の限りを尽くして怒声をあげる。
「チビ、お前1人でこの上のヘリポートまで登ってこい。」
そう告げると鷹岡はスーツケースを手に持ち、起爆リモコンを高々掲げながらヘリポートへ唯一続く階段梯子を登っていく。
「渚、行ったらダメ。」
「茅野の言う通りだ、行くべきじゃない。第一鷹岡に薬学なんてあるワケないだろ?ウイルスもスモッグとやらが作ったんだろうからそいつから聞き出せばいい事だ。」
「………」
精鋭部隊に所属してたとはいえ、オリジナルのウイルスを作れるほどの薬学に対する知識を鷹岡が持っているとは思えない。
そして今の鷹岡は何をやらかすのかもわからない危険な状況、茅野と白利が行かないように引き止めるが渚は黙り込み少し思案した後。
「……………行きたくないけど……行くよ。」
渚は手に待っていた完全防御形態の殺せんせーを茅野に投げて渡すと白利達に背を向ける。
「あれだけ興奮してたら何するかわからない、それに毒使いを捕まえても治療薬が手に入るとも限らない。話を合わせて冷静にさせて、治療薬を壊さないように渡してもらうよ。」
「「渚…」」
どこか諦めのような表情を見せた渚は、白利達の心配をよそに階段梯子を登ってヘリポートへと登る。
それを確認した鷹岡は梯子を持ち上げるとヘリポートの隙間へと投げ込んだ。
「これでもうだーれも登って来れねェ。足元のナイフで俺のやりたい事はわかるな?この前のリターンマッチだ。」
どうやらとことん渚に負けたのを引き摺っているらしい、ここまで成長しない人間も中々いないだろう。
「…待って下さい鷹岡先生、闘いに来たわけじゃないんです。」
「だろうなァ、この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるのは目に見えてる。」
自身の油断のせいで負けたことを棚に上げてるのは鼻につくが、鷹岡の言うことは正しい。
近接に長けている白利やカルマなら可能性はあるが、男子どころかE組を見ても体格が細い渚では鷹岡とは勝負にもならないのはわかりきっている。
「だがな、一瞬で終わっちゃ俺としても気が晴れない。だから闘う前に…やることやってもらわなくちゃなァ?」
そう言うと鷹岡は床に指差し、
「謝罪しろ、土下座だ。実力が無いから卑怯な手で奇襲した、それについて誠心誠意な。」
「………」
渚は大人しく指示に従い、両膝をつけて正座をする。
「……僕は…」
「それが土下座かァ!?バカガキが!!頭擦り付けて謝んだよォ!!」
(こんな事しても自分の評価が戻らんことすらわからないのか…コイツは…)
床を勢いよく踏み鳴らし渚にキレ散らかす鷹岡に怒りや呆れを通り越して哀れみすら感じ始める。
いくら渚を痛めつけても生徒を殺しても、結局ついて回るのは汚名だけだというのに。
だが、渚は床に手をつき頭を下げた。
「…僕は、実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。……ごめんなさい。」
「おう、そうだなぁ…じゃあ連帯責任として月乃の分も謝ってもらおうか?父ちゃんに反抗した挙句不意打ちで平手打ちしましたってなぁ?……ガキの分際で大人に向かって!!生徒が教師に向かってだぞ!!」
(終わってるな…)
土下座した渚の頭をグリグリと踏み躙って白利がかつて鷹岡にした行いを代わりに謝れと渚に強要する。
結局一度は南雲を退けた白利と闘う勇気は無いのか、明らかに自分より弱い渚を痛めつけることしかできない醜悪さに顔が歪む。
「ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまいすみませんでした。本当に…ごめんなさい。」
(…すまん、渚。)
「…よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ!」
渚の謝罪に惨めでちっぽけな心は満足したのか満面の笑みを浮かべた鷹岡は踵を返すとスーツケースを手に取ってみせる。
「褒美にいいことを教えてやろう。あのウイルスで死んだ奴がどうなるか、スモッグの奴に画像を見せてもらったんだが…笑えるぜぇ?全身デキモノだらけ、顔面がブドウみたいに腫れ上がってな。」
見たいだろ?渚君
その一言でここにいる全員が鷹岡がやろうとしているのことを察した。
渚も止めようと駆け出すが、それよりも早くスーツケースは宙に投げ出され。
「やめろーーーーーーーッ!!」
悲鳴も虚しく、スーツケースは治療薬ごと爆発音と共に弾け飛んだ。
白利達の足元にはガシャガシャと治療薬だったものが飛散して中身を撒き散らしていく。
「……ま、易々渡すつもりは無いだろうと思ってはいたが…だとしてもどうする?」
その中でも白利は冷静な思考を保っていた。
鷹岡と同じ
(スモッグとやらが予備を持ってたり、すぐさま作れりゃいいんだが…)
ふと視線を感じて振り返ると、速水がまるでこの世の終わりのような顔をして白利のことを見ていた。
感染した白利のことを思ってだろう、他の皆も絶望の表情を浮かべる中鷹岡はひとり高笑いをあげる。
「あははははははははは!!そう!!その顔が見たかった!!夏休みの観察日記にしたらどうだ?お友達の顔面がブドウみたく化けてく様をよ!!ははははははは!!」
治療薬が無くなった以上、鷹岡に構う必要は1mmたりとも無いが…どうにも渚はそうも行かないようで。
「安心しな、お前にだけはウイルスを盛ってない。なせにお前は今から…」
「はーッ…はーッ…」
荒い呼吸で地面に転がるナイフを手に取ると、
「殺…してやる…」
鷹岡に明確な殺意を突きつけた。
ご覧頂きありがとうございました!
【月乃白利の秘密】
自分なりの命の価値観がある