暗殺教室ー月は何を見るかー   作:TKTK(2K2K)

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時間軸は『問答の時間』からの続きです。

今後の話ですが、白利が関われる所が少なそうなお話はスキップしていくと思います、スマンソン。

あと投稿頻度ですが毎週土曜かストックを基本5個作ってるのでプラスで1個出来たら早めに投稿する形になります。


野球の時間

殺せんせーがハワイに飛んで行った後、白利はしばらく1人教室の自席で外を眺めていた。

 

「最高速度マッハ20…実際教室で出してる速度はどんくらいなんだろうな。」

 

普段教室で高速移動する殺せんせーだが、恐らく最高速度ではない。

マッハ20という数字は到底想像する事は出来ないが、もし教室でその速度を出そうものなら生徒達や教室そのものが形を保つ事は出来ないだろう。

 

「知れば知るほど本当にアイツ殺せるのかぁ?」

 

「朝から憂げだね月乃。」

 

「お?渚、来てたのか。」

 

声をする方向に顔を向けると渚がいつの間に入って来たのか立っていて、その隣にもう1人

 

「杉野も一緒か、2人ともおはよう。」

 

「おう…早いな月乃…」

 

明らかに落ち込んでいる『杉野友人』が渚の隣に立っていた。

渚とは素直で優しい性格をしている者同士、感じる物があるらしく仲が良いらしい。

 

「……どうしたんだ杉野の奴?」

 

「アハハ…実はね…」

 

自席で項垂れる杉野を指差し渚に問うと、渚は先程の事を話し始めた。

 

 

 

「なるほどなぁ」

 

どうやら校舎裏でくつろいでいる最中の殺せんせーに、対先生BB弾を埋め込んだ野球ボールで暗殺しようとしたら、用務室にグローブを取りに行った上でボールを取られたらしい。

 

「そんなに落ち込む程でもないんじゃないか?プロの野球選手だってあの高速移動する殺せんせーにボール当てられねぇだろ。」

 

「そりゃそうだけど……やっぱ遅いんだよ、俺の球…」

 

「杉野…」

 

杉野は自身の右手を開いて閉じて…と繰り返す。

その最中もため息が絶えないほど今の杉野は落ち込んでいるのだろう。

 

「…杉野はさ、憧れてる選手とかいるのか?」

 

「あぁ、メジャーに行った有田投手…大ファンで俺のフォームも有田投手を真似た物なんだ…でも同じフォームでストレートを投げても有田投手みたいな豪速球がな…」

 

「やっぱりか…なぁ杉野、お前ストレート向いてないんじゃないか?」

 

「ちょっ!?月乃言い方!?」

 

突然のノンデリ発言に思わずツッコんでしまう渚。

 

「アッ!?すまん、言い方がアレだった…つまり俺が言いたいのは杉野に合った球種があるんじゃないかって思うんだ。ほら、有田投手だって投手として一流なんだろうが1番自分の肉体に合った球種がストレートだった、て事なんじゃないか?」

 

「1番自分の肉体に合った球種…?」

 

「だってそうだろ?人間皆同じ肉体なら、この投手はストレートが凄いとか変化球が凄いとか無いわけじゃんか。多分杉野はストレートには向かない肉体で、杉野の肉体に合った球種を見つけて鍛えれば杉野だけの、有田投手には投げられない凄い武器()投げられるんじゃないか?…てのはどうでしょうか?

 

「最後だけ声ちっさい!?」

 

さっきまでペラペラと話していたのに最後だけ急に自信を無くしたように声が消え入りそうになる白利。

『うるせぇやい!こっちは野球ニワカにも満たない初心者ぞ!』と渚に返す。

 

「…月乃、渚が言ってた通りのやつなんだな。」

 

項垂れていた杉野は顔を上げクスクスと笑った後、両手を合わせて頭を下げる。

 

「すまない!今の今まで月乃の事誤解してた!渚から『本当は優しくて表情豊かなやつ』だとか『話しかければちゃんと会話してくれる』とか聞いてはいたんだが…やっぱりちょっと怖いと思ってて…」

 

「……最近自分でも思うとこ合ったから改善しようとはしてます。」

 

脳裏によぎる、殺せんせーに言われた『無表情で言葉を発さず目付きが鋭くて、元々A組だったが人を殴ってE組に来た』という好かれる要素の無い説明文。

流石にゲームの主人公のように無口で好かれる事は無いので、改善しようと心に誓ったばかりである。

 

「でも俺の為に色々言ってくれてさ、正直助かった。有田投手の真似しようと躍起になって、俺だけの武器を探すのを怠ってた。ちょっと考えてみる、俺だけの武器について。」

 

「助けになれたなら何よりだよ。」

 

すると杉野は白利に向かい手を差し出す。

 

「……何?」

 

「何って…握手だよ握手。友達としてこれからもよろしくな!」

 

「……?」

 

「月乃…『友達って何だ?』って顔で僕を見ないでよ…」

 

白利は友達ビギナーである。

 

「友達…俺に友達…ありがとう杉野!これで友達3人目だ!」

 

「すっくねぇ!?」

 

「あ〜〜〜!?杉野お前!言っちゃいけない事言いやがったな!?」

 

こうして新たな友達が増え、やがて授業が始まる。

だが授業中、杉野の顔に曇りは一つも無かった。

 

(先生が出る幕は無かったですねぇ。)

 

その様子をこっそり見ていた殺せんせーは生徒の進展に1人満足していた。

 

 

 

放課後、帰宅しようとバッグに筆記用具などを詰めていると運動場に杉野が座っているのが見えた。

そこに殺せんせーが近づいている。 

どうやら対先生BB弾を埋め込んだ野球ボールを渡しているようだった。

 

「…落ち込んで無いようで良かった。」

 

ボールを受け取る際に見えた杉野の横顔はとても晴々としていた。

帰る前に一声かけるか、と席を立ち運動場へ向かうと

 

「………学校でアブノーマルなプレイはしないで欲しいんだが?」

 

「してませんよ!?」

 

殺せんせーが全身の触手で杉野を絡め取っていた。

エロ本(フィクション)でしか見ない光景を実際に見ると案外気が滅入る物であると知った。

 

「触手プレイするならせめて受けは女の子にしてくれよ……」

 

「そこですか!?月乃君案外その方向のを嗜んでるんですね!?」

 

「…俺も男だからな。で、結局何してたのさ?」

 

殺せんせーはゆっくりと杉野を地面に降ろし、触手を解く。

 

「杉野君の肉体を調べていたのです。実は先生、朝の君達の会話を聞いていたのですが…月乃君の言う通り杉野君の肉体は有田投手と比べて肩の筋肉の配列が悪く、彼のような豪速球は投げられないでしょう。」

 

「有田投手の肉体を知ったような口ぶりだな?」

 

「本人に確かめて来ましたから。」

 

そう言って殺せんせーは触手に絡まれた有田投手が写った新聞と『ふざけんな触手!!!』と書かれたサイン色紙を取り出した。

そりゃそうだろう。

 

「なにやってんだ国家機密!」

 

「…やっぱそうだったか。」

 

「杉野君、一方で肘や手首の柔らかさは君の方が素晴らしい。鍛えれば彼を大きく上回る、月乃君が言っていた君だけの武器()になるでしょう。」

 

殺せんせーは杉野の手首に触手を巻き付ける。

 

「先生の触手に間違いはありません。才能の種類は一つじゃない。君の才能に合った暗殺を探して下さい。」

 

「肘や手首が…俺の方が…俺の…才能か…!」

 

今度は自信を持って手を見つめる杉野。

それを見て満足したのか殺せんせーは去って行く。

その背を見てふと思う。

 

(殺せんせー、杉野へのアドバイスの為だけにニューヨークに行ったのか?)

 

「殺せんせー!」

 

気づけば声を上げて、駆け寄っていた。

 

「にゅや?どうしました月乃君。」

 

「地球を爆破するって言ってる殺せんせーが、何でここまで手厚くしてくれるんだ?」

 

「私にとって君達と真剣に向き合う事は…地球の終わりよりも重要なのです。」

 

殺せんせーの触手が白利の頭に置かれる。

 

「月乃君、私と話してからすぐに新しい友達が増えましたね。やはり君は誤解されやすいだけでちゃんとわかり合う事ができる。その調子で、目指せ!E組全員と友達!」

 

「…今回のは杉野も良い奴だし、渚もいたから上手く行っただけだ。」

 

「それでも杉野君には確かに届いた、他ならぬ君の言葉が。そんな訳で、友達作りと暗殺を真剣に楽しんで下さい!ま…暗殺の方は無理と決まってますがねぇ。」

 

「言ってろ、正体暴いて殺してやる。」

 

「おーーい!月乃ーー!!少し練習付き合ってくれよぉーー!!」

 

遠くで大きく手を振っている杉野から大声で呼ばれる。

 

「さ、呼ばれてますよ。」

 

「野球やった事無いんだけどなぁ…わかった!すぐ行く!…じゃ、さよなら殺せんせー。」

 

「はい、さようなら月乃君。」

 

1日で成長を遂げた生徒の背を見送る殺せんせーの目は、どこか懐かしい光景を見つめるようだった。

 

 

 

後日、校庭にて

 

「良し!行くぞ!」

 

「こい!」

 

杉野の投げた球は白利のミットに吸い込まれるように飛んで来たかと思うと、突如方向を変え鋭い角度で下へと落ちた。

 

「凄いな杉野!あそこから急に落ちるか!」

 

「うん!本当に凄いよ杉野!消えたみたいに変化した!」

 

「へっへ〜〜」

 

白利と渚は杉野に呼び出され変化球の練習に付き合っていた。

杉野の変化球は、野球の事を知らない2人にもわかる程の凄まじい投球だった。

 

「肘と手首をフルに活かした変化球を習得中だ!遅い速球(ストレート)もこいつと2択で早く見せれる。」

 

「あぁ、実際打者だったら相当嫌な球だな。」

 

「ま、あいつにとっちゃアクビが出るような速度だろーけど。でもさ、俺続けるよ。野球も暗殺も。」

 

「「おう/うん」」

 

「それと…」

 

杉野は少し照れ臭そうに頬を赤らめながら言葉を続ける。

 

「ありがとうな月乃、お前のおかげで自分の武器に気づけた。」

 

「別に礼なんていらねぇよ。だって友達…だろ?」

 

「…!そうだな!渚!月乃!殺せんせー暗殺しに行こうぜ!」

 

「最近慣れつつあったけどやっぱり凄いな、暗殺しに行くってパワーワード…」

 

「殺す、が日常会話に含まれてるからね……漫画ですら中々無いよ……」

 

殺せんせーは、超スピードと万能の触手を備えていて正直殺せる気がしない。

だが、不思議と白利達を()る気にさせる。

 

(楽しいな、この教室は)

 

 

 

 

 

「月乃ってさ、射撃はてんでダメなのに投球は平気なんだな。」

 

「あ、それ僕も思った。」

 

「……俺もちょっと思ってた。」

 

「中々の速度のストレート投げてたもんな…精度も良かったし…」

 

「今後の射撃練習は投球にしてもらう?」

 

「やめてよ…!俺だって結構気にしてるんだから…!投球も射撃みたいなトンデモ挙動してたら諦めついたのになんかしっかり投げれちゃって傷ついてるの…!」

 

あと渚よ、それはもはや射撃練習ではなくただの野球のピッチング練習なのではないか。

 

「……まぁきっと卒業までには一発くらい当たるだろ…多分。」

 

「そうだよ…!卒業までにはマグレでも一発くらいは当たる…よ?」

 

「おいやめろ!せめて同情するなら言い切れよ!なんかあやふやな感じで慰めるのやめろよ!泣くぞ!?」

 

数少ない友達に泣かされそうな白利なのだった。




ご覧頂きありがとうございました!

白利の3人の友達のあと1人は誰なのでしょうね…?(すっとぼけ)

【月乃白利の秘密】

色んなジャンルを見ているが結局1番好きなのは『純愛系』
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