モチベアゲアゲです!
そして映画観てきましたわ〜
今日も今日とて、誰もいない本校舎を通り裏山を登って登校すると何やら殺せんせーが白い筒のような物を持っていた。
「おはよう、殺せんせー。」
「月乃君、おはようございます。今日も早いですね。」
「うん…それ何?」
白利は殺せんせーが抱えている荷物を指差す。
「これですか?自衛隊から奪ったミサイルです。」
「それはわかってるんだよ。なんでそんなもん奪って学校に持ってきてんだよ。」
「通勤途中に自衛隊の戦闘機に襲われたもので…ワックスをかけるついでに授業の役に立つかもと頂いて持ってきました。」
殺せんせーが抱えるミサイルが尻から勢い良く火を噴く。
ミサイルって再点火できる物なのだろうか。
白利はなんだか痛くなってきた頭に手を添える。
「うん…もうこの際ワックスはどうでも良いけどまだ生きてるミサイルを持ってきて、それを授業に活かそうとするのはやめてくれ。来年の3月迎える前に死にたくねぇよ。」
「そこは安心してください。後で起爆しないように解体しておきます。」
「…思ったけど殺せんせーって結構ハイスペックだよな。全教科担当してるし、小テストはクラス全員のを作り分けてるし。」
「ヌルフフフ、私は君達の担任ですから全部勉強して身につけた物です。君達の為になると思うと苦ではありませんでした。」
「頭脳まで怪物かよ…」
進学校である椚ヶ丘レベルの全教科を脳内に叩き込んだ上でそれを生徒達に、それも生徒それぞれにわかりやすく教えられるまで理解をしているらしく、見た目だけじゃなく頭脳まで怪物らしい。
「それでは先生、昨日カルマ君に取られて食べ損ねたジェラートを買い直してきます!!」
「あ、うん。」
空に飛行機雲を描く殺せんせーを見送り
「そういえば殺せんせーってどっから金でてんだろ…学校からか?」
殺せんせーのお財布事情に思いを馳せるのだった。
殺せんせーがジェラートを買いに行った後、千葉と速水が登校して来たので昨日の小テストの振り返りをしていた。
「あ…ここ間違えた。」
「私も、人物名間違えてる…」
「2人とも大体60点くらいかな?」
机を集め、教科書と小テストの問題用紙を広げ白利が答えを書き込んで行き、2人は昨日書いた答えと照らし合わせていく。
どうやら2人とも結果はそこまで芳しく無いようだった。
「歴史は文だけじゃなくて図や絵を書いてみるとわかりやすいぞ。」
白利はノートにそれぞれの勢力の図を書き、矢印で結んでいく。
「文そのものを覚えるんじゃなくて、文の中で重要な所を抜き出して一個に括ったり図に起こす。言葉遊びなんかも良いな。」
(女子みたいな字体してるな…)
(字、綺麗…)
「…おい、変な事考えてないかお前ら。」
2人はすごい速度で白利に視線を戻し顔を横に振る。
「しかしわかりやすいなコレ。」
「ね。ノート取る時今度からコレ書いてみよ。」
「年号とか人名に下線を引くってのもあるけど、やり過ぎると逆にわからなくなるから気をつけろよ。」
「…10位以内維持してるんだから当然だけど、月乃も勉強してるんだね。」
速水は白利のノートを手に取り、ペラペラとめくる。
ノートは綺麗にまとめられており、ページの端の方には先程の図が書いてあったり、殺せんせーが何気なく溢した話まで書いてある。
「流石にな?勉強せずに10位以内維持できるほど頭良くねぇよ。それこそカルマなら地頭良いからノー勉でも10位辺りは入ると思うけど。」
「そういえば…そのカルマは?」
千葉に言われて気づく、まだカルマが登校していない。
カルマの事だ、殺せんせーを殺すまで色んな事を考えているはずだが…
「おはよー月乃君、渚君。」
と考えているうちにカルマがやって来たのだが
「おはようカルマ君。」
「おはよーカルマ…その右手に持ってる物についてはツッコンだ方が良いか?」
白利が指差した先、カルマが持っていたのはタコだった。
ウネウネと元気に動いている。
「良い色ツヤしてるでしょ?朝市で買って来たら遅れちゃった。」
「そういや嫌がらせの為には手間暇惜しまない奴だったなお前…」
「ねぇ月乃君、タコ〆る時ってどこ刺すんだっけ?」
バックから金属製のナイフを取り出すカルマ。
渋々カルマのいる教卓へ近寄りタコの眉間を指差す。
「ちゃんと眉間に刺せたらタコが白くなるから。…無駄にするなよ?」
「おっけー。」
教卓にタコを乗せ、ドスンとカルマはナイフで見事に急所を貫きタコを〆るとタコの体色はみるみる白くなっていく。
「ヨシ!後は先生来るの待つだけだね。」
「はぁ…手洗っとけよ。」
そう言い白利は自身の席に着くと、隣の速水に袖を引っ張られ小声で囁かれる。
「ねぇ…赤羽っていつもあんな感じなの?」
「いや、確かにアイツは喧嘩っぱやいが…今は先生嫌いの方が強いかもな。」
「先生嫌い…?」
「カルマは『おはようございます。』」
いつの間にかHRの時間になっていて、殺せんせーが教室に入ってくる。
不自然に静かだと生徒達を見渡すと、教卓にタコがナイフで刺されているのを見つけた。
「あ、ごっめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ。」
「……わかりました。」
触手でタコを持ち上げ、カルマに向かい歩いていく。
カルマが後ろ手に対先生ナイフを持ち、今か今かと待ち侘びていると
殺せんせーは触手の先をギュルルと高速回転するドリルへと変化させ、
「見せてあげましょうカルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を。」
(あ、あのミサイル。)
ミサイルの火の上で謎の袋とタコをドリルで穿っている。
何やらソースの良い香りが漂ってきた。
「先生は暗殺者を決して無事では帰さない。」
殺せんせーの姿が消えたかと思うと
「…!!あッつ!!」
「もぐもぐ」
カルマと白利の口に大きなたこ焼きが捩じ込まれていた。
カルマは出来立ての熱さで吐き出してしまい、白利は気にせず口に含んでいた。
「その顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでたこ焼きを作りました、これを食べれば健康優良児に近づけますね。ついでに月乃君はもう少し体重を増やしましょう。」
「………」
「もぐもぐ」
「先生はねカルマ君、手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を。」
歯軋りをするカルマとそれを見た殺せんせーは残りのたこ焼きを全て自身の口に放り込む。
「今日一日、本気で殺しに来るがいい。そのたびに先生は君を手入れする。放課後までに、君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう。」
「……!!」
殺せんせーの立ち姿は昨日と違い、本気で警戒しているようで
(カルマ…今日はとことん遊ばれるぞ…)
「ところで月乃君、たこ焼きのお味はいかがですか?」
「もぐもぐ」
「そうですかそれは良かった。」
白利は殺せんせーにサムズアップで返すと、殺せんせーは満足そうに頷いた。
「もぐもぐ」
「なぁ月乃…お前食べるの遅くないか…?」
杉野の呆れる声を聞きながら、口の中のたこ焼きを咀嚼するのだった。
そこからのカルマは散々なものだった。
数学の授業では板書をしている殺せんせーを狙うが、ノールックで銃を奪われた上『ヒマだったからネイルアートを入れときました』とタコやらたこ焼きのネイルを入れられ。
家庭科ではスープをぶち撒けて刺そうとするが、空中でスープを回収され可愛いハート柄のエプロンをつけられてしまい。
ついでに食べ物を粗末にするなと白利に叱られ。
国語では背後から斬りかかろうとするが、額を抑えられ髪をセンター分けにされてしまっていた。
殺せんせーは弱点が多いが、どれだけカルマが不意打ちに長けていようとも、本気で警戒している殺せんせーはあまりにも隙が無さすぎた。
放課後、速水と千葉、杉野とナイフ術の練習の為運動場で集まっていた。…はずだが、肝心の内容はカルマの過去についてだった。
「それで月乃、朝聞きそびれた赤羽について教えてもらえる?」
「カルマが先生嫌いって話だったな。アイツ前から問題行動自体多かったんだけどさ、それを含めて『お前が正しい』って言ってくれてた先生がいたみたいなんだけど…お前らカルマがE組に落ちた原因知ってるか?」
「え?そりゃ素行不良なんじゃないか?」
「大きく括ればそうだな。だが、落ちた原因は実は俺と似たようなものなんだ。」
「月乃が落ちた原因って…」
そうE組の先輩を守りA組の先輩を殴った事。
だがカルマの場合は
「カルマの場合はイジメしてた先輩を殴った上に先生まで殴ったんだよ。」
「もしかしてその先生って…」
「そう『お前が正しい』って言ってた先生だよ。E組を守って優等生を殴ったお前は間違ってるって言われて以降アイツは先生って生き物に絶望して毛嫌いするようになったって訳だ。」
「なるほどね…」
信頼していた先生の裏切り、それを拗らせて今もその殺意を殺せんせーに向けているカルマ。
答えを知り、今までの行動に妙な納得感を得てしまう。
「本当はこういう人の過去とか言っちゃダメなんだろうけど、アイツ平気で人の過去とか弱みを武器にしてくるから良いかって事で。…一応ここだけの話でな。」
「わかってる、流石に面と向かって言う気にならないわ。」
「……?なぁあそこにいるのって。」
話の途中、千葉が何かに気がついたのか指を差した先を見ると
「あれは…カルマと渚に殺せんせー?」
「今度はあそこで暗殺を仕掛けるのか?」
この辺りを一望できる高台の上にカルマと渚、殺せんせーがいた。
カルマは崖付近に立ち、殺せんせーに銃を構えている。
「ねぇ月乃…」
「あぁすごい嫌な予感がする…」
どうやらその予想は当たったようで、崖の外側へカルマの身体が揺らぎ
自由落下を始めた。
「「「ッ!?」」」
「あのバカ野郎…!!先生殺す為に自分まで賭けるか!?」
言葉に出すよりも早く森の中を駆け出す白利。
運動場から高台まではあまりに遠すぎるが、そんな事気にせず加速し続け森の中を走る。
見上げるとカルマの身体が地面に近づいているのがわかる。
「カルマァァァァァ!!」
瞬間、白利の頭上に黄色い蜘蛛の巣のようなものが張られた。
いや違うコレは…
「殺せんせーの触手…!?」
落ちてきたカルマを受け止める殺せんせーの触手は『ばふっ』と落下の衝撃を和らげるように沈み込む。
「カルマ君、自らを使った計算ずくの暗殺お見事です。音速で助ければ君の肉体は耐えられない、かといってゆっくり助ければその間に撃たれる。そこで先生ちょっとネバネバしてみました。」
(…くっそ何でもアリかよこの触手!!)
殺せんせーの触手にほぼ全身を捕らえられてしまっているカルマは満足に身体を動かす事ができない。
その周りを殺せんせーはウロウロしている。
「これでは撃てませんねぇ、ヌルフフフフフフ。…あぁ、ちなみに見捨てるという選択肢は先生には無い、いつでも信じて飛び降りて下さい。」
「……はっ、こりゃダメだ…」
「カルマお前、随分無茶したなぁ…」
地面に降ろされたカルマに近寄り飛び降りた崖を見上げる白利、殺せんせーは上にいる渚を迎えに行った。
「はぁ…今のが考えてた限りじゃ一番殺せると思ったんだけど、しばらくは大人しくして計画の練り直しかな。」
「…すっきりしたか?」
「ん…ま、先生としては死なないし殺せなさそう。」
昨日までとは違い、晴々としたカルマの顔には殺せんせーに対する歪んだ殺意を孕んでいなかった。
「カルマ君!」
「おやぁ?もうネタ切れですか?」
どうやら殺せんせーが崖上の渚を連れて来たようだった。
渚を降ろすと、懐から美顔ローラーやら化粧水、カチューシャなどを取り出した。
「報復用の手入れ道具はまだありますよ?君も案外チョロいですねぇ。」
「…殺すよ、明日にでも。」
晴々したカルマの顔を見た殺せんせーは多くを語らず、ただ顔に◯を浮かべて微笑むだけだった。
憑き物が落ちたカルマはポケットからがま口財布を取り出して
「さ、帰ろうぜ渚君、月乃君。メシ食ってこーよ。」
「ちょッ、それ先生の財布!?」
「どうせ職員室に置かれてたのとって来たんだろうなカルマ君…」
「俺は速水達待たせてるからパスで。」
財布を殺せんせーに投げ返したカルマは少し驚いたように白利の顔を見る。
財布の中身ははした金すぎてカルマの手で募金されていたようだ。
「月乃君も変わったね。2年までは話すの俺か渚君、せいぜい浅野君に絡まれるくらいだったのに、友達増えたねぇ。」
「そこのタコのおかげだ。…後はまぁ、単純に
と、白利の視線の先に追ってきたであろう速水達の姿が見えた。
「じゃ、俺行かなきゃ。また明日なカルマ、渚、殺せんせー。」
「月乃君は暗殺に対する意欲が高くて関心ですねぇ。本気で殺そうという気概を感じる。」
「…へぇ正直ちょっと意外だったかも月乃君が本気で何かに取り組んでるの。」
「にゅや?どういう事でしょうか?」
「月乃って勉強とかもちゃんと努力はしてるんだけど、何かに本気で取り組んでるって所を見た事無いんだ。」
「月乃君の本気を見た事が無い?」
「そ、2年の時にA組の浅野君が焚き付けに来たとこを見た事あるんだけど、それも無視していつも通りだった。なーんかさ、月乃君って素直な奴ではあるんだけど底の空いたコップって言うか、あーしたいこーしたいって信念が無い感じ。」
「僕達は特に気にしては無いんだけどね。」
「そうですか…単純に本気を出した事がないのか、何か事情があるのか…」
目に見える表側だけが全てとは限らない、人の内面もまた然り
月の裏側には一体何があるのだろうか
ご覧頂きありがとうございました!
【月乃白利の秘密】
大きいものを口に含んだ時極端に咀嚼、嚥下が遅くなる