暗殺教室ー月は何を見るかー   作:TKTK(2K2K)

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毒の時間

「お菓子から着色料を取り出す実験はコレで終了!!」

 

理科の時間、お菓子から着色料を取り出す実験をしたので持参したキャンディの残りを持って帰ろうと手を伸ばすと一瞬にして全てのキャンディ…否、全ての机の上にあるお菓子が無くなっていた。

 

「余ったお菓子は先生が回収しておきます。」

 

「給料日前だから授業でおやつを調達してやがる…」

 

「地球滅ぼす奴がなんで給料で暮らしてんのよ…」

 

大事そうにお菓子を抱える殺せんせーに苦笑いをしながら仕方がないので実験道具の片付けをする。

ピペットは洗浄液に浸し、ビーカーなどは洗って乾燥棚に置いていく。

 

「月乃、試験管立てもらっちまうぜ。しっかし殺せんせー俺達が買ったのにお菓子全部持って行きやがったな。」

 

「さんきゅ杉野。まぁ殺せんせージェラートをカルマに奪われて、この前買いに行ったら財布に金が無いわ、そのはした金はカルマに全部募金されるわで財布の中身文字通りのすっからかんだからな…」

 

「それでもマッハで全部ひったくるってなぁ…」

 

『大人気ないよなぁ』と2人して呟く。

皆片付けをする中、1人だけ試験管と三角フラスコを手におずおずと殺せんせーに歩み寄る少女『奥田愛美』が立ち止まったかと思うと

 

「毒です!!飲んで下さい!!」

 

と手に持った試験管達を殺せんせーに差し出した。

あまりに真正面からの宣言で奥田と殺せんせー以外の全員が気が抜けたように体勢を崩す。

 

「お、奥田…そんな真正面に…」

 

「でも前に杉野も『殺したいから来てくんない?』って殺せんせーに言ってなかったか?」

 

「そうだけど毒とはまたちょっと違うだろ…だって向こうは『コレ毒だから自分で飲んで死んでくれ』って言ってるようなものだぞ?」

 

「…確かに、要は自殺しろって言ってるのか。」

 

今度は殺せんせーの方を見ると流石に困惑してるのか汗を一筋垂らしている。

殺せんせーって汗腺あるんだ…

 

「……奥田さん、これはまた正直な暗殺ですねぇ。」

 

(正直な暗殺…?)

 

「あ…あのあの!わ、私皆みたいに不意打ちとかうまくできなくて…でもっ化学なら得意なので真心こめて作ったんです!!」

 

「奥田…それで飲むバカはさすがに…」

 

「それはそれはいただきます。」

 

「飲むんかい!!」

 

奥田の手から試験管2本を取り、そのうち1本の栓を開け一気に飲み干す。

すると

 

「こ…これは…!」

 

毒が殺せんせーの体内で作用し始めたのか、身体がガクガクと震え

 

にゅ

 

とおでこの辺りにツノが2本、後頭部に青いハリネズミのようなトゲが生えた。

 

「この味は水酸化ナトリウムですね。人間が飲めば有害ですが先生には効きませんねぇ。」

 

「なんで味知ってんだよ。」

 

「……そうですか。」

 

落ち込む奥田をよそに殺せんせーは続けてもう1本の試験管の栓を開け飲み干す。

 

「うっ…うぐぁっ!ぐぐぐ……」

 

うなじ辺りから2対の小さい羽が生えた。

というかなぜ顔にしか変化が現れないのだろうか。

 

(無駄に顔が豪華になってきたな…)

 

「酢酸タリウムの味ですね。では最後の1本。」

 

三角フラスコを手に取り栓を開け飲み干す。

もはやE組の誰もが殺せんせーが毒で死ぬとは思っておらず、殺せんせーの顔がどんな変化を見せるのか全員が注目していると

 

スンッ・_・

 

形は元に戻り、真顔になっていた。

 

「王水ですねぇ。どれも先生の表情を変える程度です。」

 

「…はい。」

 

「むしろ毒飲んで表情変わるってどういう事だ…?」

 

「「「てか先生真顔薄ッ!!顔文字みてーだな!!」」」

 

「先生の事は嫌いでも暗殺の事は嫌いにならないで下さい。」

 

「「「いきなりどうした!?」」」

 

真顔になった影響か、アイドルの卒業式みたいな言葉を放つ殺せんせー。

毒の効果が切れたのか、顔がみるみる戻っていった。

 

「それとね奥田さん。生徒1人で毒を作るのは安全管理上見過ごせませんよ。」

 

「…はい、すみませんでした………」

 

しょんぼりする奥田を見ながら杉野に耳打ちする。

 

「なぁ杉野、奥田いつの間に毒作ってたんだ?」

 

「理科室来る時は何も持ってなかったから…実験しながら作ってたのか…?」

 

「なんか…奥田を敵に回しちゃいけない気がしてきた…」

 

「何盛られるかわかったもんじゃないな…」

 

白利と杉野が震えているのはいざ知らず、殺せんせーは時計を指差しながら

 

放課後(このあと)時間あるのなら、一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう。」

 

「…は、はいっ!!」

 

「…月乃、俺ツッコんだ方が良いか?」

 

「…もう…良いだろ。」

 

この1時間ですっかり疲れた2人は、ツッコむのを諦め奥田の事を心配しつつ帰路に着くのだった。

 

 

 

次の日

 

どうやら放課後、殺せんせーと毒薬の研究をしたようで教室で奥田がニコニコしながら液体の入った丸底フラスコを持っていた。

 

渚と茅野が奥田に話を聞いているのを盗み聞きすると、どうやら理論上1番効果があるらしい。

ふと、奥田の言葉が耳に届く。

 

「きっと私を応援してくれてるんです。国語なんかわからなくても私の長所を伸ばせばいいって。」

 

「………」

 

本当だろうか。

昨日の話を聞く限り殺せんせーはいくつかの毒を飲んだ事があるらしい。

そして殺せんせーは全教科を脳内に叩き込んでいる。

殺せんせーは恐らく自分に効く成分などはとうに把握しているだろう、ならば逆に自分に益のある成分も把握しているのではないのだろうか。

 

奥田を利用して自身に有益な薬を作らせたのではないのだろうか。

 

そんな事を考えているうちに奥田は殺せんせーに毒を手渡し、殺せんせーは中身を口に流し込んでいた。

 

「…ヌルフフフフフフ、ありがとう奥田さん。君の薬のおかげで…先生は新たなステージへ進めそうです。」

 

「えっ…?それってどういう…」

 

殺せんせーの触手には血管のようなものが浮き上がり、激しく全身の触手が暴れ回る。

『グオオオオオオオオ!!!』と雄叫びをあげたかと思えば、殺せんせーの身体から凄まじい光が放たれた。

 

「!!」

 

思わず目を腕で覆う。

光が収まり、腕を下ろすとそこには

 

「ふぅ」

 

ドロドロに溶けた銀色の殺せんせーが教卓の上に乗っていた。

 

「君に作ってもらったのはね、先生の細胞を活性化させて流動性を増す薬なのです。」

 

「…やっぱりか。」

 

「おや?月乃君は気づいてましたか。」

 

教卓から消えたと思えば、白利の机の中から殺せんせーの声が聞こえる。

視線を下げると

 

「見て下さい!液状ゆえにどんな隙間も入り込む事が可能に!!」

 

机の中一杯に殺せんせーが入っていた。

 

「この形状で銀色で素早い…」

 

「月乃君…?」

 

「経験値いっぱい持ってそうだね殺せんせー?」

 

「にゅや!?」

 

ナイフを取り出し振るうも、殺せんせーは素早く飛び出し教室中を跳ね回る。

はぐれメタルならぬはぐれ先生だ。

 

「殺せ!殺せば経験値大量だ!!」

 

「経験値じゃなくてゴールドだろ!?」

 

「じゃあゴールデンスライムとかじゃねぇの!?」

 

「ゴールドでもメタルでも先生の速度はそのまま!!さぁやってみなさい!!」

 

全員で狙うが、液状化し的が減った上教室の床だけじゃなく天井にまで縦横無尽に動き続けるせいで今まで以上に狙いが定まらない。

そんな中、奥田は声を上げる。

 

「だっ…だましたんですか殺せんせー!?」

 

「奥田さん、暗殺には人を騙す国語力も必要ですよ。どんな優れた毒を作れても…今回のようにバカ正直に渡したのでは暗殺対象(ターゲット)に利用されて終わりです。」

 

殺せんせーが壁を伝い、渚へ近づく。

 

「渚君、君が先生に毒を盛るならどうしますか?」

 

「…うーん、先生の好きな甘いジュースで毒を割って…特性手作りジュースだと言って渡す……とかかな。」

 

「そう、人を騙すには相手の気持ちを知る必要がある。言葉に工夫をする必要がある。上手な毒の盛り方、それに必要なのが国語力です。」

 

溶けた際に脱げた服のもとへ戻り、効果が切れたのか元の黄色い触手態に戻る。

 

「君の理科の才能は将来皆の役に立てます。それを多くの人にわかりやすく伝えるために…毒を渡す国語力も鍛えて下さい。」

 

「は…はい!!」

 

(毒を持った生徒すらもただの生徒…か、何者なんだろうな殺せんせー。)

 

毒と暗殺を通じて教育へ繋げていく殺せんせーの手腕に驚かされた二日間なのであった。

 

 

 

 

 

放課後、白利は運動場で走り込みをしていた。

 

(もっと速く…!身体を動かせるように…!)

 

クラウチングスタートから直線を走り、初速と加速を上げるために足を重点的に鍛えていく。

しばらく走り込みした後休憩を取る事にし、ジャージの前を開け座り込むと

 

「精が出るな、月乃君。」

 

「烏間先生、どうも。」

 

烏間先生に声をかけられる、どうやら白利の特訓を見ていたようだ。

 

「…月乃君が良ければなんだが、少し個人訓練でもしていかないか?」

 

「…!良いんですか?」

 

「あぁ、俺が少し教えたくなってしまってな。」

 

烏間先生はスーツを脱ぎ運動場の中央へ向かい、白利は立ち上がり烏間先生の後を追う。

 

「まずは、ナイフを持って構えてみてくれ。」

 

「わかりました。」

 

対先生ナイフを持ち体育の授業で教えてもらった構えを取ると烏間先生が白利の周りをグルグルと歩き、白利の身体を見つめる。

 

「月乃君、この構えに少し違和感や窮屈さを感じていないか?」

 

「実は少し…」

 

「やはりか、教えた構えでは君の柔軟性を活かすどころか殺してしまっていると思ってな。少し身体を触るぞ。」

 

そう言うと烏間先生は白利の腕や足、腰辺りを触診していく。

 

「よし、ありがとう。構えを変えてみよう、俺と同じ構えを取ってくれ。」

 

「わかりました。」

 

烏間先生が取った構えを真似してみると確かに先程より身体が楽になったが

 

「コレ前の構えより楽ですけど、あんまり力が入らないような…」

 

「いや君の場合はそれでいい。前の構えはナイフをコンパクトに振るう事は簡単だが、上体を固定し柔軟性を活かせないから君には合わない。一方この構えはやや大振りな代わりに上体を固定せず柔軟性を維持してナイフや体術を放つ事ができる。」

 

試しにナイフを振ってみると、やや大振りになるが身体を制限されず勢いのままに蹴りなどを織り交ぜる事ができるだろう。

 

「おぉすごくやりやすいです!」

 

「そうか、早めに気づけて良かった。癖がついてしまうと戻すのが大変だからな。…少し手合わせしてみよう。」

 

「はい!」

 

烏間先生の前に立ち、手合わせを開始する。

条件は前の体育の時間と同じ、白利がナイフを当てれば勝ちだ。

 

「ふッ!はッ!」

 

「少々ぎこちないが良い動きだ。次は体術を混ぜてみてくれ。」

 

「わかりまし…たッ!」

 

烏間先生の顔に向かい、勢いをつけた左足での蹴りを浴びせる。が、烏間先生は隙が生まれないようギリギリで回避をする。

 

(前よりも格段に速い蹴り、更にしっかりとこちらを見ながら攻撃を放っている。)

 

「くッ…!ふッ…!」

 

「よし、一旦ここまでだ。」

 

「おわっ!?」

 

烏間先生は自身の顔に向かってくる足を掴むと、白利を逆さ吊りにし、ゆっくりと地面に降ろす。

 

「ふむ…見ていた限り月乃君は左手を使っていないようだが理由はあるのか?」

 

「うーん…右手でナイフを使ってるし、併用しやすいのは蹴りなので。」

 

「君の戦闘スタイル的に併用しやすいのは蹴りだが、腕の動作…パンチなどは奇襲に優れ、君の場合はナイフ術にも取り入れられるだろう。」

 

「パンチ…確かにナイフを構えてる相手から飛んで来るとは思わないですね。」

 

烏間先生は白利から少し離れて腰を深く入れ、『ふんッ!』と正拳突きを繰り出すとそこから生じた風が白利の髪を揺らす。

 

「さて今の正拳突き、身体をどう動かしたかわかるか?」

 

「腰、肩、腕を順番に動かして加速させていってました。」

 

「そう、普通の人間ならおよそ3箇所を順番に動かす事で速度を生み出す。が、君の場合はその柔軟性で肩と腕の動きだけでもそれ以上の加速と速度を生み出せる筈だ。」

 

(普通の人間は正拳突きでその風圧を出せないのでは?)

 

やっぱり烏間先生は人間では無いのではなかろうか。

 

「月乃君、普通に立った状態で拳を放ってみてくれ。」

 

「こう…ですかね?」

 

拳を振るうとヒュッと空を切る音が聞こえた。

流石に烏間先生のように風圧は生み出せないが、中々良い速度だ。

 

「あぁ、やはり君は筋が良い。次は放った後、腕を元に戻す。ようは今の立ったままの状態に戻してみてくれ。」

 

「わかりまし…たぁ!?」

 

先程と同じように拳を放ち、戻そうとしたら身体が後方に倒れそうになる。

 

「腕を引こうとして速度を上げ過ぎたんだ。コレをナイフを持ってノーモーションで放てるようになる、かつ体勢を崩さず左右どちらの手でも出来るようになれば奴を正面から暗殺する事も不可能ではないだろう。」

 

「ノーモーションって……なかなか難しい事言いますね…」

 

「それほど君に期待していると言う事だ。どうだ?コレは君だけの武器になると思うのだが、やってみるか?」

 

「わかりました。殺せんせーですら見切れない位の速度を出して見せますよ。」

 

こうして白利は新たな武器、柔軟性を活かしたナイフ術と体術を手にしたのだった。




ご覧頂きありがとうございました!

【月乃白利の秘密】

RPGゲームは得意では無いのでプレイはしない
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