「ゆ、ゆえ~~~」
「何ですか、急ぎますよ」
私達は始まってすぐに屋根の間に行き、誰にも見つからぬよう行動を開始しています。――って誰に説明してるですか?
「ゆえー……?」
「あ、いえ。何でもないです。それよりどうかしたのですか?」
「何でネギ先生の所に行くのにこんなとこ通ってるの……?」
「ああ……そう言う事ですか。私の見立てではこのルートが最も安全かつ速いのです。ネギ先生+二見さんの部屋は端っこですので、どうやっても必ず敵や新田先生に当たってしまいます……」
二見さんにお願いしているのは部屋の中の事のみですからね。外側に関してはこちらで出来る事をするまでです。
「そっか。だから裏手の非常階段から直ぐ中に入れば……。で、でも非常口には鍵がかかってるかもー……」
「それに関しては問題ないです。元々のどかの夜這い用に鍵は開けてましたしね」
旅館の人とかにバレたら怒られるかもしれませんが……後で閉めておけばいいですよね。
「よ、よよよよばっ!?」
「冗談ですよ。朝倉さんがこのイベントをやると言ってすぐに開けたのです」
「そ、そうなんだー、良かったぁ……。あ、ゆえ、ありが」
「コラのどか! お礼は目的を達した後ですよ」
それ以前に私達の仲で今更お礼などなくて良いのですが。そこはやはりのどかですね。
「あ、開いたねー」
「しっ、油断は禁物です。……廊下にはまだ誰もいませんね。チャンスです。そこの304がネギ先生達の部屋です。さぁ、のどか今のうちに」
「う、うん。頑張るー……」
後はのどかが先生とキスをし終わるまで見張りをするだけです。二見さん……ちゃんと空気読んでくださいよ?
「まだ誰もいない……チャンス!」
「あううう、こわいですぅ~~~」
「む!」
もう来てしまったですか! そしてこの声は……。
「何コレー……?」
「あっ、5班!?」
「しまった! やるよ史伽!!」
「ふーちゃん、ふみちゃん!?」
鳴滝さんズですか……くーふぇさんやいいんちょさん達よりはマシですね……。私達でも相手出来るレベルです。
「「鳴滝忍法、分身の術!!」」
「甲賀しゅり」
「ふん!」
「もげっ!?」
何故かのどかだけを狙っていたので容赦なく攻撃させていただきました。――ここは通しませんですよ? あと、分身は出来てないですよ。
「風香さん史伽さん! 私が相手です!!」
「おのれゆえ吉ちょこざいな! 我ら甲賀忍群に敵うと思うてかでござる!!」
「お……思うてか! ……でござる~」
「……」
その割には隙だらけですね。それでは遠慮なく。
「もぎゃん!」
「はぶぁ!? や、やったね~~っ!」
「あっ、何か凶器を出したです!?」
凶器とは心外ですね。本は凶器じゃないですよ? フフフフフ。
「も゛っ!?」
「あきゅっ!?」
「ゆえ吉本で殴るの反則~~ッ!!」
「枕の上からなら問題無いです!!」
「「きゃああ――っ!!??」」
2対1では分が悪いですからね! それならこちらはその分を火力で補うしかないのです!
「のどか! ここは私が食い止めるです! のどかは早くその扉から中へ……っ! 中には二見さんもいます!」
「ゆ、ゆえっ……でも、あううっ……」
「およっ? 見つけたアルよー!」
「くっ! マズいです」
流石に武闘派のくーふぇさんにはどうやっても勝てないです! こうなったら多少無理矢理にでも……!
「ドアを閉めます! 早く入ってやる事済ませるです!」
「あっ!?」
のどかを無理矢理部屋に押し込みドアを閉める。後はのどかがキスするまでドアの前で耐え切れたらこちらの勝ちです!!
「行くアルよ――!!」
「風香さん史伽さん、ここは一時休戦しましょう! 長瀬さんは加勢する気が無さそうですが、くーふぇさん単体でも私達より強いです!」
「わ、分かった!」
「あううう、楓姉~~!」
万が一私達が抜かれてもまだ二見さんがいます! ……さすがにくーふぇさんの相手は無理でしょうが時間稼ぎくらいは……いや、無理でしょうね。……アレ? 詰んでないですかコレ。
「ひゃああああああ~~~~っ!?」
「!?」
「何アルかこの悲鳴は!?」
こ、この声はのどか!? 一体中で何が!
「のどか!」
「本屋、どーしたアルか!?」
「きゅうう……」
「あっ」
「のどか―――っ!?」
な、なんで目を回してるですかー!?
「しまた。窓から逃げられたアル!」
「史伽追うよッ!!」
「のどか! しっかりするです!」
「う~~~ん、ネギ先生が4人……」
「何言ってるですか!」
のどかを起こしたいですが、何やら意味不明な事を口走って……。そう言えば二見さん! 二見さんは何やってるですか!? これでは何のために隠れてもらっているのか分からないではないですか!
「二見さん! いつまで押し入れに隠れているですか!」
「のわっ!?」
「へ? きゃうっ!?」
sideout
「……んぐ? …………やべぇ」
目が覚めた時、俺は自分が何をしでかしてしまったのかを自覚した。
「ね、寝ちまったよ……。ネギ君はまだ無事か?」
そうして襖を開けようとした直後
『ひやああああああ~~~~っ!?』
「うおあっ!?」
いきなり聞こえてきた叫び声に驚いて飛び上がって……縁に思いっきり頭をぶつけた。
「ふぉおおおおおお!! 頭が、頭があああああ!!」
割れる割れる割れる割れる!! ってか、これ絶対に割れてるぅううう!!
「と、とりあえず外に出よう」
頭が割れてるか確認しなければ……。あとさっきの叫び声の正体とかも。
『二見さん! いつまで押し入れに隠れているですか!』
「のわっ!?」
襖を開けようと手を伸ばしたその時、綾瀬の声と共にいきなり襖が開かれ……手を伸ばしていた俺はそのまま慣性に従って目の前にダイブしてしまった。
「へ? きゃうっ!?」
「いつつつ……今なにが――」
何かとぶつかったのは辛うじて分かったのだが、目の前の状況を見て……俺が何をやらかしたか全て理解できた。
「あ……う……」
「えっと……その……」
目の前には綾瀬の顔、どうやら……俺が落ちた時に綾瀬を巻き添えにし、あろう事か押し倒した様になっている。ちょ、待っ! ど、どうしてこうなった!?
「あ、あの……二見……さん?」
「へ? あ、はい……」
「その、わざとでは……ないんですよね?」
「そ、そりゃもちろん!」
ふと思ったんだけど、綾瀬って間近で見ると結構可愛いよなー……。ってちがくて、何コレ!? 何可愛いとか思っちゃってんの!? いや、嘘ってわけじゃないけど唐突すぎんだろ俺の思考! あと心臓も落ち着け!! さっきからバクバクうるせぇえええええっ!!!
「そ、そうですか……」
「お、おう……」
そして何故お前は顔を赤くする!? 俺まで赤くなるだろうがッ!! だって女子とこんなに接近したの初めてだもの――!!
「う――ん……? あれ、わた……し?」
「「あ……」」
そこに、良く分からんが寝ていたらしき宮崎さんが目を覚ましたようだ。……コレマズくね!? 絶対に色々な誤解招くよね!?
「あ……ゆ、ゆゆゆゆえがふたみんさんとだ、だだだ抱き合って――」
「違うですよのどか!?」
「そ、そうだ! これは事故なんだよ!! な、綾瀬!! てか今さりげなくふたみんって呼んだよな!?」
そう、今のは事故なのだ事故! だからさっき思った事も全部事故のせいだ! そして抱き合ってるわけじゃない! 誰がどう見ても押し倒しているようにしか見えない! いや、そっちの方が悪いな!!
「そ、そうです! のどか、私達は決してそのような関係では……」
「ご、ごごごごめんなさい! お邪魔しましたぁああああっ!!!」
「のどか―――っ!!??」
「カムバック宮崎さ――んっ!!!」
…………
………
……
…
「――と言う訳で、私が襖を開けた直後に……」
「押し入れ側から開けようとした俺が突っ込んでしまってああなったってわけだ」
なんとか宮崎さんを捕縛し、事情を説明できた。良かった……本っ当に良かった……。
「そ、そうだったんだー……」
「ええ、ですからその……別にだっ、だだだ抱き合う関係などではないのです」
「お、おう! 別に違うんだぜ?」
くそっ、まださっきの感じが残ってやがるな……。恥ずかしいことこの上ない。だけど、このままじゃ駄目だよな……うし、まずはネギ君だ!
「あ……そう言えばネギ先生はー?」
「逃げてしまいました」
「でもなぁ……? 俺始まる前から思ってたんだけど、ネギ君がこんなイベントに参加するとは思えないぞ?」
だってネギ君だろ? あんな真面目っ子が自分の教え子とキスするイベントに参加するかなぁ?
「それは私も薄々感じていましたが……やはりそうなのでしょうか?」
「多分な。とりあえずロビーに行こう。確か見回りに行くとか言ってたからひょっとしたらそこにいるかも知れん」
「分かりました。のどか、行くですよ」
「あ、うんー……」
そうしてロビーに行くと……そこには異様としか言い様がない光景が広がっていた。
「……あれ、おかしいな。ネギ君が4人に見える」
「え、ええ私もそう見えます」
「ど、ど言う事ー……?」
周りを見てみると、ネギ君×4の他にこのイベントに参加している奴らも集まってきていた。きっとあのネギ君×4を追ってきたんだろうな。
「え、え~~~っ!? ネギ先生がいっぱい~~~~!?」
「気を付けて! おそらく朝倉さんが用意した偽物です!」
「はぁー、しかし近くで見るとこりゃまたすげぇ精巧だな」
全くもって見分けつかねえし。朝倉スゲェな……。こんなもん用意するなんて。
「よーし、とにかくどれでも良いからキスするアルよー! 楓、捕まえるアルー」
「あいあい」
と、古が長瀬が押さえたネギ君1号(仮)の頬にキスすると
「えーと……では、任務完了と言う事で……ミギでした」
「ん?」
ネギ君1号ならぬ、ミギ君がそう言うと……爆発した。……って爆発ぅ!? どうなってんの!? ここまでやるか朝倉!
「せ、せせ先生がばくは、爆発!?」
「落ち着くですのどか! 要するに偽物だったと言うだけの話です!」
「あっ、コラ! 何だこの煙は!!」
「ヤバい! 新田が来たぞ!」
しかしその瞬間……さらにとんでもない事に。
「「「チュー」」」
「ぬごっ!?」
「あーあ……」
残ったネギ君×3が新田の顔面を蹴り飛ばしてしまった。……これ、どうするんだ? とりあえず正座確定なのは間違いないとして。
「あ、あわわわ……に、新田先生が――……」
「こうなっては最早後戻りできませんね」
「最初っから無理だった気がするが……」
そもそもこのイベント始めた瞬間から後戻り不可能だろ。
「ええい、ヤケですわ! 皆さん、追いますわよ!」
「ああー……いいんちょさん達がー」
「いえ、先ほど二見さんがおっしゃっていた通りやはりネギ先生がこんなイベントに参加するはずがありません! 探しに行きましょう!」
「OK!」
「う、うん!」
綾瀬がの言葉に頷き、俺達は本物のネギ君を探すべく旅館内を駆け回る。
「くっそ、いねぇな! まだ見回りから帰って来てないのか?」
「状況から察するにそうなりますね。何にせよ他の方に本物を見つけられる前にこちらで見つけなくては!」
「そ、そうだねー……」
外か? 外なら探すの難しいぞ!?
「――って見つけたぁ!! ほら、ちょうど玄関から入って来るぞ!」
「ホントです! 急ぐですよのどか!」
「あ、うん!」
なんてラッキー! 外まで探しに行く手間が省けたぜ! しかも他の奴らは全員偽物に爆撃されたようでここに来る様子が無い。好都合にもほどがあるってもんよ!
「ただいまー。あれ……? 何か騒がしいような……」
「ホラ、のどか……」
「行って来い」
「あ……」
綾瀬が宮崎さんの背中を押し、ネギ君の前へと押しやっていた。
「あ……宮崎さん」
「せ……ネギ先生……」
おーおー、良い雰囲気じゃないの。……って、これだと俺達邪魔じゃね?
「綾瀬綾瀬」
「なんですか?」
「この距離だと俺達邪魔じゃないか?」
「……そうですね。それではもう少し離れたところから見守るです」
小声で話し合い、2人に気付かれないようにこっそりと距離をあける。もちろん2人の声が聞こえる範囲で。
「ちょうど自販機あるし、何か飲むか?」
「お願いします。私は2人の動向を見ていますので」
「あいよ」
おや、京都にも『超神水』ってあるんだな? 他はどこにでもあるようなのだし、これでいっか。
「ほいよ」
「どもです」
綾瀬にドリンクを渡してから再び2人の会話に耳を傾ける。
「――あの。と、友達から……お友達から始めませんか?」
「……はいッ!」
「まぁ……良く考えたらこんなもんだよな。ネギ君10歳だし」
「ですね……。しかし、もう一押しくらいはしておくですか」
そう言うと、綾瀬はおもむろにドリンクのパックを宮崎さんの足元に投げた。なにがしたいんだコイツ?
「ふぇっ?」
「へっ?」
宮崎さんは綾瀬が投げたパックを見事に踏み、足を滑らせ……倒れざまにネギ君と唇同士が触れた。……マジか。
「……何あのドジっ娘」
「良かったですね、のどか」
「なんでそこで一仕事やりとげた顔を出来るのか真剣に問いたい」
下手したら気まずくなるだけじゃないか?
「む……では二見さんはあの消極的なのどかにどうしろと言うのですか? ネギ先生が振り向くのをひたすら待てと?」
「いや、そう言う訳でもないけどさ。いきなり過ぎやしないかって話」
「こう言うのは何事も早めの方が良いのですよ」
「ふーん。そう言うもんか」
「そう言うものです」
色々と釈然としないが、宮崎さんは嬉しそうだし、ネギ君も意外と満更でもなさそうだからこの場はハッピーエンドで――
「お前達、全員正座―――――ッッッ!!!!」
やっぱそう都合よくいきませんよねー。予想してたとはいえ。
side-夕映
「――ふぅ」
反省を促す正座中でも考えてしまうのは……やはりあの時の事。
「本当に驚いたです……」
隣を見ると、器用に正座しながら眠っている二見さん。……事故とは言え、私は先ほどこの人に押し倒された形になったのですよね……? うぅ……思い出すだけでとてつもない恥ずかしさが蘇るです……。だいたい私がこんな思いをしているのも全て二見さんがさっさと押し入れから出て来なかったのが悪いのです。いえ、さすがに責任を全て押し付けるのはどうかと思いますが、それでも二見さんが押入れから出てくれていれば……。それに生まれてこの方男性にあそこまで接近されたのは初めてですし、二見さんは二見さんでわざとではないにしろもう少し対応と言う物があるハズです……。しかもいきなり顔を赤くするなど意味が解らないです! そんな、至近距離でいきなり顔を赤くされたらこちらまで赤くなってしまうのは至極当然でしょう!? それに何より……一番意味が解らなかったのは、あの時すぐに拒んだりしなかった私の――いえ、気のせいです、気のせい! あの時ちょっと意識したとか嘘っぱちです! いわゆる吊り橋効果みたいなものです! 私達は友人なのです! もっと言うとドリンク仲間です! それが男女の関係云々になるなどとアホみたいな話が……!!
押し倒しシーンと最後のがやりたかった……! ただ、それだけです。
あ、今回ドリンク……最低でも一話につき一本と決めていたのに……。次から気をつけます……。