フッ、あんな浅はかな事を言った俺を笑うが良いさ……。
「……だいじょぶ?」
「本当に呪われてるんと違う……?」
「あれから水を被ったり、氷漬けになったり、穴に落ちたり、滑って転んだり、顔から泥沼に突っ込んだり、飛んできた岩に吹き飛ばされたりしたですしね……」
「あうあう……」
「あはっ、あはははは!!」
もう、笑うしかなかった。笑うしかこの不幸とかのレベルじゃない苦行を耐え切る手段は無かった……。
「ちょっ! 大丈夫ですか!?」
「こりゃ重症ね……」
「いやいやハルナ、落ち着いてる場合やないえ!」
「う、うんー……」
「殺せっ、もう殺してくれぇええええっ!!!」
いっそ殺せよ! その方がどんだけ楽かっ!
「早まるなですーっ!」
「あちゃあ……このか、トンカチ」
「はいな」
「どりゃあああああっ!!!」
「うげっ!?」
どがんっ、と後頭部にとてつもない衝撃が走り、俺の意識は一瞬で沈んだ。……ねぇ、俺今日なんか悪い事した? ねぇ!?
side-夕映
「……ハルナ、やりすぎでは?」
完全に意識がないのですが……。白目剥いてますし。
「う~~~ん……ま、大丈夫でしょ。息はしてるみたいだし」
「……でも今物凄い音したえ?」
「こくこく」
「ええ……まるで頭蓋骨を陥没させたような音がしました」
確かに息はしてますがこれではちょっと……。と言うか本日で一番キツイ一撃のような気もするです……。
「ま、とにかく運んじゃいましょ。このか、夕映あんた達は肩持って。私は足持つから。のどかは触るの無理だろうからまたヘンなジュースでも買ってきて」
「はいな」
「OKです」
「わ、わかった……」
変なジュースとは失礼ですね。あんなに面白美味しいと言うのに!
「よっし、いくよー。せーっの!」
それから気絶した人間と言うのは想像よりも重いと言う事を体感しつつ、二見さんを近くのベンチまで運んだ……は良いのですが
「う、うぅ……」
「うなされてるようですね」
「嫌な夢でも見とるんちゃう?」
「まぁ……あれだけの事があったら普通は嫌な夢の一つや二つ見るでしょうよ」
sideout
「う、う~~ん……あれ?」
目を覚ますと、目の前には世界樹広場があった。
「俺確か図書館島に行って、ありえないほど酷い目にあってたハズ……」
そういや最後ってどうなったんだっけ?
「おや? 全然思い出せないぞ?」
なんでだろう……? よほど嫌な体験でもしたのかな。
「お、二見じゃん。こんなところでどしたー?」
「え? あ……鷲崎か。いや、別に」
いきなりクラスメイトの鷲崎が現れて話しかけてくる。なんだなんだ?
「ふーん? それじゃ、約束してた『アレ』食わせてやるよ」
「『アレ』?」
何の事だ? こいつに頼んだのは超不思議カレーだけだぞ? それ以外に何か頼んだ記憶なんてないが……。
「なんだよ、お前が言ってきたんだろ? 『激烈麻婆EX』が食いたいって」
「は!? んだよソレ!? 初耳だぞコラ!!!」
俺は自分の体の為にも食い物はある程度まともなのを食うって決めてるんだ!!
「はぁ? ま、いいや。ほら、行くぞ」
言うが早いか、俺の腕を掴み引っ張ってくる。
「止めろ! 離せ! 行きたくない!!」
て言うかなんだコイツ!? 力強え! 振り払うどころか止める事すら出来ないんだけど!?
「往生際が悪い奴だな。もう店長には話つけてんだからな。俺のためにも食え。俺の信用が落ちたら困るじゃねーか。俺が」
「結局全部てめえのためじゃねえか!! っの! はーなーせーっ!!」
しかし激しい抵抗も空しく……。
「着いた……着いてしまった……」
「店長~~。例のヤツ連れてきましたよー」
呑気に店長なんぞを呼びやがる鷲崎。しかも腕はガッチリ掴まれたままなので逃げ出す事が出来ない。
「くそっ!」
「逃がさん」
「よしっ、良く連れて来てくれた鷲崎君! これでようやくじっけ……ゴホン。麻婆豆腐も浮かばれるよ」
「実験!? 今実験って言ったろ!?」
つか浮かばれるってコイツ、食い物を粗末にしてるって分かってやってんのか!? 性質悪すぎだろ!!
「さ、被験者(笑)君。気にせず食べてくれたまえ」
そう言って目の前に出してきやがったのは、濃い紫色をしていて、豆腐と思わしき物は緑色だった。
「どうだ? 面白そうだろ?」
「やかましいわ! しかも店長、てめえ今被験者(笑)っつったろ! やっぱり実験台なんじゃねーか!!」
「やれやれ。鷲崎君が「面白い物なら何でも試す奴がいる」って言うから試行錯誤の上に作ったのに……その反応はあんまりじゃないかい?」
……はい? てことは、コレ『俺専用』なわけ!?
「鷲崎、お前……」
「お、なになに~? そんなにプルプルしちゃって、ひょっとして俺の友情に感激? やだなー、別に気にしなくても良いのにさー」
コイツコロス。
「死ね! 鷲崎いぃぃぃぃぃっ!!」
「はい、麻婆豆腐」
「んぐっ!?」
叫んだ時に大口を開けたのがいけなかったのか、店長に食わされた。
「どうどう? 僕たちの傑作は?」
「もぐもぐ……何か、麻婆の部分がべっちょりしててなぜか炭酸みたいにシュワシュワしてて辛いハズなのに甘い……。豆腐は何故かソースの味がするし、せんべいの様に硬いし、んでめちゃ納豆臭い……。うん、面白いよ」
確かに面白い。面白い味だが……また腹を壊しそうだ。もうあんな思いは嫌なんだ。トイレに籠もってたらいつの間にか三時間も経ってて、出た瞬間に再び腹が痛くなって……を一週間繰り広げるのはもう、嫌なんだ。
「おお! そうかそうか! ではまだまだあるから沢山食べてくれ!」
「い、嫌だ! これ以上食べたらまたあの時みたいな悲劇がっ!!」
「鷲崎君」
「イエッサー」
がしっと鷲崎に羽交い絞めにされる。
「は、放しやがれ!!」
「やなこった。ほら店長!」
「OK」
「止めろっ! 止めてくれえぇぇぇぇぇぇっ!!!!」
…………
………
……
…
「……はや……です!」
何か声が聞こえる。……まさか俺、アレを食って死んだのか? はぁ……だから食うの嫌だったんだ。未練しかないけど死んじまったらしょうがないよなぁ。
「おー……、……さーい!」
うるさいな……天国ってのはこんなに騒がしい所なのか? いや、そもそもここどこ? 真っ暗なんですけど。
「……君ー……起き……」
あ、そっか。目閉じてるのか。そりゃ暗いハズだわな。
「あわ……どう……?」
さてさて、このうるさい奴らはどこのどいつだ? 説教してやる!
「お前らさっきからうるせぇんだよ!!」
そして、目を見開いてそいつらの顔も見ずに怒鳴ってやった。
「!?」
「おっと」
「きゃっ」
「っ!?」
「ってあれ?」
良く見ると綾瀬達だった。結構大声を出してしまったせいかかなり驚いているようだ。
「悪い悪い。お前達だとは思わなくてつい大声出しちまった」
「? じゃあ誰だと思ったですか」
「ここにゃ今は私達しかいないよね?」
「うん。あれから誰も通ってないえー。な、のどか」
「こくこく」
周りを見渡すと本棚が至る所に沢山……どうやら図書館島のようだ。でも変だな……。
「俺は確か商店街の方にいたハズ……」
「はい? 何を言ってるですか?」
「私達ずっとここにいたよ? ねぇ、二人とも」
「うんうん」
「こくこく」
ずっと……? って事はさっきまでのは……
「夢……か? ハハ……良かった」
死んでなくて良かった。でも……あの味はかなりリアルに感じたんだけど何でだろう? ……考えない方が良い気がする。
「大丈夫ですか色々と」
「ん、変な夢見た事以外は大丈夫だぞ」
とりあえず寮に戻ったら鷲崎の野郎をぶん殴る。これ、確定事項。
「やっぱちょっと強くやり過ぎたせいかしらねー」
「? 何をだ?」
「君が壊れたから殴ったのよトンカチで」
しれっと答えるパル。……なるほど、そりゃ悪夢も見るわ。
「……何か怒る気も起きない。と言うか今日はもう帰りたいんだが」
「そうですね……。今日はここまでにしておきますか。二見さんのためにも」
「そうね。これ以上何か起きたらヤバそうだし」
「せやな」
「こくこく」
そうして今度は何も触れずに綾瀬達の後ろからついていき……特に何事も無く無事に戻って来れた。
「んじゃ、俺は帰るな」
「はい、ではまた来週です」
「まったね~」
「ほなな~」
「さ、さよならー……」
図書館島を後にし、帰路につく。
「あ、一応なんかジュース買っていくか」
帰り際、ふと思いついたのでMAHORAドリンクを買う事にした。寄り道せず真っ直ぐ帰りたい所だけど、これは仕方ないよな?
「んー……買ってない味あるかな」
自販機を見つけ、MAHORAドリンクを探す。
「お、これ見た事ないな」
『443ドリンク187味』か。一応今日までのリストを確認して……っと。
「うん、無いな。ちゃんと学園長の分も買っとかないとな」
※後日、苦笑しながら飲んだ学園長は腹を壊したそうな。
「ではでは、いただきまーす。ごく…………」
ふむ、喉越しはトゥルトゥルで、口に入れた瞬間魚の生臭さが鼻を刺激する。味はおそらく書いてある通り187(岩魚)なのだろう。さらに443(シジミ)で取った出汁も入っている。しかしこの二つの味がかみ合う事は無く、むしろ喧嘩しているな。貝と魚は合わないのだろうか……? 面白い。これだからMAHORAドリンクはやめられない。
はい、夢の中ですが出てきました二人目のオリキャラ鷲崎君。
ネギま的にはモブですがこのお話的にはある意味重要な立ち位置になるやも知れない人物です。
まだ夢の中でしか出てきてないので大した動きはしていませんがこれからはきっと……