銀魂 奈落の底から天へ翔ける烏   作:白河葵

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 だいぶかかってしまいました・・・・・・。
ある程度イメージできてたけど、字に起こすとなると、思い通りにいきません。でも、書きたいシーンがあるので、頑張ります。
 今回も子供がひどい目にあってるシーンあります。注意してください。
 後、またお気に入りに登録してくださった人がいました。
本当にありがとうございます。


第三話 慟哭と再起

  春に桜を見に行き、夏は蝉時雨を浴びながら野草や山菜を探し、秋には紅葉に囲まれてキノコや魚などを取り、冬には寒さに身をすくませながら身を寄せ合い、しんしんと降る雪を眺める。そんな風に日々を過ごし一年、二年と経ち三年目を迎えようとしていた。

 

 その間も、喜一は変わらず殯に寄り添い、笑いかけた。それを見て、殯も自然と笑えるようになった。あの離れに軟禁された日々ではありえないことだ。日差しや風を浴びるのも、草の匂いを感じるのも鳥や虫、獣が動き回る姿を見るのも、全て楽しかった。世界はこんなにも広いのかと感動した。

 

 

 

 

 

 

 そんな日々は突然終わった。ある秋の夜だ。

 カラスたちの鳴き声が聞こえ、なんとなく胸騒ぎを覚えた殯は外に出て、鳴き声が聞こえる少し離れたところにある崖のほうまで行ってみた。

 見れば村の方から火の手が上がり、ただ事ではないのはわかった。カラス達に見に行かせると、村に編笠を被り黒装束に錫杖や刀を持った連中が村人を襲っていたらしい。しかも、黒装束たちもカラスを連れていて、彼らに生き残りがいないか探させていたらしい。もし村に残っていれば自分たちも殺されていた。それに気が付いたとき、体が震えた。喜一にも村の異変を伝え、しばらく村の方へ近寄らないように言った。喜一は顔を青ざめさせながらうなずいた。

 

 

 

 

 

 だが、それではすまなかった。静かになったと思ったら再びカラスたちの鳴き声がした。様子を窺ったところ、あの黒装束たちが山へ侵入したらしい。喜一を連れ、山の中を逃げ回った。音を出さないように、地面に枝や枯れ葉など音を立てそうなものを踏まないように目を凝らしながら、喜一の手を引いて走り抜ける。

 

 耳を澄まして黒装束たちの連れているカラスの鳴き声を聞き分け、見つからないように慎重に位置を探り、さらに深い山奥を目指した。猪だけでなく熊もいることから普段なら決して入ったりはしない。だが、連中が理由は不明だが村を襲い、さらになぜか山に入ってきたことから村人から喜一たちのことをきいたのかもしれない。だとすれば見つかれば命はない、なら獣に襲われる危険を冒してでもよく知っている山を利用して連中から逃れるしかない、と考えた。

 

 しかし向こうも追跡は慣れているのか、数の利を生かし山全体を捜索してきた。さらにカラスたちも空から捜索してきている。殯たちに懐いているカラスたちが、縄張りに侵入してきた彼らと衝突し注意がそっちに向いているうちに遠くまで逃げようとした。喜一も泣きそうな顔で息を切らしながら、必死に走っている。

 

 が、山奥の少し開けたところに出たとき、編み笠と黒い僧を思わせる装束、手に錫杖を持った男たちが並んで立っていたのを見て、先回りをされたと気づいた。

 

 咄嗟に、捕まえようと腕を伸ばしてきた黒装束を蹴り倒し、噛みついては引っ掻きと激しく暴れ抵抗したが、「あぁ!」という悲鳴がし、見れば喜一が数人がかりで押さえつけられ喉に刀を突きつけられていた。

 

 「喜一!」

 「動くな。さもなくばこいつを殺す」

 

刀を突き付けている男が、冷たい声で脅す。喜一の顔は恐怖で歪み、体はガクガクと震えている。それを見て、殯は手も足も出ず、黙って睨見つけることしか出来なかった。後ろから、黒装束が近づき、乱暴に地面に倒される。さらに錫杖で押さえつけられ、縄で縛られていく。

 

 「や、やめて!主!主を離してよ!」

 

喜一が叫ぶが、まったく聞き入れる様子はない。押さえつけていた男たちによって、猿轡をかまされてしまう。

 

 「っ、喜一から離れろ・・・!」

 

殯が暴れるが、縄は緩むはずもなく、直後頭に衝撃が走りそのまま目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 その後、気がつけばここにいた。後ろ手に縛られ、足も拘束された状態で一体何が起こっているのかわからないでいると、男がやってきた。集団を率いていた男、喜一に刀を突きつけた奴だ。

 男は屍と名乗り、「お前に話がある」と尊大な物言いで切り出した。

 

 「十にも満たない子供があれだけの数を相手にあそこまで立ち回るなど、大したものだ」

 「・・・だから何だ?」

 「一つ提案といこう」

 

 

 

 

 

「・・・・・・奴は俺に喜一は生きて捕らえられていると、殺されたくなければ自分に従えと言ってきた。俺は断る事が出来なかった。

 それ以来、『(もがり)』と呼ばれ、奈落の人間として訓練を受け、奴の命じるままに奈落の隊員が何を話しているか、何をやってるのか監視させられたり、時には邪魔な存在を始末させられ続けた。

 それも全ては喜一を生かす為、そしていつか助け出してここを脱出する為・・・・・・そう自分に言い聞かせて」

 

 自分の左腕を見ながらそういう殯。その肘の少し上あたりに入れ墨―――八咫烏の印が刻まれている。

 

 訓練は過酷だった。暗殺術、体術、偸盗術と多岐に渡り、最初の頃少しでも反抗的だと見なされれば折檻された。性質の悪いことに殺さず、後遺症が残らない程度が分かるのか激しい折檻を受けても傷は大したことがなく、すぐに訓練に戻される。

 

 これが自分一人の命がかかっているなら、こんな目に合うくらいなら・・・と、いや最初に自分に服従を迫った時に自害しただろう。

 

 だが、喜一が捕まっているとなれば、それはできなかった。自分が死ねば、喜一に何をされるかわからない。それを思えば迂闊なことはできなかった。

 

 ただ、いつか助け出す、あいつを連れてここを脱出してみせると誓った。

  

 それを心の拠り所にし、技術を体得し、力をつけた。反抗的とみなされるような言動は慎み、従順なふりをした。あの男に対しそんな振る舞いをしなくてはならないのは屈辱的だったが、耐え続けた。

 

 初めて人を斬った時も、そうだった。そいつは屍の配下にいながら、密かに別の幹部に寝返る機会を伺っていた。だが、屍自身にその事を気付かれ、殯に初陣も兼ねて始末するよう命が下された。

 

 その男が一人で屍に呼び出された所を闇討ちした。襲う直前に、気付かれ抵抗された。傷を負いながらも、急所を狙い刺した。

 

 その時、血の匂いと傷の痛みに昂る一方で、冷静に急所を狙い続ける自分がいた。

 同時に思った。確かに自分は化け物かもしれないと。人を斬りながら、殺し殺される恐怖ではなくいかに相手を倒すかを考えていた。普通の人間はこうならないだろうと。

 

 喜一も今の自分を見れば、かつての村人達のように「化け物」と恐れるかもしれない。ここを逃げ出せた所でもう前のように笑いかけてくれることも、以前の二人で過ごしたあの穏やかな日々には戻れないのかもしれない。そんな思いが殯の脳裏を過った。

 

 ・・・・・・それでも、喜一を救うことを諦めることはできなかった。力がなければ守るどころか、何もできない。ただ、連中に踏み躙られるだけだ。それに甘んじることが正しいとはどうしても思えなかった。

 

 その後も屍の指示で、隊員を隠し通路の中から監視し、命が下れば粛清した。並外れた身体能力を持つとはいえ、いまだ幼い殯は粛清のたびに、負傷し死を覚悟することも一度や二度ではなかった。

 だが、「喜一を助ける」「必ず彼を連れて奈落を抜け出す」その思いが殯を動かしていた。それだけが心の支えだった。

 

 

 

 

 

 

「だが、できなかった。喜一はあいつらに殺されてたんだ」

「え・・・・・・!」

 

 ある日のことだった。任務が終わり、奴のもとへ報告に向かう途中だった。部屋の近くまで来たところで、話し声が聞こえた。

 それは自分以外の屍に従っている隊員のものだ。屍に何か報告しているのだろう。最初全く興味のなかった殯は漏れ聞こえる声を聞き流していたが、

 

 「それと、屍様。例の子供ですが・・・」

 

 ぞわり。背筋に悪寒が走った。

 

「昨日死亡しました」

 

 顔から血の気が引くのが分かった。体中から熱が抜け、冷たくなるのを感じる。バク、バクという心臓の音だけがやけに響く中でそのあとの

 

 「見張りの隙をついて逃げようとしたので、捕えようとしましたが、抵抗する素振りを見せた」「取り押さえようした隊員が加減を誤って、結果死んでいた」がかろうじて聞こえた。

 

 自分にとって信じたくない耐え難い事実だった。自分に笑いかけてくれた、「一緒に住もう」と言ってくれた、自分にとっての家族だった喜一が死んだ。

 「いつか救い出す」「一緒にここを抜け出す」そう誓ったのに。

 

(守れなかった・・・助けられなかった・・・)

 

傷などないのに、胸が激しく痛む。刺された時のように熱くじくじくとした痛みが襲う。

 

(俺のせいだ・・・あの時、あいつらに捕まったせいで、こんなことになった)

 

「―――盗み聞きとは、感心せんな」

 

 突然、声がした。その直後障子があいたと思うと、隙間から手が出てきて殯の襟首を掴み引きずり込む。その勢いのままに床に倒れこむ殯は、自分をすぐ上から見下ろす屍を、怒りに燃えた目でにらみつける。

 

 「何であいつを、殺したっ!」

 「人聞きの悪い。私としても生かしておくつもりだったさ。だが、部下が加減を間違えたらしくね。こっちもいい迷惑だ」

 

 声を震わせながらなじる殯に対し、まったく悪びれた様子もなくそう言い放つ屍。

 

 「・・・殺してやるっ!」

 

怒りに任せて、屍につかみかかろうとするが、報告していた部下にあっさり押さえつけられる。

 

 「やれやれ。お前が私に敵うわけないだろう。そんなこともわからないのか?

・・・ああ、いい。こいつはまだ利用価値がある。だから、殺すなよ」

 

 部下にそう命令すると、屍は部屋の隅にある箱から何かを取り出す。透明な筒に薄い黄色の液体が入れられ、鋭い先端が明かりを受けて怪しく光る―――注射器だ。

 それを殯の腕にあてがう。

 

 「な、何をするつもりだ!」

 「ほかの人間ならさっさと始末するところだが、お前は特別だ。私の為に存分に働いてもらわねば、せっかくあんな山まで来た甲斐がない。かといって、このままでは面倒だからな」

 

 屍の、どこか蛇を連想させる冷たい目が殯を見る。その冷たさに殯は背筋に悪寒が走る。

 

 「これは天人が開発した暗示にかかりやすくする薬だ。これを使った状態で催眠術(あんじ)をかければ、どんな命令にも従い解くことも困難だというのでな。万が一お前のように反抗的な者が現れた時に備え、いくらか流してもらったのだ。

―――これで、お前の余計な記憶も感情もすべて闇に葬られる。そうなれば、お前はもう私の従順な駒だ」

 

 言っていることにはわからないこともあるが、それでも自分にとって死ぬ以上に最悪なことをしようとしているのは明らかだった。

 

 「や、やめろぉ!これ以上、俺から何も奪うなぁ!っ、やめ、・・・」

 

 殯の絶叫を全く意に介さず、注射器を腕の血管に刺し、中の液体を注入する屍。薄い黄色の液体が減っていき、ついに完全になくなったところで、異変が起こる。

 

(頭が重い・・・目の前がぼやける)

 

 眠るときのように意識がはっきりしなくなってきた。気をしっかりもちたくても、すぐに気力が霧散する。視界も徐々に暗くなっていく。

 

 やがて、目の前が真っ暗になった。ぼんやりした頭でその闇を眺めていると、不意に声が聞こえる。

 

『何も考えず、何も感じるな』 

『ただ私の命令に従え』

『私の邪魔をする者を排除しろ』

 

ぼんやりした意識の中、それだけがはっきりと聞こえる。

 

「なに・・・もかんがえ・・・ずなにも・・・感じ・・・ない」

 

自然と繰り返していた。

 

 「ただ・・・わた・・・し・・・の、めいれい・・・にしたがえ」

 

意識にその言葉が刻み込まれる。

 

 「わたし、の・・・じゃ、ま・・・をする・・・もの・・・を・・・は・・・いじょ・・・しろ」

 

虚ろな目で最後まで言った殯。その顔にはもはや先ほどまでの激情も意思も感じられなかった。

 

 

 

 

 こうして、殯は暗示をかけられた。その効果は覿面だった。喜一のことを思い出せなくなった。いや、存在そのものを記憶から消し去られたのだ。

 さらに意識はあるが深く考えることができなくなった。ただ、言われるがままに動き何をしても怒りや悲しみ、恐れ等を感じなかった。

 時折、何かを思い出しかけた。だが、屍の目が光っていたのか、すぐに捕まり暗示をかけ直されてまた考えることも感じることもない状態に戻されてしまう。

 そして、違和感を感じることも次第に減っていった。

 

 

 

 

 

 ある時監視を命じられた。首領である虚が、小姓として一人の子供を側に置き始めた。後継者にしようとしているかもしれない、虚とその子供の様子を密かに探れとのことだった。

 

 奈落で最強の暗殺者である虚相手では気配を消しても気づかれる。屍からの指示で奈落で偵察や伝令として使役される烏を使い、監視した。また、虚が任務等でいない時は、子供を近くで見張った。

 

 結果、小姓だという子供は一日中掃除などの雑用で忙しくしているが、虚から修業をつけられるどころか戦闘訓練は一切受けていなかった。それを報告すると屍はどこか安堵したような表情を浮かべた。監視の任も解かれた。

 

 が、殯は虚と子供の様子を見ている内に「何か」を感じるようになった。見ていて胸が締め付けられるような、前にどこかで見たことがあるような感じだ。

 

 その後、虚は失踪した。続いて小姓の少年も姿を消した。対応に追われ、屍は殯の前に現れることがしばらくなかった。殯は命令通り、内部の様子を隠れて伺いながらも違和感を覚える事が増えた。それを数え切れない程繰り返し―――ついに喜一のことを思い出した。完全に正気に戻ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「お前の先生が足抜けした事であいつは俺に構ってられなくなった。おかげで暗示に綻びが出ても気付かれず、俺は元に戻れた・・・・・・俺にとってお前の先生は恩人なんだよ」

 

 思いがけない話に朧はただただ圧倒されていた。

 

 目の前にいる自分より幼いであろう子供。その幼さで想像もつかないほどの苦しみを味わっていたことに。あの男が、そんな風にして人を従わせるような恐ろしい男であったことに。そして、自分とは少し違うが先生に救われていたことに。

 

 先程の奈落を滅ぼすという言葉が、どれほどの覚悟を秘めていたのか理解できた。それだけの仕打ちをうけていたし、怒りや憎しみをいだいていたのだ。

 無論殯自身も、どれだけ困難か分かっているはずだ。それでも復讐の為に挑もうとしているのだろう。復讐でこそないが、朧もまた困難を承知で、奈落の首領に登り詰めると決意したのだ。殯の決意を笑う事など出来なかった。

 

 「まあ、こんなこと言われても困るよな。お前がそういう目にあったわけじゃないし」

 

朧が無反応なのを見て、殯がやや顔をうつむけながら言う。断られると思ったのか、声はさっきと比べちいさくなっている。背を向けた状態で少し朧から離れる。

 

 「ただ、奴はお前を下僕にするつもりだ。もし、反抗的だと思われたら、お前まであの薬を注射されるかもしれない。そうなれば、先生のことを忘れさせられるかもしれな・・・」

 「・・・わかった」

 「・・・ん?」

 

 自分が言い終わるより先に、返事が聞こえたのに驚いたのか、殯が驚いて顔を上げる。彼の目に映ったのは、先ほどとは違う意を決した様子の朧の顔だ。

 

 「正直、奈落を滅ぼせるか俺にはわからない。でも、先生に恩があるのは俺も同じだ」

 

 そこまで言うと、立ち上がり殯の前まで歩いていく。その目には最初の言葉「首領になる」と誓った時と同じ強い光が宿っていた。

 

 「お前と手を組むことで先生を守ることに繋がるなら・・・・・・協力できると思う」

 「・・・そうか」

 

 ふ、と穏やかな表情を浮かべる殯。その顔を見て朧は、もう得体のしれない存在ではなく人間だと心から思えた。

 

 「仮に協力してもらえなくても、お前があいつらに俺のことを密告するとかそういうことをしないのなら、危害を加えるつもりはなかった。

 むしろ、すぐにはできないが、死んだことにして逃がそうとも思ってた」

 

 最初はそれを言うためにここへ来たんだ。そう言われ、朧は内心(こいつ結構お人よしなのか?)と思ったが、さらに続く言葉の方に意識が向く。

 

 「一つ聞きたいけど、文字はよめる?」

 「・・・少しは」

 

奉公先では文字を教わる機会はなかった。奈落に来てから、先生がぽつり、ぽつりと字の読み方を教えてくれたのだ。だから、いろはと漢字をいくらかは読めるようになった。

 

 「なら、俺に字を教えてくれないか?」

 「・・・・・・・は?」

 驚く様子の朧に「ずっと、字を読むことがなくてな。山だと字を使うこともないし、こっちだと口で命令を伝えられてそれを覚えさせられた。だから、読めないんだ」と、少しばつの悪そうな顔で殯は言う。

 

 「奴の部屋には書類とか山ほどあってな。読めるようになれば、それをこっそり読んで、俺たちがこれから先どうすればいいか考えていけると思う」

 

 なるほど、と朧は感心した。確かに読めるようになれば、それを知らない向こうは無防備に書類を置いたりと隙をみせるかもしれない。そうすれば、屍たちの裏をかくことができるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「協力するにあたって、いくつか頼みがある。一つは俺にお前が知ってることを教えてほしい。俺は人とまともに関わったことがろくになくてな。読み書きもだが、知らないことがいろいろとあるみたいだ。俺はあの時、考えなしに突っ込んで奴に負けた。なら、奴を倒すためできることはなんでもしたいし、そのために知るべきこともたくさんある。

 もう一つは奴の話で何か気になることを言ったら、そいつを知らせてほしい」

 「気になること?」

 

いぶかしげに聞き返す朧。

 

「理由はわからないが奴は俺に『お前は特別だ』と言った。だから、あの日村を襲撃するだけでなく、山狩りしてまで俺を追ってきたんだと思う。

 ・・・・・・ただ、復讐するだけでなく、なぜ俺を生け捕りにして利用しようと考えたのか、なんで喜一が殺されなきゃならなかったのか。どうしても知りたいんだ」

 

真剣な顔で話す彼に、朧も真摯に「できるだけのことはする」と頷く。

 

 

 

 

 

 

 「その代わり、お前が奈落で生き残れるように助力しよう。表向き暗示が効いていることになっているから、奴らの目を盗む必要があるが。

 戦う方法を俺が知っている範囲で教えるくらいはできる。後はこっちも何かわかったらすぐ教えよう。

 実はもうすぐ新入りとして奈落に入ることになった。入った後も、他の連中を監視させるだろうから、役に立ちそうな情報も入ってくると思う」

 「助かる。先生を守るなら強くならなければならないと思ってたから」

 

こうして朧と殯は手を組んだ。

 

「まあ、強くなるまでは一応守ってやるから、気張れよ後輩(・・・)

「後輩?」

 

俺は年上だぞ、と抗議すると殯はきょとん、とした顔で首をかしげる。

 

「お前は年上かもしれないけど、奈落に入ったのは俺が先だぞ。

 先に入った者は、後から入ってきた者を導き、守るものなんだろ。確かなんて言ったか、前輩(・・・)?」

「・・・先輩じゃないのか?」

「ああ、それだ!」

 

うっかりしてたな、という殯に思わず呆れる朧。

 

 

 

 

 「何にせよ、屍と戦えるようになるまで長い時間がかかるのは確かだ。よろしく頼む、朧」

 「・・・ああ。こっちもよろしく頼む。殯」

 

 改めて、協力を誓い合う二人。

 

 

 

 

 こうして、ひそかに奈落に対抗する動きが生まれた。

 同時に、朧の心に一筋の光明―――いや、火が(とも)ったのだ。




 こうして、原作とはまた違った展開にはいります。
感想などもいただけると嬉しいです。
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