※センシティブよりの表現を多々含みます。
人工皮膚補修剤塗布
私にとってのかぐやとはなんだろう。
この前オタ公さんに聞かれた時にはこう答えた気がする、「娘、妹、恋人、家族。そういうのを全部ひっくるめた大切な人。生きる理由そのもの」。
赤ん坊のあの子を拾って、子守唄歌って寝かしつけて、ミルクも飲ませておしめも変えた。
わがまま放題に振り回されてお金も勝手に使われた。騒がしいし泣くし、ことあるごとに私が巻き込まれた。
おかげで私の人生計画は全部パァ、かぐやのせいで私の日常は不可逆なまでにしっちゃかめっちゃかにされてしまった。もうあなた無しの自分なんて想像もできないくらいに。
綺麗な歌声、屈託のない笑い。いつも誰よりも楽しそうで、誰でも楽しくしてくれる。かぐやのおかげで私はまた音楽を始めることができた、自分に向き合って前に進み始めることができた。
あなたの破天荒が私に自由をくれた。自分の心のままに生きる喜びを教えてくれた。別れの悲しさ、悔しさ、寂しさ、涙。祈りも願いも、夢も、それに向かって走り出す熱意も。
かぐや。可愛いかぐや、私のかぐや。大好き、愛してる。
あなたの無敵の笑顔が私に勇気をくれる。あなたが隣にいるならなんだってできる。
あなたは私の進むべき未来そのもの、私を先へと導いてくれる眩い陽の光。
「え〜〜〜っ、やーだ〜〜〜っ!彩葉にやってほしい〜〜〜」
「ぬぅ……っ。わかった、わかったってば!」
そう、かぐやは私の未来。なので彼女の我儘が私の行くべき方向そのものとなる。
勿体つけずに言うと、私は例によって例の如く、この子のおねだりを断れずにいたのである。
しょうがないじゃん、かぐやのおねだり可愛いんだし。
眉を八の字に下げて、小首を傾げて上目遣い。これをやられるときゅっと胸の奥が締めつけられて、その甘やかな痛みに耐えられず私はどれだけ葛藤しようと最終的にはYESと言わざるを得ないのだ。
これ何某かの法に触れてるだろ、さっさと規制されてほしい。かぐや可愛すぎ罪だ。
「んもう……塗ってあげるから、ちゃっちゃとそこ座りなさい」
「やたっ♡ ありがとう彩葉!」
渋々頷くと、パッと花咲くような笑みが返ってくる。純度100%の喜び、赤ん坊の頃から変わらない無垢な微笑み。
これが正面から見られるのならまぁなんでもいっかぁみたいな気分にさせられる。あぁ、私ったらつくづく甘いけども恵まれてるなぁ。
今日は自宅、休養日。2人してリビングでだらだらと時間を潰していた時だった。
ヤチヨは52時間周期のスリープで現実からログアウト中。最近増設したサーバーを馴染ませるために色々と頑張っているようだ。
心地よい昼下がりの陽気。リビングに差し込む日の光に照らされて、実り豊かな稲穂のように明るいかぐやの髪をボーッと眺めていると、徐に「補修剤塗って欲しい」と頼まれたのだ。
「これ、いい香りするよね」
「そりゃね。一般販売も視野に入れてるから、誰にでも使えるようにしときたいし」
少なくとも機械油みたいな匂いだったらQOL下がるどころの話じゃないし、そうやって相槌を打ちながら私はチューブから人工皮膚補修剤を絞って掌の上に出した。
見た目は少し透明度の高いハンドクリームみたいな感じ。香りに関してもちょうどそんな感じで、ほのかにミルクの甘い香りがする。例によって芦花の監修。
ゆくゆくは人の好みに合わせて色んなバリエーションがあると良いのでは、みたいなことを提携企業の人が言っていた覚えがある。
私の研究所で開発された義体技術を利用することでこれまでにない性能の義肢が作られるだろうし、それに合わせて周辺技術も発展していくだろう。
人工義体であるかぐやの体を覆っているのは人工皮膚だ。
人のそれと変わらない色合いや質感を再現することに成功した代物だが、まだ代謝機能は未実装。
なので劣化して表面がガサついたりひび割れたりしないよう定期的に補修剤を塗りこんで状態を維持してやる必要がある。
定期メンテで全体に塗ることもあるが、本人にしかわからない違和感などもあるだろうし痒みや痛みを感じたら自分で適宜塗るようにとかぐやとヤチヨにはチューブで補修剤を渡している。
「手から塗ってくよ」
「はーい♡」
手の上に出したクリームを、そっとかぐやの手の甲に乗せて馴染ませるように塗り広げていく。
滑らかで白い肌、細い手首と指先。白木細工のように繊細で、若木のようにしなやかな
自分の手で作った体なのに、こうして直接触れると改めてその美しさに惚れぼれしてしまう。
こんなんだから職員にピグマリオンコンプレックス所長などと揶揄われるのだろうか。
「彩葉に手、握ってもらうの好きだなぁ」
指の間に指を絡めて、隙間にまでちゃんと塗る。
かぐやがふにゃりと猫のように微笑んだ。
私もこうやって手を繋ぐのが好きだ。寝ているとき、演奏のとき、仲良しのやつのとき、何度もこの子とは手を握り合ってきたけれどその度に胸が温かくなる。
「もう、本当はこういうところくらい自分で塗ればいいのに」
「えー、今日は彩葉にやってもらいたい気分だったんだもーん」
「なに、甘えんぼデー?」
「そそっ。いろは、おねが〜い♡」
そうやって小首を傾げて甘えた声を出されると私は多少の葛藤を覚えつつも結局は折れてしまう。かぐやが赤ん坊の頃から私は全戦全敗だ。
でもほんの少しでもかぐやに泣かれることを想像するとそれだけで良くない鳥肌が背筋に立つ。
この子にはいつでも笑っていて欲しい。この世界の幸福は全部この子に捧げて、この世界の不幸の全部を代わりに奪い去ってしまいたい。
手が終わったら手首から前腕と上腕へ。
すーっと掌を使って大きく撫でて、補修剤を伸ばして馴染ませる。目を閉じてその肌の感触と体温を感じ取る。
皮下脂肪を再現したシリコンの柔らかな手触り、人工筋肉が産む熱を自分の手に確かに感じる。
手首を擦ると骨の硬質な手触りを覚える。金属製の人工骨格。
いつかの花火大会の夜を思い出す。思わず掴んだあの日の手首の感触は驚くほどしっかりとした芯を感じたのを覚えている。
赤ん坊のときは握れば潰れてしまいそうな、柔らかなタオルのような体だったのに、いつの間にかあんなに/こんなにも大きくなって。
「……彩葉、気持ち良いね」
「そう……?」
「うん、彩葉にそうやって触ってもらうの、すごく気持ち良い。……かぐや、好きだよ」
かぐやに声をかけられてはっと目を開ける。手触りに没頭していたようだ。
目の前でかぐやが笑っている。長い睫毛に縁取られた真珠のような目を、遠くを見るようにそっと細めた笑み。
可愛いというよりは咄嗟に色っぽいと思わされたその表情に一瞬ドキッとしてしまう。ちょっと悔しいな。
「月人ってね、体で感じられるものに弱いんだ」
「そうなんだってね。前にヤチヨがそう言ってた」
「うん、月には味も匂いも温度もないから。……だからね、こうやって体で感じられるものっていつでも全部新鮮で、大好き」
そう言ってかぐやが半歩こちらへと身を寄せる。腕に補修剤を塗っていた私の手を掴み、顔へともってくる。
私の掌に頬の感触が伝わる。温かくて、柔らかくて、滑らかで、そして愛おしい。
ミルクのようなクリームの香りに、清潔な香油のような芳しさが鼻をくすぐる。かぐやが好んでいる香水の匂い、昔よく使ってたシャンプーに近い香りだ。
目を閉じたかぐやが私の手の上に自分の手を添えて、頬を擦り寄せる。
「いろは、もっとして。もっといろはのこと、感じさせて」
小さく囁かれる言葉。目の前で桜色の艶めいた唇が開くのに、花が綻ぶ様を幻視する。
吐息混じりの声に、耳の裏が粟立つような感覚を覚えた。ぞくぞくとうなじが痺れる。
目の前に細く見開かれた瞼の奥、綺麗な瞳が真っ直ぐに私を見つめていた。
「ん……っ♡」
私は指先に補修剤を付けて、そっと彼女の唇に這わせた。紅を差すように静かに、丁寧に。
息を呑むような、鼻にかかった甘い吐息が漏れる。艶かしい、素直にそう思わざる得なかった。
ゆっくりと楕円を描くように柔らかな唇をなぞり終えると、その口元は光を弾いて鮮やかに色付いていた。
そして、それがまた半歩私の方へと歩み寄る。
「いろは、好きだよ」
自分の唇に感じる甘やかな熱。小さなリップ音。
キスは不思議だ。数センチにも満たない粘膜の触れ合いなのに、頭の中が全部それだけでいっぱいにされてしまう。
人間の感覚神経で一番敏感なのは指と口、という学術的知識はこの圧倒的な実在感の前になんの役にも立たない。
私が頭を痺れさせている間にも、かぐやから何度もキスを落とされる。
唇、頬、顎、耳元、首筋。ちゅ、ちゅ、と小鳥が囀るような音と共に求愛のサインを当てられる。
「ん、ぁむ……っ♡」
その粘った吐息はどちらのものだったか。
頬に手を添えられて、深く口付けられる。私の唇を割ってかぐやの舌が入り込む。
滑らかでぬるりとしたそれを、軽く口を開いて受け入れるとぐっと奥まで潜り込まれる。
そのまま私の舌は掬い取られるように攫われ、絡み取られる。
にゅるり、と絡み合う舌と舌の感触。顎が蕩けてしまいそうな心地よさ。
まるで頭の中身が水飴になって撹拌されるような感覚。甘ったるい酩酊感でくらくらする。
飛んでしまいそうな意識を「舌筋ここまで器用に動かせるのか」とか「
じゅうっ、と勢いよく音を立てて口の中を吸われると魂まで持っていかれそうだった。
こくん、と可愛らしくかぐやの喉が鳴る。私の唾液を飲まれたんだと思うとなんでか胸がドキドキした。
離れていく唇と唇を粘液の透明な糸が繋ぎ、やがて重力に負けてふつりと切れる。
口の端に垂れたそれをかぐやは指先でそっと拭い、舌で掬い取った。
その全てが、たまらなく艶かしかった。
「かぐや、舌入れてするの初めてした……。ずるいなぁ、彩葉。ヤッチョとはこれずっとしてたんでしょ?こんな気持ち良いこと」
「……そう、なんだけどさ」
そうだ。かぐやとはこういうキスは今までしたことがなかった。
唇や頬はたくさんした。でも舌を入れるのはやったことがなかった。
ただヤチヨとはこの十年の間に数えきれないほどやっている。仮想空間であるツクヨミは視覚と聴覚だけの世界だが、見かけだけでも重なり合いたいという欲には逆らえなかったわけだ。
そしてかぐやはそのことを知っている。ただ
かぐやはヤチヨから切り出された人格の一部だが、八千年前の自身を再現するための工程として「経験・記憶」を
「知識・記録」は共有しているためヤチヨの知っていることはかぐやも知っているが、それはあくまでも本で読んだかのように間接的なものに留まるのだ。
「ヤチヨにはいっぱいしたのに、かぐやには彩葉からしてくれなかったの、なんでかなぁ……?」
「かぐやはその……娘、みたいな感覚が強いっていうか……」
「えぇ〜……♡」
かぐやのことは好きだ。でもこの子のことはそれこそ赤ん坊の時から面倒を見ているし、おしめも変えたことがあるからなぁ、という意識がいつも頭の片隅にある。
それに今ここにいるかぐやにしても、体は私、人格はヤチヨの合作だ。
つまり……私とヤチヨの夫婦の間の娘なのでは?みたいな見方もできなくはないわけで。
「でもさ、娘にべろちゅーされてこんなにドキドキするのって、それはそれでいけないんじゃない?」
「くっ……」
そっとかぐやが私の胸元にしなだれかかってくる。
服の下、胸の奥、心臓の音がどくんどくんと激しい。
かぐやの甘ったるくて熱の籠った艶かしい口付け。まだ口元に残るその感触で胸が激しく疼いていた。
まるで心臓を砂糖菓子の爪で引っ掛かれるような、甘く切ないむず痒さ。
私は知っている。これはヤチヨと肌を重ねるときにも感じるそれだ。
体を擦り寄せるかぐやが目元を綻ばせて小さな微笑みを作る。
嗚呼、認めざるを得ない。今日のかぐやはヤチヨみたいに色っぽくて、綺麗だ。
「ーーーーねぇ、彩葉。私のインタビュー動画のこと、覚えてる?」
かぐやがそんな突拍子のないことを口にしながら、いつものTシャツの裾に手をかけた。
がばっと服を脱いで上半身を露わにして……そのままブラのホックまで外してしまう。
床に布が落ちる音がいやに大きく聞こえる。耳元で水音が聞こえた気がした。自分が生唾を飲む音だった。
「あの、遺言みたいなやつ?正直、心臓に悪かったよ」
「わかってるじゃん、彩葉。ーーーーうん。あれ、遺言のつもりで残したから」
裸身を晒してかぐやが微笑む。総毛立つほどの美しさで手足が痺れる。
私は彼女の体を一から作った。骨格も、神経も、筋肉も、皮膚も全部。
なのにこんなにも綺麗な造りの
それはそこにいるのがかぐやだからだ。吹き込まれた命が、魂が美しいのだ。
「お迎えが来るってわかったとき、思ったんだ。全部忘れちゃうってことはさ、今ここにいる自分が死ぬのとほぼイコールじゃない?ってさ。……だから、あれは遺言」
例のインタビュー、撮ったのは内容的にはコラボライブ後かつ卒業発表前だと後でヤチヨに聞いた。
公開されたのは卒業ライブの少し後。私はそのとき一心不乱に『Reply』完成のためにキーボードに向き合っていた時期だったので知らなかった。
結局目を通したのはヤチヨの正体に行き着いた後だったので良かったが、その前だったら心にトドメを刺されていたかもしれない。
大好き、とかちゃんと私の目を見て言ってよ。ヤチヨはいろPを頼むとか、そんな悟ったような口調で後を任せていかないでよ。それこそ遺言みたいに。
本当に、心臓に悪い。
「振り返ってわかったの、かぐやの人生はあの夏の2ヶ月だった。かぐやはね、自分の人生を生き抜いたよ。悔いなんて残さないために、走り抜いたんだ」
かぐやが微笑む。いつかの卒業ライブのときのことを思い出す。
最後の瞬間を定めたあの夜の彼女の笑みは神々しささえ感じるものだった。
人生の終わりを自らの意思で受け入れると決めたとき、人はあんな風に笑えるのか。あんなにも綺麗な
透き通るような微笑みのままでかぐやが私の手を取る。
掌の上を筆のように使って、自分の体に補修剤を塗る。
ん…っ♡と鼻にかかった甘い声が聞こえる。天使のように無垢な微笑みには似つかわしくない、どこか淫らな吐息に脳が痺れる。
私は導かれるように、自分の意思でその体に手を這わせた。
背中、脇腹、胴……胸元。抱きしめるように、確かめるように。
「かぐやはね……彩葉の手で生まれて、彩葉の手で育って、そして彩葉と別れたときに死んだの。
でもね、彩葉の歌で蘇って、また彩葉の手で生まれ変わったの。
だからかぐやはいろはのものなの。かぐやの全部はいろはのものなの……。ん……っ♡」
今度は自分から口付けた。堪らなかった、愛おしくて堪らなかった。
あまりにもいじらしいことを言うその口が可愛らしくて、気がつけばキスをしていた。
小さな花弁のような唇に吸い付き、舌を潜り込ませて捩じ込んだ。
小さな魚のように跳ねるかぐやの可愛い舌を捕まえて絡みつく。
唾液に味なんてつけてないはずなのに、口の中がむせかえるほどに甘ったるい。
くちゅ、くちゅ、と湿った音が頭の中で反響するのが否応にも興奮を煽る。
「……かぐやね、もっともっといろはのものになりたいな……♡」
口を離して正面から改めて向かい合う。
真珠のように輝く綺麗な瞳が、蕩けたように潤んでいる。
ぞくり、と背筋に鳥肌が立つ。あぁ、いつの間にこの子はそんな艶かしい
あんなに泣いて、笑って、はしゃいで、ずっと子供みたいだと思っていたのに。
「かぐや、もう子供じゃないよ……♡」
私の心を読んだような、狙い澄ましたかのようなその一言がトドメだった。
脳のどこか重要な部分がぶつりと切れたような気がする。
倫理だったのかブレーキだったのかは定かではない、ただ確かなのは今の自分が異様に興奮しているということだけだった。
目と鼻の奥がなんだかジリジリする。脊髄が赤く焼けつくようだ。
吐く息が甘くて熱い。心臓が疼いて、血が桃色に染まって全身に駆け巡っている気がした。
私はソファの上にかぐやを押し倒した。眩い金髪が広がり、香油の香りが空気を彩る。
私を見上げるかぐやは甘やかな笑みを浮かべて、頬を染めていた。そんな機能つけたっけ。私の幻覚?
もう自分が冷静でいられないのだけは確かだった。
私にとってのかぐやとはなんだろう。娘、妹、恋人、家族、全部ひっくるめた大切な人?
そう、全部。全部だ。私が形容できる関係性、全部がかぐやだ。
かぐやが全部を私にあげたいって言うのなら、私も全部をかぐやにあげたい。
情熱も、愛も、この興奮も全部。全部。
「……腰上げて、下脱がせるから」
「ぅん……っ♡」
ソファの上、かぐやの顔の横に手をついて耳元で囁く。
呟いたその声は我知らず硬かった。冷たいとさえ言えたかもしれない。
でもそれを聞いたかぐやは一度ぶるっと背筋を震わせて、甘い声で返事をした。
ああ、そんな子兎みたいな可愛い顔されたら私はどうすれば良いのだろう。
悩ましげなその表情が、どこまでも婀娜っぽくてくらくらする。
「……いろは、やさしくしてね……♡」
もう無理だった。我慢できなかった。
私は一周どころか何周か回って冴えた頭のまま、まずは掌にたくさん補修剤を盛った。
まだ塗らなくてはいけない場所はたくさん残っているのだ。
そう、全身余す所なく、かぐやの全部を、私の手でーーーー。
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後日
「お疲れ様です。所長、そちらはひと段落つきましたか?」
「お疲れー。こっちはちょうどYC型に人工胃の組み込み終わったところ。簡単に動作テストもしたけど多分問題ない」
「良かったです。……さらっと開発されましたけどこれってだいぶ医学界の革命じゃないですか。人体に組み込めるなら胃瘻対策になるんで……」
「そうだね。でもまだ人工消化器シリーズ第一弾だからねー。腸とか肝臓とか腎臓とかも作らないとだし、これからもみんなには頑張ってもらうからね」
「うわぁ、ぞっとしますね……。あと、こちらはKG型のメンテ終わったんで、スタッフには午後からYC型の方を診てもらいます」
「良かった、ありがとう。カルテはこれかな?何か変なところなかった?」
「健康体ですよ。ただ皮下シリコンが少し劣化してるところがあったので一応張り替えておきました」
「ふんふん、なるほど。流石に皮膚の下は補修剤のケアが届かないからねぇ。ちなみにどの辺りだった?」
「唇と舌と胸元とお尻と股間部です」
「…………」
「唇と舌と胸元とお尻と股間部です」
「………………あぁー……その、これは違うんです……」
「所長。ビアンでピグコンで二股なのは今更ですけど、かぐやちゃん相手だとロリコンの誹りは免れないかと思うんですよ」
「っ……、すぅー…………っ。うぅ……じゅ、純愛だもん……」
「だもん、じゃないですよ。だもん、じゃ。かわいこぶられてもこちらが困ります。……さて、解剖・生理学班と材料工学班からは劣化要因について所長の見解を聞きたいとの要望がですね」
「それなんて羞恥プレイ?」
「……学術的にも必要なことです。人体同士の接触摩擦の増加で劣化が早まるなら、強度上げるなりなんなりして対策しないとでしょう?所長達のこれからのことも考えて」
「これからのこと……ねぇ……。確かにそれはありがたいけど」
「所長達の純愛を疑う人はここにはいませんからね。ただ、ヤチヨさんとかぐやちゃんのお体は同質量の金塊より高価なのでそのあたりの扱いだけお間違いないようにお願いしますね」
「わかった、わかったから!報告書はちゃんと書くから!どんなねちっこいキスしたとか書けばいいんでしょう!?」
「ヤケにならないでください。私達、官能小説の編集部じゃないんですから……。……あぁ、それとですけれど」
「?」
「性行為用アタッチメントの導入とか考えてますか?」
「今はまだいいっ!!」