モンスターハンター ~恋姫狩人物語~   作:黒鉄大和

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第156話 戦姫を狙う邪双槍 少年の起こした奇跡の一撃

「お、ようやく拠点(ベースキャンプ)から出て来やがった」

 セクメーア砂漠上空を航行する航空哨戒艦『イレーネ』。その食堂室の窓際、純白のテーブルクロスを敷いたテーブルが設置され、椅子に腰掛けながら双眼鏡片手に眼下、拠点(ベースキャンプ)から出撃していくクリュウ達を見詰めるエルディン。そんな彼を見て、正面に座るカレンは不機嫌そうに眉をしかめる。

「ロンメル元帥。食事中に行儀が悪いです」

「生憎と俺は野戦育ちだからな。行儀なんて貴族染みた言葉には縁がねぇんだよ」

 カレンの注意を無視し、エルディンは片手に構えた双眼鏡で眼下を見ながら、器用に空いているもう片方の手で料理を食べ進める。

 聞く耳持たないといった様子の彼を見てため息を零し、カレンは黙々と料理を食べ進める。

 テーブルの上に並ぶのはソーセージにザワークラウトと呼ばれるキャベツの漬物と蒸かしたジャガイモを添えたもの。これにパンとジャーマンポテト、オニオンスープなどが並ぶ、エルバーフェルドでは定番の料理だ。本当はここにビールがあれば最高なのだが、今は任務中だ。

 オニオンスープにもジャガイモが入っており、一見すると少な目な量でも十分腹は膨れる料理ばかりだ。

 エルバーフェルドは元々ガリアやシュレイドなどの温暖な国と違い、寒冷で痩せた土地が多い。その為、荒地でも育ち満腹感を得られるジャガイモは昔からエルバーフェルドの食糧危機を何度も救ってきた。先のローレライの悲劇の際にも、多くのエルバーフェルド国民を飢えから救ったのがジャガイモだった。その影響で、エルバーフェルドには「女の子はジャガイモでフルコース料理が作れないとお嫁に行けない」という言葉があるほど、ジャガイモは非常に大切な存在だ。

 ちなみに、一応作法としてフリードリッヒもカレンも料理はできる。当然、ジャガイモも完璧だ。

 オニオンスープにパンを浸して食すカレン。行儀が悪いと注意したエルディンを次第に羨ましそうに見詰める。すると、そんな彼女の視線に気づいたエルディンが振り返り苦笑を浮かべた。

「見たいなら見ればいいじゃねぇか。行儀なんてくだらない事やめてさ」

「お断りします。これでも貴族出身なので」

 ピシャリと彼の言葉を封鎖し、食事を進めるカレン。エルディンは「素直じゃないねぇ」と苦笑を浮かべると、おもむろに立ち上がった。

「食事中にどこへ行くつもりですか?」

「うん? トイレだよトイレ」

「なッ!? 最もしてはならない禁忌(タブー)を平然と……ッ」

 エルディンの非常識さに驚きと共に呆れ切るカレン。エルディンは気にした様子もなく「食いながら小便垂れるよりはマシだろ」と笑い飛ばす。

 頭を抱えるカレンを残し、エルディンは食堂室を出る。エルディンがカレンと二人っきりで食事がしたいと申し出た為、現在食堂室にはカレン一人が残されている。

 無言でソーセージをナイフで切り、一口サイズにしたものを口に運ぶカレン。ふと、そんな彼女の視線が無造作にエルディンが置いた双眼鏡に向けられる。

「……ちょ、ちょっとだけ」

 誰も見ていない事を確認し、カレンは双眼鏡を手に取ると眼下を見下ろす。すると、目的の人物はすぐに発見できた。

 手元の地図で見ると、エリア2と呼ばれる場所。どうやら彼らは北へ向かっているらしい。

 先頭をエルディンの弟子の銀髪ポニテが進み、その後方をレヴェリ家三女と異国の隻眼剣士が左右を守る。そして、そんな三人の少女に守られながら荷車を引くのが──クリュウ・ルナリーフ。自分のファーストキスを奪った卑劣な男だ。

 空挺降下してから、カレンはずっと彼を監視していた。ディアブロスとの戦闘では常に危険と隣り合わせのような危ない場面が多々あり、そのたびにヒヤヒヤさせられた。

 仮にもこんな所で死なれたら大迷惑だからだ。

「責任取ってもらうまで、死んでもらっては困るんだから……」

 頬を赤らめながら、唇を尖らせつぶやく。そんな彼女の視線は双眼鏡越しに彼の横顔をずっと見詰めている。

 エルディンが戻って来るかもしれない。そんな事すっかり彼女の頭から抜け落ち、礼儀も作法も無視してカレンは彼を見詰め続ける。

 

「……ったく、嬢ちゃんと同じでほんと素直じゃねぇな」

 食堂室の外、壁に背を預けながら苦笑を浮かべるエルディン。彼はトイレにも行かず、ずっとここで立っていた。そもそもトイレに行く気などなかったのだ。

「しゃあねぇな。もうちっと時間潰すか」

 後頭部を面倒くさそうに掻きながら、エルディンは音を立てずに食堂室を後にした。

 

 ディアブロスは一度エリア7から3へ移動。そこから再びエリア7へ戻った為、クリュウ達もエリア7へと向かった。しかしその途中、エリア3を通過中にディアブロスは今度はエリア5へと移動した。

 現在クリュウ達はもぬけの殻となった、先程激戦を繰り広げたエリア7を通過する最中だ。

 先程、ここで自分達はディアブロスと激戦を繰り広げた。だが、再び入ってみると不気味なくらい静かで、先程の戦いの痕跡はほとんど残っていない。地面が砂なので、抉ったり穴が開いたりしてもすぐに塞がってしまうからだ。

 ペイントの匂いはこの奥、エリア5にある。となればこのエリアに危険はないはずだ。アプケロスもゲネポスもいない為、クリュウ達は適度に警戒しながらも比較的落ち着きながら進んでいた。

 先頭を進むシルフィードに続く形で荷車を引きながら進むクリュウ。エリアの中頃を過ぎた辺りでふと足を止めた。

「クリュウ様? いかがなされました?」

 突然足を止めたクリュウを怪訝そうに見詰めるフィーリア。サクラとシルフィードも足を止めて何事かとばかりに彼を凝視している。

「いや、ちょっと……」

 クリュウはそう言って荷車を置くと、一人隊列から離れる。そして彼はエリアの中央部にポツンと突き出した大きな岩に駆け寄る。

 ジッとクリュウはその岩の質感や構成物質を見詰める。そしてガントレットを外し、素手で岩に触れてみる。直に伝わる岩の感触に触れ、クリュウは何事かを考える。

「結構硬い……」

 ポツリとそうつぶやくと、クリュウは何か名案を思いついたのか、ヘルムの下で笑みが浮かぶ。

「もしかしたら、これ使えるかも」

「クリュウ、そろそろ先へ進みたいんだが」

 遠くからシルフィードが呼ぶ。クリュウは慌てて振り返り仲間達の所へ走る。

 ポチャン……

 水の音が響き、クリュウは反射的に振り返る。エリアのちょうど反対側には水辺があり、見ると風もないのに微かに水面が揺れていた。

「……石でも落ちたのかな」

 クリュウは不思議に思いつつも、先を急ぐぞと前進を始める三人の所へ慌てて戻った。

 

 冷たい地下水が流れる為に砂漠の暑さとはまるで正反対に寒冷な地底湖、エリア6を抜け、一行は再び灼熱の砂漠地帯、エリア5へと進入する。

 エリア5はエリア6側から進入すると右手に袋小路のようなエリア9、左手にはエリア1へ至る道があり、正面は底が見えない程深い崖に面した巨大な砂漠地帯だ。それこそディアブロスが何頭も走り回ってでも余るくらいに広い。

 広大なエリアにはディアブロスの姿はなかった。いるのはエリア中を忙しなく動き回っているガレオスが二匹。上ビレを砂上に出しながら砂中を泳ぐ砂漠のトビウオだ。あとは仲間から逸れたのか、ゲネポスが一匹だけエリアの真ん中で辺りを見回している。

「……いない」

「そんなはずはない。ペイントの匂いは具体的にはわからないが、奴が確かにここにいる事を示している」

「という事は、砂の中に潜んでいるという訳ですね」

 警戒心を強める三人の後ろ、クリュウは一人エリア6に繋がる洞窟の入口から右手に突き出た岩の陰に荷車を移動させる。

 不気味な沈黙。だが奴は必ずこのエリアのどこかにいる。今自分が立っている足下から、突然凶悪な角が突き出して来るとも限らない。そんな恐怖に、暑さとは関係ない汗が背中を流れる。

「……クリュウ、気をつけて」

 いつの間にか背後に立っているサクラからの忠告。クリュウはうなずくとエリアを見渡す。が、砂上には奴の姿は未だに確認できない。

 四人は一度エリアの中央部まで進んでみる。遠くにいたゲネポスがこちらに気づいて威嚇の声を上げる。シルフィードはため息を零し、背負ったキリサキの柄を握る。

 声を上げて迫るゲネポス。だが次の瞬間、彼は天を舞っていた。

 突如地面が割れ、巨大な二本の槍が刺き出した。そのうちの一方が彼の体を貫き、吹き飛ばす。

「グオオオオオォォォォォッ!」

 巻き上がる砂のカーテンの中を、巨竜が姿を現す。天を舞ったゲネポスはそのまま放物線を描きながら落下。砂の上に落ちて動かなくなった。

 パラパラと降り積もる砂雨の中、ディアブロスがゆっくりと振り返り──クリュウ達と目が合う。

「来るぞッ!」

 シルフィードの声を聞くまでもなく、三人とも一斉に戦闘態勢に入る。クリュウとサクラは攻守どちらにも動けるよう構え、フィーリアは早速ハートヴァルキリー改を構える。そしてシルフィードは躊躇う事なくこちらに向き直るディアブロスの眼前に向かって閃光玉を投擲する。

 低い唸り声を上げて突撃してくるディアブロスは突如眼前で炸裂した強烈な閃光に目を焼かれ、突進は不発に終わる。

「行くぞッ!」

 シルフィードを先頭に、四人は一斉に走り出す。

 フィーリアはすぐに的確な射程距離に立つと通常弾LV2の速射でディアブロスへの攻撃を開始する。狙うはゆっくりと動く尻尾。甲殻が薄い尻尾は弾丸では有効な弱点部位だ。

 攻撃を開始したフィーリアに対し、三人の剣士はディアブロスに突っ込む。まず最初に到達したのは怒涛の勢いで先頭を走るシルフィードを追い抜いた疾風迅雷、狂瀾怒涛のサクラ。砂を蹴り、ダンッと跳躍。視界を封じられてもがくディアブロスの眼前に突撃し、構えた飛竜刀【翠】を風を纏いながら、ディアブロスの額に向かって突き刺す。

「グオォッ!?」

「……よくもやってくれたわね。命をもって償いなさい」

 額に刀の先端を突き刺し、不安定な足場でも器用に立つ。そして、腰に下げた小タル爆弾Gを引き抜くと、悲鳴を上げるディアブロスの口に向かってねじ込んだ。

「グエェッ!?」

「……料理は爆発、ってね」

 飛竜刀【翠】を引き抜くと同時に跳躍。ディアブロスから降りる。刹那、ディアブロスの口腔が爆発。ディアブロスは悲鳴を上げ、黒煙を噴きながら倒れる。

 砂の上に流麗に着地したサクラは乱れた黒髪を片手で掻き上げて直す。

「……無様ね」

 見事な尖兵ぶりを披露したサクラを見てシルフィードは苦笑を浮かべると、サクラが作った大きなチャンスを利用し、倒れているディアブロスの頭の前に立ち剣を引き抜く。力を溜めるように足を踏ん張り、腕の筋力を引き締め、筋力に加速力を加え続ける。そして、限界に達すると同時に一気に解放。重量のある巨大な大剣が彼女の腕力を受けて射出。真上から下ると同時に重力をも味方につけ、動けぬディアブロスの頭に向かって叩き込む。

 悲鳴を上げてもがくものの、動けないディアブロスに向かって今度は横殴りな一撃を叩き込み、背負い直すと間髪入れずに再び叩き落としの一撃。連続した強力な剣撃の嵐でディアブロスを嬲(なぶ)り続ける。

 遅れてクリュウもディアブロスに到達する。ペイントボールを当ててから倒れて藻掻くディアブロスの背後に回り込み、再び尻尾の付け根に向かってデスパライズを叩き込む。ここが一番武器が弾かれずに刃が到達する場所なのだ。

 連続して剣を叩き込むクリュウ。デスパライズはまるで絶好調かのように麻痺毒を次々にディアブロスの体内に送り込み続ける。

「そろそろ、効果が出始める頃なんだけど……ッ」

 血塗れになる付け根に向かってもう一撃を入れる。しかしその一撃は麻痺毒は不発に終わった。

 先程からフィーリアの攻撃は尻尾をクリュウに譲って翼を狙い撃ちしている。距離があるからこそ、ディアブロスの動きを全体的に見る事ができる。スコープで狙いを定めながら攻撃していると、ディアブロスの足がゆっくりと確かに地面を踏み締める瞬間が見えた。

「離れてくださいッ!」

 フィーリアの叫び声が聞こえた瞬間、三人は一斉にディアブロスから離れる。一瞬遅れて倒れていたディアブロスがゆっくりと起き上がった。するとディアブロスは角を地面に突き刺し、潜り始める。その瞬間クリュウが道具袋(ポーチ)に手を伸ばすのを三人は見逃さなかった。

 尻尾が砂の中に消える寸前、クリュウは道具袋(ポーチ)から引き抜いた音爆弾を投擲。潜ったディアブロスの直上で炸裂すると、程なくしてディアブロスが悲鳴を上げて飛び出して来る。

 砂の中に下半身を埋めてもがき苦しむディアブロスに対し、四人の狩人(ハンター)が一斉に襲い掛かる。

 腹部の前に立って毒刀嵐舞。全身の筋力を限界まで酷使するような激しい立ち回りと暴れ回る刀捌き。甲殻に次々にヒビを入れ、破片を飛ばす。砂上という不安定な足場を感じさせない鬼神の如き猛攻撃にディアブロスが暴れ狂い、仲間達の士気は高まる。

 シルフィードはそんなサクラの動きを見て口元に笑みを浮かべると、ディアブロスの背後に回り込んで先程と同じように背甲に向かってキリサキを叩き込む。

 少し離れた場所からはフィーリアが猛烈な装填捌きで間髪入れない集中砲火を浴びせている。彼女の周りには次々に無数の空薬莢が落ち、その数に比例するだけの弾丸がディアブロスに命中していく。薄い皮膜は無数の弾丸を受けて所々に穴が空き、甲殻も砕け、確実にダメージを蓄積させている。

 そしてクリュウはサクラの横、右脇腹の前に立ってで剣を振るう。暴れる翼の根元、関節部分は比較的装甲が薄い。そこを狙えば刃が弾かれずに済むと予想していたが、どうやらその予想が当たったらしい。次々に振るわれる剣は角度によっては弾かれるもそのほとんどが皮膚を切り裂き、真っ赤な鮮血を生み出す。

 順調に攻撃を重ねるクリュウだったが、剣を入れる角度を間違えた。

「あぐ……ッ!?」

 硬い甲殻に思いっきり剣を叩き入れてしまい、弾かれる。まるで岩を殴ったかのような衝撃と激痛が腕を襲い、思わずデスパライズを取り零してしまった。

 ズキズキと痛む右腕に苦悶の表情を浮かべながら、クリュウは落ちたデスパライズを左手で拾い上げる。そして他二人よりも早めにディアブロスから離れた。そんな彼の様子を三人は一瞥をくれるも、攻撃の手を緩めない。

 クリュウは一人ディアブロスの前面に移動すると、道具袋(ポーチ)に手を伸ばす。

 直後、ディアブロスが砂の檻から解放された。傷ついた翼を広げて一度浮き上がる。その寸前でシルフィードとサクラはディアブロスから離れている。その位置はちょうどクリュウに背中を向けている形だ。

 クリュウは浮かび上がったディアブロスの眼前に向かって手に持った閃光玉を投擲した。放物線を描いて飛ぶ閃光玉は、巨体を浮かべるだけで不安定なディアブロスの眼前で炸裂。強烈な光が視界を奪い、ディアブロスは悲鳴を上げて地面へと崩れ落ちた。

 地響きが轟くと同時に辺りを支配していた激光が消え、四人の視界が回復する。すると、先程まで宙に浮いていたディアブロスが地面に落ちて横倒しに倒れていた。

「うまいぞクリュウッ!」

 シルフィードは彼の行動を高らかに賞賛すると一度離れた距離を再び埋めてキリサキを倒れているディアブロスの尻尾に向かって振り下ろす。サクラもクリュウがせっかく生み出したチャンスを無駄にしない為に全速力で戻って来ると、再び怒涛の剣嵐舞闘を炸裂させる。

 フィーリアは相変わらず冷静に攻撃を続けている。弾種を貫通弾LV2に変更し、硬い甲殻を持つディアブロスに更なるダメージを蓄積させる。

 そしてクリュウは再びディアブロスに迫ると、右腕の痛みを堪えながら投げ出された脚に向かって剣を叩き込む。最初に攻撃していた時よりも幾分か弾かれずに済む。見ると、脚の甲殻の至る場所に亀裂が生じ、砕けたり割れていたりしている。サクラの怒涛の攻撃の成果だ。

 クリュウは彼女の奮戦に感謝しつつ、必死になって剣を叩き込む。そして、彼の努力が実る時が来た。

「ギャオァッ!?」

 突然ディアブロスは悲鳴を上げると、身を強ばらせた。クリュウの度重なる攻撃で蓄積された麻痺毒が、ようやく効果を現したのだ。

 麻痺毒で体が痺れ、だらしなく涎(よだれ)を垂らしながら痙攣するディアブロス。それを見てシルフィードの表情が華やぐ。

「よくやったクリュウッ!」

 シルフィードはそう叫ぶと引き続き尻尾に向かって剣を叩き込む。ディアブロスの突進は確かに脅威だ。だが、それが終わった後の隙は貴重な攻撃チャンスとなる。しかしディアブロスもそれはわかっているのか、突進の後はこの尻尾を使って敵の接近を阻もうとする。その為、剣士は貴重なチャンスとわかっていても深入りができない。

 シルフィードの狙いはその障害となる尻尾を切断し、その貴重な隙を最大限に利用する為の布石を打つ事。成功すれば、確実に戦いはこちらに有利に働くようになる。

 灼熱の太陽に吹き出る汗を吹き飛ばしながら、シルフィードは大剣キリサキを振るう。

 サクラは転じて、今度は動かぬディアブロスの側頭部を狙って立ち回る。暴風を纏うように暴れ狂う彼女の刀は容赦なくその身を切り裂く。限界まで溜まった練気を一気に開放し、峻烈にして嵐のような気刃斬りを炸裂させる。暴れ狂う剣撃が甲殻を砕き、弾き飛ばし、肉に到達し、血を撒き散らし、より鋭さを増す。

「……チェストオオオオオォォォォォッ!」

 クリュウは続けて脚に向かってデスパライズを叩き込み続ける。刃が刃毀れを起こしていても構わずに剣を振るう。今は、この貴重な時間にできるだけダメージを与えておく事に専念する。奴がこんなにも長い間動きを拘束される事など、そうそうない。だからこそ、このチャンスを最大に活かして攻撃を続ける。

 総攻撃に転ずる剣士組に対し、ガンナーのフィーリアは違っていた。それまでの貫通弾LV2から別の弾丸に変更すると、スコープで狙いをつけて正確に一撃を叩き込む。撃ち放たれた弾丸は一直線にディアブロスの顔面に命中。炸裂すると同時に薄い水色っぽい煙を放つ。

 溜め斬りを尻尾に向かって振り下ろしたシルフィードはその煙に気づくと、彼女の意図をすぐに察した。麻痺での拘束時間はそろそろ限界だ。シルフィードはキリサキを背に戻すと、その場から離れながらまだ攻撃を続けている二人に叫ぶ。

「撤退しろッ! そろそろ限界だッ!」

 二人はその声を聞くとすぐにバックステップでディアブロスから距離を取る。その間もフィーリアからの攻撃は続く。

 そして、ディアブロスが麻痺毒の鎖から解放された。激しい怒号を辺りに轟かせ、憤怒に満ちた叫び声が大地を震わす。

 ディアブロスの怒号(バインドボイス)にクリュウとサクラが反射的に耳を塞いでその場に拘束される。高級耳栓を持つシルフィードは急いでディアブロスの眼前に移動する。こちらを向き次第閃光玉を投擲して奴の動きを封じる気だ。

 一方、麻痺が解ける寸前までに怒号(バインドボイス)を警戒して安全距離にまで脱していたフィーリアは無事。依然として攻撃の手を緩めない。

 そして、怒号(バインドボイス)を終えてシルフィードとディアブロスの目が合う。

 シルフィードが構えた閃光玉を投擲、する寸前にディアブロスのこめかみに弾丸が命中する。薄い水色の煙が噴き出し、ディアブロスの鼻に吸い込まれていく。その途端、ゆらりとディアブロスの体が揺れる。

「これは……」

 構えた閃光玉を、シルフィードはゆっくりと下ろす。彼女は感じていた。エリア全体を支配していたディアブロスの強過ぎる気配が、収束していくのを。それは怒号(バインドボイス)の影響から脱した二人も同じだ。

 一人、ディアブロスを狙撃していたフィーリア。その口元に笑みが浮かぶ。

 ゆらりと揺れ、ディアブロスの巨体が力なく崩れ落ちる。砂上に倒れた瞬間、その巨体が生み出す衝撃と風が砂塵を巻き上げる。

 倒れたディアブロスからは先程までの殺意に満ちた気配は消えていた。力なく倒れるディアブロスは、体を規則的にわずかに動かし──眠っていた。

 眠るディアブロスを前に、四人はゆっくりと武器をしまうと、その前に集まる。

「さすがフィーリアだな。うまく眠らせたな」

「クリュウ様のおかげです。麻痺状態だったからこそ、的確に睡眠弾を撃ち込めました」

 シルフィードの言葉にフィーリアは照れたような笑みを浮かべると、近寄って来たクリュウを見て恥ずかしそうに言う。

 彼女が撃っていたのは睡眠弾LV2。文字通り対象となるモンスターを眠らす事ができる特殊弾丸だ。フィーリアはクリュウの生み出した麻痺状態の間に的確に睡眠弾Lv2を当てて、ディアブロスを眠らせる事に成功したのだ。

「すごいよフィーリア。さっすが頼りになるよ」

「え? あ、ありがとうございますッ」

 クリュウに誉められ、フィーリアは嬉しそうに無邪気に微笑む。そんな彼女を彼の後ろで羨ましげに見詰めるサクラ。

「……クリュウ、私は?」

「え? も、もちろんサクラも頼りにしてるよ」

「……そう」

「あぁッ! せっかく私だけがお褒めいただいてたのにずるいですぅッ!」

 クリュウに同じく誉められ、嬉しそうに小さな笑みを浮かべるサクラ。そんな横取り的な彼女をフィーリアが怒る。そんな三人を見て、シルフィードは微笑む。

「あ、シルフィードももちろん頼りにしてるからねッ」

「うん? 何だか取って付けたような言われ方だが、ありがとう」

 思い出したように慌ててシルフィードにも言うクリュウの言葉に苦笑しつつも、ほんのりと頬を赤らめて喜ぶシルフィード。だがその笑顔も一瞬の事。すぐに表情は引き締まり、狩人のものに変わる。

「さぁ、雑談はここまでだ。剣士組は砥石を使って刃の切れ味を回復させる事。フィーリアにはシビレ罠の設置を頼む。用意が整った者から荷車から爆弾を下ろして設置するぞ。急げッ」

 シルフィードの号令に、すぐに三人は行動を開始する。剣士組三人はディアブロスの堅牢な甲殻に何度も斬りつけた為にすっかりボロボロになった切れ味を砥石を使って回復させ、フィーリアは一人荷車からシビレ罠を一つ取ってエリアの真ん中付近に設置に向かう。

 砥石で切れ味を回復させた剣士組はすぐに荷車に近寄って大タル爆弾Gを取り出す。三人がそれぞれ持ち、数は三発。すぐにディアブロスに近づき、眠っている奴の近くに設置する。それぞれ頭に二発、足に一発だ。

 フィーリアもシビレ罠の設置を終えて戻って来る。合流した四人は最後の確認を行う。

「よし。フィーリア、君が起爆させてくれ」

「了解しました」

 シルフィードの指示にフィーリアがハートヴァルキリー改を構える。弾倉に装填するのは余った睡眠弾LV2。

「起爆次第、攻撃を再開する。撃てッ」

 フィーリアが引き金を引くと、発砲音と共に弾丸が発射される。それは一直線に吸い込まれるようにして眠るディアブロスの顔のすぐ横に設置された大タル爆弾Gに命中する。途端、辺りを吹き飛ばすような大爆発がディアブロスの体を包み込んだ。

 吹き荒れる爆風が四人を襲う。巻き上がり暴れ狂う砂塵に一瞬目をやらせそうになるが、手で遮断して防ぐ。ヘルムを被っていない女子三人の髪が暴れる。

 もうもうと上がる黒煙の柱を凝視する四人。倒せたとは思っていない。だが、一体どれほどのダメージを与えられたか。息をするのも忘れながら、黒煙を凝視する。

「ぐぅ……ッ!?」

「あぅ……ッ!?」

「……ッ!?」

 ――黒煙が吹き飛び、天を震わす大咆哮(バインドボイス)が轟く。その爆音を近距離で受けた三人は耳を押さえてその場にうずくまった。皆、耳を塞いでいても痛いくらいに耳に響く怒号に顔を苦悶に歪め、本能に直接作用する恐怖に身を震わせる。

 恐怖に身を震わせて目を瞑りながらうずくまるクリュウ。そんな彼の肩を唯一高級耳栓スキルを持つシルフィードが掴んで揺らす。

「しっかりしろッ! 奴はまだ健在だぞッ!」

 クリュウだけではなく、フィーリアとサクラの肩も揺らして怒号(バインドボイス)から解放するシルフィード。その表情は緊張に染まり、脂汗が頬を流れる。

「固まっているのは危険だッ! 散開――ッ!?」

「グギャアアアアアオオオオオォォォォォッ!」

 再び轟く大咆哮(バインドボイス)。三人はまたしても耳を塞いで崩れ落ちる。どんな優秀で熟練の狩人でもこの本能に直接作用する恐怖に打ち勝つ事はできない。動かなくてはいけないとは頭ではわかっているのに、体は言う事を聞かない。

「厄介な事をしてくれる……ッ!」

 シルフィードは歯軋りしながら単独で黒煙に突っ込む。道具袋に手を伸ばしたは閃光玉。黒煙が晴れたと同時に投げて、奴を拘束するつもりだった。

 風が吹き、黒煙の柱が崩れていく。次第に輪郭を失い、崩れていく黒煙の柱を見詰め、シルフィードは閃光玉を構える。そして一際強い風が吹き、黒煙の檻が消え去ると──そこに奴の姿はなかった。

「何ッ!?」

 驚愕に顔を強ばらせるシルフィード。その頬を嫌な汗が流れ落ちる。歯軋りはより強く軋みを上げ、その表情に明らかな動揺が生まれる。

 爆弾で消し飛んだ? そんな訳がない。いくら大タル爆弾Gでもたったの三発でそこまでの威力はないし、そもそも黒煙の中で轟いた咆哮(バインドボイス)は確かに奴のものだった。それは、奴が健在だという何よりの証しだ。

 考えられる可能性はただ一つ。

 ――刹那、地面が揺れる。

「しま――ッ!?」

 いつもの冷静な彼女なら、こうなる事を予想して安易に近付く事はなかっただろう。

 仲間が危ない。何としてでも仲間を守らなければ。そんな想いが彼女から冷静さを失わせ、こんな無様な突撃ぶりを披露してしまった。

 急いで動いても、もう避け切れない。だが、諦める訳にはいかない。

 周りの音が全て聞こえなくなる。本能が何とかこの危機を脱しようと五感を今使うべきものに特化させているのだろう。視覚が限界にまで引き上げられ、迫り来る砂煙がゆっくりと見える。だが同時に、自分の体はもっと遅い。どんなに急いでも、避け切れない。

 彼女の表情が、恐怖に染まる。

 次の瞬間には、自分はあの巨大な角に貫かれて身を真っ赤に染めているだろう。そんな最悪のイメージが、脳に焼き付く。

 そして地面が割れ、巨大な二本の巨槍が彼女を襲う――と、思われた。だが、現実は少し違った。

「グアァッ!?」

 地面に飛び出したディアブロスは苦しげに藻掻きながら、下半身を砂の中に埋めて暴れている。それは決して、彼女を狙って砂中から角を突き上げたとは思えない、無様な姿だ。

 眼の前で藻掻くディアブロスを凝視しながら、シルフィードはペタンと力なくその場に尻餅をついてしまう。そんな彼女に駆け寄る者がいた。

「シルフィッ!」

 振り返ると、目の前にクリュウの顔があった。その表情は安堵に満ち溢れている。

「く、クリュウ……?」

「良かったぁ……ッ! 何とか音爆弾が間に合ったんだね……」

 彼の言葉に、ようやく状況を理解する。今背後で砂の中に下半身を埋めて藻掻くディアブロスは彼女狙って砂中から意図的に飛び出したのではなく、彼が投げた音爆弾によって砂上に引き摺り出されたのだと。

 もしも、彼の行動が一瞬でも遅れていれば、ディアブロスは砂を蹴って砂上へと現れ、自分はあの巨大な角に串刺しにされていただろう。彼の投げた、たった一発の音爆弾が、寸前で奴の行動を妨害した――そして、自分は今生きている。

 先程まで、死を覚悟すら仕掛けたシルフィード。だがしかし、結局は彼のおかげで助かった。

 呆然とするシルフィードに向かって、クリュウはヘルムを取って嬉しそうに微笑んだ。

「約束したでしょ? シルフィを守るって」

 真っ直ぐであるが故に、飾り気がなくて、でもだからこそ心に響くその言葉。彼の優しさが溢れたその言葉は、彼女の心を打ち振るわせる。そして――

「……まったく、君という奴は」

 小さく苦笑を浮かべるシルフィード。その頬を、涙が流れる。

 恐怖から解放された安堵か、約束を守ってもらえた嬉しさか、彼の優し過ぎる優しさへの感動か。ゴチャゴチャに混ざった気持ちの中で、それは見つける事はできなかった。でも、今こうして目の前で慌てる彼を見ていると、何だか胸が熱くなる。

「し、シルフィッ!? ど、どこか怪我でもしたのッ!?」

 自分の身を案じて慌てる彼の姿がおかしくて、シルフィードは笑う。涙を拭い、「いや、大丈夫だ。砂が目に入っただけさ」と誤魔化しながら、彼女は立ち上がる。それでもまだ心配そうに自分を見詰めている、自分よりも背が低くて頼りなさげな彼の頭をそっと撫でる。そして、一言礼を言う。

「ありがとう、クリュウ」

 クリュウはその言葉を聞くと一瞬呆けたような表情を浮かべたが、すぐにその表情を笑顔一色に染める。

「大した事じゃないよ。仲間として当然の事をしたまでさ」

 言ってくれる。彼の言葉に口元に笑みを浮かべたシルフィード。しかしすぐにその表情を狩人のそれに引き締め直す。それを見てクリュウも脱いでいたヘルムを再び被り直し、戦闘態勢に戻る。

「……邪魔」

 まるで二人の間を引き裂くように、二人の真ん中をサクラが突き抜ける。風を纏いながら突貫する彼女は引き抜いた飛竜刀【翠】を構えると、藻掻くディアブロスに襲い掛かる。がら空きの胴体に向かって、煌く剣先を閃かせる。

 ヒビの入った甲殻を削り取るように刃を入れて、弾かれなようにしながら確実にダメージへと繋げる。豪快にして繊細な一撃の連続は、サクラだからこそできる芸当だ。

 砥石を使って戻した切れ味は絶好調。先程までは弾かれた部位も、刃がしっかりと入り血を踊らせる。

 度重なる攻撃の連続は確実にディアブロスの体力を削るのと同時に、刀本来の力を開花させる。

 突然ディアブロスの動きが鈍くなるのを、サクラは見逃さなかった。その途端、彼女の口元に笑みが浮かぶ。

「……やっと」

 暴れるディアブロスは苦しげに藻掻きながら、口からよだれを垂らす。サクラの飛竜刀【翠】の特殊能力は毒。クリュウの麻痺毒と同じく度重なる攻撃数で刃から体内へと流れた毒が、ようやく効果を発揮したのだ。

 足下で砂の檻が壊れる音に、サクラはバックステップで距離を取る。直後、ディアブロスを縛っていた砂の檻が壊れ、浮き上がる。

 上空へと上ったディアブロスを見詰め、サクラは不敵に微笑むと振り返る。

「……クリュウ」

「任せといてッ」

 そう言ってクリュウは閃光玉を放る。炸裂する膨大な光は一瞬で空中を飛ぶディアブロスの視界を奪い、ディアブロスは悲鳴を上げて墜落した。

 砂煙を巻き上げて落ちたディアブロス。それを見てシルフィードは不敵な笑みを浮かべた。

「まったく、容赦がないな君達は」

 そう言いながら、背負ったキリサキの柄を握り締めてディアブロスに近寄ると、藻掻くディアブロスの角に向かって剣を振り下ろす。

「そう言うシルフィード様も容赦ありませんよ」

 そう言って苦笑を浮かべると、フィーリアは新しい弾を装填してディアブロスに対する射撃を再開する。

 クリュウもデスパライズを引き抜くと急いで倒れているディアブロスに駆け寄り、藻掻く脚に向かって振り下ろす。叩きつけるように一撃し、二撃三撃と続け、最後に回転斬りを決める。もう一度と剣を振り上げた所でディアブロスが起き上がる。仕方なくクリュウは後退する。

 起き上がったディアブロスを見て四人は後退を始める。シビレ罠へ誘導するつもりだ。そんな彼らを憎々しげに睨みつけると、ディアブロスは突如砂の中へ潜り始める。クリュウが慌てて音爆弾を手を投げるが、寸前でディアブロスはこちらに向かって移動を始め、音爆弾は奴のいない砂上で炸裂。無駄に終わる。

 迫り来るディアブロスに対して慌てて散開する四人。その目の前で、ディアブロスが砂上へと現れる。そこはちょうどシビレ罠の設置していた場所。砂を巻き上げて現れたディアブロスは同時にシビレ罠も薙ぎ払った。天を舞った後、シビレ罠は地面へと落ちて粉々に壊れてしまう。それを見てシルフィードは舌打ちする。

「貴重なシビレ罠を壊されたか……」

 続けて、ディアブロスはクリュウに向き直ると姿勢を低くして突進して来る。フィーリアの必死の銃撃を無視して駆けるディアブロス。クリュウは横に跳んでその攻撃をギリギリで避けた。

 砂の上を滑走して止まるディアブロスに、残る三人が急いで殺到するが、それを拒むようにディアブロスは砂を掻き分けて砂中へと消える。先陣を走っていたサクラは起き上がったばかりのクリュウに近づき、心配そうに彼を見詰める。

「平気だよ。それより、固まってると危ないよ」

「……わかった」

 四人は散開してディアブロスの砂中からの強襲に備える。奴の消えた部分の砂、例え一粒でも奴の動きを表す手がかりを見失わないように凝視する四人。砂漠の灼熱の日差しがじわりと彼らの体温を押し上げ、緊張感と相まって頬を汗となって流れる。

 一体どれくらいの時が経ったのか。十数秒、数十秒、数分。実際にはほんの数秒の出来事でも、まるで時間がゆっくり流れているかのような錯覚を覚える程に長い沈黙。

 そして、時が動く。

「え?」

 クリュウは目の前に光景に思わず声を漏らした。

 ディアブロスは突如方向転換すると、そのままエリア1の方へ砂煙と共に動き、そして消えてしまう。

 あまりにも呆気ない展開に、クリュウだけではなく他の三人も呆然とエリアから去ったディアブロスが消えた地点を見詰めたまま立ち尽くす。

 真っ先に我を取り戻したのはシルフィード。フゥとため息を零すと引き抜いていたキリサキを背負い直す。

「匂いが移動した。今奴は隣のエリア1だな」

 他の三人もその言葉に全身に漲らせていた緊張を解く。全員、一撃でも当たれば大怪我というディアブロスの攻撃に常に神経をすり減らしながら戦っていただけあって、力を抜いた途端にぐったりという様子。フィーリアはペタンとその場に崩れ落ち、サクラも彼女らしくなく膝を立てて腰を落としている。そんな二人の様子を見て、そっと頬を緩めるシルフィード。

 クリュウもヘルムを脱いだ途端、突如彼の体が吹き飛んだ。

 無様に地面に倒れたクリュウは背中に手を当てて苦痛に顔を歪める。振り返ると、すっかり忘れていたこのエリアにいたもう一つの勢力が……

「が、ガレオス……?」

 緊張を解いていた為か、それとも疲れが溜まっていた為か、クリュウは呆気無く気を失うのであった。


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