千代に八千代に   作:NJ

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前回のあらすじ

U R MY SPECIAL♪

かぐや「死ねよ」


今回から本格的に現代(未来?)パート入ります。


第3話:宿敵《ブラザー》

 

 

 2018年───新宿決戦前日

 

 

 戦国より甦りし雷神、鹿紫雲一の心は逸っていた。

 

 秤金次との激闘は生前より忘れて久しい血湧き肉踊る感覚を堪能できたが、条件付きで高専陣営に与した後、「その名」を聞いた時はそれを忘れるほどの高揚に支配された。

 

 その術師が活躍した時代から600年先を生きていた鹿紫雲ですら耳にした伝説が、今まさに自分と同じ時代、同じ建物に存在する。

 

 己の最終目標である宿儺にすら迫るとされた平安の異能───『神将』が。

 

 もしや、その者ならば己の胸中に400年以上燻り続けるこの疑問(のろい)にも、という期待が足を屋上へと向けさせる。

 

 根拠はなかった。

 ただ確信はあった。

 

 自分が向かう先に、その男は居ると。

 

 

 

 扉を開けて最初に感じたのは、全身を圧す感覚。

 

 

 

 屋上に吹く風───ではない。

 

 呪力、でもない。

 

 実際にその男を目にした鹿紫雲の胸中は、存外静かな納得で満ち足りた。

 

 ───あぁ、間違いない。

 

 この男こそ───

 

 

「よぉ、護国神将」

 

 

 その男は、屋上の縁で静かに胡座をかいていた。

 現代の術師らが宿儺との決戦に向けて鍛錬を積んでいる最中であっても我関せずで──厳密には最低限のアドバイスは行ったが──この場所に一人黄昏るばかり。

 

 ただ、座って風に吹かれながら眼下の廃都を臨むのみ。

 

 現代の装束で、後ろで結った金髪混じりの黒髪を風に揺らしながら。

 

 そう、何もせず座っている、だけ。

 

 だというのに、ああだというのに!

 

「(噂以上だ───これが、神将!!)」

 

 殺気も闘気もなく、座っているだけの背中。

 意識を向けられてすらいないというのに、鹿紫雲の全身が軋み押し除けられるような感覚に呑まれる。

 

 しかも、しかもこれで呪物化を隠すという理由で削る魂は最小限に抑えた為に現在は全盛期(・・・)()四分の一(・・・・)以下(・・)だという事実が鹿紫雲を戦慄させる。

 

 そんな状態で死滅回游初日で仙台コロニーを制圧してみせたという事実を知るが故に、より一層。

 

 だが、鹿紫雲も戦国随一の術師としての自負と矜持からそれをおくびにも出さず、敢えて堂々と隣を陣取る形で腰を下ろす。

 

「鹿紫雲一。生まれは戦国、アンタと同じ受肉体の泳者(プレイヤー)だ」

 

 神将は答えず。ただ前だけを見据える。

 鹿紫雲は構わず続ける。

 

「同じ受肉体として、護国神将。アンタに聞きたい」

 

 

 

 

「アンタは───どんな未練があってこの時代に受肉した?」

 

 

 

 

 両者の間に、風が吹く。

 

「俺はただ知りたかった。強さとは罪なのか」

 

「どこまでも力の発露を求めて彷徨い続ける事が強者に課せられた罰なのか」

 

「俺にとって自分以外の人間は全て脆い土塊でしかなかった」

 

「アンタはどうだ?神将。宿儺と戦ったアンタなら────」

 

 いまだに黙りを決め込む平安の異能を横目で見遣り…

 

 

 ─────ぞっ

 

 

 鹿紫雲は、勘違いを悟った。

 

 千年前の両面宿儺と同じように。

 この男は、自分とは、自分達とは根本的に“違う”のだと。

 

 その双眸()が見据えるものは、俺達とは違うのだと。

 

「(まさか───まさか護国神将、アンタは…)」

 

 今こうして集っている現代の呪術師、そして彼らと一時的な同盟を結んだ受肉体達。

 本来なら相容れぬ彼らの同盟を縛る共通の結び目とは、即ち『呪いの王の打倒』に他ならぬ。

 

 死滅回游は既に大詰め。

 羂索は用済みとなった泳者(プレイヤー)の後始末に取り掛かっており、残された泳者はもはや宿儺側の陣営を除けばここに集まった者達しか居ない。

 

 僅かに逃げ続ける者も居るだろうが、それが消されるのも時間の問題だ。

 

 もはや彼らが生き延びるには宿儺を、羂索を打倒する以外に道はないのだ。

 

 その為に、か細い蜘蛛の糸を頼りに死の回游(うみ)から抜け出すべく踠いている。

 

 鹿紫雲も動機は異なれど彼らと同じだ。

 己が数百年の呪いを晴らす唯一の回答と信じて、宿儺を最終目標に据えてここまでやって来た。

 

 そう、それぞれ思惑は異なれど全員最終目標が宿儺と羂索である事は同じ……と、思っていた。

 

「(まさか、アンタは俺達の中で唯一───)」

 

 そう。

 この男はこの陣営の中でただ一人だけ…

 

 

 

 

「(───宿儺を、ただの通過点(ハードル)としか認識してないってのか!?)」

 

 宿儺の先にある別の目標(ゴール)を、その眼に映し見据えているのだ!

 

 

 

 

 

「───ハッ!」

 

 思わず笑いが漏れる。

 その事実に鹿紫雲は先程までとは異なる震え、武者震いが鹿紫雲の体を電流のように駆け巡る。

 

 平安の異能が千年の時を超えて尚、呪いの王を“ついで”扱いする程の目標?それはどんな怪物だ?

 呪霊?術師?それ以外の未知の、呪術の範疇を超えた理外の存在?

 

 理解不能(わからない)予測不能(わからない)想像不能(わからない)

 

 

 だが───面白い!!

 

 知りたい!!

 

 

 この、弱体化して尚術師として五条悟に「別格」と言わしめた平安の異能が宿儺の先に見据える至高の敵…石流風に言うならば“デザート”の正体を。

 

 この男が、ここまで己を呪える理由を…宿儺以上に呪詛を向けられる存在を!

 

「(なんてこった…この戦いで出し切るつもりだったってのに)」

 

 宿儺との戦いで、鹿紫雲は死ぬつもりだった。

 勝つにしても負けるにしても、第二の人生の終着点は戦場(ここ)と決めていた。

 

 しかし…

 

「(そんなもん知らされたら、未来(さき)が気になっちまうだろうがッッ!!)」

 

 護国神将、平安最優の呪術師麻桑。

 不動無言のまま、雷神の決意を打ち砕く。

 

「(見てみたい…宿儺を…呪いの王という壁を超えた先に何が待ち受けているのかっ!)」

 

 もう少しだけ、生きてみたい!

 今の鹿紫雲は、生前でも感じた事がないほどの生への執着を自覚していた。

 

「(だから────)」

 

 

 

 アンタも死ぬなよ麻桑。

 

 俺に、アンタの夢の果てを見せてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数年後、鹿紫雲の腹筋は茈クラスの笑撃を受けることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は昔───いやいや、今とあんまり変わらない。

 

 少しだけ未来(2 0 3 0年)の世界。

 

 ここにとある、女子高生ありけり。

 

 

「次、酒寄さん」

「はい」

 

 

 酒寄彩葉(さかよりいろは)、となむいいける。

 

 

「流石だな。今回もクラストップだ」

 

 ───おぉ〜っ

 

 

 学校では、まさに才色兼備。

 

 

「ねぇ、この噂知ってる?」

「なになに?」

 

「お願い酒寄さん!陸上部のヘルプ頼める!?」

「先輩のお母さんが体調崩したって!」

 

「なんか、昔の仙台の高校に50m3秒台で走る男子生徒が居たんだって」

「なにそれー(笑)」

 

 

 文武両道。

 

 

「現代史のテスト対策どうよ?」

「2018年から覚える事多過ぎ〜」

 

「彩葉〜!またノート貸して〜!」

「今度パンケーキお供えするから〜!お助けください神様仏様彩葉様〜!」

 

「渋谷事変とか本当にあったの?」

「俺、新宿のクレーター見たけどヤバかったよ。マジ原爆」

 

 

 誰もが憧れる、優等生。

 

 

「憂太の奴遅くねーか?」

「悟と用事終わらせてから来るってよ」

「しゃけ」

 

「酒寄さーん!三番テーブルの注文おねがーい!」

「はい!」

「酒寄ぃ!皿溜まってんぞぉ!」

「はーい!」

 

「虎杖はどうした?」

「おかか」

「秤とパチンコ行ってから、日車の面会」

 

「酒寄くん!」「酒寄さん!」「酒寄ェ!」

「はいはいはい!!」

 

「伏黒は?」

「すじこ」

「伏黒なら来栖と一緒に津美紀の所へ…」

 

 

 バイトにも精を出したり。

 

 

「俺、さっきおもしれー奴ら見たんだけどさ」

「マジ?どんなん?」

「なんか、銀髪のイケメンがおにぎりの具だけでヤクザみてーな傷だらけの女と会話してたんだよ」

 

「キャベツ1/2で500円…だと…!?」

 

「あと、なんか喋るちっこいパンダも居たわ」

「パンダ?」

 

 

 学費と生活費を稼ぎたる。

 

 

「今日のピンチャン見た?」

「スベってからの逆ギレで笑ったわ」

 

「き、今日も何とか乗り切ったわい…」

 

「あの子呪霊に憑かれてるんじゃ…」

「呪術高専に連絡した方が良くね?」

 

 

 そんな彩葉も、普通の女子高生らしく。

 

 

《仮想空間「ツクヨミ」へようこそ!》

 

《おかえり!本日のログインボーナス、ふじゅ〜ゲット!》

 

 

 仮想空間で、遊んだり。

 

 息抜きした「見つけましたよ」り…

 

「また会いましたね…」

 

 

 

 

「我が運命の宿敵(ライバル)────《いろさん(酒寄彩葉)》ッッ!!」

 

 

 

 

 眼前の、ジ◯ジ◯立ちでこちらをビシッと指さす金髪まじりの犬耳チョンマゲ侍を前に、死んだ(レ◯プ)目をしながら彩葉は思いたる。

 

 

 

 ───神様。

 私、なにか呪われるような悪い事しましたか?

 

 

 

 彩葉の日常に割り込むように唐突に現れたるこの男。

 

 名を《ちよっち》。

 彩葉と同じくツクヨミユーザーの一人であり、ある日、ぱったり出会った彩葉をいきなりライバル扱いしてきた、ちょっと…いや普通に危ない男でありける。

 

「だぁーかぁーらぁ!」

 

 酒寄彩葉にとってこの男は、己の日常を崩す侵略者に他ならず。

 

「私はあなたなんか知りませんし!ライバルになんてなったつもりもありませんってば!」

 

 こうして袖にしようとも、ちよっちはノンノンと余裕綽々に指と首を振りながら、エキセントリックに否定せり。

 

「いえ、いいえ!貴女が認めずとも、既に運命の歯車は噛み合っております。 先週のヤチヨライブで私は確信いたしました!あなたの!あの魂の咆哮───シャウトで!」

 

「アンタがやらせたんでしょうが!あんな小っ恥ずかしいこと二度とやるか!!」

 

 彩葉、人生に刻まれし黒歴史を蒸し返され、うぁあああと器用に立ったままアクロバティックに悶えたる。

 

「いろは〜」

 

 げっ、その声で彩葉は思い出す。

 そう言えば、今日は会う約束してたんだったと。

 

 振り返りたれば、そこには彩葉の学友二人。

 

「アレ? ちよっちも居たんだ」

「二日ぶりだね」

 

 そして彩葉はこの男の厄介な一面を、この数日で知り得たる。

 

「おぉ、これはお久しぶりぶり座右衛門です。ROKA様、まみまみ様」

「あはは、相変わらずちよっちおもしろ〜い」

「まみまみ様、先日ご紹介頂いた店は大変同僚に好評でしたよ。ROKA様も、この前の配信で釘崎様が大変参考になったと」

「良かった〜ちよっちの友達に気に入られたなら今後も自信持ってやってけるよ」

「野薔薇さんにまた遊び行きましょうって伝えといてね」

「承りまして候」

「てか、その喋り方何時代?」

「平安の頃からこの喋り方に候。少々かぐや姫に躾けられまして」

「やっぱちよっちおもしろ〜い」

 

 友人二人と、和か丁寧に語らう姿。

 これだ、これがこのちよっちを名乗る変質者の厄介な側面。

 

 

 ───この男、イカれてる癖に味方(ともだち)作りがやたら上手い!!

 

 

 出会って数日であっさりこの不審者に絆された親友達。

 もう既に外堀が埋められている事実に彩葉、戦慄せり。

 

 後悔してもし足りない。

 何故、自分は先週のヤチヨライブであんな事をしでかしたんだ。

 

 公衆の面前で!他ならぬヤチヨの前で!

 それも───こいつと二人で!!

 

 殴りたい!タイムマシンがあるならあの頃の寝不足の深夜テンションで暴走した自分を!いや、もう数千年ぐらい過去に遡って自分だけこの世に生まれないよう歴史改変したい!

 

 うおおおおおおと両手で顔を覆い、天に輝く満月(ミラーボール)を仰ぎながら過去の自分を呪う彩葉を他所に会話に花を咲かせたる三人。

 

「てか、二人で何やってたの?」

「デート?」

 

「違う!!」

「違います」

 

 魂のシンクロ。0.1秒の誤差もなき否定。

 

 

「おぉ、事前の打ち合わせなしでこのシンクロ率…やはり、あなたこそ千年待ち望んだ我が運命の宿敵(ブラザー)か…!!」

「私とアンタは出会って一週間だろーが!!」

 

 

 あーもう滅茶苦茶だよとヤケクソになりながら彩葉は振り返りたる。

 

 

 こうなるに至った経緯(あの日)を───

 




冒頭の麻桑さん、直哉の回想の甚爾クンみたいな目つきしてます。

おまけ
死滅回游での一幕
大道「刀ぁぁぁぁぁああああああ!!」
三代「相撲ぉーーーーーーーーー!!」
麻桑「かぐやぁぁあああああああああ!!」
脹相「悠仁ぃーーーーーーーーーー!!」
高羽「えんだああああああああああいやああああああああああああああ!!」

直哉「なぁ真希ちゃん。今までのこと全部謝るから俺と担当変わってくれへん?」
真希「断る」
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