学園都市の決闘者   作:逆襲

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全回からだーいぶ時期が空きました...申し訳ございません。
ここからは各部活の番外編です。


シノビ・イズ・サイコー!

「うーん……」

 

一人の少女が、スマホを見つめながら唸っていた。

 

ふさふさの尻尾が、落ち着きなく左右に揺れる。

何かを悩むように動いたかと思えば、ぴたりと止まり、またゆっくり揺れ始めた。

 

「部長!おはようございます!」

 

「お、おはようございます……」

 

背後から聞こえてきた二つの声に、ミチルはゆっくり振り返る。

そこには、いつもの二人――イズナとツクヨが立っていた。

 

「イズナ、ツクヨ、おはよぉ~」

 

いつも通りの、どこか気の抜けた声で返す。

だが、その様子が普段と少し違って見えたのだろうか。

 

「部長?……あまり元気が無いように見えますが、どこか具合でも……?」

 

ツクヨが心配そうに首を傾げる。

 

「いやぁ、そぉいうわけじゃないんだけどさぁ……」

 

ミチルはそう言いながら立ち上がり、スマホの画面を二人へ向けた。

 

「これは……昨日投稿した動画、ですか?」

 

「『変わり身の術のやり方講座』ですね!イズナ、頑張りました!」

 

イズナがぴょんぴょんと跳ねる。

 

「それで…こちらの動画が、どうかなさったのですか?」

 

「どうかしたっていうかぁ……全然伸びないんだよねぇ……」

 

ミチルは大きく肩を落とした。

 

「結構頑張って撮ったんだけどなぁ……」

 

「むぅ……」

 

イズナも難しい顔をする。

 

「どぉしようかなぁ……」

 

すると、イズナがぴんっと耳を立てた。

 

「はい!イズナに考えがあります!」

 

「おぉ?」

 

「以前、ドレスを着て撮影した動画、あれはたくさん再生されていました!」

 

「そ、そういえばそうですね…!」

 

「つまり!流行しているものと忍術を組み合わせれば、もっと見てもらえる可能性があります!」

 

勢いよく語るイズナに、ミチルは「なるほどぉ……?」と曖昧に頷く。

 

「でもぉ、あれって忍術に興味があるっていうより、皆ドレスを見てたって感じじゃない?」

 

「そこも踏まえて、丁度いいものがあります!」

 

イズナは得意げに胸を張ると、ごそごそと懐を探り始めた。

 

「先日、主殿から頂いたのですが――こちらです!」

 

取り出されたのは、小さなカードの箱だった。

 

「これってぇ……?」

 

「最近流行りの、『デュエル・マスターズ』というカードゲームです!」

 

イズナはきらきらした目で続ける。

 

「デュエル・マスターズ……?」

 

ミチルは箱を受け取りながら、小さく首を傾げる。

 

「はい!このゲームには『シノビ』というカードがあるんです!」

 

「シノビ…忍者、ですね」

 

(…そういえばこの前、修行部に行った時にカエデが話してたっけ)

 

 

「調べてみたところ、このゲームの対戦動画はかなり人気があるようです!」

 

イズナはさらに一歩前へ出る。

 

「なので!イズナ達もデュエマの動画を撮影してみてはいかがでしょう!」

 

尻尾をふりふり、と横に揺らすイズナ。

 

「で、でもぉ、私ルールとか全然わかんないよぉ?」

 

「主殿からルールは教えてもらったので、イズナにお任せください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イズナに押されるがままルールなどを確認し、机の上にカードを並べる。

 

「イズナちゃん、これでいいん…でしたっけ?」

 

「はい!問題ないです!」

 

机を二つ並べた簡易的なデュエルテーブルの上で、二人が向かい合う。

 

「じゃ、まずは一回試しにやってみよっかぁ」

 

「はい!部長!よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

数ターン後

 

ミチル 手札4 マナ4 シールド5 場:《忍鎖の聖沌 94nm4(ガンマ)

イズナ 手札3 マナ6 シールド5 場:無し

 

 

忍鎖の聖沌 94nm4(ガンマ) コスト3 パワー2000 メカ・デル・ステラ/シノビ 光

・このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をシールド化してもよい。

・各ターンに一度、自分のシールドゾーンにカードを置いた時、メカ・メクレイド5する。(メカ・メクレイド5:自分の山札の上から3枚を見る。その中から、コスト5以下のメカを1枚、コストを支払わずに使ってもよい。残りを好きな順序で山札の下に置く)

 

 

ミチル ターン5

 

「ドロー!」

 

ミチルは勢いよくカードを引き、そのまま少しだけ得意げに前髪を払った。

いかにも“できる忍者”らしい動きを意識しているのだろうが、どこかふわふわしていて締まりきらない。

 

引いたカードを手札へ加え、そのままじっと見つめる。

数秒の沈黙の後、ふっと口元が緩んだ。

 

「よぉし、こいつを召喚だぁ!」

 

マナゾーンのカードを4枚、ぱしん、と小気味よい音を立ててタップする。

 

「《ゴールド・フラウム》!」

 

 

ゴールド・フラウム コスト4 パワー4500 メカ・デル・ディネロ/メカ・エンジェル・コマンド 光

・ブロッカー

・ヨビニオン(このクリーチャーが召喚で出た時、山札の上から、このクリーチャーよりコストが小さいクリーチャーが出るまで表向きにしてもよい。そのクリーチャーを出す。残りをシャッフルし、山札の下に置く)

・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から1枚をシールド化してもよい。

 

 

「出たときに、ヨビニオン…の効果で山札をめくっていって…」

 

ミチルは山札の上からカードをめくっていく。

1枚、2枚、3枚。

カードが机に置かれるたび、ぺらり、ぺらりと軽い音が部室に響いた。

 

「出た、《アシステイト・アルデッド》を場に出すよ!」

 

 

アシステイト・アルデッド コスト3 パワー2000 メカ・デル・ステラ 闇

・このクリーチャーが出た時、自分の他のメカがあれば、カードを1枚引く。

・自分のメカ・カードを実行するコストを1少なくする。ただしコストは0以下にならない。

・ウルトラ・セイバー:メカ(自分のメカが離れる時、かわりにこのクリーチャーを破壊してもよい)

 

 

「アルデッドの効果でカードを引いて…更にゴールド・フラウムの効果も発動!山札から1枚をシールドに置くよ!」

 

追加されたカードが、裏向きのままシールドゾーンへ滑り込む。

 

「そして!各ターン初めてシールドにカードが置かれたから、94nm4(ガンマ)の効果発動!」

 

ミチルは得意げに鼻を鳴らしながら山札へ手を伸ばす。

 

「メカ・メクレイド5!発動!」

 

山札の上から3枚を確認する。

その視線が、ぴたりと一枚で止まった。

 

「《シェケダン・ドメチアーレ》を出すよ!」

 

 

シェケダン・ドメチアーレ コスト5 パワー5000+ メカ・デル・ディネロ 光

・ブロッカー

・このクリーチャーが出た時、自分の光の、クリーチャーまたはタマシード1つにつき、カードを1枚引いてもよい。

・自分の光の、クリーチャーとタマシードを実行するコストを2少なくする。ただしコストは0以下にならない。

・シビルカウント5:自分の光の、クリーチャーまたはタマシードが合計5つ以上あれば、このクリーチャーのパワーを+1000し、「(トリプル)・ブレイカー」と「このクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体選び、シールド化してもよい」を与える。

 

 

さらに巨大なメカが展開される。

次々と並ぶ機械兵たちによって、ミチルの場は一気に賑やかになっていった。

 

「出たときの効果で光のクリーチャー分だけカードを引くよ!」

 

減るどころか増えていく手札。

コンボが途切れる気配はない。

 

「すごいです部長…!こんな短時間でコンボを…!」

 

気が付けば、ミチルの場には闇と光のメカたちがずらりと並んでいた。

低い駆動音のようなものが響き合い、まるで小さな機械軍団のような迫力を放っている。

 

「そのまま94nm4(ガンマ)でイズナに攻撃だぁ!…っと、効果でシールドを追加するね」

 

「むむむ…中々やりますね。ですが!」

 

イズナの目が鋭くなる。

先ほどまで押されていたはずなのに、その表情には焦りよりも闘志が浮かんでいた。

 

勢いよく手札を引き抜く。

 

「イズナも負けません!《ニンジャ・ストライク》発動です!」

 

「「ニ、ニンジャ・ストライク?」」

 

ミチルとツクヨの声が綺麗に重なる。

 

「相手のクリーチャーが攻撃、またはブロックした時に使える、シノビの必殺技です!《怒流牙(ドルゲ) 佐助の超人(サルトビ・ジャイアント)》を場に出します!」

 

まるで隠れていた忍者が飛び出してくるかのように、クリーチャーが戦場へ現れた。

 

 

怒流牙(ドルゲ) 佐助の超人(サルトビ・ジャイアント) コスト4 パワー3000 ジャイアント/アースイーター/シノビ 水・自然

・ニンジャ・ストライク5(相手のクリーチャーが攻撃、またはブロックした時にマナゾーンにカードが5枚以上あり、この攻撃中にまだニンジャ・ストライクを使用していない場合、このクリーチャーを召喚してもよい。そうした場合、このターンの終わりに山札の下に置く。)

・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引き、その後、自分の手札を1枚捨てる。その後、カードを1枚、自分の墓地からマナゾーンに置く。

 

 

佐助の超人(サルトビ・ジャイアント)の効果でカードを引いて……これを捨てます!そして墓地にあるカードを1枚マナへ!」

 

イズナは淀みなくカードを操る。

だが——墓地へ送られるはずだったカードが、不意に青い水流と共に跳ね上がる。

 

「えっ…墓地に置くんじゃないのぉ?」

 

ミチルがぽかんと口を開ける。

 

「このカード、《斬隠蒼頭龍 バイケン》は、相手のターン中に手札から捨てられるときに場に出せるんです!」

 

 

斬隠蒼頭龍 バイケン コスト6 パワー6000 ポセイディア・ドラゴン/シノビ

・W・ブレイカー

・相手のターン中にこのクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。そうしたら、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。

・自分のシノビの「ニンジャ・ストライク」能力を使った時、カードを1枚引いてもよい。

 

 

「ええっ!?」

 

あまりにも予想外の展開に、ミチルの尻尾がぶわっと膨らんだ。

 

「バイケンの効果で今攻撃している94nm4(ガンマ)を手札に戻します!」

 

鋭い水流が走り、勢いよく体が弾き飛ばされる。

 

「くっ…攻撃できるクリーチャーがいない…ターンエンドだよぉ」

 

するとイズナは、どこか誇らしげに胸を張る。

 

「ターンの終わりに佐助の超人(サルトビ・ジャイアント)を山札の下に置きます!」

 

姿を消すようにカードを山札の下へ滑り込ませるイズナ。

 

「去り際も忍者みたいです…!」

 

 

 

イズナ ターン5

 

 

「ドロー!」

 

イズナは勢いよくカードを引き抜く。

その動きに合わせて尻尾が跳ねた。

 

先ほどまで押され気味だった空気が、一瞬で変わる。

 

「マナをチャージして4コスト!《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》を召喚です!」

 

 

西南の超人(キリノ・ジャイアント) コスト4 パワー3000 ジャイアント/サムライ 自然

・自分のジャイアントの召喚コストを2下げてもよい。ただしコストは0以下にならない。

・セイバー:ジャイアント(自分のジャイアントが破壊されるとき、代わりにこのクリーチャーを破壊してもよい)

 

 

カードが置かれると同時に、巨大な戦士の幻影が卓上へと現れる。

重々しい気配に、ミチルが小さく肩を揺らした。

 

「そして2コスト!軽減してもう一体《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》を召喚!」

 

同じクリーチャーが並び立つ。

 

「どんどんクリーチャーが出てきます…!」

 

「こ、これで4コスト軽減…!?」

 

少し後ろに引くミチル。

だが、イズナの勢いは止まらない。

 

「そして!自身の能力と西南の超人(キリノ・ジャイアント)で軽減して2コスト!《剛撃戦攻 ドルゲーザ》を召喚です!」

 

 

剛撃戦攻 ドルゲーザ コスト8 パワー9000

・シンパシー:自分のジャイアントまたはアースイーター1体につきこのクリーチャーを召喚するコストを1減らしてもよい。

・W・ブレイカー

・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、自分のジャイアント1体につきカードを1枚引く。その後、自分のアースイーター1体につきカードを1枚引く。

 

 

「出た時の効果で、場のジャイアント3体、アースイーター1体で、合計4枚引きます!」

 

イズナはぱぱぱっとカードを引いていく。

減っていたはずの手札が、一瞬で膨れ上がった。

 

「1コスト!再び《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》を召喚!」

 

これで場には四体のジャイアント。

いつの間にか、盤面の数は完全に逆転していた。

 

その時、イズナの目がきらりと輝く。

 

「そして…(グラビティ)・ゼロ発動!ドルゲーザを、《終の忍者(ラスト・ニンジャ) ドルゲユキムラ》に進化です!」

 

 

終の忍者(ラスト・ニンジャ) ドルゲユキムラ コスト8 パワー13000 ジャイアント/アースイーター/シノビ 水・自然

(グラビティ)・ゼロ:バトルゾーンに自分のジャイアントが4体以上あれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。

・進化:自分のジャイアント1体の上に置く。

(トリプル)・ブレイカー

・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、クリーチャーを3体まで、自分のマナゾーンから手札に戻す。その後、自分の手札を3枚まで、タップしてマナゾーンに置く。

 

 

刀を背負った巨大な忍者の幻影が現れ、場を覆うように水流が駆け抜けた。

 

「ええっ!?西南の超人(キリノ・ジャイアント)が3体いても0コストにならないよぉ!?」

 

「そっ…その前に、《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》ではコストを0にできないはず…」

 

驚く二人にイズナは口を開く。

 

「ふっふっふ…(グラビティ)・ゼロという能力の条件を満たせばコストを支払わずに召喚できるのです!このクリーチャーの条件は自分の場にジャイアントが4体以上!既に達成しています!」

 

「なぁんだってぇ!?」

 

思わず後ろに倒れそうになるミチル。

ツクヨが慌てて背中を支える。

 

「ドルゲユキムラの効果でマナゾーンからカードを手札に戻します!そしてカードを手札からマナに置き!」

 

イズナの手は淀みなく動き続ける。

 

そして――

 

イズナが、再び一枚のカードを抜き出す。

ミチルの視線も自然とそこへ吸い寄せられた。

 

「まっ…まさかぁ…」

 

「これぞ忍法、分身の術!《西南の超人(キリノ・ジャイアント)》を、《終の忍者(ラスト・ニンジャ) ドルゲユキムラ》に進化です!」

 

「すっ…すごい…」

 

ミチルを支えていたツクヨも、思わず息を呑む。

二体の巨大な忍者が並ぶ光景は、動画や映画にも負けないほどの迫力があった。

 

「攻撃に移りますよー!ドルゲユキムラで部長に攻撃!」

 

イズナが勢いよく前へ指を向ける。

 

「むむむっ…!《ゴールド・フラウム》でブロックするよ…!」

 

少し悩みながらも、ミチルはゴールド・フラウムに触れた。

だが、その瞬間。

 

「部長!今、ブロックしましたね!」

 

「えっ…うん」

 

食い気味にイズナが反応する。

その顔には、してやったりと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。

 

「再びニンジャ・ストライクを発動します!《威牙の幻ハンゾウ》!」

 

 

威牙の幻ハンゾウ コスト7 パワー5000 デーモン・コマンド/シノビ 闇

・ニンジャ・ストライク 7

・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーを-6000する。

・このクリーチャーが破壊される時、自分のマナゾーンに闇のカードが1枚でもあれば、かわりに自分のシールドを1つ墓地に置いてもよい。

 

 

黒い煙と共に、カエルのような忍者が場へ現れる。

 

「そうでした…!ニンジャ・ストライクはブロックされたときにも使える…!」

 

ツクヨがはっとしたように声を上げる。

 

「ハンゾウの効果で《アシステイト・アルデッド》をー6000!そして《ゴールド・フラウム》もバトルで破壊です!」

 

一気に盤面から2体のクリーチャーが離れる。

 

「そして!バイケンの効果でニンジャ・ストライクを使った時に1枚引きます!続いて2体目のドルゲユキムラでシールドを攻撃!」

 

「むむむ…《シェケダン・ドメチアーレ》はブロッカーだけど、そうするとまたニンジャ・ストライクがあるかもしれない…ここは受けるよ!」

 

ミチルは唇を尖らせながらも、カードに触れるのをやめた。

 

次の瞬間。

勢いよく三枚のシールドが砕け散る。

 

「くうっ!」

 

ミチルは慌ててカードを手札へ加える。

 

その中の一枚を見た瞬間、目が大きく開かれた。

 

(こ、このカードはぁ…!)

 

先ほど説明を受けたばかりの、切り札級のカード。

だが、ミチルはすぐにはそれを出さない。

 

ちらりと盤面を見て、それとは別のカードを引き抜いた。

 

「シ、(シールド)・トリガー!《忍蛇の聖沌 c0br4(コブラ)》!」

 

 

忍蛇の聖沌 c0br4(コブラ) コスト6 パワー5000 メカ・デル・ステラ/シノビ 闇

(シールド)・トリガー

・ブロッカー

・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から2枚を墓地に置く。その後、コスト5以下のクリーチャーを1体、自分の墓地から出す。

・相手のターンにこのクリーチャーが出た時、このターンに2つ以上自分のシールドがブレイクされていなければ、このクリーチャーを破壊する。

 

 

c0br4(コブラ)の効果で山札から墓地にカードを置いて…さっき破壊された《ゴールド・フラウム》を復活させるよ!そして《ゴールド・フラウム》の効果でシールドを追加!」

 

シールドが少し回復し、心の余裕が少しできる。

 

「続いてバイケンで攻撃です!」

 

それを聞いた瞬間。

 

ミチルの口元が、にやりと吊り上がる。

 

「ふっふっふ…イズナ!こっちも必殺技を使わせてもらうよぉ!」

 

「なっ…!」

 

「相手のクリーチャーが攻撃またはブロックした時!《ニンジャ・チェンジ》発動!」

 

ミチルは、ついさっき出たばかりのc0br4(コブラ)を手札へ戻す。

そして、待ってましたと言わんばかりの勢いでカードを叩きつけた。

 

「《(セント)カオスマントラ》を召喚だぁ!」

 

 

(セント)カオスマントラ コスト7 パワー9000 メカ・デル・ステラ/シノビ 光

・ニンジャ・チェンジ5(相手のクリーチャーが攻撃またはブロックした時、この攻撃中に自分が「ニンジャ」能力を使っていなければ、手札にあるこのクリーチャーと、自分のコスト5以上でメカまたはシノビのクリーチャー1体を入れ替えてもよい)

(ダブル)・ブレイカー

・このクリーチャーが出た時または攻撃する時、相手のクリーチャーをすべてタップする。

・相手のクリーチャーは出たターンに攻撃できない。

 

 

まばゆい光が場を包み込む。

現れた巨大なシノビの威圧感に、イズナの尻尾がぴくりと揺れた。

 

「効果でイズナのクリーチャーを全てタップ!」

 

「で、ですが!バイケンの攻撃は続いていますよ!」

 

「ここもあえてブロックしない!シールドで受けるよ!」

 

バイケンの刃がシールドを砕く。

乾いた音と共に二枚のカードが弾け、ミチルの手札へ加わった。

 

(シールド)・トリガーは無いよぉ」

 

「ターンエンドです!」

 

言い切ったイズナは、ふぅっと大きく息を吐いた。

 

だがその表情は苦しそうではなく、むしろどこか楽しそうだった。

 

 

ミチル ターン6

 

「ドロー!」

 

ミチルはカードを引きながら、ちらりとイズナの盤面を見る。

 

二体の《ドルゲユキムラ》。

残されたジャイアント達。

そして、イズナの手札。

 

先ほどの怒涛の展開がまだ頭に焼き付いていた。

 

(うーん…さっきドルゲユキムラの効果でマナから色んなカードを回収してた…多分使ってくるよねぇ…)

 

軽く唇を尖らせながら、手札をぱらぱらと並べ替える。

 

だがその時。

他のカードとは少し違う様子のカードが目に入った。

 

 

ミチルの耳がぴくりと動く。

 

シールドは残り3枚。

相手の場には大型クリーチャー。

 

普通に戦えば、次のターンで押し切られる。

 

けれど――

 

手札と盤面を何度も見比べた瞬間、一本の細い勝ち筋が浮かび上がった。

 

それは、かなり危うい道だった。

 

必要なカードがめくれなければ終わり。

途中で一つでも噛み合わなければ、そのまま押し潰される。

 

それでも。

 

ミチルの口元が、にやりと吊り上がった。

 

(だけど…勝つにはこれしかない…!忍者は最後まで諦めない…!)

 

「まずは1コスト!《シェケダン・ドメチアーレ》の効果で軽減してさっきの《忍鎖の聖沌 94nm4(ガンマ)》を召喚!そして、更に1コストで《光器アメリア》を召喚!」

 

 

光器アメリア コスト2 パワー1000 メカ・デル・ソル 光

・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から1枚をシールド化する。次の自分のターンの始めに、シールドを1枚手札に加える。

 

 

「アメリアの効果でシールド追加!そして更に94nm4(ガンマ)の効果でメクレイド!」

 

ミチルは祈るように山札へ手を伸ばす。

 

(頼む…!いてちょうだい…!)

 

そう願いながら山札の上から3枚をめくる。

恐る恐る見ると、そこに確かに欲しかったクリーチャーがいた。

 

「来た!《ゴールド・フラウム》を召喚!」

 

「ということは…!」

 

ツクヨが目を見開く。

ミチルは得意げに頷いた。

 

「《ゴールド・フラウム》のヨビニオン発動!山札をめくって…」

 

再びカードがめくられていく。

だが、ここも外せば終わりだ。

 

ミチルの尻尾が、そわそわと左右に揺れる。

 

 

そして数枚目。

ついに目的のカードが姿を現した。

 

「来た来た!《光器アメリア》を出すよ!《ゴールド・フラウム》の効果と合わせてシールドを2枚追加!」

 

一気にシールドが増えていく。

 

砕かれ続けていた守りが、今度は逆に積み上がっていった。

 

「もう1体《光器アメリア》を召喚!更にシールドを追加して…!これでシールドは7枚!」

 

「7枚…すごいですが、イズナちゃんの場には…」

 

ツクヨが不安そうに盤面を見る。

2体のドルゲユキムラは依然として脅威だ。

 

だが、ミチルは自信満々に笑った。

 

「ふふん!こいつが全部解決してくれるよ!最後の2コストを使ってぇ……」

 

勢いよくカードを叩きつける。

 

「《ハイパー・エンゲルス》を召喚!」

 

 

ハイパー・エンゲルス コスト4 パワー4000 メカ・エンジェル・コマンド/超化獣

・このクリーチャーの各ブレイクの前に、自分の山札の上から1枚をシールド化してもよい。

・自分のターンの終わりに、自分のクリーチャーを3体までアンタップする。

・ハイパー化:自分の他のクリーチャーを1体タップする。(自分のメインステップ中に、ハイパーモードを解放できる。ハイパーモードは次の自分のターンのはじめまで続く)

 

ハイパー化能力

パワー9500

・W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする)

・自分のシールドが7つ以上あれば、自分のクリーチャーは離れない。

 

 

「ハ、ハイパー化とは…?」

 

ツクヨが首をかしげる。

 

「自分のクリーチャーを1体タップすることでハイパー化を持つクリーチャーを強化できる能力です!強化後は下に書いてる能力を得ますよ!」

 

イズナがそう説明するのと同時に、ツクヨは《ハイパー・エンゲルス》の効果を見る。

 

「な、なるほど!シールドを増やしていたのはこの効果を発動させるため…!」

 

「そう!《光器アメリア》をタップして《ハイパー・エンゲルス》をハイパー化させるよ!これで私のクリーチャーは場を離れない!もうニンジャ・ストライクは怖くないよ!」

 

光が弾け、《ハイパー・エンゲルス》の姿が変化する。

場にいた光のクリーチャー達も、それに呼応するように輝きを増した。

 

「そして!私の光クリーチャーは6体!《シェケダン・ドメチアーレ》が強化される!」

 

「パワー15000!ドルゲユキムラには届きませんが、凄いパワーです…!」

 

「よーし!《シェケダン・ドメチアーレ》でイズナに攻撃!そして攻撃時効果でドルゲユキムラを1体シールドに送るよ!」

 

「むむっ…!」

 

巨大な光の車が前へ踏み出す。

ライトがまぶしく光り、それに当てられたドルゲユキムラはヒカリとなって消えた。

 

そしてそのままシールドに向かって突撃する。

その一撃に合わせて、イズナのシールドが三枚まとめて砕け散った。

 

乾いた音と共にカードが手札へ加わる。

 

(シールド)・トリガー発動!《ドンドン吸い込むナウ》!」

 

 

ドンドン吸い込むナウ コスト4 呪文 水

(シールド)・トリガー

・自分の山札の上から5枚を表向きにする。その中からカードを1枚相手に見せてから手札に加えてもよい。そうして加えたカードが火または自然のクリーチャーなら相手のクリーチャーを1体手札に戻してもよい。

 

 

イズナは諦めず、すぐに山札へ手を伸ばす。

 

「山札の上から5枚を見て…《疾封怒闘(スパイラルアクセル)キューブリック》を回収します!」

 

カードを掲げるイズナ。

 

 

疾封怒闘(スパイラルアクセル)キューブリック コスト7 パワー6000 アウトレイジ 火・水

・W・ブレイカー

・自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーに「スピードアタッカー」を与える。

・このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれた時、自分のマナゾーンに水のカードが3枚以上あれば、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。

 

 

だが、その後小さく肩を落とした。

 

「火のカードを回収したので《ドンドン吸い込むナウ》で戻したいところですが…《ハイパー・エンゲルス》の効果でできないですね…」

 

せっかく引き当てた反撃の札。

しかし今のミチルの盤面は、それすら許さない。

 

「まだまだー!カオスマントラでシールドを攻撃!」

 

光の刃が振り下ろされる。

残っていた2枚のシールドが同時に砕け散った。

 

 

イズナは祈りながらシールドを確認する。

 

 

一枚。

そしてもう一枚。

 

そこには確かに、(シールド)・トリガーの文字があった。

 

 

 

だが――

 

(駄目です…!)

 

このカードでは、止められない。

 

 

 

「無いです…!」

 

悔しそうにイズナが告げる。

 

その言葉を聞いた瞬間。

ツクヨの視線がミチルへ向く。

 

「ということは…!」

 

ミチルもまた、まっすぐイズナを見つめ返した。

 

"勝てる"

 

そんな確信が胸の中で膨らんでいた。

 

 

「《ゴールド・フラウム》で――」

 

 

ミチルはゆっくりとカードを前へ出す。

 

 

「ダイレクトアタックだぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい!すごいです部長!」

 

イズナが尻尾をぶんぶんと振りながら、目を輝かせる。

 

「まだ数回しかやっていないのに、こんなに上手だったとは……!」

 

「そ、そぉ……?なんか照れるなぁ……」

 

ミチルは頬をかきながら視線を逸らす。

だが、その尻尾はどこか嬉しそうに左右へ揺れていた。

 

「こ、これなら再生数も伸びるかもしれないですね……!」

 

「次はツクヨ殿もやってみましょう!こちらをどうぞ!」

 

「は、はい!」

 

ツクヨがおずおずとカードを受け取る。

動画撮影のために始まったはずのカードゲームだったが、気付けば三人とも夢中になっていた。

 

 

百鬼夜行の離れ校舎の一室には、その日も夕暮れまで楽しそうな声が響き続けていた。





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