ここからは各部活の番外編です。
「うーん……」
一人の少女が、スマホを見つめながら唸っていた。
ふさふさの尻尾が、落ち着きなく左右に揺れる。
何かを悩むように動いたかと思えば、ぴたりと止まり、またゆっくり揺れ始めた。
「部長!おはようございます!」
「お、おはようございます……」
背後から聞こえてきた二つの声に、ミチルはゆっくり振り返る。
そこには、いつもの二人――イズナとツクヨが立っていた。
「イズナ、ツクヨ、おはよぉ~」
いつも通りの、どこか気の抜けた声で返す。
だが、その様子が普段と少し違って見えたのだろうか。
「部長?……あまり元気が無いように見えますが、どこか具合でも……?」
ツクヨが心配そうに首を傾げる。
「いやぁ、そぉいうわけじゃないんだけどさぁ……」
ミチルはそう言いながら立ち上がり、スマホの画面を二人へ向けた。
「これは……昨日投稿した動画、ですか?」
「『変わり身の術のやり方講座』ですね!イズナ、頑張りました!」
イズナがぴょんぴょんと跳ねる。
「それで…こちらの動画が、どうかなさったのですか?」
「どうかしたっていうかぁ……全然伸びないんだよねぇ……」
ミチルは大きく肩を落とした。
「結構頑張って撮ったんだけどなぁ……」
「むぅ……」
イズナも難しい顔をする。
「どぉしようかなぁ……」
すると、イズナがぴんっと耳を立てた。
「はい!イズナに考えがあります!」
「おぉ?」
「以前、ドレスを着て撮影した動画、あれはたくさん再生されていました!」
「そ、そういえばそうですね…!」
「つまり!流行しているものと忍術を組み合わせれば、もっと見てもらえる可能性があります!」
勢いよく語るイズナに、ミチルは「なるほどぉ……?」と曖昧に頷く。
「でもぉ、あれって忍術に興味があるっていうより、皆ドレスを見てたって感じじゃない?」
「そこも踏まえて、丁度いいものがあります!」
イズナは得意げに胸を張ると、ごそごそと懐を探り始めた。
「先日、主殿から頂いたのですが――こちらです!」
取り出されたのは、小さなカードの箱だった。
「これってぇ……?」
「最近流行りの、『デュエル・マスターズ』というカードゲームです!」
イズナはきらきらした目で続ける。
「デュエル・マスターズ……?」
ミチルは箱を受け取りながら、小さく首を傾げる。
「はい!このゲームには『シノビ』というカードがあるんです!」
「シノビ…忍者、ですね」
(…そういえばこの前、修行部に行った時にカエデが話してたっけ)
「調べてみたところ、このゲームの対戦動画はかなり人気があるようです!」
イズナはさらに一歩前へ出る。
「なので!イズナ達もデュエマの動画を撮影してみてはいかがでしょう!」
尻尾をふりふり、と横に揺らすイズナ。
「で、でもぉ、私ルールとか全然わかんないよぉ?」
「主殿からルールは教えてもらったので、イズナにお任せください!」
イズナに押されるがままルールなどを確認し、机の上にカードを並べる。
「イズナちゃん、これでいいん…でしたっけ?」
「はい!問題ないです!」
机を二つ並べた簡易的なデュエルテーブルの上で、二人が向かい合う。
「じゃ、まずは一回試しにやってみよっかぁ」
「はい!部長!よろしくお願いします!」
数ターン後
ミチル 手札4 マナ4 シールド5 場:《忍鎖の聖沌
イズナ 手札3 マナ6 シールド5 場:無し
忍鎖の聖沌
・このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をシールド化してもよい。
・各ターンに一度、自分のシールドゾーンにカードを置いた時、メカ・メクレイド5する。(メカ・メクレイド5:自分の山札の上から3枚を見る。その中から、コスト5以下のメカを1枚、コストを支払わずに使ってもよい。残りを好きな順序で山札の下に置く)
ミチル ターン5
「ドロー!」
ミチルは勢いよくカードを引き、そのまま少しだけ得意げに前髪を払った。
いかにも“できる忍者”らしい動きを意識しているのだろうが、どこかふわふわしていて締まりきらない。
引いたカードを手札へ加え、そのままじっと見つめる。
数秒の沈黙の後、ふっと口元が緩んだ。
「よぉし、こいつを召喚だぁ!」
マナゾーンのカードを4枚、ぱしん、と小気味よい音を立ててタップする。
「《ゴールド・フラウム》!」
ゴールド・フラウム コスト4 パワー4500 メカ・デル・ディネロ/メカ・エンジェル・コマンド 光
・ブロッカー
・ヨビニオン(このクリーチャーが召喚で出た時、山札の上から、このクリーチャーよりコストが小さいクリーチャーが出るまで表向きにしてもよい。そのクリーチャーを出す。残りをシャッフルし、山札の下に置く)
・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から1枚をシールド化してもよい。
「出たときに、ヨビニオン…の効果で山札をめくっていって…」
ミチルは山札の上からカードをめくっていく。
1枚、2枚、3枚。
カードが机に置かれるたび、ぺらり、ぺらりと軽い音が部室に響いた。
「出た、《アシステイト・アルデッド》を場に出すよ!」
アシステイト・アルデッド コスト3 パワー2000 メカ・デル・ステラ 闇
・このクリーチャーが出た時、自分の他のメカがあれば、カードを1枚引く。
・自分のメカ・カードを実行するコストを1少なくする。ただしコストは0以下にならない。
・ウルトラ・セイバー:メカ(自分のメカが離れる時、かわりにこのクリーチャーを破壊してもよい)
「アルデッドの効果でカードを引いて…更にゴールド・フラウムの効果も発動!山札から1枚をシールドに置くよ!」
追加されたカードが、裏向きのままシールドゾーンへ滑り込む。
「そして!各ターン初めてシールドにカードが置かれたから、
ミチルは得意げに鼻を鳴らしながら山札へ手を伸ばす。
「メカ・メクレイド5!発動!」
山札の上から3枚を確認する。
その視線が、ぴたりと一枚で止まった。
「《シェケダン・ドメチアーレ》を出すよ!」
シェケダン・ドメチアーレ コスト5 パワー5000+ メカ・デル・ディネロ 光
・ブロッカー
・このクリーチャーが出た時、自分の光の、クリーチャーまたはタマシード1つにつき、カードを1枚引いてもよい。
・自分の光の、クリーチャーとタマシードを実行するコストを2少なくする。ただしコストは0以下にならない。
・シビルカウント5:自分の光の、クリーチャーまたはタマシードが合計5つ以上あれば、このクリーチャーのパワーを+1000し、「
さらに巨大なメカが展開される。
次々と並ぶ機械兵たちによって、ミチルの場は一気に賑やかになっていった。
「出たときの効果で光のクリーチャー分だけカードを引くよ!」
減るどころか増えていく手札。
コンボが途切れる気配はない。
「すごいです部長…!こんな短時間でコンボを…!」
気が付けば、ミチルの場には闇と光のメカたちがずらりと並んでいた。
低い駆動音のようなものが響き合い、まるで小さな機械軍団のような迫力を放っている。
「そのまま
「むむむ…中々やりますね。ですが!」
イズナの目が鋭くなる。
先ほどまで押されていたはずなのに、その表情には焦りよりも闘志が浮かんでいた。
勢いよく手札を引き抜く。
「イズナも負けません!《ニンジャ・ストライク》発動です!」
「「ニ、ニンジャ・ストライク?」」
ミチルとツクヨの声が綺麗に重なる。
「相手のクリーチャーが攻撃、またはブロックした時に使える、シノビの必殺技です!《
まるで隠れていた忍者が飛び出してくるかのように、クリーチャーが戦場へ現れた。
・ニンジャ・ストライク5(相手のクリーチャーが攻撃、またはブロックした時にマナゾーンにカードが5枚以上あり、この攻撃中にまだニンジャ・ストライクを使用していない場合、このクリーチャーを召喚してもよい。そうした場合、このターンの終わりに山札の下に置く。)
・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、カードを1枚引き、その後、自分の手札を1枚捨てる。その後、カードを1枚、自分の墓地からマナゾーンに置く。
「
イズナは淀みなくカードを操る。
だが——墓地へ送られるはずだったカードが、不意に青い水流と共に跳ね上がる。
「えっ…墓地に置くんじゃないのぉ?」
ミチルがぽかんと口を開ける。
「このカード、《斬隠蒼頭龍 バイケン》は、相手のターン中に手札から捨てられるときに場に出せるんです!」
斬隠蒼頭龍 バイケン コスト6 パワー6000 ポセイディア・ドラゴン/シノビ
・W・ブレイカー
・相手のターン中にこのクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。そうしたら、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
・自分のシノビの「ニンジャ・ストライク」能力を使った時、カードを1枚引いてもよい。
「ええっ!?」
あまりにも予想外の展開に、ミチルの尻尾がぶわっと膨らんだ。
「バイケンの効果で今攻撃している
鋭い水流が走り、勢いよく体が弾き飛ばされる。
「くっ…攻撃できるクリーチャーがいない…ターンエンドだよぉ」
するとイズナは、どこか誇らしげに胸を張る。
「ターンの終わりに
姿を消すようにカードを山札の下へ滑り込ませるイズナ。
「去り際も忍者みたいです…!」
イズナ ターン5
「ドロー!」
イズナは勢いよくカードを引き抜く。
その動きに合わせて尻尾が跳ねた。
先ほどまで押され気味だった空気が、一瞬で変わる。
「マナをチャージして4コスト!《
・自分のジャイアントの召喚コストを2下げてもよい。ただしコストは0以下にならない。
・セイバー:ジャイアント(自分のジャイアントが破壊されるとき、代わりにこのクリーチャーを破壊してもよい)
カードが置かれると同時に、巨大な戦士の幻影が卓上へと現れる。
重々しい気配に、ミチルが小さく肩を揺らした。
「そして2コスト!軽減してもう一体《
同じクリーチャーが並び立つ。
「どんどんクリーチャーが出てきます…!」
「こ、これで4コスト軽減…!?」
少し後ろに引くミチル。
だが、イズナの勢いは止まらない。
「そして!自身の能力と
剛撃戦攻 ドルゲーザ コスト8 パワー9000
・シンパシー:自分のジャイアントまたはアースイーター1体につきこのクリーチャーを召喚するコストを1減らしてもよい。
・W・ブレイカー
・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、自分のジャイアント1体につきカードを1枚引く。その後、自分のアースイーター1体につきカードを1枚引く。
「出た時の効果で、場のジャイアント3体、アースイーター1体で、合計4枚引きます!」
イズナはぱぱぱっとカードを引いていく。
減っていたはずの手札が、一瞬で膨れ上がった。
「1コスト!再び《
これで場には四体のジャイアント。
いつの間にか、盤面の数は完全に逆転していた。
その時、イズナの目がきらりと輝く。
「そして…
・
・進化:自分のジャイアント1体の上に置く。
・
・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、クリーチャーを3体まで、自分のマナゾーンから手札に戻す。その後、自分の手札を3枚まで、タップしてマナゾーンに置く。
刀を背負った巨大な忍者の幻影が現れ、場を覆うように水流が駆け抜けた。
「ええっ!?
「そっ…その前に、《
驚く二人にイズナは口を開く。
「ふっふっふ…
「なぁんだってぇ!?」
思わず後ろに倒れそうになるミチル。
ツクヨが慌てて背中を支える。
「ドルゲユキムラの効果でマナゾーンからカードを手札に戻します!そしてカードを手札からマナに置き!」
イズナの手は淀みなく動き続ける。
そして――
イズナが、再び一枚のカードを抜き出す。
ミチルの視線も自然とそこへ吸い寄せられた。
「まっ…まさかぁ…」
「これぞ忍法、分身の術!《
「すっ…すごい…」
ミチルを支えていたツクヨも、思わず息を呑む。
二体の巨大な忍者が並ぶ光景は、動画や映画にも負けないほどの迫力があった。
「攻撃に移りますよー!ドルゲユキムラで部長に攻撃!」
イズナが勢いよく前へ指を向ける。
「むむむっ…!《ゴールド・フラウム》でブロックするよ…!」
少し悩みながらも、ミチルはゴールド・フラウムに触れた。
だが、その瞬間。
「部長!今、ブロックしましたね!」
「えっ…うん」
食い気味にイズナが反応する。
その顔には、してやったりと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。
「再びニンジャ・ストライクを発動します!《威牙の幻ハンゾウ》!」
威牙の幻ハンゾウ コスト7 パワー5000 デーモン・コマンド/シノビ 闇
・ニンジャ・ストライク 7
・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーを-6000する。
・このクリーチャーが破壊される時、自分のマナゾーンに闇のカードが1枚でもあれば、かわりに自分のシールドを1つ墓地に置いてもよい。
黒い煙と共に、カエルのような忍者が場へ現れる。
「そうでした…!ニンジャ・ストライクはブロックされたときにも使える…!」
ツクヨがはっとしたように声を上げる。
「ハンゾウの効果で《アシステイト・アルデッド》をー6000!そして《ゴールド・フラウム》もバトルで破壊です!」
一気に盤面から2体のクリーチャーが離れる。
「そして!バイケンの効果でニンジャ・ストライクを使った時に1枚引きます!続いて2体目のドルゲユキムラでシールドを攻撃!」
「むむむ…《シェケダン・ドメチアーレ》はブロッカーだけど、そうするとまたニンジャ・ストライクがあるかもしれない…ここは受けるよ!」
ミチルは唇を尖らせながらも、カードに触れるのをやめた。
次の瞬間。
勢いよく三枚のシールドが砕け散る。
「くうっ!」
ミチルは慌ててカードを手札へ加える。
その中の一枚を見た瞬間、目が大きく開かれた。
(こ、このカードはぁ…!)
先ほど説明を受けたばかりの、切り札級のカード。
だが、ミチルはすぐにはそれを出さない。
ちらりと盤面を見て、それとは別のカードを引き抜いた。
「シ、
忍蛇の聖沌
・
・ブロッカー
・このクリーチャーが出た時、自分の山札の上から2枚を墓地に置く。その後、コスト5以下のクリーチャーを1体、自分の墓地から出す。
・相手のターンにこのクリーチャーが出た時、このターンに2つ以上自分のシールドがブレイクされていなければ、このクリーチャーを破壊する。
「
シールドが少し回復し、心の余裕が少しできる。
「続いてバイケンで攻撃です!」
それを聞いた瞬間。
ミチルの口元が、にやりと吊り上がる。
「ふっふっふ…イズナ!こっちも必殺技を使わせてもらうよぉ!」
「なっ…!」
「相手のクリーチャーが攻撃またはブロックした時!《ニンジャ・チェンジ》発動!」
ミチルは、ついさっき出たばかりの
そして、待ってましたと言わんばかりの勢いでカードを叩きつけた。
「《
・ニンジャ・チェンジ5(相手のクリーチャーが攻撃またはブロックした時、この攻撃中に自分が「ニンジャ」能力を使っていなければ、手札にあるこのクリーチャーと、自分のコスト5以上でメカまたはシノビのクリーチャー1体を入れ替えてもよい)
・
・このクリーチャーが出た時または攻撃する時、相手のクリーチャーをすべてタップする。
・相手のクリーチャーは出たターンに攻撃できない。
まばゆい光が場を包み込む。
現れた巨大なシノビの威圧感に、イズナの尻尾がぴくりと揺れた。
「効果でイズナのクリーチャーを全てタップ!」
「で、ですが!バイケンの攻撃は続いていますよ!」
「ここもあえてブロックしない!シールドで受けるよ!」
バイケンの刃がシールドを砕く。
乾いた音と共に二枚のカードが弾け、ミチルの手札へ加わった。
「
「ターンエンドです!」
言い切ったイズナは、ふぅっと大きく息を吐いた。
だがその表情は苦しそうではなく、むしろどこか楽しそうだった。
ミチル ターン6
「ドロー!」
ミチルはカードを引きながら、ちらりとイズナの盤面を見る。
二体の《ドルゲユキムラ》。
残されたジャイアント達。
そして、イズナの手札。
先ほどの怒涛の展開がまだ頭に焼き付いていた。
(うーん…さっきドルゲユキムラの効果でマナから色んなカードを回収してた…多分使ってくるよねぇ…)
軽く唇を尖らせながら、手札をぱらぱらと並べ替える。
だがその時。
他のカードとは少し違う様子のカードが目に入った。
ミチルの耳がぴくりと動く。
シールドは残り3枚。
相手の場には大型クリーチャー。
普通に戦えば、次のターンで押し切られる。
けれど――
手札と盤面を何度も見比べた瞬間、一本の細い勝ち筋が浮かび上がった。
それは、かなり危うい道だった。
必要なカードがめくれなければ終わり。
途中で一つでも噛み合わなければ、そのまま押し潰される。
それでも。
ミチルの口元が、にやりと吊り上がった。
(だけど…勝つにはこれしかない…!忍者は最後まで諦めない…!)
「まずは1コスト!《シェケダン・ドメチアーレ》の効果で軽減してさっきの《忍鎖の聖沌
光器アメリア コスト2 パワー1000 メカ・デル・ソル 光
・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から1枚をシールド化する。次の自分のターンの始めに、シールドを1枚手札に加える。
「アメリアの効果でシールド追加!そして更に
ミチルは祈るように山札へ手を伸ばす。
(頼む…!いてちょうだい…!)
そう願いながら山札の上から3枚をめくる。
恐る恐る見ると、そこに確かに欲しかったクリーチャーがいた。
「来た!《ゴールド・フラウム》を召喚!」
「ということは…!」
ツクヨが目を見開く。
ミチルは得意げに頷いた。
「《ゴールド・フラウム》のヨビニオン発動!山札をめくって…」
再びカードがめくられていく。
だが、ここも外せば終わりだ。
ミチルの尻尾が、そわそわと左右に揺れる。
そして数枚目。
ついに目的のカードが姿を現した。
「来た来た!《光器アメリア》を出すよ!《ゴールド・フラウム》の効果と合わせてシールドを2枚追加!」
一気にシールドが増えていく。
砕かれ続けていた守りが、今度は逆に積み上がっていった。
「もう1体《光器アメリア》を召喚!更にシールドを追加して…!これでシールドは7枚!」
「7枚…すごいですが、イズナちゃんの場には…」
ツクヨが不安そうに盤面を見る。
2体のドルゲユキムラは依然として脅威だ。
だが、ミチルは自信満々に笑った。
「ふふん!こいつが全部解決してくれるよ!最後の2コストを使ってぇ……」
勢いよくカードを叩きつける。
「《ハイパー・エンゲルス》を召喚!」
ハイパー・エンゲルス コスト4 パワー4000 メカ・エンジェル・コマンド/超化獣
・このクリーチャーの各ブレイクの前に、自分の山札の上から1枚をシールド化してもよい。
・自分のターンの終わりに、自分のクリーチャーを3体までアンタップする。
・ハイパー化:自分の他のクリーチャーを1体タップする。(自分のメインステップ中に、ハイパーモードを解放できる。ハイパーモードは次の自分のターンのはじめまで続く)
ハイパー化能力
パワー9500
・W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする)
・自分のシールドが7つ以上あれば、自分のクリーチャーは離れない。
「ハ、ハイパー化とは…?」
ツクヨが首をかしげる。
「自分のクリーチャーを1体タップすることでハイパー化を持つクリーチャーを強化できる能力です!強化後は下に書いてる能力を得ますよ!」
イズナがそう説明するのと同時に、ツクヨは《ハイパー・エンゲルス》の効果を見る。
「な、なるほど!シールドを増やしていたのはこの効果を発動させるため…!」
「そう!《光器アメリア》をタップして《ハイパー・エンゲルス》をハイパー化させるよ!これで私のクリーチャーは場を離れない!もうニンジャ・ストライクは怖くないよ!」
光が弾け、《ハイパー・エンゲルス》の姿が変化する。
場にいた光のクリーチャー達も、それに呼応するように輝きを増した。
「そして!私の光クリーチャーは6体!《シェケダン・ドメチアーレ》が強化される!」
「パワー15000!ドルゲユキムラには届きませんが、凄いパワーです…!」
「よーし!《シェケダン・ドメチアーレ》でイズナに攻撃!そして攻撃時効果でドルゲユキムラを1体シールドに送るよ!」
「むむっ…!」
巨大な光の車が前へ踏み出す。
ライトがまぶしく光り、それに当てられたドルゲユキムラはヒカリとなって消えた。
そしてそのままシールドに向かって突撃する。
その一撃に合わせて、イズナのシールドが三枚まとめて砕け散った。
乾いた音と共にカードが手札へ加わる。
「
ドンドン吸い込むナウ コスト4 呪文 水
・
・自分の山札の上から5枚を表向きにする。その中からカードを1枚相手に見せてから手札に加えてもよい。そうして加えたカードが火または自然のクリーチャーなら相手のクリーチャーを1体手札に戻してもよい。
イズナは諦めず、すぐに山札へ手を伸ばす。
「山札の上から5枚を見て…《
カードを掲げるイズナ。
・W・ブレイカー
・自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーに「スピードアタッカー」を与える。
・このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれた時、自分のマナゾーンに水のカードが3枚以上あれば、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
だが、その後小さく肩を落とした。
「火のカードを回収したので《ドンドン吸い込むナウ》で戻したいところですが…《ハイパー・エンゲルス》の効果でできないですね…」
せっかく引き当てた反撃の札。
しかし今のミチルの盤面は、それすら許さない。
「まだまだー!カオスマントラでシールドを攻撃!」
光の刃が振り下ろされる。
残っていた2枚のシールドが同時に砕け散った。
イズナは祈りながらシールドを確認する。
一枚。
そしてもう一枚。
そこには確かに、
だが――
(駄目です…!)
このカードでは、止められない。
「無いです…!」
悔しそうにイズナが告げる。
その言葉を聞いた瞬間。
ツクヨの視線がミチルへ向く。
「ということは…!」
ミチルもまた、まっすぐイズナを見つめ返した。
"勝てる"
そんな確信が胸の中で膨らんでいた。
「《ゴールド・フラウム》で――」
ミチルはゆっくりとカードを前へ出す。
「ダイレクトアタックだぁ!」
「すごい!すごいです部長!」
イズナが尻尾をぶんぶんと振りながら、目を輝かせる。
「まだ数回しかやっていないのに、こんなに上手だったとは……!」
「そ、そぉ……?なんか照れるなぁ……」
ミチルは頬をかきながら視線を逸らす。
だが、その尻尾はどこか嬉しそうに左右へ揺れていた。
「こ、これなら再生数も伸びるかもしれないですね……!」
「次はツクヨ殿もやってみましょう!こちらをどうぞ!」
「は、はい!」
ツクヨがおずおずとカードを受け取る。
動画撮影のために始まったはずのカードゲームだったが、気付けば三人とも夢中になっていた。
百鬼夜行の離れ校舎の一室には、その日も夕暮れまで楽しそうな声が響き続けていた。