あのぬいぐるみの言った通り進むと、本当に体育館の扉らしきものがあった。
……何となく、少し開くのに躊躇してしまう。
扉を開ける時にそこそこ力を必要とするのもそうだが、この先にどんな人がいるか全く分からないというのも大きいように思う。
けれど、ここで立ち止まっていても仕方ない。
飛び込むような気持ちで、私は目の前の少し重たい扉を開いた。
体育館では既に何人もの高校生らしき人達が、何やらバラバラに話している様子だった。
その中の1人──桃色の和装にスカートの少女が、私に気付いたらしく走り寄ってきた。
「初めましてっ! 君も、
「うん、そうだけど……。ということは、君も?」
跳ねるように話す彼女は、私の言葉を聞くと納得したような顔をした。
「うーん、やっぱりそうなんだね……。実はここにいる人たち、全員そうなんだよね。君が16人目だから、これで今年の新入生の人数と同じかなっ」
「え? 全員が?」
正直驚いた。私だけなら偶然で済むかもしれないけれど、16人、それもこの場にいる全員が新入生というのは偶然では済まない話になってくる。
「じゃあ本当に、私で最後だったってことか。……もしかして、待たせちゃってた?」
「いや、そんなことないよ! 今はとりあえず自己紹介タイムってことにしてあるんだっ。ほら、あの白黒のぬいぐるみに『挨拶してろ』みたいなこと言われなかった?」
そういえば、言われたような気もする。あまりの展開の混沌っぷりに、頭が追いついてなかったようだ。
……というか、この人の顔。どこかで見たような気がするんだけど……。
「その自己紹介タイムもついさっき始まったとこだから……、実質誤差だねっ! てことで互いに挨拶しない? お名前教えてほしいなっ!」
結構積極的に来るタイプの人みたいだ。けれどあまり悪い気がしないのは、彼女の明るさのおかげだろうか。
「うん、勿論。私は
「私は
リュウオウ アスカ 超高校級の将棋棋士
“竜王飛鳥”……?
「それで大丈夫だよ。というか、竜王ってまさか……」
「あー……もしかして、知ってた感じかなっ?」
「知ってるも何も、超有名人だよ!? それこそ、私達くらいの年代の人なら何回も聞いたことのある名前!」
思わず興奮してしまった私に対して、竜王さんは少し照れ臭そうな顔をした。
「うわっ、なんか恥ずかしいね……。初めて会った同年代の子に、名前が知られてるなんてさっ」
神与学園に入学するとなって、少し前に今年の新入生を知っておこうと思って調べたことがある。
けれど、彼女はそんなレベルの人じゃない。
竜王飛鳥。女性として史上初のタイトル獲得を果たした、若き天才将棋棋士。
小学生の時にプロになるために必要な奨励会に入会、中学生で卒業という異例の速さでプロ入りを果たし、高校在学中に初のタイトル獲得。
全ての段階で『女性棋士最年少』どころか『史上最年少』の記録を塗り替えた、人呼んで『将棋の女神』。それが彼女、竜王飛鳥だ。
その知名度は最早語るまでもないほど。あまり将棋に詳しくない私でさえ、ここまでの情報を調べる前から知っていたくらいだ。
「竜王さんの名前を知らずに生きていくって、今やかなり難しいことだと思うけど……」
「あはは、そうなのかな……。そこまで褒められたら、普通に照れちゃうよ」
ここまでの有名人なら、てっきり褒められ慣れてるものだと思っていたけれど。
謙遜してるようにも見えないし、意外と慣れていないようだ。
「でも、天雲も神与学園の新入生なんでしょ? てことは天雲も私と同じくらい、いや私より凄い能力を持ってるってことだよねっ!」
「いや、私はそんな持ち上げられるほどじゃないよ……。ただ勉強ができるとか運動ができるとか、そんな感じの能力なだけで……」
「謙遜しないで! 私は思うよ。あの神与学園に入学招待された時点で、ここにいる人たちは全員凄い人なんだよっ!」
彼女は大きく腕を広げて、周りを見回した。
「だから有名度合いとか色々で優劣つけるのはなしにしよ! 友達として、仲良くやりたいなっ」
「……そこまで言われたら。ごめんね、竜王さんのこと持ち上げすぎちゃったかも。嫌だったよね」
「んー……、まぁ返答に困るのは確かだったけど。でも、気にしなくても大丈夫だよっ!」
そう言って彼女は、私に右手を出してきた。
「とにかく、よろしくねっ!」
「……うん、よろしく」
私も右手を出し返し、しっかりと握る。
将棋の実力も確かすぎるけど、こうやって人とすぐに打ち解けられるのもまた、彼女の才能なのかも。
「あ、ところで竜王さん。君はここがどこなのかとか、そう言うのって詳しく知らない?」
「それなんだけどさ。自己紹介タイムが始まるちょっと前くらいに、誰かが言ってたんだよっ。まだ挨拶してないから、名前は分からないんだけど……」
「
ずっと抱えていた疑問を彼女に投げかけてみると、別の人が私達に近づいてきた。
「会話に割り入る無礼、謝罪する。
「あ、そうそう君だよっ! えっと、名前は……」
「
クニロク イツキ 超高校級の将軍
國録逸樹。私が調べた情報によれば確か、日本国外の紛争地帯で軍の指揮を高校生にして任されている天才将軍。
立場の割に若すぎる年齢も驚くべきことの一つだけど、それよりも凄いのは彼が幾度も戦争を指揮していながら未だ『不敗神話』を保っていること。つまり、一度も負けてないということだ。
長年続いた戦争に終止符を打ち得る存在として、世界から注目が集まっている……、ということだったはずだ。
「日本国内にあまり滞在していなかった故、ここではあまり名は広まっていないがな」
そう言う彼はとても
かなり高い身長に、いかにも将軍っぽい軍服。大人、なんなら私より一回り年上と言われても信じてしまいそうだ。
「確かに聞いたことない名前かも。けど、いつもの戦場から離れて日本に来ても大丈夫なのっ?」
「今は戦況がかなり優勢で安定していてな。頼れる部下からの後押しもあり、今は取り敢えず日本で高校生として学校に通うこととした。無論、戦況が変わればすぐに戻るがな」
「大変だね……」
私はずっと日本に住んでいるから、戦争に巻き込まれたこともなければ、見たことすらない。
そんな戦場を幾つも経験してきたからこその“超高校級”なのだろう。高校生らしからぬ落ち着いた態度も、納得がいってしまう。
「手前の話はこの程度にして、話を戻すとしよう。他の数名とも意見を交わした結果発表したのだが……、結論から言うと手前はここを神与学園そのものだと考えている」
「そうそう! そんなこと言ってたよねっ!」
──ここが神与学園。
それは正直、薄々思っていたことだった。
「……私も少し、そうじゃないかなって考えてたんだ。こんなに人数がいて全員が神与学園の新入生っていうのは、流石に何かの意図を疑っちゃう」
「学園に恨みを持つ何者かの集団誘拐という線も考えたが……、ならばこのように学校に閉じ込める意味が皆無だ。倉庫のような適当な建物で事足りる上、何より広すぎる」
「じゃあ私たちは、無事に神与学園に入れてるってことでいいのっ?」
「その可能性も大いにあるな。むしろ、それが現状1番あり得ると言っても良いだろう。手前らがいつの間にかこの学園内にいたのも、学園側の何らかの催しの一環だと捉えれば一応筋も通る」
政府直属の機関で、才能の集まる場所。そんな学園が入学式でのサプライズを仕掛けたのだとすれば、文字通り何でも実現できそうだ。それこそ私達をいつの間にか学園内に運ぶことくらい、赤子の手を捻るようなものだろう。
────でも、もしそうじゃなかったら?
「そうでない場合は……、申し訳ないが情報が足りず判断が不可能だ。現状手前に言えるのは、この場は神与学園である可能性が高いこと。それだけだ」
同じことを考えていたのか、國録くんは私の不安に答えるように話した。
「犯人がいたとしても、まだその目的までは分からないしね。……ただ、この場所についての意見を聞けたのは嬉しいよ。ありがとう、國録くん」
「礼には及ばぬ。手前はあくまで推論を語っただけだ」
「まぁ、今無理に考えててもしょうがないんじゃないかなっ? 國録の言う通り情報が足りてないし。というか、普通に考えたら学園側のサプライズってのが1番あり得そうだし!」
「……それもそうだね」
竜王さんの言う通りだ。第一この状況が危険でないなら、考えるだけ無駄とも言える。
とりあえず私に今できることは、何かあった時のために少しでも準備をしておくこと。
そのためには、ここにいる皆についても詳しくならないとな。
2人と別れた後、私は体育館を見回し、次に話す相手を探す。
その中で一際背の高い女の子が誰とも話していなかったようなので、その人の所に向かった。
「初めまして。挨拶良いかな?」
「……ん、あ、ボクか。良いよ」
私自身が割と背の高い方だから、同学年の女子に見下ろされるというのは少し珍しい体験だった。
「ボクは
キタニ ユキカゼ 超高校級の気象予報士
てるてる坊主を模したような耳飾りを手で揺らしながら、彼女は平淡な口調でそう言った。
「祈谷って確か……、気象予報士の?」
「多分そう、かな。多分。アナタが言うなら、多分そうなんじゃないかな」
一つの文で三度も多分と言われたら、ちょっと不安になっちゃうけど。
祈谷雪風。確か、史上最年少で気象予報士の資格試験に合格した才女中の才女。
そもそも気象予報士の試験は合格率が5%くらいの超難関で、もちろん合格者も普通は大人の人だ。
高校生や中学生が受かることすら
珍しいどころの話じゃない、まさに超人と言って差し支えない人だろう。
「私は天雲舞衣奈、超高校級の優等生なんだ。よろしくね」
「ん。よろしく、だよ」
高身長でスレンダーな体型をしていて、顔も整っており全体的に美人だ。モデルと言われても疑わないというか、むしろその方がしっくりくるほど。
もっと才女っぽい姿を想像していたから、ちょっぴり意外だった。
「祈谷さんは気象予報士なんだよね。難しいって言われてる試験を小学生で突破したなんて、凄いなぁ。流石“超高校級”だね」
「…………」
簡単して思わず少し長く喋ってしまったが、彼女からの返事はなかった。
「……あれ、祈谷さん?」
「え、あ、ボク? びっくりした、まだ自己紹介って続いてたんだ」
本当に今話しかけられたかのような驚き方で、祈谷さんは私の方を見た。
「ずっと半分くらい上の空で生きてるからかな。人の話聞くの苦手なんだよね。ごめんね、だよ」
「あ、そうなんだ……。私も気を付けるね」
悪気はなさそうだけど、何事もないように話すあたりよくやってしまうことなのだろう。
ゆったりとした雰囲気や話し方といい、何だか変わった人だ。
「どうも! 今大丈夫っすか?」
祈谷さんと別れた後、今度は先に声をかけられた。
「うん、大丈夫だよ。自己紹介だよね?」
「ご明察っす! 自分は
カゼマツリ ソウスケ 超高校級の“演出家”
「私は天雲舞衣奈。超高校級の──」
「天雲舞衣奈……!? ってことはまさか、超高校級の優等生の天雲舞衣奈さんっすか!?」
「え、えぇ!? そうだけど、よく知ってたね……」
「マジっすか!! 自分、お会いできて超光栄っす!!!」
手を差し出したら力いっぱい握ってきそうな気迫で、彼は文字通り目を輝かせた。
まさか名前だけで言い当てられるとは思わなかった。そんなに世間に名を知られてる覚えはないけど……、風祀くんも調べてたのかな。
「あ、申し訳ないっす……。勝手に1人でテンション上がっちゃって」
そう言いながら、彼は少し決まりが悪そうに頭を掻いた。
「神与学園の新入生って、毎年インターネット上に有志の方々が全員分見つけてリスト化したものが上げられてるんすよ。なので今年の新入生も、名前と才能だけは頭に入れてる状態で」
「え、そんなのあったんだ……。私は頑張って調べてたよ」
「と言っても、天雲先輩のことは以前から知ってたっすよ! 全国模試で毎回1位を取ってる激ヤバ高校生っすよね!?」
ずばずば言い当ててくる風祀くんを前に、私は驚きのような少し恐怖のような気分を覚える。
さっきの竜王さんの気持ちが、少し分かった気がした。
学校の先生や友達からはありがたいことに何度も褒めていただいてるけれど、こうやって初対面の人から称賛の声を浴びるのは滅多にない。何だか、不思議な感じだ。
「あ、別にストーカーとかじゃないっすよ! 演出家なんで、人の能力とかを見るのが癖なんす」
「そっか、風祀くんは演出家だもんね」
この前日本で開催されたオリンピックの演出チームに現役高校生が参加したということが、少し話題になっていたのを覚えている。私の調べた限りでは、それが彼、風祀叢介だ。
「演出家と言っても、自分はまだまだっすよ。プロの演出家の方々と仕事をすることも多いんすけど、今はまだ毎回その人たちに着いていくので精一杯で……」
そう言って彼は苦笑した。同い年のはずなのに若干敬語だったり、私のことを先輩と呼んだり、かなり謙虚な性格のようだ。
謙虚というか、後輩癖のようなものの気はするけど。
「でもでも、向上心はもちろん負けてないっすよ! てことで、何かの発表とかする機会があれば、遠慮なく頼ってほしいっす。自分も全力を尽くすので!」
そう言って、彼は元気よく私に向かって親指を立てた。
まぁ何というか、他人が好きな人なんだろうな。
風祀くんと話し終わった後、私はまた手の空いてそうな人を探す。
そこで目に留まったのは、明らかに小学生くらいの背丈の女の子だった。
「ごめんね、今大丈夫? 挨拶させてくれないかな?」
「わー、マリネとー? いいよー、だけどちょっとまってねー」
そう言って彼女は、自身が提げていたポーチをごそごそと探る。
「ほら見てー、マリネのおともだちなんだよー。おねえちゃんはー、どの子が好きかなー?」
「どの子……? えっと、じゃあ……」
彼女が取り出して私に見せてきたのは、3体の人形。
手足に糸が繋がっているから、多分それで操る物なのだろう。マリオネット、なんて名前だったと思う。
それぞれスカート、絆創膏、メガネを身につけている。キャラ付けのためだろうか。
「1番右の子が好きかな。女の子かな?」
「せいかーい。この子はアンちゃんって言うのー。じゃあー……」
そう言うと、彼女は信じられないほど素早い手つきでその人形の持ち手を掴み、自分の前にセットした。
「お名前聞いても良いかしら?」
「…………え?」
その声が、目の前の
それほどまでに、
「……あ、えっと、天雲舞衣奈だよ。よろしくね」
「よろしくねぇ。この子は、
イズサキ マリネ 超高校級の人形使い
「こんな感じだよー。びっくりしたー?」
「ま、まぁね……。結構驚いちゃったかも」
さっき喋るぬいぐるみを見たばっかりに、人形に喋られると“そういうもの”として納得してしまいそうだった。
伊豆崎鞠音という名前なら、新入生を調べた時に見つけた。
“超高校級の人形使い”。自ら動いているとしか思えないほどに人形を上手く操る手腕に、それと合わせる一級品の腹話術。近年子供相手の人形劇を中心に爆発的な人気を獲得していっており、彼女を招く幼稚園などが後を絶たないそうだ。
「アンちゃんはねー、よくえらばれるんだー。やっぱり女の子だからかなー?」
「あはは、そうかもね。他の子達も名前はあるの?」
「あるよー。このばんそうこうの子が“ドゥー”くんでー、めがねの子が“トロワ”くんだよー。あともう1人いるんだけどー、いつもはおるすばんなんだー」
アン、ドゥー、トロワ……。確か、フランス語の“1.2.3”だったはず。名前は意外と適当なんだな。
「マリネのおともだちが見たくなったらー、いつでも言ってねー。すぐ見せてあげるからねー」
「アンも、あなたとお友達になりたいの♪ 」
「……うん、分かった。また今度遊びに行くね」
……とは言ったが、正直あまり気乗りはしない。
伊豆崎さんに直接言うのは申し訳ないけれど、ちょっと怖い。寿命が縮んだ気がした。
伊豆崎さんと別れて、また私は空いてる人を探す。
とりあえず見えている範囲には、暇そうな人はいない。意外と難しいものだ。
そして、後ろには誰かいないかと確認しようと思った時だった。
「わっ……!?」
ドンッ、と音がして、後ろにいた男の子がよろめいた。どうやらぶつかってしまったらしい。
しかも彼は眼鏡を拭いていたようで、その眼鏡までもが落ちてしまった。
「あ、ごめんなさい! えっと……」
「落とさせちゃってごめんね。大丈夫?」
「…………大丈夫。ありがとう」
そう言って彼は、少し
「…………まだ、挨拶してないよね。今、相手を探してるんだけど……」
「……あぁ、挨拶ね! 勿論大丈夫だよ! 私は天雲舞衣奈、超高校級の優等生なんだ」
先に自己紹介をしても、彼は以前俯いたままで目を合わせてくれない。
もしかしたら、人と話すのが少し苦手なのかもしれない。
「…………僕は
カクラ トオマ 超高校級のサイメシア
「ありがとう。よろしくね、覚羅くん!」
「…………よろしく」
ハイパーサイメシア──“超記憶症候群”。
見たもの全てを正確に記憶し、しかも忘れないという超能力じみた能力のことだ。
フィクションの産物のようでも、一応ごく少数ながら実際にいると聞いたことはあるけど……。会ったのは、勿論初めてだ。
「……………………」
「えっと……」
なんとなく気まずい沈黙が、場を支配する。
「…………ごめん、人と話すの苦手で。……女性相手は、特に。挨拶は終わったし、もう僕に構わなくても良いよ」
「うーん、そっか……。多分クラスメイトになると思うし、またお話しできたら嬉しいな」
私の返事を聞き終わると、覚羅くんは静かにこの場を立ち去った。
悪い人ではなさそうだったし、またどこかで話す機会があれば良いんだけど。
覚羅くんが去った後、目の前から大きな男の子がこちらに近づいてきていた。
國録くんより高そうな身長に、彼より数段広い横幅。近くで見れば見るほど、人というより壁に近い。
「初めまして。自己紹介だよね?」
「話が早くて助かる!!!! では、先に俺の方から名乗らせてもらおう!!!!」
見た目通りと言うべきか、声も大きい人だった。声だけでなく、勢いもかなり激しい。
「
ホウリ タイヨウ 超高校級の家庭科部
「私は天雲舞衣奈、超高校級の…………」
そこまで口を動かして、私は止まった。
「……え、家庭科部……?」
「何ッ!!!?? お前も超高校級の家庭科部なのか!!!??」
「ああ、ごめんね! 中途半端なとこで切っちゃって……。私は超高校級の優等生なんだけど」
「そうか!!!! よろしくな、天雲!!!!」
確かに、今年の新入生に超高校級の家庭科部と呼ばれる人がいることも、その人の名前が“縫理泰陽”であることも知っていた。
料理、裁縫、その他あらゆる家事において、超一級品の腕前を持つ少年。
プロの料理人やプロの仕立て屋などからも、その技術は絶賛されるほど。高校生ながら、主夫の権化のような能力を持つ人間だそう。
けど、家庭科部という字面から想像していた男の子は、もうちょっと……。いや、もう二回りくらい小さめの姿だったんだけど……。
「えっと……。ラグビーとかアメフトとか、そういうスポーツでもやってたの?」
「いや、スポーツは未経験だな!!!! やってみたい気持ちはあるのだが!!!!」
疑問が余計深まった。家庭科界はあまり詳しくないけれど、最近は鍛え上げられた筋肉が必須だったりするのだろうか。
……いや、よくよく見たらこの人が着てるのエプロンだ。しかも結構可愛い感じのアップリケまで付いている。
別に疑っていたわけではないけど、どうやら家庭科部というのは本当らしい。
「このアップリケが気になるのか!!?? これは面倒を見ている子達が、俺の誕生日に贈ってくれたエプロンでな!!!! 縫い付けは少し
「そうなんだ……。こんな物を貰えるなんて、縫理くんは慕われてるんだね」
「光栄だな!!!!」
声と圧が強いだけで、話を聞いてる感じは意外と普通。
“主夫の権化”と紹介されていたけれど、確かに面倒見はかなり良いタイプのようだ。
「ところで、立派な筋肉だね。鍛えてたりするの?」
「ああ!!!! 今はもう趣味だが、始めたきっかけは俺が過去に言われたある言葉なんだ!!!! それは……」
「……それは?」
何故か思わず、少し
「『大きな背中を持つ男になれ』というものだ!!!!」
「……言葉通り、受け取ったの……?」
「昔の俺は頭が良くなかったからな!!!! 物理的な意味だと、完全に勘違いしていたのだ!!!!」
そう言って、彼は豪快に笑った。
……なんだか、ツッコミどころの絶えない人だ。
神与学園 名簿表
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【“超高校級の⬛︎⬛︎⬛︎”】⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
【“超高校級の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”】⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
【“超高校級の将軍”】國録逸樹
【“超高校級の人形使い”】伊豆崎鞠音
【“超高校級の⬛︎⬛︎⬛︎”】⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
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