「よっ! 今、時間いいか?」
振り向くと、そこにいたのは2人。声をかけてくれたらしい男の子と、もう1人女の子が立っていた。
「うん、大丈夫だよ。2人一緒だよね?」
「はい。私が人と話すのが少し苦手で……。付き添ってもらっています」
「っつーわけ! てことで、俺らから先に名乗らせてもらうぜ!」
いかにも明るく人と話すのに慣れてそうな彼と、少し大人しそうな彼女。なるほど、付き添ってもらうにはぴったりの人選なのかもしれない。
「俺は“超高校級の助っ人”、
「えっと……。“超高校級の花屋”、
フシバラ トモノリ 超高校級の助っ人
ヨクイ ヒサカ 超高校級の花屋
「私は超高校級の優等生、
「おう、よろしくな!」
どちらの名前も、今年の新入生を調べた時に目にした覚えがある。
伏原友則。特定の部活には入らずに、様々な運動部の対外試合にサポートとして参加する、いわゆる助っ人。
数合わせのように聞こえるかもしれないけれど、彼の場合は全くの別。伏原くんの通う高校の運動部の成績は、彼が恐ろしいほどに向上させたらしい。
チームを勝利に導くのは勿論のこと、彼の指導や助言によって他メンバーの技術も磨かれるため、今や彼の高校の全運動部は伏原くんなしでもかなり強いチームになったらしい。
翌井久花。家族経営の花屋、“
客の要望を十二分に
さほど大規模でもない花屋を、日本中だけでなく、時には世界各地からの客も訪れる大人気店に躍進させた立役者。それが彼女だ、ということだ。
「あれ、待てよ。天雲舞衣奈っつーと……。もしかしてお前、いつか女子バスケの関東大会の予選に出てなかったか?」
「え? あー……、確かに出たかも。怪我で人数が足りないってなって、急遽参加することになったんだ」
「やっぱそうだよな!? その場にうちの高校のチームもいたらしくてよ、こっちも話題だったんだぜ! 『正規部員じゃないらしいのにやけに強い選手がいる』ってよ!」
知り合いに頼み込まれて名前だけ貸していたバスケ部に、さらに頼み込まれて試合にまで出たわけだけど……。
「ソイツが超高校級の優等生ってんなら納得だわ! そりゃ強いわけだぜ」
「ありがとう。流石に、伏原くんには劣ると思うけどね」
「まぁまた、機会があったら勝負しようぜ! 超高校級の名にかけて、負けるわけにはいかねーけどな!」
そう言って伏原くんは笑った。話を聞いていた翌井さんも、楽しそうにニコニコしている。
「ところで、2人はここに来る前からの知り合いなの?」
「あ、はい。幼馴染です。家が近所で……」
「途中で色々あったけど、幼稚園から高校、つか
「長い間一緒なんだね。私には……そこまでの人がいないから、ちょっと羨ましいかも」
世にも珍しいであろう超高校級の才能を持った人達が幼馴染なんて、本当に物凄い偶然なのだろう。
こんなよく分からない状況下でも、よく知ってる相手が一緒なら幾分か楽だろうな。
「そういや、お前はこの中に知り合いとかいないのか?」
「まだ全員と話せたわけじゃないけど……。少なくとも、顔を合わせて話したことがある人は、見た感じいないかな。今まで話した人達も、同じような感じだったよ」
「なるほどなぁ……。んじゃ、マジでここにいる奴の共通点って神与学園の新入生以外ないっぽいな。何のイベントなんだよ、これ?」
話し方的に、伏原くんと翌井さんの方も同じらしい。
ならやっぱり
「……まぁ、今考えてもしょうがないか。いずれにせよ長い付き合いになるかもしれないし、よろしくね」
「そーだな! よろしく!」
「こちらこそ、改めてよろしくお願いします。……あの、それで、一つお
そろそろ良い時間かと思って会話を終わらせようとすると、最後に翌井さんがおずおずと尋ねてきた。
「……? 大丈夫だよ、どうしたの?」
「すみません。本当に申し訳ないのですけれど……」
そう言って彼女は、少し間の抜けた苦笑を浮かべた。
「……お名前、なんでしたっけ?」
……どうやら、人の名前を覚えるのが本当に苦手らしい。なんというか、ちょっぴり意外だ。
改めて名乗って二人と別れた後、再び周りに目をやって手の空いてそうな人を探す。
そして見つけたのは、何やら見覚えのある顔の女の子。ちょうど一人だったので、彼女に話しかけることに決めた。
「初めまして。もし良かったら……」
「何、アンタ」
挨拶が突然切られて、少し言葉に詰まってしまった。
「……え、えっと。今色んな人と自己紹介しあう時間らしいし、君の名前を知りたいな、って……」
「……ああ、自己紹介ね。最初からそう言えばいいのに……。じゃあ付き合ってあげるから、さっさとアンタから名乗りなよ。礼儀でしょ」
一度声をかけただけで、三つくらい言葉のナイフが飛んできた。
今まさに名乗ろうとしていたのだけど、不愉快にさせてもいけないので言葉を飲み込む。
「うん、ごめんね。私は天雲舞衣奈、超高校級の優等生だよ」
「……はぁ。
シガ ミナモ 超高校級の歌手
彼女は心底
……ところで、その肩書きと見た目。そしてその名前。
どこかで見たことがある人だと思ったけど、もしかして。
「……“フォルテ”?」
志賀さんは反射的に、ちょうど自分の名前を呼ばれたかのように私の方を向いた。
しばらく互いに言葉に迷って、沈黙が間に流れた。
「…………はぁ」
「ご、ごめん……! つい、口に出ちゃって……」
「しまった」と思ってるらしいことが、顔を見ただけでも分かった。
少しの間黙って、彼女は諦めたように私を軽く見る。
「……反応しなきゃよかった。まぁいっか、隠せる自信もないし」
「……じゃあ、君って」
「はいはい、私が“フォルテ”だよ。もういい? 早く帰ってよ」
事前に調べていたから神与学園の新入生にいるのは知っていたけれど、いざ目の当たりにしてみると何だか信じられないような気がしてくる。
“フォルテ”――超高校級の歌手、志賀水面さんのアーティスト名だ。
今最も勢いのある、新進気鋭の現役高校生歌手。迫力と繊細さを駆使しながらどんなジャンルの歌も120点の出来栄えで歌い上げるその実力は、今や国内だけでなく世界にまで轟いている。
比較的短期間の活動ながら、既に彼女のアカウントに投稿されている曲には億の文字がいくつもついている。普通に生きていたら、人生のどこかで彼女の歌を聞いたことはあるだろうと断言できるほどだ。
「やっぱり!? 実は私もファンなんだよね! 会えて嬉しいなぁ」
「あっそ。別にサインとかあげる義理はないからね」
「そういうのじゃないけれど……。でも、君も学園の新入生なんでしょ? これから長い付き合いになると思うし、友達とまではいかなくても知り合いくらいにはなれたらなって」
そう言うと彼女は、元々楽しそうでもなかった顔をさらに歪めた。
「……勘違いしないで。アンタなんかと話したいとも思ってないし、気安く話しかけないでよ」
「あ、ちょっと……」
呼び止めてみたが叶わず、彼女はそう言い残して手早く去っていった。
テレビで見た時は可憐で優しそうな人に思えたんだけど……。外見の可愛さは記憶通りだけど、どうやら性格は結構キツめなようだ。
急ぐ必要もないわけだし、いつかは少しでも距離が近くなれたら良いな。
結構長い時間やってきただけあって、そろそろ知っている人の方が多くなってきた。
そんな中、少し離れたところでしゃがんでいる男の子を見つけたので、心配になって駆け寄ってみる。
「あの、大丈夫? 体調とか悪かったり……」
そう声をかけてみると、下を向いていた彼の視線がおもむろに私を捉えた。
「…………いや、立ちっぱって疲れんじゃん。元気だけど、疲れた」
「えーっと……。保健室とか」
「いーよ。そういう感じじゃないし」
いかにも
「……ねぇ、自己紹介しない? 君のこと、知っておきたいんだ」
「物好きだね、アンタ。……あれ、今って自己紹介でもする時間だっけ?」
何と言えば良いか分からず、とりあえず首を縦に振ることで返答する。
「そーだっけ……。メンドクサイんだけど、やんなきゃダメ?」
「ダメってわけじゃないけど……。できれば、私はやっておきたいかな」
私の言葉を聞き終わると、彼はゆっくりと頭を掻きながら立ち上がった。
しゃがんでいたから気付かなかったけど、意外と背の高い人だった。國録くんや縫理くんほどではないにせよ、意外と圧がある。
「はーメンドクサ……。さっさとやるか」
ジトっとした目で私を見ながら、彼は言った。
「オレは
サンジョウ フウラ 超高校級の時計技師
「私は天雲舞衣奈。こちらこそ、よろしくね」
私も名乗り返したが、彼からの反応は特になかった。立ってはいるが、微妙に目も合わない。
「……三杖くんは時計技師なんだよね! じゃあその時計も、全部君が作ったものなの?」
このままだと会話が空中分解しそうだったので、私は慌てて言葉を繋げた。
「……よく知ってんね。そりゃもちろん、全部オレが作ったやつだよ」
腕時計に懐中時計に、彼の服にはあらゆるところに時計が付いている。
その装飾は全て違っていて、全てが息を呑むほどに美しかった。
これを全部1人で作ったのなら……。当たり前だけど、とんでもない話だ。
「……あ、店長に言われてんだった。一応、名刺あげるね」
「名刺? ありがとう……って」
三杖くんの名刺。名前の上に書いている“
「知ってる? その店」
「勿論知ってるよ! 最近話題の高級時計店でしょ?」
「なら話が早いや。メンドクサクなくていいね」
“BEELZE”。以前までは高齢の職人が一人で細々と運営する店だったが、最近加入した新しい職人によって製造される時計の質が性能・外見ともに急上昇したらしい。
今やあらゆる時計マニア達が注目する、世界トップクラスの時計店だ。
そして、その加入した職人はまだ高校生。それが彼、三杖楓来。
極めて精巧な装飾を施し極めて正確に時間を刻む時計を製作する彼の腕は、既に日本有数どころか世界有数のもの。プロの技師と比べても見劣りしないどころか、勝ってもおかしくないほどの実力だそうだ。
「じゃ、名刺渡したしそういうことで。メンドクサクなってないうちに、自己紹介終わっていい?」
「……さっきからよく言ってるけど、面倒なことが嫌いなの?」
口癖のように何度も言うのが気になって、思い切って訊いてみた。
「全くもって嫌いだね。疲れることは大体嫌い。好きなことだけやって生きていたいね」
「じゃあ、やっぱり時計を作るのは好きなんだ?」
「そーだね。アンタも好きなことって面倒に感じないっしょ? オレは一生時計だけ作ってたいし……」
そう言いながら彼は徐々に小さくなり、最終的には元のしゃがんだ状態に戻った。
「いっぱい喋ったから疲れた。じゃ、ばいばい」
俯いたまま手をひらひらと振る三杖くん。残念ながら、そっちの方向には誰もいなかった。
……好きなこと以外が面倒なら、その着るのに手間のかかりそうな時計だらけの服は好きで着ているのだろうか。
つくづく、変わった人だなぁと思う。
動かない三杖くんからそっと離れ、次に話す相手を探している時だった。
「はじめまして! 今、時間大丈夫かな!?」
突然後ろから元気な声が聞こえてきて、少しビクッとする。
振り返るとそこにいたのは、いかにも明るそうな、小柄な女の子だった。
「えっと、私だよね? こちらこそ初めまして。時間は大丈夫だよ」
「ならよかった! せっかくの自己紹介の時間だし、君のことも知りたいなって思って!」
眩しいくらいに、明るく楽しそうに話す彼女。志賀さんに三杖くんとあまり自己紹介に乗り気じゃない人が続いたから、彼女が一層眩しく思えてくる。
「私は天雲舞衣奈。超高校級の優等生ってことになってるんだ」
「はーい、ありがとう! 私は
スズメ カナタ 超高校級の天使
「舞衣奈ちゃん、優等生なんだね! すごいなぁ、私も見習いたいなぁ!」
「そんなに大したものじゃないけど……、そう言ってくれると嬉しくなるな。ありがとうね。まぁ、見習いたいのはこちらこそなんだけど」
驚くような肩書きなのは彼女も一緒。というか彼女の方が圧倒的にそうだろう。
鈴芽カナタ。様々なボランティア活動に従事し、誰よりも献身的に働くことで有名な少女。
天真爛漫という言葉がぴったりな明るさ、可憐さ、そして誰に対しても親身に接するその優しさから、ついた
「そんな風に思ってくれてるんだ!? 優しいんだね、舞衣奈ちゃん!」
「ありがとう。……なんだか、褒めてもらってばっかりだね」
「舞衣奈ちゃんがそれだけすごい人ってことだよ!」
彼女に面と向かってそう言われると、本当にそうなんじゃないかという気になってくる。……いや、ただの
「勿論、鈴芽さんもとても凄い人だと思うよ。なんてったって、超高校級の天使だなんて呼ばれるくらいだもんね」
「ありがと! ……あ、天使っていうのはあくまであだ名だからね。私は普通の人間だから!」
流石にそこは疑っていなかったけど、確かに天使の輪っかや翼が付いててもおかしくないような見た目や雰囲気だ。天使が実際にいるのなら、多分こういう姿をしているのだろうと思ってしまう。
「あと、できれば私のことも名前で呼んでほしいな。やっぱり、人と近づくには呼び方も必要だと思うんだよね!」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。カナタさん……で、良いのかな?」
「はーい! よろしくね、舞衣奈ちゃん!」
そう言うと彼女は、私の手を取ってそっと口付けした。
一瞬びっくりしたけど、優しく微笑みかけてくれたカナタさんを見て、『これが彼女なりの親愛の証なのだろう』とすぐに理解できた。
全体的に距離感が近すぎるような気もするけど、竜王さん同様に悪い気分はしないな。
「オイ」
カナタさんと別れた後、突如後ろからぶっきらぼうな声が聞こえてきた。
「聞こえてんならさっさと返せ。
「……聞こえてるよ。返事が遅れてごめんね」
「ハッ、精々気を付けるこったな」
私は少しムッとしながらも、何とか丁寧に返す。
不機嫌そうに立つ彼は、私の
「……さっさと名乗れよ。自己紹介の時間だって言われなかったのか?」
……なるほど、そういう用だったのか。
今は自己紹介をしあう時間だから当然の言葉と言えばそうなんだけど、彼の態度からは自己紹介の意思なんて
「……天雲舞衣奈。よろしくね」
「違ぇよカス。テメェの名前を覚える気なんざねぇから、さっさと肩書きだけ寄越しやがれ」
「…………超高校級の、優等生。これで良いかな」
「はい、よくできました。辛うじて及第点ってとこだな」
一方的に自分のペースで、責め立てるように言葉を紡ぐ。
私の返答を聞いて満足したのか、彼は礼も言わずに引き返そうとした。
「ちょ、ちょっと!」
「あ? テメェみたいな下奴に付き合う時間は
「……君の名前も教えてくれない? それと肩書きも。私も、知っておきたいんだ」
彼は少し考え込むような動作をしてからため息をつき、仕方ないといった感じで私のところに戻ってきた。
「一度しか言わねぇからよく聞けよ。ルーク・クローヴィス、“超高校級の
ルーク・クローヴィス 超高校級の公爵
確かに、言われてみたら外国人っぽい顔立ちだ。でも日本人だと言われても疑わないくらい。日本の血も入っているのだろうか。
「立場の違いを理解したかよ、優等生。ならさっさと回れ右して失せろ」
「公爵……ってことは、あのクローヴィス家の?」
「……じゃなかったら何なんだよ。他に同名かつ俺らに並び立てる家柄があんのか?」
話を繋げてみると、ルークくんは露骨に嫌そうな顔をした。
ルーク・クローヴィス。長い歴史がありながら、莫大な資産を持ち今なお政治的影響力を持ち続ける公爵家、クローヴィス家の次期当主。
彼自身も親の七光りと周りに言わせないだけの頭脳・身体能力・精神性を
「オイ、話は終わったか? じゃあ早急に消えろ」
「……何で、そんなに敵を作るような振る舞いをするの? 私達は神与学園でクラスメイトになるんだよ。長い付き合いになると思うし、友達はいた方が——」
「チッ」
私の言葉を遮って、彼は聞こえるように舌打ちをした。
「テメェらにそれだけの価値があるとは思えねぇが? せめてもっと考えてから発言したらどうだ、
そう言って彼は、斬りつけるほどに鋭い眼光を私に向けた。
もう、これ以上は何を話しても無駄みたいだな……。
少しは話してくれたけど、親密になるのはかなり難しそうだ。
「アンタ、よーあれと話せたなぁ……。肝座りすぎやろ」
ルークくんの元から足早に去ると、また別の女の子に声をかけられた。
「そうかな……? 結局全然話せなかったし、何故かずっと
「いや、あんなんアイツが悪いんやん! てかアイツ相手に言い返せてるだけでもホンマ凄いと思うし。……あ、良かったら次はウチと話してくれへん?」
コック服のようなものを着た彼女は、そう言って笑った。
ただでさえ人当たりの良さそうな人だけど、ルークくんの後に喋っているのも相まってそれが一層感じられる。
「うん、勿論。私は天雲舞衣奈、超高校級の優等生。よろしくね」
「ウチは
ユズナミ ゲッカ 超高校級のパティシエ
「んー、“ステラト”ってお菓子屋さん知らへんか? もしかしたら、関東の人にはあんま馴染みないかもしれへんけど……」
「いや、勿論知ってるよ! 私も何回も食べたことあるし、大好きだよ!」
「あ、ホンマ? なら話早いわ! そこの本店が関西の方にあるんやけど、たまたまオーナーさんとウチが関わりあってな。今はそこで働かせてもらっとるんや」
“ステラト”。国内トップと言っても差し支えない、多種多様なお菓子を扱うスイーツ店。
本店が関西にあるというのは知らなかったけど、関東にも駅前などに支店は何店舗もある。値段も手頃なものが多いから、他人に贈るスイーツ時にはかなりメジャーな選択肢になるだろう。
そして、柚波月菓。ステラトの本店にてアルバイトとして働く少女だが、その料理の腕は超一級品。バイトを始めてまだ少ししか経ってないのにもかかわらず、既に同店において1,2を争う実力だそうだ。
今までの人達と話していても思ったけど、やはり超高校級の成長速度は尋常じゃない。何というか、だからこその超高校級という称号なんだろうな。
「私は本店の方には行ったことがないから、機会があれば是非行きたいな」
「よっしゃ、いつでも待っとんで! まー言うても、ウチらクラスメイトらしいやん? 今はよーわからん状況やけど……、ウチが直接作って渡せる機会なんて多分アホほどあるからな! 腹いっぱいなるまで食わせたるわ!」
支店であれだけ美味しいのだから、本店で食べる味は更に格別なものなのだろう。
そこの料理人に直接スイーツを作ってもらえるなんて、滅多にない機会どころの話じゃない。何だか申し訳なくなってくるくらいだ。
「私も結構甘いものは好きだから、楽しみにしておくね」
「もう他の店のスイーツ食えんようなるからな! 覚悟しとくんやで!!」
そう言って、彼女は自信満々に親指を立てた。
超高校級の腕に、この気さくさ。店でもきっと人気者なんだろうな。
さて、これで14人分の自己紹介が終わった。かなり長かったけど、あと一人だ。
でも、周りを見てもそれらしき人はどこにもいない。もう見知った顔ばかりだ。
数え間違えていたかなと思い始めた、そんな矢先のことだった。
「や。ボクのこと、お探しかな?」
「え?」
不意に肩に手を置かれて、私は思わず声を発した。
振り向いた先にいたのは、少し背の高い男の子。
「ボクはキミで最後なんだけど、キミはどうかな? 察するに、同じ状況じゃないかと思うのだけれど」
「……うん、そうだよ。よく分かったね」
「おっと、アタリ? 何だか今日は運が良いみたいだ。それじゃ、自己紹介に入るとしようか」
そう言って彼は着用していた手袋を外し、左手を挙げた。
「ボクは
ツイノ キョウタ 超高校級の???
「私は天雲舞衣奈、超高校級の優等生って呼ばれてるんだ。よろしくね」
「勿論、こちらこそ」
彼から差し出された右手を掴んで、握手する。キャラをまだ掴みかねているけど、意外とフレンドリーな人なのかもしれない。
「ところで、これは一体どういう状況なんだろうね? 行く先々で訊いているのだけれど、これといって手がかりは掴めなくてね。舞衣奈ちゃんは何かご存じ?」
「うーん……、申し訳ないけど、私も特に何も知らないかな。強いて言うなら、ここが神与学園である可能性が高いってことかな」
「あぁ、
手袋を着け直しながら彼はそう口にしたが、何か引っかかることがある様子。少なくとも、あまりこの事態を軽くは考えていないようだった。
「……と言っても、考えていたってしょうがないのだけれどね。とりあえず、情報量に関しては皆等しいということが分かっただけでも、十分な収穫かな」
彼はその場をくるくる回りながら見渡し、そして止まって私の方を見る。
「――あぁ、ボクを除いてね」
ふと思い出したかのように、彼はそんなことを付け足した。
「え、どういうこと? まさか、この状況についてのヒントを何か知ってたり――」
「あぁ、期待させて悪いけどハズレ。むしろ逆さ」
彼は自分の人差し指を突き立て、自分の頭をトントンと叩いた。
「察するに、キミが持っていないのはこの状況に関する記憶だろう? ボクはそこに追加で、自分の
……
「そんなこと……、あり得るの?」
「
「そうなんだ……? 不思議な話だね」
何というか、随分器用な記憶喪失だ。
まぁ私もここに来るまでの記憶が消えてるっぽいし、その点ではあんまり変わらないのかもしれないけど……。犯人がいるのだとしたら、何の為にどうやってしたんだろう。
「ということで、今の僕はただの一般高校生。さしずめ、“超高校級の???”といったところかな?」
「……意外と、気楽そうだね?」
「あ、バレちゃった? そうなんだよね、ボクはむしろ楽しみなのさ」
彼は両手を大きく広げて、宣言するように口にした。
「自分が何かの超高校級であることだけは分かっている……。こんな体験そうそうないだろう? いざ判明した時、ボクはどんな感情を持つのかな? そういうことを想像するだけで、結構楽しいものだよ」
「そ、そうなのかな……?」
……楽観的というか、そういう類の人でもない気がする。本当に不思議な人だ。
何というか、対野くん自身が良いならそれで良いんじゃないかとすら思えてきてしまう。
「ということで、また判明したら舞衣奈ちゃんにも教えてあげるよ。その時は改めて名乗るよ、『“超高校級の〇〇〇”、対野鏡太だよ』ってね」
「……うん、じゃあ楽しみに待っておこうかな」
「そうしてもらえると助かるよ。それじゃ、よろしくね」
やっぱり掴みどころのない人だ。素直なようで、何を考えてるかが分からない。
……けど、悪い人ではなさそうかな。
神与学園 名簿表
【“超高校級の優等生”】天雲舞衣奈
【“超高校級の演出家”】風祀叢介
【“超高校級の花屋”】翌井久花
【“超高校級の時計技師”】三杖楓来
【“超高校級の気象予報士”】祈谷雪風
【“超高校級のサイメシア”】覚羅十真
【“超高校級の天使”】鈴芽カナタ
【“超高校級の家庭科部”】縫理泰陽
【“超高校級の歌手”】志賀水面
【“超高校級の公爵”】ルーク・クローヴィス
【“超高校級の 将棋棋士”】竜王飛鳥
【“超高校級の助っ人”】伏原友則
【“超高校級のパティシエ”】柚波月菓
【“超高校級の将軍”】國録逸樹
【“超高校級の人形使い”】伊豆崎鞠音
【“超高校級の???”】対野鏡太
残り 16名
良ければ、好みのキャラを教えてください。
-
“超高校級の優等生” 天雲舞衣奈
-
“超高校級の演出家” 風祀叢介
-
“超高校級の花屋” 翌井久花
-
“超高校級の時計技師” 三杖楓来
-
“超高校級の気象予報士” 祈谷雪風
-
“超高校級のサイメシア” 覚羅十真
-
“超高校級の天使” 鈴芽カナタ
-
“超高校級の家庭科部” 縫理泰陽
-
“超高校級の歌手” 志賀水面
-
“超高校級の公爵” ルーク・クローヴィス
-
“超高校級の将棋棋士” 竜王飛鳥
-
“超高校級の助っ人” 伏原友則
-
“超高校級のパティシエ” 柚波月菓
-
“超高校級の将軍” 國録逸樹
-
“超高校級の人形使い” 伊豆崎鞠音
-
“超高校級の???” 対野鏡太