ポケモンスナップ むげんのきせき   作:ナスの天麩羅

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2話 こころのしずく

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「で?そんなやつをどう撮影するんだ?そこが一番肝心な場所だろ」

「こころのしずく。ラティアスは『それ』に引き寄せられるらしいのよ。だから当面の目標はそれを入手することよ」

「おおー、それってどんなものなんだ?場所の目星とかはついてるのか?」

「さあ?」

「さあ?ってお前……」

「しょうがないでしょ、そこまで考えてたら一人でやるわよ。言っとくけど名前を掴むだけで結構手間取ったんだからね?」

 

まぁそれはそうか、と俺はある意味納得する。ルミナの言い方に思う所は無いわけではないが、もうそういう人間だから、と思うようになって久しい。

 

「だから、ヴィデは当初の予定通りコンテスト関係の仕事をしてて大丈夫よ。手がかりを掴んだら連絡するわ」

「そりゃありがたい。にしても味気ない協力関係だな」

 

そんなもんよ、とルミナはティーカップを傾ける。やはり成人と言われると首を傾げる令嬢然とした容姿は、缶ビールよりもティーカップのほうが様になっている。

 

「それじゃ私は博物館でも見に行くから、アンタはお仕事……なに?」

ルミナがボールのなかのポケモンに怪訝な顔を向ける。

「あら、そうなの……ヴィデ、うちのコとコンテスト参加する気ない?このコ、コンテスト好きなのよ」

「ふぃ〜♡」

 

ピンク色、リボン、水色のつぶらな瞳。あざといほどに可愛いというのがそのポケモンの第一印象だった。種族名はニンフィア。フェアリータイプで、イーブイの進化系の一つ。トレーナーになつき、フェアリータイプの技を覚えていることで進化する。つまりここでもルミナは手持ちには好かれるトレーナーであるということになる。

 

「コンテストが好き、か。まぁ可愛い部類だし似合うんじゃねぇか?」

「正確には『世界一可愛い自分がジャガイモみたいな有象無象をなぎ払うのが楽しい』らしいわよ?」

「うーわ、可愛くねぇー。ポケモンはトレーナーに似るってか……素人の指示でよけりゃ連れてってやるよ」

「ふぃっ!」

 

「んじゃそれぞれ、コンテストと博物館ね。お互いお仕事頑張りましょ〜」

 

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「あー、すみません。このポケモンでかわいさコンテストに参加したいんですが……」

「コンテストパスは……お持ちですね。かしこまりました。お時間になりましたらお声がけしますので控室でお待ちください」

「ふぃ〜、ふぃふぃっふぃ〜♪」

 

ニンフィアは上機嫌そうに控室に向かっていく。俺はそれに連れられ、楽屋でパンフレットから今後の流れを読み込むことにした。

 

「まずは外見の審査、その後は……げっ!?わざの審査……!あったなぁそう言えば……」

「ふぃ?」

「ニンフィア、可愛い技何使えるか教えてくれ!できれば急ぎで!」

 

しばらくの沈黙。

 

「ニンフィア?」「……」

 

無言で、リボンを操って自分を指さす。自分自身が絶対的な可愛さを持っているという自信に満ち溢れた顔を。

 

「そうじゃなくて、メロメロとか!あまえるとか!」

「ヴィデ様、ニンフィアちゃん、お時間になりましたよ」

「あああ……もうスタッフが……」

 

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「前半戦、外見審査は文句なしにヴィデ様のニンフィアちゃんが1位!他のポケモンたちは追いつけるか!?それとも突き放されてしまうのか!?ではでは、わざ審査行ってみましょー!」

 

憂鬱だ。何も使えるわざの共有ができなかった。こうなったらぶっつけ本番でやるしかないのか……

 

「ヴィデ様、ニンフィアちゃんはやる気満々ですよ?」

「ああすいません、今行きます……」

 

「それではわざ審査の方始めさせていただきます!一番手はヴィデ様のニンフィアちゃん!」

「え、えーと、チャームボイス!」

 

適当に思い浮かんだニンフィアが覚えていそうなわざを叫ぶ。ニンフィアはごろんと床に転がり、真っ白なお腹を見せながら審査員に甘えた声を出す。

あまりにもあざとい、が、それを上回るほどに可愛らしいのは揺らぎようのない事実だった。

周囲の声に耳を澄ますと黄色い声の中に「なるほど……」「最初だもんな」とおそらく肯定的な意見が耳に入る。まず最初はセーフのようだ。

 

「よし、次は……」

「ヴィデ様!?ほかの方の1巡目のアピールもありますし、その後順番が発表されるまでお待ちください!」

「あっすいません……」

 

恥をかいてしまった。

 

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「しっかし、見事に海専門の博物館ねぇ……」

ゴムボールによる水圧の可視化。海にまつわる化石。他の地方の水質。そういったものばかりでこころのしずくやラティアスの直接の手がかりとなりそうなものは見当たらない。

 

「あら?」

ホウエン地方の模型。ここカイナシティの南東に小さな島があることに気づく。それは小さな違和感だった。紙のマップには描かれていただろうか、という小さな違和感。しかし、小さくても違和感は違和感。念のためアブソルをボールから出す。

 

「どう、何か感じる?」「……グルル」

ぱっと見は否定とも肯定とも判別つかない。ただじっと模型の小島を見つめて小さく唸り、動きを止めているのだ。

「……何か感じるのね、アブソル?」

相棒は静かに頷く。それだけで十分だった。

 

「決まりね。次の目的地はここ、言うなれば南の孤島よ」

思わず頬が緩む。ラティアスに、一歩ずつ近づいている感覚がある。

「……必ず撮影してあげるんだから、楽しみにしてなさい。ラティアス」

 

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結果から言えば俺は、試合に勝って勝負に負けた。

より正確に言うのであれば、一次審査、すなわちポケモンのビジュアルはニンフィアがぶっちぎりの1位。だがアピールが付け焼き刃ですらない俺の適当な指示で4人中4位、すなわち最下位だ。ニンフィアのビジュアルの貯金で1位に返り咲いたものの、トレーナーとしてはあまりにも酷い体たらくだった。

 

そして何より、コンテストへの無知が運営に露呈してしまったのが痛い。これは純粋に勉強不足だったと言うしかない。

仕事の話は結局やめになった。ルミナの方で何かつかめていればいいが……

 

「ハロー、ヴィデ。目的地が決まったわ。南の孤島よ」

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