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「南の孤島?そこに何が……もしかして例のこころのしずくか!?」
「現状、単に『何かある』って勘づいただけなのよ。でもそうだと思ってる」
「マジかよ、ちなみになんでそう思うんだ?」
「最初はそれこそただの勘、違和感よ。でも調べてみるとね……」
そう言ってルミナは南の孤島と呼ばれる場所をマップで指差す。
そして何かをなぞるように、不規則に白く細い指を躍らせる。その指は決して島に触れることはない。
「海流がこうなっている。つまり人を寄せ付けないようにできているのよ」
「だから何かあるんじゃないかって?そりゃ早とちりじゃねぇか?」
ちっちっちっ、と指をメトロノームのように振るルミナ。彼女のなかにはどうやらすでに確信というものがあるらしい。
「わかってないわね。ラティアスの側に立って考えてみなさい。賢いラティアスが大事なもの、こころのしずくを隠すなら、人が寄り付かない場所にするはず。そしてそんな場所は見繕ってみたけど全然なし、唯一残ったのが物理的に不可能な南の孤島よ!」
「そんな都合よく行くかねぇ」
「そうでなくても、普段人が立ち寄らない場所なら普段得られない手掛かりだってあるかもしれないでしょ?」
だったらいいけどよ、と俺はゆっくり口を開く。一番気になっていることを聞く。
「どうやって南の孤島に行くんだ?海路は海流が邪魔してき進めないし、空なら一度も行ったことない場所はポケモンに相当無茶させることになるぞ?さすがにそこまでやれってのは俺は反対だ」
ルミナはぐぐぐ……と唸り声を上げるが、強行突破をするつもりはないらしい。そこは少し安心した。
「……ここを拠点に海に近い場所全部で聞き込み調査よ。腕のいい船乗りの1人や2人、きっといるでしょ!そいつを口説き落とすのよ!まずは……ムロタウン!」
カイナシティの近く離れた海の向こう側、小さな町を指差すルミナ。
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私はミロカロス、ヴィデはタチフサグマの波乗りによってカイナシティからムロタウンに辿り着いた。
「にしても、泊まるところがないのはキッツいな、おかげでキャンプセットをレンタルすることになっちまった。ご苦労さん、タチフサグマ、アーマーガア」
「ふう、重たかった?お疲れ様、ボーマンダ。ミロカロスも長旅お疲れ」
手持ち2人を労ってボールに戻す。聞き込み自体はすぐ終わりそうな小さな村だが、田舎の夜景はきっと美しいだろうということでキャンプセットをレンタルしてでも泊まろうという話になったのだ。一応私もヴィデもポケモンを専門に仕事をしているが、プライベートではポケモン以外を撮影することもある。
「私、こういうキャンプ初めてかも。旅をしてたときは毎日どこかしらに泊まれるよう計画を立ててたから」
「相変わらずのお嬢様っぷりだな。テントの張り方わかるか?」
「ふふ、わかんない。教えてもらえる?」
そう悪戦苦闘しながらようやくテントを張り終えると、物陰の視線に気がつく。アブソルが反応しないのは珍しいと思ったが、その正体を見て納得した。
「そこの子供、かくれんぼでもしてるの?それとも親とはぐれた?」
視線の主は少年だった。
「にーちゃんねーちゃんってさー、ムロの外から来た人でしょ!ねーねー、都会の話聞かせてー!」
害意もないしシャッターチャンスでもない。アブソルが放置したのはそういう理由だろう。とはいえ私は子供は嫌いではないが、相手の仕方が微妙にわからない。より正確に言えば怖がられる。
「お話もいいけど、おねーさんたちカメラマンなの。よかったら写真見る?」
……一応壊れてもいいカメラに見せるためのSDカードのデータを移す。
空を舞い炎を吐くリザードンと、それに負けじと電撃を放つジュラルドン。
闇の中から急所を狙わんと銀色の爪を振りかぶるマニューラ。
あまりの速さに「透明なポケモン」とさえ思われていたテッカニン。
目をぱちりと開き、今この瞬間テレポートしようとするケーシィ。
SDカード内の様々なアルバムを少年に披露する。
1枚500円で売っている様々なスナップ写真に少年は目を輝かせる。自分の作品が素直に評価されるのは、素直に嬉しい。
「いい写真見つかったか、ボウズ?見終わったら兄ちゃんの撮った動画も見ていけよ、な!」
と言いながらヴィデが口を挟んでくる。思わず緩んだ頬を引き締める。
「ねーちゃん、なんで動画撮影ってのがあるのに写真撮ってるの?」
「確かにー、動画のほうがよくなーい?」
少年は人によっては卒倒しそうな質問を平然と口に出してくるし、ヴィデは悪ノリする。一応答えはあるのだが、子供にもわかるよう咀嚼するとなると難しい。
「……まず、共有までの時間が短い。その映像全部見せるってなったら何時間?最低2時間はかかるんじゃない?ファイルの重さもこれに関わってくるわね」
「ぐっ……」
「次に、要点をかいつまんで表現できる。その2時間の中で結局見せたいのは10秒そこらでしょ?無駄がないのよ、私の写真には」
「ぐうっ……」
「とりあえず最後。テープと違って紙一枚で表現できるから額縁に入れたらちょっとしたインテリアにもなる。こんなところかしら」
「うぐぐぐぐ……」
少年はなるほどー!と目を輝かせているが、ヴィデはそれが気に入らないようでベラベラと動画の良さを熱弁している。
結局少年は私のスナップ、リザードンVSジュラルドンのものを買っていった。一方ヴィデのバトルビデオで食い入るように見ていたのもリザードンVSジュラルドン。つくづくリザードンは子供たちに人気だと思う。
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「星、綺麗ね」
「ああ」
夜空には満天の星々が埋め尽くさんとばかりに輝いている。
「最初ムロに来たときは、何もない村だと思ってたわ」
「それは失礼だろ」
「ふふ、仕方ないじゃない。日帰りだったんですもの」
「……」
「……」
少しの沈黙の後、ヴィデが口を開く。
「お前今日、楽しそうだったよな。あの子に写真売るときとか。珍しいって思った」
「そうね、珍しいと思うわ」
少し言葉を悩んで。
「あの子はヴィデのビデオを見て、ちゃんと物語を理解した上でリザードンVSジュラルドンの写真を買った。それが嬉しいのよ」
「物語を理解、ねぇ」
「そう、写真にはシャッターチャンスまでの物語がある。そこに思いを馳せてくれる人がいるなら、私は嬉しいわ」
ふふっ、と思い出して顔がほころぶ。
「俺は動画専門だから完璧には理解できないけどよ、『ここだ!』ってとこを他の人にも共感してくれるとさ、すっげー……」
カシャッ。ぽつぽつとした会話をシャッター音が切り裂く。
「お前、人がいい話してる時に……」
「いい話よりもいい写真よ。満天の星空をバックにしたキャモメ。かなり近づいてくれたわね。人に慣れてるのかしら」
「はぁ……」
「ふふっ」
「何だよ」
「私たちって天邪鬼ね。物語を撮りたいのにカメラで一瞬を捉えて、一瞬を共感してほしいのに動画で長々撮影して」
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