河川敷。二つの影が舗装された道を見ている。
「現れませんね。ここだと思うのですが」
「三人が見たんだ。間違いない」
月明かりの冷たい光に照らされ、水面が波紋を呼ぶ。
「……自分、夕飯買ってきます。先輩は?」
「いつものベタベタ焼、あとは」
「ローゼコークですね」
坂道を上がりかけ、後輩は肩を止めた。
「あれです」
明かりがある。
右へ、左に。
左から、右へ。
ネオンピンクな横長の長方形は、それから聞こえる音楽に合わせてゆらゆらと揺れる。
「近づいても大丈夫なやつです? もし遷移者なら治安維持局にーー」
後輩の言葉をよそに、河川敷を足早に下る。
「あっ……先輩ちょっと」
続いて背中を追う。
川の流れる音が視線の先に、光の背後に回り込んだ。
「おい、君。ここ数日の連続失踪事件について話がある」
「あのっ、あなたの目撃情報が出てますので、変な気は起こさないように」
「ワタクシがデスか? そんなコトに関わりした覚えナイデース」
暗闇に目が慣れたおかげで、ハッキリとそれの輪郭が浮かび上がった。
艶のある銀色のボディに機械的な関節。ただし、可動部のサビは生活臭を感じさせる。
「申し遅れました。ワタクシ、ボルボノ5世。音楽と躍りの国、ドルハーンの出デス。以後、お見知りおきを」
「早速だが、ーー失踪事件を我々は追っている」
録音機を取り出す。ハラハラと怖じ気づく個体に後輩は語りかける。
「まあ、武蔵自治領の認可が降りていない個人的なものですが……」
「おい、今言うなよそれ」
「つまり、非公認の追跡屋サンですか! 実にアンダーグラウンドで素敵デス」
失敗した後悔とは裏腹に、ズイズイと二人に迫る機械仕掛けの彼。
「……我々は『追跡屋』だ。失踪者の通報を受けて現場に来たが、この始末」
「ですが、ここにあなたがいた。偶然とは思えません。少し、話を聞かせてもらえませんか」
動きを止める。目に該当するピンク色の液晶が、ジジッと音を漏らした。
「もちろん! 事にワタクシ、コトあるゴトに取り調べを受ける才があるのデス。『事情聴取』にはオマカセテクダサーイ」
先輩は近くのベンチに腰をおろす。
「4人の男女が行方不明なのは、ご存知かと。容疑者として浮上したのは君だ」
「なにより、三人それぞれの証言では、あなたと話している最中に姿を消したらしいんです」
彼は心当たりがあるのか、頭部を大きく前後に傾けた。
「急に目の前からショートするのですよ! 異国情緒思いまシタ。事件性はナイとばかりで……」