黄金樹から出禁くらったので、フォドラで生きていきます。 作:エクストラ・バージニアオイル
巨大な黄金の大樹が中心にそびえる大地「狭間の地」
支配者たれと謳われた大ルーンを持つ「デミゴット」は皆、一人の男によって斃され。
運命の死が解き放たれた世界は今まさに、燃えていたのである。
世界を覆う火の中心は、狭間の地ならばどこであろうと見える黄金樹。
輝きを放つその大樹は火の粉を散らして燃え上がっているのだ。
そして、その樹の根本。王都ローデイルにある大樹の中へ続く広間から続く道の先で、今まさにデミゴット共を全て討ち倒した一人の男が大いなる獣との一騎打ちをしていた。
「オオオオオ──────。」
咆哮と共に放たれる無数の光線。
空から降り注ぐそれを走りながら躱していく男、その手には何も握られておらず、使い込まれた皮のグローブに似たものが巻かれている。
その様子をただ静観はしない、光線を放った存在である巨大な黒と黄金の入り混じる「エルデの獣」。
すかさず、その腕に握られた大剣を振りかざし飛びかかる。
「......。」
巨体から放たれる衝撃を紙一重で避け、生じた隙に拳を放つ。
流麗な拳の2連撃。
一撃ごと打ち込まれるたび、獣の体から輝く粒子が血液や肉片の如く飛散する。
相当に効いているのか、矮小な人間の体躯では到底倒し得ない神に似た獣が粒子をこぼす度に怯み、肢体を震わせる。
「オオオオオ────!!!」
これまでよりも一際大きな咆哮を放ち、光の粒子たちが舞う。
それは飛翔した獣から放たれる最後の一撃だった。
拳を納め、男が空を見上げる。
上空を泳ぐ獣は弧を描き、光の濃度を上げていく。
それを確認したと同時に再び駆け出した男。
すでに攻撃が来ると知っていたのか、周囲を取り囲まんとする光輪を一つ。また一つと飛び越えていく。
その最後の一つを飛び越えた瞬間に、輪の中心が爆ぜた。
巨大な光の柱が昇る。
獣は素早く滑空し着地、自身にとって最大級の攻撃を喰らったであろう男を探す。
のだが、既にそれは手遅れであった。
「ゴキャアッ」
練り上げられた気合いを一点に込めた戦技「発勁」。
獣の懐に潜り込んでいた男の最後の一撃が勝敗を決めた。
もはや獣に抗う力は残っていない、体を構成する光と影が白い輝きをまとって散っていく。完膚なきまでの敗北であった。
「 GOD SLAIN 」
狭間の地に君臨する最後の神たる獣を討った男は「落葉格闘」と呼ばれるその古い皮グローブを懐にしまい、獣が去り暗くなった空間に残るソレに近づく。
壊れかけのマリカ。かつてエルデンリングを以って狭間の地を治めた女王、その無惨な姿が首を地面に転がしながらも未だ形を保っている。
男が、その体へ触れると。
「.......もう辞めてください。」
懇願する女性の声が聞こえた。
こんな事は初めてだったのか、男は思わず後ずさる。
「....!?」
「いったい何度......あと何度世界を繰り返すのですか......。」
「......?」
「もうこれで100度目です....アナタはこの繰り返される運命の中でまだ何を求めるというのですか......?」
「.......。」
腕を組んで考えるそぶりを見せる男、だが数秒ほど考えた彼が出した答え。
ソレはとぼけたように両手を広げて肩をすくめる仕草だった。
「もう......もう、いいでしょう.......新しい地へと向かいなさい......いや、向かってください.......アナタはもう狭間の地に居なくてもいい........というか二度と帰って.......こないで....!!」
「!?」
なんというか切実な言葉だった。ここまでボロボロのマリカ像が喋るというのも不思議だったがそれ以上に、自分を追い出すためにここまで頑張るのかとか思ってしまう。
などと考えていたのが、彼の最後の記憶だった。
エルデンリング、その眩い輝きが彼を押し流していく。
「どうか......満足のいく世界に行けるように........。」
マリカの残した言葉が光の中で響いた。
───────────────。
気づくと、褪せ人は見知らぬ村の近く。
森の中で寝っ転がっていた。
「.......?」
とりあえず、現在地を確認しようと地図を開いた。
だがその地図に載っていたのはリムベルドやらケイリッドなどを含む、いつもの狭間の地全体マップくんじゃない。
「 フォドラ 」 と右上の端に刻まれた見知らぬ大陸だった。
「........????」
マリカの最後の言葉を思い返したが、本当に違う世界に送られるとは微塵も思っていない褪せ人は固まった。
それもそのはず。彼は狭間の地を100回旅して、100回の終わりを見届けてきた。
拾える武器も道具も情報も全て集めたし、自身の能力も永遠に近い研鑽〈王朝カエルマラソン〉を通じて磨き上げている。
おまけに他の褪せ人や、愉快な人々との交流を通じて彼らを救い、時には介錯し、絆を育んできた。(当社比)
そしてその戦闘技術もまた、狭間の地にいるすべての「敵」との戦闘で、無意識に相手を屠れるほどのものとなった。
そんな彼が想像できるだろうか。決められたレールを永遠と走る苦難すら物ともしない彼が、全く新しい「新天地」へ行くなどと。
「.......。」
そう、想像はできなかっただろう。
だからこそ彼はただ己の初期位置へ立ち返り、近くの村落へ歩き出した。
何も持たない「巫女無し」と白面に煽られていたヒヨッ子の自分を取り戻し、もう一度冒険を始めるのであった。
【 ルミール村 】
「あっ、おーい!ジェラルトさん!」
のどかなフォドラの片田舎にある村、ルミール村。
その村の入り口にある馬房で一人の男が馬の体を洗っていた。
「おう、どうしたんだい爺さん?もうすぐ最後の馬を洗い終える所だからもうちょっと待っててくれ。」
ジェラルト、と呼ばれた男は額を拭いながら振り返る。
しっかりと鍛えられた胸板と浅く刈り上げられたブロンドの髪、シワこそあるが端正な顔立ちの彼は40代ほどに見える。
「ああ、ありがとうよ!手入れ道具は俺がしまっておくからさ。村のすぐ近くにある森、あそこに行って欲しいんだ。村の子供達が恐ろしい化け物を見たって言ってるもんでよ.....。」
「化け物ぉ?一体どんなヤツだ?」
「それが...石の顔をして、胴体は騎士みたいな甲冑の、杖とデカい剣を担いだヤツなんだそうだ。」
「いやなんだそりゃ。俺もあちこち仕事で行くが、そんなトンチキな化け物聞いた事ねぇぞ。」
「まあ俺も子供らがイタズラでもしようとしてんじゃねえかとは思うんだが、どうにも様子が普通じゃなくてな。頼めるかいジェラルトさん?」
「よしわかった、ちょいと確かめてくる。オーイ!ベレス!!お前も来い!」
ジェラルトが大声で呼ぶと、近くの畑で雑草を抜いていた少女が立ち上がった。
無表情な少女は、彼の近くへ来ると首をかしげる。
「近くの森に化け物が出たそうだ。お前も付いて来てくれ。」
コクリと頷いた少女は、近くの家へ入ると手早く剣を二振り取って来る。
それを身につけたジェラルト、そしてベレスの2人は森へと向かった。
「....!!」
一方、森の中では不思議な風貌の人物が山菜を摘んでいた。
一つ摘んでは珍しそうにしげしげと眺めて。満足したら懐にしまう。
脇目も振らずにしゃがんで立ち上がって、繰り返しながら森の中で何度も採集し続けている。
先ほどまで村落へ向かおうとしていたはずだったが、存外に興味関心が移りやすい性格なのか採集を止める様子はない。
のだが、その手が不意に止まった。
「.....この辺りにいそうだな、いくらか植物が摘まれてる。気をつけろよ?」
「......(コクコク)」
何やら近くに誰かが来ているようだ。
だが人語を話しているので敵対者では無いだろう、そう判断した化け物は懐からティアラのようなものを取り出して被る。
するとそこにいた化け物は細い一本の若木へと変身する。
しばらくすると、その場所へ二人がやって来た。
「ん、ここで痕跡が途切れてやがる。用心しろ。」
「......。」
剣を抜いて既に警戒体制だ。ひとりは腕の立ちそうな男、もうひとりの少女も静かな雰囲気だが鋭い剣気は隣の男ゆずりにも見える。
だが、理性的な雰囲気の人物らだ。
変身を解いて話せば敵意がない人物だと分かってもらえるかもしれない。
........あれ。俺は狭間の地でまともに言葉を話したことがあっただろうか。
思い返すと身振り手振りでしか話してない気がする。
それこそお針子のボックに少し喋りかけた(道具を使って)くらいしか無いと思う。
俺は、喋ることができない可能性がある......?
「.....!!!」
無言のまま、プルプルと細木になった身を震わせる。
のだがそれがいけなかった。
「?」
「おい、どうしたベレス。そっちには細い若木しかねぇぞ?隠れられる場所なんざどこにも...。」
ジェラルトが変わらず近くの木の上や茂みを警戒する中で、ベレスは一本の細っこい木へと近づくと軽く叩いた。
フワァァァァ.....。
と、霧散する木の蜃気楼。
その中から変なポーズで固まった謎の人物がひとり。
「.....。」
「.....。」
「......は?」
無言の少女と謎の人物。
彼らが無言で見つめ合う様子、素っ頓狂な声を上げたジェラルトがその場にいる全員の気持ちを代弁した。
「....!!」
見つかってしまったことに気づいたであろう化け物(?)は慌てながら人畜無害であるとアピールしたいのか両手をバタバタと動かしている。
「動くなッ!!」
ジェラルトに一喝された化け物。ぴたりと動きを止めた。
「お前、言葉は分かるようだな?何者だ、何故擬態していた?答えてもらうぞ...!」
「!?.....!!────ッ!」
「なっ、なんだ?言葉を話せないのか...?」
再び身振り手振りで交流を試みる化け物。だがここは狭間の地ではなく理性的な人間が文明を育むフォドラの片田舎。
彼の行動はどうやら無意味のようだ。
だが、彼は幸運ではあったらしい。
「......(スッ)」
「...!(スッ)」
「ガシッ。〈ポワン〉(親愛度上昇の音)」
無表情の少女が手を差し出す。
何かを察したのか、彼もそれに応え握手を交わした。
互いに通じるものがあるみたいで無言なままの彼らには絆が芽生えたようだ。
「......。」
「.....。」
「お前ら....ちったぁ喋ったらどうなんだ?」
当人ら以外には理解し難いコミュニケーションを経て、どうにか仲間になる兆しが生まれたようだ。
不可思議な無言の二人、保護者役のジェラルト。
これが彼らの珍道中の幕開けであった。
色々と指摘点も多いと思うのですが、やはり無言のままというのはいささか難しいですね。
早めにジェラルトパパに個別指導してもらって話せるようになってもらうべきか迷っております。
あと1話挟むか挟まないかで本編冒頭に合流したいと考えております。
応援くださるとありがたいです。