黄金樹から出禁くらったので、フォドラで生きていきます。   作:エクストラ・バージニアオイル

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正直無口すぎるのも考えものなので、褪せ人くんを喋らせる回です。

あとはフォドラの大まかな情報を覚えて、褪せ人くんの情報をジェラルトパパ&女主人公ベレスちゃんに教えます。

ジェラルトの胃が保つかは知りません。


「この先、交流が有効だ。」

 

 「あ、い、う。」

 

 「あ.....うぃ......ゔ....。」

 

 フォドラの片田舎、ルミール村。

その村でもそこそこ大きめな一軒家の中。

仏頂面の男が同い年くらいの少女から羊皮紙に書かれた文字の読み方を教わっていた。

 

 

 「はぁ...。ウチのほど無口な奴はいないと思っていたが世界は広いな。しかし、この地図は一体どこなんだ...?」

 

 

先生と生徒を仲睦まじく....おそらく.....多分、しているであろう無口で表情の乏しい二人の横で唸りながら断片的な地図や手紙などを見ている男「ジェラルト・アイスナー」は頭を抱えていた。

 

それもそのはず、フォドラとは全く異なる世界「狭間の地」に関する書類ばかりを見ているのである。

 

曲がりなりにもジェラルトは元セイロス騎士団の団長だ。

このフォドラはあらかた仕事などで行き来しているし、ダグザやブリギット、それに東のパルミラなど、フォドラの近隣国に関するある程度の知識や場所などは知っている。

 

だが、その彼にも全くと言っていい未知の大地がそこにあるのだ。

こればかりはどんな賢人に聞こうと分からない場所かもしれない。

 

 

 「狭間の地、リムグレイブ、リエーニエ、ケイリッド、アルター高原に王都ローデイル...。駄目だ、どれも聞いた事がない土地ばかりだな。」

 

 

2時間ほど粘ったが、先に根を上げたのはジェラルトであった。

そも、彼は武官でありこういった書類から未知を推察する学者の真似事は門外漢。

むしろよく2時間も推理してみたと褒めるべきだろう。

 

が、そんな心もつゆ知らず。

 

 

 「こんにちは。」

 

 「ぐぉん...にち、ゔぁ。」

 

 「もう一回。こんにちは。」

 

 「くぉ...んにち、は。」

 

 「良くなった。」

 

 

緩やかに言葉を覚え始めた男を拍手しつつ褒める少女。

男も満更でないのか、照れくさそうに頭をかいている。

 

まぁ表情はこれっぽっちも変化していないが。お互いに。

 

 

 「さて、連れて来ちまったはいいが。村人にコイツをどう説明したものか...。」

 

 

今のところ、村の森で彷徨っていた変な人物を連れてきたというのが村人からの印象だろう。

ベレスにどうにか意思疎通をしてはもらったが、村に入る時にはまだ怪しい石像の仮面と赤銅色をした鎧を身に付けていたので、彼らにとっては怪しい人物を捕まえたと思われていても不思議ではない。

 

今のところ。この男の名前は不明。

出身は「狭間の地」と呼ばれる異世界。

おまけに武器や防具を自由に出し入れ出来る不可思議な能力?魔法?を操る。

言葉は理解できるが、話すことは難しい。

 

と、ここまでの情報が分かった。

ならコイツが使える人間であるとアピールさせれば村人の印象も自ずと変化するだろう。

 

 

 「なぁお前、えっと...あー。名前を決めねぇとマズいな。」

 

 「?」

 

 「名前だ、俺とかコイツとか。そういう呼び方だけじゃ人に紹介は出来んだろう?お前、名前は覚えているか?」

 

 「んん.....。」

 

 

首を傾げる男、名前を知らないようだ。

曲がりなりにも王都なり、人間の文明がある世界から来たようではあるが記憶喪失か何かだろうか。それならば。

 

 

 「名前を付けねぇとな。ベレス、お前が決めてやるか?」

 

 「なら、メリク。」

 

 「メリク?何か名前の由来でもあるのか?」

 

 「メリクル。村に来た行商人が強いと言っていた剣の名前。」

 

 「あぁ、鷲獅子戦争で有名になったアレか。お前は本当に剣が好きだな。」

 

 「うん。どう、キミの名前。」

 

 「メリ、ク?メリク。なまえ、メリク?」

 

 

何度か復唱する彼、理解はしているのかこちらに聞いてくる。

 

 

 「あぁ、メリクだ。お前さえ良ければこれからそう呼ぶがいいか?」

 

 「メリク。わかった。」

 

 

どうやら良いらしい。名付け親のベレスも腕組みしながら嬉しそうに鼻を鳴らしている。

ここまで感情を露わにするのはいつ振りか、コイツを、メリクを拾って来たのは正解だったかもしれない。

 

 

 「よし、名前も決まったから後はメリクの仕事だな。俺の見立てが間違っていなければお前は最上級職の〈エピタフ〉になれる魔法剣士の才能があると思うんだが、合っているか?」

 

 「まほう、けん、どっちも、つかえる。」

 

 「おっ、合っていたか。そうなるとどこかの軍か名うての傭兵団にでもいたか。」

 

 「ひとり、だった。」

 

 「1人?流れの傭兵ってことか?驚いたな、魔法と剣を両方使える傭兵は珍しいぞ。お前が担いでた巨大な剣に魔法の杖、あんな組み合わせは俺も見た事がない。」

 

 「めずら、しい?」

 

 「ああ。となると実力が気になるな。メリク、少し手合わせしてくれるか?軽くでいいんだ。」

 

 「父さん、私が相手でもいい?」

 

 「気になるか?ベレス。」

 

 「うん。」

 

 「てあわせ、かるく?」

 

 「ああ、訓練用の木剣があるからコレを使ってくれ。先に一本、相手に当てた方が勝ちだ。それでいいか?」

 

 「くんれん、わかった。」

 

 

ベレスとメリク。両者合意のもと、家の外へ出て裏側にある井戸の近くへ移動する。

丸太と麻紐を巻いて作った木人形が数体と、何本か矢が刺さった的などが置かれた簡易的な訓練場だ。

 

審判役となるジェラルトが訓練場の中央に立ち、ベレスとメリクが互いに向かい合う。

 

 

 「そんじゃ、両者とも構えて。はじめッ!」

 

 

堅苦しい儀礼は抜きに、合図が響く。

 

先制攻撃を仕掛けたのはベレスだ。

わずか二歩の駆け足でメリクの懐に入り込む。

 

 

 「っ───ゴッ。」

 

 「!」

 

 

前に踏み込んだ右足に力をかけ、袈裟掛けに剣を振り抜く。

 

はずであった一撃が弾かれる。

 

 

 「ほう!」

 

 「なっ...!」

 

 

思わず、感嘆の声を漏らすジェラルト。

そしてベレスも目を見開き驚愕する。

 

打ち込まれた攻撃を、構えた剣で受けることや受け流す事はフォドラの剣術体系にも存在する。

だが、このように剣をかち上げて弾く様な技術は存在しない。

 

これは褪せ人であるメリク、彼のオリジナルであり、原点たる技だ。

 

 

 「すぅ、ふっ。」

 

 「くぅ...ッ!?」

 

 

そしてガラ空きになったベレスの胴へと鋭い突きが飛ぶ。

咄嗟に身をよじり、距離を取るために後ろへ跳躍。

 

着地と同時に構え直すベレスに追撃が舞う。

 

 

 「ガコン、ガン、ゴッ。」

 

 「っ!!」

 

 

上段からの振り下ろし、これは受け止める。

 

すると手の中で剣をくるりと一回転させて、その場ターンからの胴薙ぎ一閃。

なんとか剣を正面に引き寄せて、受け流し。

 

しかし、メリクはそのまま受け流された勢いに任せて跳躍。

空中で剣を両手で握り、全体重をかけて振り下ろす。

これもなんとか上段に構えて受けを試みる。

 

しかし、それがベレスの致命的なミスであった。

 

 

 「重い...!」

 

 

メリクの放った技の名は「獅子切り」。

戦技と呼ばれる狭間の地にある技法の一つ、これは生半可な防御は叩き潰す豪剣。

受け止めれば最後、押し切られてしまうのだ。

 

すなわち、勝負は決した。

 

 

 「ギシッ、ゴガッ────。」

 

 「うっ!?」

 

 

一瞬にしてベレスの受けは崩され、肩を強かに打ち据えられた。

 

 

 「そこまでッ!!」

 

 

ジェラルトの号令と共に剣を再び構えようとしたメリクの動きが止まる。

 

 

 「....(スッ)」

 

 「...?...ん。」

 

 

膝をつくベレスへ、手を差し出すメリク。

その表情は変わらない。しかし自身が攻撃を当てた彼女の肩をしきりに見ているので、心配はしているのだろう。

 

 

 「問題ないよ。」

 

 「(コクリ)」

 

 「ベレス、痛むか?最後の大技かなり派手に食らったろ。手当てするか?」

 

 「大丈夫。」

 

 

傭兵とはいえど、年頃の娘だ。

ジェラルトもメリクも心配そうに見ている。

 

当人はさして気にはしていないが、しばらく彼女を労わろうとする彼らの行動は続いた。

 

 

 「さて、さっきの立ち会いだったが。お互いの感想はどうだ?」

 

 「強かった。」

 

 「さいしょのはあぶなかった。」

 

 「もう少し詳しく説明できねぇか...?」

 

 

時刻は少し経ち、結局ベレスの肩に手当てをした後。

家の中でジェラルト主導のもと試合の反省会をしようとしたのだが。

 

今回戦った2名がどちらも深刻な語彙力不足により難航していた。

 

 

 「ラチがあかねぇから、俺から見た総評を言うぞ。まずベレスは初めての相手なのもあるが初撃を弾かれたからって慌てすぎだ。もう少し攻めに転じるべきだな。」

 

 「うん。」

 

 「そんでもってメリク、お前本気じゃなかっただろ?」

 

 「しあいだったから。」

 

 「やはりそうか...。」

 

 

本気ではないと言い当てられたメリクはさして気にする様子もない。

しかし、隣にいたベレスはメリクの方を凝視。

無表情ながらも明らかに驚いている。

 

 

 「実力を調べるための立ち会いだったが、少なくとも初見でベレスが一太刀貰うほどの実力。けど違和感があるんだよな...。なぁメリク。」

 

 「?」

 

 「お前の一番得意な武器は剣じゃないのか?」

 

 「ちがう。」

 

 

それを聞いたベレスはしゅんとうなだれ、心なしか落ち込んだように見える。

声には出さないが娘がいつもより感情豊かに見えるのでジェラルトは嬉しく感じた。

まぁそれはそれとして、確認するために質問は続ける。

 

 

 「なら、何が得意なんだ?」

 

 「とくには。ぜんぶつかえる。」

 

 「全部??武器なら何から何までって事か?」

 

 「そう。」

 

 

思わずベレスと目を合わせるジェラルト。

が、百聞は一見にしかずと言う。

 

確かめるために再度、彼らは訓練場へと向かった。

 

 

それから数刻後。

 

ジェラルトは腕を組んだまま、天を仰いでいた。

ベレスは相変わらず無表情、だったが明らかに目の焦点が合っていない。

 

 

 「これで全部だ。」

 

 「......そうだな、お前の言う通りだメリク。全部使えるんだな。」

 

 

観念したように無数の武器をそこかしこに置くメリクに向き合ったジェラルト。

 

そこにある武器の数、およそ300ほど。

 

短剣、直剣、刺剣、曲刀、倭刀、大剣。

槍、斧槍、鎌、両刃剣、斧、大槌、暗器。

おまけに鞭、フレイル、弓、籠手や爪、杖、大盾に。

よく分からない邪教の祈祷道具のあれこれ。

 

おびただしい程の武器が並べられていたのである。

 

 

 「あと実演する時はどんな魔法か教えてくれ...お前の顔が竜になった魔法見てからベレスの意識がずっとぼんやりしてんだからよ。」

 

 「すまない、こういうまほうをしらないとは、おもわなかった。」

 

 「ここまで色んな魔法を使えるとは本当に恐れ入る。どんな場所なんだ、狭間の地ってのは...。おーいベレス!全部終わったぞ!」

 

 

と言いながら、彼女の前で手を叩くとハッと意識を取り戻した。

 

 

 「父さん、今の竜は。」

 

 「あぁそこから記憶がねぇのか、アレ以外にもとんでもない魔法が山ほどあったからむしろ記憶がねぇ方が混乱しないで済む。もし見たいなら、今度メリクに頼んでみてくれ、俺はもう御免だね。」

 

 「分かった。」

 

 

そう言うや否や、ベレスが竜と化す魔法をメリクに見せてもらおうとするので胃をキリキリさせながら止めるハメになったジェラルト。

 

 

 

さらにその後。

家に戻ったジェラルトとベレス、そして先ほどまで訓練場に並べていた武器を数秒の内に仕舞い込んだメリク。

 

ジェラルトのみ浮かない顔のまま夕食の時間を迎えていた。

 

食事をほとんど摂った事のない非文明人のメリクに、再び先生としてベレスが簡単な食事マナーとカトラリーの使い方を教えながらの食卓風景。

 

 

 「なぁメリク。お前、なんでこの世界に来たのか分からないのか?」

 

 ふとジェラルトが口を開く。

 

 

 「わからない。マリカにとばされた。」

 

 「マリカ?そいつは見せてくれた狭間の地の資料に書いてあった女王で合ってるか?」

 

 「うん。じょうおう、大ルーンもった、デミゴットのおやだま。」

 

 「大ルーン...?それは初耳だな。何なんだそれは?」

 

 「てにいれると、ちからあがったり、たいりょくふえたり、生まれ直したり」

 

 「待て待て、それは『紋章』とかじゃねぇのか?」

 

 「もんしょう?」

 

 

苦戦しながらも夕飯を食べつつ問答していたメリクが顔を上げた。

 

 

 「紋章ってのはこの世界で大半の貴族どもが持ってる力の象徴だ。それを持っているだけで権力を築く土台にもなれば、戦場で矛を振るうだけで雑兵どもが軽く吹き飛ぶような力まで発揮させる。そういうモノが存在しているんだ。」

 

 「大ルーン、べんりじゃない。ルーンの孤、ないとむいみ。」

 

 「何か代償が必要になるわけか。じゃあ今のお前はその大ルーンの力を使えないと?」

 

 

そう聞かれたメリクは少し考えるそぶりを見せた後、首を横に振る。

 

 

 「......わからない。」

 

 「代償になるルーンの孤ってヤツが無いからか?」

 

 「ちがう。それはある、ためしても、つかえなかった。」

 

 「飛ばされた弊害かもしれねぇな。話は戻るがメリク、お前これからどうする?元々いた世界に帰りたいか?」

 

 「それも、わからない。」

 

 

ジェラルトが「分からない尽くしじゃ俺たちだって助けれねぇ」と、お小言を言おうとしたが、まだ続きがあった。

 

 

 「あのせかいで、おれは、おうになれといわれた。」

 

 「王?王様って事か?誰に言われたんだ。」

 

 「しらないひと。それでなんども、くりかえした。」

 

 「なんども、おうになって『律』をてにいれて、きおくがとぎれて。」

 

 「影の地ってばしょにもいって、ラダーンとたたかって。」

 

 「100かい、くりかえしたけど、おうになったあとはわからなくて。」

 

 「でもつよさ、アイテム、そのままあって、おなじもの、ひと、またてにいれて、しりあって」

 

 「じぶんだけ、せかい、くりかえしてた」

 

 

それは辿々しく、覚えたての言葉で何かを説明しようとする子供のようだった。

 

王になれと言われ、幾度となく旅をした事は想像に難くない。

だが王になった後の記憶がない事や「繰り返した」というのは一体どういう事か。

嘘を言ってるようにも見えず、かといってそれがどんな理由なのかも見当がつかない。

 

だが、それは気の遠くなるような日々だったのかもしれない。

彼の顔立ちや、剣気、持ちうる武技と魔術の数々。それらは並大抵の人間では一生かかったとしても成し遂げられない熟達したソレだ。

幾度と死線を潜ってきたのだろう。

だが、その終わりが世界からの追放とはあまりにも悲しすぎるではないか。

 

あと結局、ラダーンが誰なのかはよく分からなかった。

 

 

 

 すると

 

 「辛かった?」

 

 ぽつりと、ベレスが問いかける。

 

 「つらくない、もくてき、あったから」

 

 「?」

 

 「せかいのぜんぶ、しりたかったから、つらくなかった」

 

 

折れた人間の目では無かった。

色褪せた瞳には、未だ真っ直ぐな意志が籠っている。

 

 

 「元の世界に、未練はあるか?」

 

 「みれん?」

 

 「やり残した事とか、そういうのだ。」

 

 「.....アイテム。」

 

 「アイテム?何か貴重なモンでもあったのか?」

 

 「ぜんぶのアイテム、いっぱいになるまで、あつめてない」

 

 

どこまでも、探究と収集にしか興味はないらしい。

 

 

 「ははっ、そうか。それは立派な戻る理由だな。」

 

 「べつに、もういい。いまは、このせかい、しりたい」

 

 「私達のいる、フォドラ?」

 

 

ベレスの問いに強く頷く。

 

 

 「もんしょう、ぶき、アイテム、もんすたー、しろ、ダンジョン、ひと」

 

 「ぜんぶ、みてみたい、ぜんぶ、しりたい。」

 

 「...そうか。森でお前を見た時はどこから来た化け物かと思っていたが、この世界をもっと知りたいんだなメリク。」

 

 「うん。」

 

 「なら決まりだ。お前、俺の傭兵団に入らねぇか?」

 

 「ようへい?」

 

 「そうだ。世界を見て回りたいなら一人じゃ難しいだろ。俺の傭兵団ならフォドラのあちこちを巡りながら仕事が出来る。悪い話じゃないと思うが、どうだ?」

 

 「やってみたい。」

 

 

即答だった。彼は好奇心の塊みたいな人物なのだろう、褪せた瞳を先ほどより少し開いて食い気味に返答した。

 

 

 「よし。明日の朝には村を出発する。忘れ物がないようにだけ気をつけろよ?」

 

 「うん。ごはんたべたら、もりのいきもの、しょくぶつ、ぜんぶあつめてくる。」

 

 「メリク。村の人が食べる山菜や生き物もいるから、あんまり多く取っちゃダメだよ。」

 

 

ベレスの忠告に素直に頷くと、夕食を食べ進める速度を上げた。

結局ボロボロと食べかすを口の周りに付けるわ、こぼすわで飯の時間が伸びたメリクだったが。

 

食卓の雰囲気は食べ始めた時より、少し明るかった。

 

 

 

夕食時間も終えて、食器を片付けた後。

メリクはすぐ森の中へ駆けて行った。

 

早く戻れよと、ジェラルトに言われたが聞こえていたかどうか。

かれこれ20分ほどは森に籠っているといった具合であった。

 

部屋に残った親子、ベレスとジェラルトは明日の出発に備えて装備や持ち物の最終確認をしていた。

 

黙々と作業をしていた中、ジェラルトが口を開く。

 

 

 「ベレス。お前、最初にメリクを見た時どう感じた?」

 

 「.....どうって。」

 

 「見てくれは最悪だっただろ。どうして話せるって判断できたのか気になってな。」

 

 「多分、雰囲気。」

 

 「雰囲気?」

 

 

手元の革袋に傷薬をいくつか入れて、ジェラルトの方に向き直る。

 

 

 「子供みたいだったから。」

 

 「それは、村にいるような子供って事か?」

 

 「うん。あの擬態が解けた時、イタズラがバレて慌てる子供みたいに見えた。」

 

 「ははっ、そうか。言われてみればそう見えるな。」

 

 「私も。聞いていい?」

 

 

ジェラルトは少し驚いて、優しく頷く。

 

 

 「俺がメリクをどう思うか、って所か。」

 

 「うん、今日出会ったばかりなのに傭兵団に入れるって言ったから。」

 

 「危ういな、って所が8割。面白い、ってのが2割だ。」

 

 「珍しい。」

 

 

そう聞くと、笑いながらジェラルトは続ける。

 

 

 「それを言うならベレス、お前もアイツと会ってからはいつもより多く喋ってるぞ。それなりに楽しんでるんじゃないか?」

 

 「...どうだろう。」

 

 「どうだろうな?」

 

 

少しイタズラっぽく口元を綻ばせるジェラルト、それには気づかず準備の手を動かすベレスだった。

 

 

 

 

 「どうしよう...。」

 

そんな親子水入らずの様子をつゆ知らず。

 

森の中で元気にアイテム収集に没頭する一般褪せ人メリクであったのだが、彼はとんでもないモノと遭遇していた。

 

 

 「祝福だ.....。」

 

 

狭間の地名物、褪せ人たちの生命線でもある輝く黄金のキャンプ地である『祝福』と呼ばれるものがあったのだ。

 

試しに触ってみると狭間の地のソレと同じだと分かる。

 

そして、この祝福は自分がベレス達と出会う前に森の中で出した排泄物(直球)の上に現れているというのも分かった。

 

 

 「う○こ...黄金の排泄物...祝福...?」

 

 

狭間の地ではそもそも食事をせずとも生きられたので排泄エアプだったメリク。

アイテム収集を優先して無意識に脱糞をしていたが為、彼もこの祝福が自分のケツから出たものに起因するとは気づいていなかったのである。

 

なので今、彼の常識は「う○こは祝福を作る材料」という誤った方向へ舵を切ってしまった。

 

 

 「う○こあつめよう。」

 

 

そのため、彼はベレス達が心配で森に見に来るまで延々と排泄物を集める狂人と化したのである。

 

森の中は少し綺麗になったが、土の微生物たちは悲しんでいたそうな。

さもありなん。

 

 

 

 

 「はっ...はっ...!」

 

それから時間は経って、間も無く夜明け前。

 

メリクがせっせとう○こ掃除をした森を走る人影が3つ。

 

 

 「エーデルガルト、ディミトリ...!もうちょっと、はぁはぁ...ペース落としてくれ...!!」

 

 「無茶を言うなクロード、すぐそこまで追っ手が来ているぞ!」

 

 「見て二人とも、少し先に村が見えたわ!」

 

 

赤、青、黄色。特徴的なデザインと色の制服を着た三人がベレス達が眠っている村へと駆け込む。

 

そして丁度そこには、馬房から馬を引いてきた所のジェラルトとベレス。

 

その隣には、葦の地では一般的な白い武者装束に身を包んだメリクが出立の準備をしている所であった。

 

こうして、運命は巡り始めた。




初作ゆえ、展開や導入に困っておりますがひとまず主人公の紹介&本編開始です。
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