新エリー都のお馬鹿達   作:富竹14号

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 S級ビリーが来るらしいですね…なんだあの男のロマンみたいな見た目…引きます(確定)


問答無し

 

 

 強い…星見雅という武人が目の前の存在を見て真っ先に思ったことがそれだった。

 

 大型のバイクに跨る二つの人影…一つは巨体で、一つは小柄…自分よりも頭一つ以上は背丈の高い黒尽くめと自分より頭一つは小さい黒尽くめ…まるで巨人と子人のようだと思ってしまうのは仕方の無いことではなかろうか。

 

 そんな何処か抜けた内容を浮かべているのとは裏腹に、その内にて吠え立てる警戒心はガンガンと雅の頭の中で警鐘を鳴らし続けている…まるで、油断すれば喉元噛みちぎられるぞ…とでも言っているように。

 

 

「…よいしょっ…と」

 

 

 軽い口調でバイクから降り立つ小柄の黒尽くめ、その小さな体躯に見合った高い声音、子供の声帯が大人のモノへと切り替わっていく最中のような…そんな少年の声だった。

 

 パンパンッと服についた埃を払いながら、右手をぐるぐると回す…まるで肩こりを治そうとするような動作から雅を警戒するような所作はまるで感じられない。

 

 余程の自信があるのか、それとも単に能天気なだけなのか、それとも此処を戦いの場と思っていないのか…その何れかであるのかを一々考えるような雅ではないが、ひとまず分かっていることはあった。

 

 

「───新手か」

 

「───うぇぇぇぇぇぇっっ!!! お゙じざぁぁぁぁんッッ!!!!」

 

 

 今更のように呟いた言葉を掻き消すように、先程まで逃げ回っていた黒尽くめ(A)が強烈な泣き声を吐き出しながらバイクの主へと突撃を敢行する、ズドンッという音と引き裂かれた煙からはそれがどれほどの踏み込みと速度によって行われたものであるのかを如実に示していた。

 

 速度上々、常人ならば受け止める為に一種の覚悟さえ必要であろうそれに対して、巨体の黒尽くめ…もとい、ゼクスは一切の躊躇もなくその飛び入る弾丸(物理)へと両手を向けた。

 

「うぇぇぇぇあぁぁぁぁぁっ!! 怖かったよぉぉオジザァァァンッ!!!」

 

 ドスンッという音と共にその身体の内へと収まるその手の中に黒尽くめ(A)の肉体、グズグズっと嗚咽と鼻水を垂れ流しながら何やら喚いているその姿はまるで幼子を思わせた…そんな黒尽くめ(A)…もうめんどc…ややこしいのでイリースと呼び直すが、そんなイリースを雅曰くの巨人…もといゼクスはドウドウとあやしていた。

 

 グズグズッと泣きながらゼクスの胸ぐらへと顔を埋め込みイリース…その頭の中で繰り広げられているのは数えるのも馬鹿らしくなる程の弱音と恐怖の発露、転生者あるあるとも言うべきか脳内掲示板内にて誰にも聞かれる心配が無いからと彼女は雅に対する罵詈雑言を吐き出しまくっていた。

 

 あまりに汚く、あまりに喧しいのでここでは割愛させてもらうが…先程までガン逃げ噛ましていた挙句に泣き言で沢山だったその様子から到底及びもつかない程の豹変っぷりは、その当の仲間達をもして若干目を逸らしたくなるような有様であったことをここに語らせてもらう。

 

 何処か困ったように視線をチラホラと向けるゼクス、その隣でバイクから降りたばかりの雅曰く小人も何処か仕方の無いものを見たように頭をカリカリと掻いていた。

 

 どうするべきだろうこの空気、どうすれば良いんだろうこの状況…何処となく妙な感じになってしまった場で果たして何と言うのが正解なのだろうかと少しばかり頭を悩ませた小人は…少しの逡巡と共に、口を開いた。

 

 

「とりあえず…帰ろうか」

 

 開いた言葉にブンブンブンっと勢い良く首を縦に振るイリース…元々がその為にやってきているのだからそれは当然の話なのではあるが…一瞬、もうこいつ六課に引き渡した方が穏便且つ楽に住むのではなかろうか…という至極まともな帰結が頭の中に浮かび上がってしまっていた…いやまぁ、この事態そのものがイリースの自業自得によって引き起こされているものなのでそれも当然のことなのだが。

 

 ブオンっとエンジンが吠える…ゼクスがスロットルを回した際に発生した音だった、それ以外の何者でも無かった……ただ、それが合図だった。

 

 

 唐突だった、突然だった…エンジン音が鳴り響いたその次の瞬間、星見雅はその足を踏み出し自らの獲物を振るっていた。

 

 狙いはバイク、今に逃走を開始しようとしている不審者を逃さぬ為の措置、本体ではなくまずはその逃走手段を奪う為の行動だった。

 

 最速最短真っ直ぐに…振り抜かれた刃は本来であればバイクを両断する、何者もこの『虚狩り』の魔手から逃れることは出来ない、たまたま自分に向かわなかったことを幸運に思うべきだ…それが、普通なのだ。

 

 

───ガギィィンッ…!!

 

 

 そうならなかった、普通じゃなかった。

 

 鳴り響いた鉄の音、振り抜かれた星見雅の刃はいとも容易く防がれ、弾かれる…後方へと下がり、足が地面を擦る感覚…煙が僅かに立ち昇るその場で雅は鋭く前方を見据えた。

 

 居たのは小人と評した黒尽くめ…その手に持つ大振りな鉈を振り抜いたような体勢で立っていたその男は、その手を無造作に下ろしながら同じように雅を見据えた。

 

 

「いきなり斬り掛かるとか何考えてるんだぁっ!! 頭可笑しいのかぁっ!!?」

 

「───いや、待った方だろ、充分以上に」

 

 

 前方から聞こえてくる声、小人からすれば背後から聞こえてきた声、騒ぎ立てたイーリスに小人は呆れたように言葉を返した。

 

 実際待った方である、何処となくグダグダとした空気を捻出していた自分達のやり取りを邪魔しなかった時点で十二分以上に待ってくれている、普通なら目視した時点で斬り掛かっていても可笑しくない…何故に待ったのかは知らないが。

 

 

「いいや待ってないね!普通は彼処でもう少し間をとって緊張感を高めるのがベスト───」

 

 

 再び何かしら喚こうとしたイリース、言ってる内容からして最早斬り掛かろうとしたことにではなく映画として見るならの観点に移ってしまっているような気もするが、最早そんな言葉は小人の耳には届いていなかった。

 

 残光が奔る、残影が瞬く、蒼が来る。

 

 突き出される刀身、瞬きすれば見逃してしまいそうになるような速度の一撃、今度はバイクやイーリスではなく自身を妨げた小人自身を狙い目にして放たれた一突き。

 

 火花が散った…刀へ大鉈がぶつけられて軌道が逸らされた、突きの勢いのままにそのまま前へと出た雅と逸らした際に体重を掛けた小人…二人の影が重なる。

 

 

「───…見逃してくれたりは…しないか」

 

「───あぁ…最早、その段階は通り過ぎた」

 

 互いにぶつかるように肉薄した両者、身体が触れるか触れないかの領域にいる敵手へと問いかけたこと小人の言葉に星見雅は肯定の言葉を突きつける…最早遅いと。

 

 そんな雅の言葉にだよな…と静かに返した小人は次の瞬間、大鉈に触れていた雅の刀を上へと打ち上げる、火花と共に上へと打ち上げられた雅の刀、がら空きとなった虚狩りの腹部へと小人は掌底を打ち込もうとする。

 

 しかし許されない、刀が使えるなら足技だって使えるだろうと言わんばかりに迫る足先、黒い靴が間近に迫る。

 

 舌を打つ、掌底の動きを中断しその手で蹴りを受け止める…その上からやってくる斬撃の軌跡、打ち上げられたその位置から丁度良いと言わんばかりに振り下ろしてくる。

 

 その斬撃へと小人は横合いに大鉈を振り抜いた、逸らすつもりの斬撃だったが相手の斬撃が鋭いからなのか重いからなのか…何方にしても同じだったが、衝突した斬撃は雅の上段からの軌道を逸らすことなく、逆に小人の身体ごと斬撃を弾いた。

 

 弾かれる持ち手、たたらを踏む己の足、そうなるかと言いたげに瞳を細める小人の眼前に追撃を打ち込もうとする狐が一匹……それに小人は、自らの獲物を手放した。

 

 振るわれる斬撃、横からやってくる命を刈り取る一撃を小人は大きく屈むことで避け、そこから更に横に回転し手放した大鉈が地面に落ちるよりも早くに掴み取る。

 

 パシンッと掴み取られる大鉈、その感触を確かめることもせず回転の勢いのままに小人は星見雅へと足元を切断せんと大鉈を振るう。

 

 そこへ地面へと突き立てられる雅の刀、振るわれた大鉈とぶつかり火花を咲かせた一連の攻防、そこから更に続けて雅の刀が唐突にカチャリっと、その刃の向きを未だ屈んだままの小人へと向けられる。

 

 小人がそこから飛び出すように転がるのと、雅が刀が一気に振り上げたのはほぼ同時の事だった…地面を転がり、そこから流れるように立ち上がる小人の黒尽くめ、あと少し遅れていれば斬られていたと確信しているだけあって、その頬には冷や汗が伝っていた。

 

 

「…なるほど…確かに、こりゃ厄介」

 

 

 それは、紛うことなき彼の本音だった。

 

 

 

 

 

 

 





小人について

 実際の身長151cmくらいである、因みに年齢は二十歳は行ってる。
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