理由は私が早く読みたいからです。
お、いたいた。アレじゃないかな?
あの屋根の上に佇んでる集団。絶望感がこっちにまで漂って来るわ。
うっし!気を取り直してあいつらを助けよう!
俺がやってることは全部無駄なのかもしれないけど、それは諦める理由にはならない。
俺はもう何度も巨人の捕食を見てきた。
アレは人が受けていい苦痛じゃない。
特に訓練兵のみんななんてまだ子供だ。こっちだと知らんけど少なくとも日本なら絶対子供扱いだね。
助けるよ。俺の方が大人だし。
とはいえ、どうしよう?下手に動かない方がいいか。何せあっちには巨人化能力者がいる。それも敵側のが。三人ほど。俺が変に知性を示すと勘違いされて面倒なことになるかなあ〜。
いや勘違いされておいた方がいいのか?俺は多分この後調査兵団に捕獲される。その時知性巨人だと勘違いされておけば、アニ達も殺しに来ないんじゃないか?
でも変に勘違いされて、「始祖を奪還する!」とか言われてうなじ食われたら死んじゃう。
んんーっ、難しいーっ!
ま、目立たない方が無難かな。奇行種の振りでもしてみんなを助けちゃいましょう。流石にこの身体じゃ補給所の中の巨人は倒してあげられないけど、それ以外ならどうとでもなる。
でぇじょうぶだ!アルミンの作戦でぶっ殺せる!
何せ今回は時間を稼ぐだけでいい。さっきの前衛の人達と違って、みんなガスさえ補給できればすぐ撤退してくれるから。巨人を殺す必要はなく、ただ巨人の邪魔をしてればいい。
うん、さっきよりよっぽど簡単だ。気が軽い。
よーし、頑張っちゃうぞ!!
お、ミカサっぽい人が演説してる。良いね。あのシーン好きだよ。そうだよな、ミカサ。
『戦わなければ、勝てない』よな。
ミカサに発破をかけられた人達が続いて駆け出していく。
俺は先んじて彼等の前に出ていた。本部へと続く大通りを走り、道中の巨人をことごとく転ばせていく。突き飛ばし、足をひっかけ、ラリアットをかましていった。
うーん、日本じゃ絶対やっちゃいけないことをやっている気分だ。やってること通り魔だしね。よく分からない種類の楽しさがあるな。
ちらと後ろを振り返ると、皆順調に進んでいるように見える。あっ、ミカサが居ない。
まぁミカサのことはエレンが助けてくれるしな。俺は雑な推測で適当なことを言うことが多いが、これには確信を持っている。
ということで、俺は他の皆の支援に集中させてもらおう。どけどけーい。
そうこうしている内に本部に辿り着いた。どうだろう、皆辿り着けたかな。
……分かってる。俺一人で全員守るのは難しいだろう。脱落者はいたはずだ。いや、考えるな。今すべきことだけ考えろ。
本部に張り付く巨人達。これを剥がしていく。ええい、引っ付きすぎだ!フジツボかお前らは!小さいのも丹念に引き剥がす。おらっ。
意味の分からない奇行種に困惑しているのか、訓練兵達は後ろで立ちすくんでいたが、大体の巨人を引き離したタイミングで「今だ!」という声とともに突っ込んできた。
今の声は、ジャンかな。と思った瞬間に、俺の顔の横を立体機動で通り過ぎていくジャンと一瞬目が合う。やっほー。
よしっみんな突入したな。パッと見た感じ捕まった子も……あっコラ!
8m程の巨人に捕まっている子がいたのでその巨人を蹴り飛ばす。捕まっていた子は慌てた様子で立体機動に移り本部の中に入っていった。
これで全員、かな。あとはアルミン作戦で中の巨人が一掃されるのを待って……
ああっ!引き剥がし抑えていた巨人が勢い余って本部に顔を突っ込んでしまった。ガラガラと壁が崩れ、中の訓練兵達と目が合う。
気まじー。あっこれジャンが絶望するあのシーンじゃん。あのシーンに俺の顔が映ってると思うとウケんね。ピースとかしとこうかな。
ヒュッ……
バゴォーン
ぐええええええ!?何事!?
横からの顔面への謎の衝撃で他の巨人ごと吹き飛ばされてしまった。
慌ててその方向に目を向ける。
あぁー……エレンくんかぁ。凛々しいお顔で俺に吼えてくる。そういえばそうだったね。
どうやら俺はエレン巨人に思いっきり殴り飛ばされたらしい。首飛ばなくてよかったあ……。少しちぎれかけている首を再生させながら、俺はエレン巨人から距離を取った。後は任せたぜ。
ミカサ達が本部に入っていくのも確認出来た。
俺ができることは一旦終わりだ。後はエレンがひとしきり暴れて、力尽きて、回収される。訓練兵のみんなも一旦はもう大丈夫だろう。
壁上で見てるであろう人達には良いアピール出来たかな。前衛での戦いもそうだし、俺の味方っぷりは通じたんじゃないか?アルミンも言ってくれるさ、「見たはずです!彼が巨人と戦う姿も!」ってね!
あぁでもエレンと違って巨人は俺に群がってこないわ……。人類と同じ捕食対象じゃない……。うーん、駄目か?
考えても仕方ないか。あとはトロスト区の奪還作戦が始まるまで、巨人の数を少しでも減らしておくなりなんなりしよう。
てか、調査兵団のみんなまだー?俺壁が破られること書いて伝えたよね?早く来てよー。
外壁が崩れ、あの変な奇行種がこっちを覗き込んだと思ったら、次の瞬間には何かに吹き飛ばされていた。
ジャンはこれ以上なく困惑していた。そもそもあの黒髪の奇行種は何なのだ。
オレたちの前を猛ダッシュして本部に向かうのはまあ分かる。奇行種だから近くのオレたちに反応せず、より多くの人間がいる本部を目指したんだろう。
しかしその道中、周りの巨人をことごとく薙ぎ倒していくのは何だ?お陰でほとんど皆が本部に突入出来た訳だが。
もしかして獲物を取られまいとしていたのだろうか。そんな縄張り意識のようなものが巨人にあるとは習わなかったが……。
そんなジャンの思考を遮るようにガシャンと窓が割れ、アルミンとコニー、そしてミカサが入ってくる。
無事だったのか。
「みんな!!あの巨人は巨人を殺しまくる奇行種だ!!」
コニーが叫ぶ。
「あ、ああ。あの
「そうだ!あの
「歯が剥き出しの……」
「そう!歯が剥き出しの!しかもオレ達には興味がねぇんだってよ!!」
「は?いやそれは分かんねえだろ。しかもアイツ別に巨人殺してはなかったぞ」
「は?いやめちゃくちゃ殺してたぞ」
「ん?」
「え?」
ジャンとコニーはお互いを訝しげな目で見る。
まさか二体も似たような奇行種がいるとは思わず、話は噛み合わなかった。
その頃、調査兵団達は全力で馬を駆け、退却していた。巨大樹の拠点を調査中に、巨大樹外の索敵から伝令が入ったからである。あの巨人に逃げられてからそう時間は経っていなかった。
ちなみにその拠点には特に何も無かった。団員達は結局ログハウスという結論には辿り着かず、まあなんか、我々のために作ってくれた足場か何かだろうと思った。子供の工作を思わせるその建築物もどきに、何人かの団員の心が痛んだ。
『
その報告を聞き、全員が即座にある可能性に思い至る。つまりは壁が破られたという可能性にだ。エルヴィン団長は一時の迷いもなく全隊に退却を伝えた。
エルヴィンは確信を持っていた。
間違いない。壁が破られたのだ。彼が教えてくれていたというのに、なんと不甲斐ない。彼が言ったことは真実だったのだ。
それにしても破られるのがよりにもよってこのタイミングか、と悪態をつきたくなる。
帰還の最中、エルヴィンの頭にあるのは破られたであろう壁のことではなく、あの巨人のことだった。
どういう理屈かは分からないが、彼はこのことを知っていたのだ。それを命懸けで伝えてきてくれたというのに、我々はその信頼を裏切り……
「ねぇエルヴィン」
「なんだ」
ハンジがエルヴィンに恐る恐るといった様子で話しかけた。
「もしかしてさぁ、あの子、壁が破られたことに気付いたから走ってったんじゃない?」
「…………」
怒ったのかと思ってたけど、とハンジは付け加える。
エルヴィンの心はさらに軋んだ。軋む心で何とか言葉を絞り出す。
「……一刻も早く、街に戻ろう」
「……そうだね」
エルヴィンとハンジがここまで落ち込んでいるのを見たことがないリヴァイは、その様子を眉を顰めながら後ろから眺めていた。
ちなみに今回気付かれませんでしたが、森の拠点の近くには主人公が看取った調査兵達の墓があります。地面に埋め、手頃な岩を置きました。
しばらく毎日投稿するつもりです。時間は大分前後すると思いますが多分18時くらいです。