理由は日間総合三位になってたり、沢山感想が来たりして嬉しくなっちゃったからです。
誤字報告などもありがとうございます。
巨人を相手に獅子奮迅の活躍をしていたエレンだったが、遂に力尽きた。
蒸気を噴き上げ崩れ落ちていく巨体を眺めながら、俺はぼんやりと思考を巡らせる。
そういえば知性巨人は無垢の巨人と違って体力という概念があるよな。力使い果たしたら人間に戻っちゃうし。あれ、無垢の巨人も力使いすぎると消耗するんだっけ?俺ほとんど疲れたことないんだけど。俺が特別体力多い巨人なのかな。すると俺は体力面だったら知性巨人を上回れるのでは?ああでも車力の巨人がいる。うーむどこまでも微妙な存在だな俺は。
そんなことを考えている内にうなじからエレンが出てきて、ミカサ達に回収される。なんか右半分の服無くない?原作でもそんなんだったっけ?ほぼ全裸じゃん。ウケんね。
ライナー達もすごい驚いてるように見えるけど、これ皆とは別種の驚きなんだよね。「エレン、お前が始祖の巨人なのか……!?」的な。
あれ、ライナー達が凄い顔で俺の方も見てくる。「じゃあ、アッチは……?」みたいな表情だ。うーん、ちゃんと俺怪しまれてたっぽいな。
気にしないで!一般通過巨人だよ!
やがてミカサ達はエレンを連れて壁を登った。
あっ、エレン達が登った先の壁上で兵士達に取り囲まれてる。成程ああやって捕まったのか。まだ気を失っているエレンを抱えたまま、幼なじみ三人組は連行されて行った。
これからアルミンの演説かあ。俺あの演説大好き。ワンチャン聞けたりしないかな。
位置は大体分かるよ。正門の横の角のとこでしょ。壁に耳つけたら聞こえんじゃないかな。
のそのそと壁の方へ歩く。
おぉ、みんな銛に刺されて肉壁と化しとる。巨人達が邪魔で壁に近付けない。しかも上からは砲身がずらりとこちらを向いている。
……怖いな。聞くのは諦めるか。撃たれないとは思うが、流石に「盗み聞きしようとして死にました」は笑えない。
渋々と諦め、周りの巨人とプロレスごっこで戯れていると、静かだった壁内から一発の砲撃音と落雷音がほぼ同時に響き渡った。壁の向こうがほんのりと光る。
お、もう榴弾が撃ち込まれたのか。思ったより早いな。
これからアルミンの演説があって、その後ピクシス司令が小鹿さんを宥めるのだろう。トロスト区奪還作戦までもう少しだ。
それからまた暫く待ち、日が少し傾き始めた頃。一番面白い奇行種の走り方選手権を一人で開催していた俺の耳に声が届いた。
「注!!もおおおおおおく!!」
おいおい、マジか。
原作読んだ時も思ったけど、あのおじいちゃん声量どうなってんだ。壁の向こうでもはっきり聞こえるぞ。
アルミンの演説は聞けなかったが、ピクシス司令のは聞けそうだ。あれも名演説だからな。
「彼は我々が極秘に研究してきた巨人化生体実験の成功者である!!」
良いなそれ。俺もその設定にあやからせてもらいたいものだ。今の俺は九つの巨人でもないのに知性がある意味不明な存在だからな。そういう設定が切実に欲しい。
ピクシス司令の演説は続く。
「我々はこれより奥の壁で死んではならん!!どうかここで」
「ここで死んでくれ!!」
……あぁ、つくづく。この世界の住人は覚悟が決まっている。大好きだ。
さぁ作戦開始といこうか。
まず兵士達が囮になって巨人達を街の隅に集める。この囮作戦が粗方済んでから、エレンの大岩運びが始まるはずだ。
つまりまず俺が手伝うべきはこの囮。原作ではここで約二割の兵が死んだ。俺が奇行種のフリをして巨人たちの邪魔をしまくれば少しは損害を減らせるはずだ。ある程度終わったら早めにエレン達の方を手助けに行こう。
見ると既に作戦は始まっている。
兵士達が続々と壁から下り、こちらに向かってきていた。巨人達もそれに群がっていく。
俺がやることはさっきと同じだ。巨人達をすってんころりんさせて兵士達を食わせないようにしながら誘導を支援する。
巨人からしてみれば圧倒的大戦犯、ぶつかりおじさんLv100と化した俺は大暴走していた。
時にはカバディ、時にはアメフトプレイヤーになり巨人を妨害する。もちろん街の隅に誘導しなくてはいけないので、程々に、ギリギリ兵士が食われないくらいの邪魔をするのがコツだ。俺がするのは捕食の妨害だけ。少しよろめかせるだけでも十分だ。
『動物は獲物を狙う瞬間が最も無防備』とはよく言ったもので、兵士に襲いかかる瞬間の巨人を攻撃するのは非常に容易い。
兵士が俺の周りを飛び回って気を引こうとしてきたら大人しく誘導に従い街の隅に行き、兵士が離れていったら再び支援のために街の中央に戻る。この繰り返し。
なんだか兵士達が「またお前かよ」みたいな顔をしている気がするが気のせいだろう。
日は傾き、世界は少しずつ赤く染まり始めていた。
俺は駆け足で街を練り歩く。捕まってる人、食われそうな人はいねーがー。
……なんか怒鳴り声が聞こえるな。こんな時にまで喧嘩してる人がいるのか?全く、呆れた人達だ。どれ、奇行種おじさんがそれどころじゃなくしてやろう(激怖)。
角を曲がって声の方向を見ると、何やら揉めている四人の兵士達。まぁこんな極限状況じゃ、無理もないのかな。そう思い怖がらせすぎないようにゆっくり歩み寄ろうとする。
近付く度に怒声が勢いを増す。えっ何?なんでそんな緊迫してんの?怖いなら早く逃げなよ。
あと数十mというところで揉みくちゃになっていた四人のうち三人は一人を置き去って慌てて立体機動で飛び去っていった。おい、仲間置いてくなよ。
呆れながら置いてかれた兵士を見る。
ありゃ、
丸腰の兵士はうつ伏せで足元を俺に向け這いつくばっている。
ああ怖いよな。ごめんごめん。でもどうしよう。俺が行き場のない手を遊ばせながら狼狽えていると、その兵士が泣き声で喚いた。
「まだ……ちゃんと……話し合ってないじゃないかぁあああ」
……ん?あっ、え?マルコ?
顔が見えないから気付かなかった。もしかして、と飛び去った三人の方を見ると、まだ三人は近くの建物の屋根の上でこちらを見ていた。
あっ、あれ……ライナー達やんけええええ!!
俺としたことが、すっかり忘れていた。そうだ、このイベントは囮作戦中の今起きるやつだ。
これ、マルコの口封じのシーンか……(絶望)
どっ、どうしよう。めっちゃみてる。めっちゃこっちみてる。
マルコ、助けたいけど……あの三人がそれを許すとは思えない。きっともうライナー達の内緒話を聞いてしまった後だろう。今俺が見逃しても、すぐにライナー達がどうにかしてマルコを殺すだろう。
もう、ダメでしょ!人の話盗み聞きしちゃ!いや罰が罪に見合ってなさすぎなんだけどさ。うっかり話聞いちゃっただけで殺されるマルコ不憫。
……やるのか?今ここで。知性巨人三体と?
無理無理無理!!
逆立ちしたって勝てやしない。そんなんもう人類滅亡ルートだ。
敵対は論外。傍観も意味無い。
どうする、どうする?
ここで俺にあるひとつの妙案が思い浮かぶ。
いけるか?いや、やるしかない。
三人に凝視されながら、俺は震える手をマルコに伸ばした。
大丈夫だ。今マルコは丸腰だ。自害なんてできやしない。大丈夫だ。
自分に言い聞かせ、マルコを掴んで持ち上げる。捕まったマルコは「うわあああああ」と悲痛な叫びをあげている。必死に身を捩り、抜け出そうとしているのが手の感触から伝わってくる。
マジごめん!
俺は心の中で土下座しながら、口をガパァと大きく開いた。唇も無いし、俺口でかいな。
人一人を余裕で丸呑み出来る大きさの口を開け、手の中で暴れるマルコを口に持って行く。
そして俺は、
マルコを口の中に放り投げ、バクンと勢いよく口を閉じた。
「マルコが口封じされるタイミング早くね?」と思うかもしれませんが、主人公が誘導を手伝っているので、ライナーとベルトルトが会話する余裕が出来るタイミングが早まっています。