「オイ……何で……
マルコが……喰われてる……」
ライナーがそう呟いた。
ゾワッとベルトルトに悪寒が走る。
見るとマルコは巨人に丸呑みにされていた。
あの巨人には見覚えがある。本部へ突入する最中、他の巨人の妨害などおかしな行動をしていた奇行種だ。
人間を襲わず、巨人と敵対しているように見えたのでまさか巨人化能力者、すなわち座標かと身構えたが、座標はエレンだった。うなじから出てくるところを見たんだ。間違いない。
だったらアレは何だと思ったが、よく考えてみれば他の巨人達はあの奇行種に興味を示さなかった。アレは本当にただの奇行種だったのだろう。
何せその奇行種は再び目の前に現れ、今はマルコを食らっている。流石に中身が人間なら人間を食ったりはしないだろう。
ベルトルトはそこまで考えて、隣の二人の様子を確認した。アニは涙を零しただ嘆いているが、ライナーは……
「……よくもッ、マルコを……!」
ライナーは、完全に正気を失っていた。
制止も間に合わず、ライナーは立体機動に移り、あの奇行種に斬り掛かる。
ところがその奇行種はマルコを喰った後、すぐに身を翻してどこかへ走り去っていった。ライナーも追いつけず、振るった刃は空を切る。
どしん、どしんと小走りで去っていく奇行種を眺めながらライナーは心ここに在らずといった様子で佇んでいた。
アニはその様子を見て心底うんざりしたように舌打ちし、さっさと帰って行った。
「……ライナー。持ち場に戻ろう」
ベルトルトはライナーの肩に手を置いて語りかける。ライナーはハッとした様子でベルトルトの方へ振り返り、どもりながら答えた。
「……あっ、ああ。そうだな」
ガスを噴かし、怪しまれないように気を付けながら持ち場に二人で戻る。
ベルトルトがちらりと後ろを振り返ると、もうあの奇行種の姿は見つけられなかった。
う、上手くいったか……?
暫く走り、辺りを見渡してもあの三人の姿は確認できない。他の兵士もいない。
そろそろいいか。
俺は近くの民家のそばでうずくまり、
進撃の巨人で結構出てくる描写。
アニとか、ピークもやってたね。あの土壇場で何とかそれを使った『捕食したフリ』を思い付いて良かった。
俺の唾液まみれで本当に申し訳ないが、命には替えられないからね。
感謝したまえよ、マルコ……ん?
屋根の上に横たわるネバネバのマルコは何の反応もなく、起き上がる気配がない。
……あの、マルコさん?怒ってます?たしかにヌルヌルで気持ち悪いかもしれないけど……
つんつんと優しく指先でつついてみるが反応はなし。これは……
……気絶してるな。巨人に食われたショックで意識を失ってしまったらしい。そりゃそうか。絶対死んだと思っただろうしな。
何とか助けられたのは良いが、これからどうしたもんか。気を失ってしまったマルコを安全なところまで連れて行かなくてはいけない。
もうそろエレンの援護に行きたいんだけどなぁ。このまま屋根の上に置いておく……のは流石に駄目か。
立体機動装置もつけてないから無理矢理起こしても意味ないし……俺じゃあ壁の上に登れない。誰か、他の兵士に保護してもらうしかあるまい。ちゃんと兵団に保護されればすぐにライナー達に殺されることはないだろう。その後は……うーん、なんかこう、上手く強く生きてくれ。流石にそこまで面倒見れない(無慈悲)(無責任の極み)。
マルコは賢いからな。最悪兵団から脱走してでもライナー達から逃げて生きてくれるだろう。
周りに兵士が来てないかと見渡す。
うーん、あ!建物の向こうから兵士が現れた。
アレ、ジャンじゃん!ジャンってもう名前が効果音みたいで面白いよね。
ジャンが俺を見るなり「うげ」みたいな顔をしたが気にしない。
こっちこっち!君の友達いるよー!
勘のいいジャンはすぐに俺のそばの屋根の上で倒れてるマルコに気付いたらしく、血相を変えてこちらに飛びかかってくる。
「てめぇ!離れやがれ!!」
死ぬのはちゃんと怖いのに、友達のために躊躇いなく俺みたいな巨人に挑めるのは立派だよね。
ジャンは立体機動の成績が良いとは知っていたけど、確かに速いな。反応が遅れて俺の左手の指が切り落とされてしまった。
後ろから坊主頭の兵士も追ってきてる。あれはコニーかな。
少し不自然に思われるかもしれないが、俺はくるりと踵を返し、ジャン達から離れていった。マルコを頼むよ。
後ろから声が聞こえてくる。
「オイ!アイツ俺を見て逃げやがったぞ!」
「……相変わらずおめでたい頭だな、コニー。とりあえずマルコを安全なところに……」
……うん、もうそういうことでいいよ。
ジャン達から離れ、エレン達の方向を確認する。赤の煙弾が上がっていた。あれは確か、エレン巨人が制御を失って暴走した時にリコさんが打ち上げた作戦失敗の合図。
もうそこまで進んでいるのか。俺は人目を気にせず全速力で大岩を目指した。
見えた。
大岩に倒れ込んでいるエレン巨人。兵士達がそれを守ろうと、街に入ってくる巨人を迎撃している。
下手に近寄ると殺されるな。特にミカサがいるのがヤバい。リヴァイに比べると一歩劣るのかもしれないが、それでも俺では勝てないだろう。
奇行種の振りはナシ。
もうそんなこと気にしている場合ではない。あの敵側の三人もいないし、存分に知性を発揮し彼らを援護しよう。
俺が大岩を持てれば良いんだけど、流石に無理そうだから、巨人の討伐に回りたい。
早くも俺の存在が捕捉された。何人かが向かってくる。
まずは信頼を勝ち取る。そしてその方法を俺はもう知っている。
先頭の人が俺にアンカーを打ち込もうとした瞬間。
俺は直立し、見事な敬礼を見せた。
右拳を心臓に強く打ち付ける。
兵士達の動きが止まる。
うーん、これやっぱ便利だな。これからも積極的に使っていこう。
兵士たちは暫し狼狽えていたが、少し置いて一人が前に出た。
おっ、君はイアン班長じゃないか?
「……君は味方か?」
刃を構えたままではあるが、問いかけてくる。俺は力強く頷いた。
随分理解が早いな。調査兵団より駐屯兵団の人の方が頭柔らかいとかそんなことあんの?
「……まさか
あっ、そうか。エレンの前例があるから飲み込みが早いのね。マジで助かる。
ピクシス司令も教えてくださればいいのに、とイアン班長はボヤいている。
「君もエレンと同じなのか」
別の班員が尋ねてくる。全然大嘘だけどめちゃくちゃ頷いておく。そうです。僕は人間兵器です。同僚のエレン君を助けに来ました。
「そうか、エレンを起こす方法を知ってるか?」
アルミンが起こしてくれますよ。とは言えないので首を横に振る。役立たずでごめんなさい。でもあの、巨人いっぱいぶち殺せるんで!そっち方面で役立たせていただきます!
「分かった。前の方で交戦中のミタビ班を援護してくれないか。事情説明は俺がする」
了解です!頷き、先導したイアン班長を追いかけ、俺は前方に駆け出す。
到着した瞬間、交戦中の巨人に逆突きをかます。見事に吹っ飛んでいくが、う〜ん、やっぱぶち抜けないかぁ〜……。
ミタビさんは驚いていたが、イアン班長が説明すると割とすぐ受け入れてくれた。
凄まじい適応能力。流石はピクシス司令が人類の命運を託した精鋭たちといったところか。
とはいえ多くの班員は俺を怖がって遠巻きにしていたので、出来るだけ彼らには近寄らない様に立ち回ることにした。巻き込んでも怖いしね。
いつも通り巨人を転ばせうなじを踏み抜く。一体倒すごとに後ろの方から小さく「おぉ……」 と歓声が上がる。
嬉しい。気分が良いです。
自分、頑張ります!!
俺は空手の構えをして次の巨人と対峙した。
明日からは毎日一話ずつ18時頃に投稿していこうと思います(多分)