本日二話目投稿だぁああ!!!
調査兵団が第56回壁外調査から帰還したのは日が落ちかけた頃だった。
壁が見える距離になり、正門に大穴が空いているのが視認できる。
やはりか。壁が破られてからどれだけ経った。あの巨人は今壁内にいるのか?
ともかく、壁が破られたことが確定した。
エルヴィンは、思索を巡らせながらすぐさま隣のリヴァイに指示を出す。
「事態は一刻を争うはずだ。リヴァイ、先行してくれ」
「構わねえが……どうやって先行しろと?馬の速度は変わらねえし、平地じゃ立体機動にも移れねえ」
「丁度良い高さの
エルヴィンが指差すのは、前方で壁の中に向かっていく巨人達。
「巨人を伝って移動しろ」
さしものリヴァイも顔を顰める。
「そこまでして急ぐ必要があるのか?」
「確証は無いが、ある。嫌な予感がする」
「了解だ、エルヴィン。お前の判断を信じよう」
リヴァイは馬を勢い良く走らせ前に出ると、すぐに立体機動に移った。
前方の巨人を立体物として利用し、倒しながら圧倒的なスピードで壁に向かう。並の兵士ではとても出来ない芸当だ。あのリヴァイもしたことが無い突拍子もない移動方法。目的地に向かって多くの巨人が列を成すように進んでいるという限られた条件下においてのみ使用可能な近道だ。
あっという間に壁に辿り着いたリヴァイは、壁を登り、壁内に入っていった。
それを確認したエルヴィンは兵士達に呼びかける。
「前方の巨人達はリヴァイ兵士長が討伐した!構わず全速前進せよ!我々は二列縦隊に並び、正門から壁内に入る!」
陣形が縮み、瞬く間に長い列になっていく。
「壁内には巨人が多数侵入していると予想される!各員、気を引き締めろ!!」
空気が変わる。皆が兵士の顔付きになっていく。緊張と高揚が場を支配していた。
もうすぐ壁に到着する。
そんなタイミングで壁内からズシン、ズシンとやけに重く響く足音が聞こえてきた。後ろの兵士達もその音に気付く。
「団長、これは……」
エルヴィンはぽっかりと空いた壁の大穴の向こうを見つめる。次の瞬間、血相を変えたエルヴィンが後方に向け一際大きく叫んだ。
「全隊ッ、停止!停止せよ!!」
一拍置いて凄まじい轟音と風圧が調査兵団を襲った。壁の向こうから大岩が打ち込まれたのだ。周りに勢い良く亀裂が入るほど強く嵌った大岩は壁の穴を完全に塞いでいた。
エルヴィン達先頭の一団は壁の僅か十数m手前で何とか止まる。何人かはあまりの風圧に落馬していた。バラバラと壁の破片が落ちてくるのを慌てて避ける。
皆が暫し呆気に取られていたが、いち早くエルヴィンが気を取り直し、団長として指示を出した。後方から巨人が迫ってきている。
「馬と補給物資は放棄する!!全員立体機動で壁を登り、壁内に帰還せよ!!」
指示に従い、皆が壁を登り始めた。エルヴィンが先陣を切り、最初に壁上に上がってトロスト区を一望する。
「これは……」
街中は酷い有様だった。各地から火の手が上がり、至る所に巨人の姿が散見される。
まさか、内扉も。最も恐れるべきウォールローゼの陥落を心配するが、どうやらそこまでは破られていないようだ。
「エルヴィン、アレ……!」
つい街の様子に気を取られてしまっていたエルヴィンにハンジが話しかける。
ハンジが指差した真下の方に目線を向けると、そこには件の巨人の姿があった。
穴を塞ぐ大岩。
そこに寄りかかるように倒れている見知らぬ巨人の死体。
そして地面に座り込むあの巨人。
近くには蒸気を上げる無数の巨人の死体が転がっている。……リヴァイか。
「まさか……あの大岩で壁の穴を塞いだというのか……?」
状況は混迷している。しかしあの巨人がきっと人類の役に立ってくれたであろうということは分かった。彼の元に駆け寄る兵士がいることが何よりの証明だ。
何はともあれ、一旦下に降りようとした時、エルヴィンの網膜は信じられない光景を写す。
あの巨人に駆け寄り、肩に乗った駐屯兵団の兵士の刃が、彼のうなじに向かって振るわれたのだ。
うなじを切りつけられ、呆気なく地面に倒れ伏す巨人。
この光景にはエルヴィンも、そして隣にいたハンジも絶句する他なかった。
なんてことだ。人類の希望が、こんなにもあっさりと。何故。
「うわあああぁああああ!?」
ハンジは言葉にならない奇声を上げ、落下するように急ぎ地面に向かった。エルヴィンもそれに追随する。
ハンジは地面に着くなり、その駐屯兵団の兵士に詰め寄った。
「オイッ!んなっ、なっ、なにしてッ……!!」
正気を失っているとしか思えないその取り乱しぶりにその兵士もたじろぐ。
「な、何だ君は!私は早くこいつを
……『
その言葉を聞いたハンジも、倒れたあの巨人のうなじの方を見やる。うなじはぱっくりと割れ、蒸気を発していた。
その中には。
長い黒髪の全裸の若い女性がいた。
細い体躯。白い肌。その体型から女性であることは疑いようがない。
まるで眠り姫のように、肉のベッドの中で目を閉じ横たわっている。
エルヴィンとハンジ、再びの絶句。
「うわっ、なんでこいつ服を着てないんだ。というか女だったのか……」
対してその兵士は何でもない風に彼女の癒着した肉をブチブチと手早く切り離していく。
「…………待て。待ってくれ」
エルヴィンは内心頭を抱えながら、その兵士を制止した。止められた兵士は心底焦り、辟易した様子で言う。
「さっきから何なんだ!状況が分かってないのか!?早く壁を登らないと……」
「待って、待って!」
正気を取り戻したハンジが慌てて取りなす。
「私達は調査兵団!今皆が壁内に戻ってきてるし、近くの巨人はリヴァイが倒してくれたから、大丈夫!」
「調査……兵団…………」
ハッとハンジ越しに後方を見たその兵士は、そこでようやく巨人が倒されていたことを知ったらしい。兵士の口から安堵の息が漏れた。
「……なんだ、そうか。……悪かったね」
兵士が謝ってくるが、ハンジは気にしないでと首をぶんぶん横に振った。
とりあえず取り出すだけ取り出すか、とその兵士は作業を続行する。しかしエルヴィンとハンジ両名の物言いたげな視線を感じたのか、一旦手を止めて口を開いた。
「……私はリコ。リコ・ブレツェンスカ。駐屯兵団所属。トロスト区奪還作戦で、精鋭班としてエレン・イェーガーとこいつの護衛をした」
……参ったな。聞きたいことが多すぎる。
何から聞いたものかとエルヴィンは顔をしかめた。
「エレンとこいつは生体巨人化実験の成功者、極秘の人間兵器だと聞いている。多分あんたたち調査兵団の管轄でしょ?」
リコの続く衝撃発言にエルヴィンは何も言えない。横のハンジも理解が追いつかないのか手をアワアワさせている。
そこにリヴァイが後ろにペトラ達を引き連れて合流した。全身に纏う巨人の返り血から絶えず蒸気が立ち上っている。
「じゃあソイツがあの巨人の中身ってことか」
「わっ、女の子じゃないですか!兵長、そんなまじまじと見ちゃダメです!!」
ペトラが必死にリヴァイの腕を掴み、近付くのを引き止めた。俄に場が騒がしくなる。
エルヴィンは空を仰いだ。
何とか言葉を絞り出す。
「……とにかく、皆壁を登れ。もちろんそこのも連れてだ。……詳しい事情は、ピクシス司令に聞く」
それから調査兵団の面々は目が回るほど忙しかった。その日の夜の内にピクシス司令から話を聞き、エルヴィンは激しい目眩に襲われた。
『極秘人間兵器とかはぜーんぶウソ!なんか急に訓練兵の一人が巨人になったから、岩で穴を塞いでもらうことにした!失敗してもう無理ぽかなって思った時に謎に人間兵器を名乗る巨人が協力してくれたので、なんとかトロスト区奪還できたよん!(意訳)』
……情報量が、多すぎる……!
次の日には掃討作戦に駆り出され、丸一日続いた激闘の末にトロスト区内の巨人は全滅。その際巨人2体の生け捕りに成功する。ハンジの巨人への実験に対する熱意はいつもより高いように感じられた。
それからすぐに死体の回収が行われ、街の清掃作業は今も続いている。
「君達が昏睡状態だった3日間に起きたことはこのくらいか……」
そして今。エルヴィンは後ろにリヴァイを控え、憲兵団管轄の地下牢の前に居た。
地下牢の中にはエレン・イェーガーとあの巨人の中身である彼女。
「二人とも、何か質問はあるか?」
エレンはただひたすら困惑している。
一方彼女は、
「…………えぇ……?」
何故か自分の身体を見下ろし、心底複雑そうな表情で声を漏らしていた。
ということでTSタグ回収となります。
私がTS好きすぎて、TSさせることだけは最初から決まってたのでタグ付けたんですけど、ちょっとネタバレになってましたね。
あと「なんだこいつ人外転生とか言っときながらあっさり人間に戻りやがった、テメェには失望したぜ!!」みたいな方、いると思うんです。でもあの、ネタバレになっちゃうんで、詳しいことは言えないんですけど……!出来れば、気長に待っててくれると、ご期待に沿えるかもしれなくもないと言いますか……。
TSと勘違い好きな方はぜひ読んでくれると嬉しいです!
皆様、いつもありがとうございます!