【悲報】目覚めたら巨人だった【敵じゃないよ】   作:佐東

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ここまで、ここまで書きたかった…


第三章
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 俺は、これからどうなるのだろう。

 

 俺は今薄暗い地下牢に居る。前と違って両手の拘束はされていない。なんでだろ、俺がこの一ヶ月巨人化しなかったからかな。いや、両手の拘束程度じゃ巨人化のトリガーとなる自傷を止められないと気付いたからか。

 いつも隣のベッドに居たエレンは居ない。一人で入る牢屋はこんなに寂しいものだったのか。原作のエレンの精神が参るのも納得できる。

 馬鹿みたいだ。年上ぶってエレンに寄り添って支えてあげてるつもりで、俺の方が助けられてたなんて。エレンは今何してんのかなあ。

 てかこれから外はどうなるんだ?原作通り進んでくれるのか?うーん、言うてもアニの捕獲が早まっただけだし、そんなに大筋に影響は無いのかも。ライナー達も暴れてなさそうだしな。

 

 問題は俺だ。

 目的はどうあれ、皆を裏切ってしまったのは間違いない。俺を見る兵長の目を思い出す。周りにいたエレンとリヴァイ班の皆の目も。

 

 あれは、巨人(化け物)を見る目だ。

 

 エルヴィン団長も俺を拘束し、こうやってまた憲兵団に身柄を引き渡した。相変わらず時間感覚が無いので分からないが、もう数日経っている。

 俺は完全に信頼を失ったのだ。すっかり巨人(化け物)に後戻り。せっかく少しは信頼してくれたかと思ったのに。

 きっと今回は憲兵団から助けてくれないだろうなあ。憲兵団によって、拷問、解剖からの処刑コース。

 

 …………え、マジ?俺死ぬの?

 

 急に怖くなってきた。いくら覚悟を決めていても怖いものは怖い。どうしよう、どうしよう。

 なんかさっき、俺がどっかに護送されるみたいな話を見張りの人達がしていた。どこに連れてかれるのか分からないけど、連れてかれたらいよいよ終わりな気がする。そもそも今どこにいるかもあんまり分かってないけど。

 

 「オイ、化け物ォ。調子はどうだ?」

 

 誰かが牢屋に入ってきた。憲兵団の制服を来た、髭面のおじさんだ。後ろから見張りの憲兵が必死に止めている。

 

 「おい!まだ完全に憲兵団の管轄にはなってないんだぞ!調査兵団にも止められてるんだ、手を出すな!!」

 「ぁあ?知るかよ、あんな自殺志願者共」

 

 ……え?

 

 

 髭面のおじさんが拳を俺の腹に叩き込んだ。

 

 

 「ッ!?ぅえ……」

 

 一瞬体が浮き上がる程の衝撃で息が詰まる。

 俺は地面に這いつくばり、必死に空気を吸いこもうとした。半開きの口から唾液がボタボタと落ちる。死ぬほど腹がズクズクと痛む。

 

 「てめぇ、人類を裏切った化け物なんだろ?だったら何されても文句ねえよな」

 

 怖い。でかい。いや俺の身体が小さいのか。前世よりよっぽど人が大きく見える。

 何をされるか分からない恐怖。圧倒的な力の差。あぁ、人相手にこれなら、巨人に相対した彼らはとんでもなく怖かったのだろうな。自嘲の笑みが零れる。

 

 「笑うとは余裕じゃねえか。よしもう一発……」

 「止せ!まだ小さな女の子じゃないか……!」

 

 見張りの憲兵が制止してくれたようだ。ようやく空気が肺に入ってくるようになってきた。俺は上体を起こす。

 

 「あ?だから良いんだろが」

 

 ゾッと悪寒が背筋に走る。こんな、こんな醜悪な人間がいるのか。怖い。嫌だ。

 笑えてくる。どんなに覚悟を決めてもいざ恐怖に直面すれば決意なんて容易く折れる。

 俺は平和な日本でぬくぬく育った人間だぞ。こんな本気(マジ)の暴力と悪意に晒されたことなんてない。

 俺の心はあっさりと折られていた。

 

 「いい加減にしろ……上に報告するぞ」

 「チッ……分かったよ」

 

 そして髭面の男は俺を見下ろしてニヤリと嫌な笑みを浮かべながら言った。

 

 「もうすぐ正式に憲兵団(俺ら)に身柄が受け渡されるだろうから、楽しみにしてろよ」

 

 俺は浅い呼吸を繰り返しながらその男が牢屋から出ていくのを眺めるしか無かった。

 

 逃げなくては。

 殺される。

 

 原作の王政編での拷問を思い出す。爪を剥がされたりとか、絶対無理だ。てか今俺女じゃん。あんな下衆がいるなら何されるか分かったもんじゃない。流石に貞操は守りたいぞ。

 俺に乱暴する気でしょ!エロ同人みたいに!!

 

 ……ふざけてる場合じゃない。笑い事じゃないぞ。何とかして早く逃げなければ。

 逃げた後?知らん!まず逃げなきゃだろ!!

 

 しかし、どう逃げる?

 両手が拘束されていないとは言え、とても短期間で逃げるなんて無理だぞ。

 んー、脱獄かぁ。脱獄モノの作品は結構見てきたけど、地道に穴掘るとかばっかだし。そんなことを悠長にやってる間に俺が掘られる。

 

 ……あ、そういえばあるな、原作でも。脱獄シーン。気が進まないが、そんなこと言ってる場合でもない。やってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 見張りの交代には規則性がある。数時間ごとに交代するが、その際見張りが一人になる時間が十分程ある。狙うのはその短い時間だ。

 

 来た。交代の時間だ。

 

 見張りが一人になる。俺への乱暴を止めてくれたおじさんだ。俺は少し迷った後、作戦を決行することにした。

 

 「ううッ!……っぐ、ああああああ!!!」

 

 ベッドの上で仰向けに寝転がり、ひたすら苦しむ。手足をバタバタさせ、叫んで異常をアピールした。

 

 「どっ、どうした!」

 

 すぐにおじさんが牢屋の鍵を開け、中に入ってくる。……やっぱこの人良い人なんだよな。

 

 本当にごめんなさい。

 

 俺はそう心の中で謝りながら、手に持っていた服に包まれたレンガを、近付いてきたおじさんの顎目掛けてフルスイングした。

 嫌な打撃音が鳴り、おじさんがダウンする。

 めっちゃいい人なのに、マジですみません。生きて戻れたらなんかお詫びしますから……!

 俺は倒れたおじさんの横をすり抜け牢屋の出口を目指す。

 

 「ま、待て……」

 

 げっ!?

 まだ意識があるのか!どうしようもう一発……いや死んだらどうする!!

 俺がオロオロと狼狽えていると、おじさんが口からボタボタと血を零しながらも喋った。

 

 「そこの、階段を上がって……右だ。馬がある、から……それで逃げなさい…………」

 

 「…………え?」

 

 「君が、巨人(化け物)だとは思えない……」

 

 おじさんはそう言って、階段の方を指さしながらガクンと頭を落とした。ベッドに突っ伏す。

 

 「ありがとう、ございます……!!」

 

 伝わったか分からない感謝を述べて、俺は牢屋から出て走った。

 めちゃくちゃいい人じゃないか……!マジで殴ってごめんなさい、絶対恩返しします。

 おじさんの言う通り階段を上がって、右に進む。幸い誰ともすれ違うことなく厩舎らしきところに到着した。既に外は暗く、夜になっていた。

 乗馬はリヴァイ班のところである程度習得している。俺はすぐに適当な馬に飛び乗り、手綱を握った。

 馬を走らせ、敷地内から出る。出る瞬間に誰かに見つかったようで、後ろから怒鳴り声が聞こえてきたが構わず振り返ることもなく馬を走らせ続けた。

 

 やった、成功だ。

 大恩人たる名前も知らないおじさんに感謝の祈りを捧げながら、俺は夜の平原を走り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽が登ってきた。世界が眩く照らされていく。中々の絶景だ。日本ではまず見られないからな。

 結局俺は追っ手を恐れ、夜通し馬を走らせ続けた。流石に眠気が襲ってくる。どこか、休めるところを探さなくては。

 野宿でもいいが、出来ればもう少し安心出来るところが良いな。

 そう思っていると、左前方の方に煙が上がっているのを見えた。よく見ると、煙突と家が確認出来る。

 村だ!

 どうにかして匿ってもらおう!

 俺も馬も限界だ。それでも最後の力を振り絞って、俺はその村に向かった。

 

 

 

 

 その村は小さな集落だった。良い雰囲気で、皆がのどかに暮らしている。馬から下りて、のそのそと村の中を歩いていると、誰かが声をかけてきた。

 

 「アンタ、大丈夫かい?」

 

 見たところ30か40代程のおばさんだった。心配そうに俺のことを見てくる。

 まぁ、結構ボロボロだしな。

 

 「あぁ、そんな怪我して。どうした、家出でもしたのかい」

 「えぇ、まぁ……」

 

 当たらずも遠からずって感じだ。脱獄してきましたとはとても言えないので、適当に相槌を打つ。

 

 「とにかく、ウチに来なさいな。馬小屋もあるからね」

 

 お言葉に甘えて、俺はお邪魔することにした。

 家に向かう道中、ご近所さんが話しかけてくる。狭い集落だから、皆が知り合いみたいだ。

 

 「おや、スプリンガーさん。その子誰だい?見ない顔だね」

 「知らん子だよ、家出してきたんだと」

 「ほお、その歳で!根性あるね」

 

 ……そんな若く見える?まぁいいか。

 

 結局俺はそのスプリンガーさんの家にお邪魔した。馬は馬小屋の空いてるスペースに置いてもらっている。

 

 「ほら、見たところ苦労してきたみたいだからね」

 

 スプリンガーさんは俺にスープを出してくれた。

 

 「ありがとうございます……」

 

 美味い。暖かくて美味い飯は最高だ。生きる活力が湧いてくる。

 ついじわりと目に涙が滲む。なんだかこの身体になってから涙脆くなってる気がするなあ。

 

 「……アンタ、家出してきたんだろ?」

 

 「はい……」

 

 「若い時は辛いこともあるだろうさ。気持ちは分かる。でも戻ってやんな、皆心配してるよ」

 

 心配、か。

 心配なんか皆してくれてるかな。俺は裏切り者だし……

 

 「皆、怒ってると思います。心配なんて……」

 

 「馬鹿言いなさんな」

 

 スプリンガーさんは少し眉を顰めながら、先程よりも強めの口調で言った。

 

 「何があったか知らんけどね。まず家出なんかする前に、ちゃんと話し合いなさい」

 

 「話し合い……」

 

 「『アンタのことなんて心配してない』って直接言われたのかい?きっとお互い誤解してるんだ、ちゃんと言いたいことは言ったのかい?」

 

 言いたいこと。

 そういえば、俺は何を言えばいいか分からなくて、皆が俺を見る目が怖くて、結局何も言えてない。……何してるんだ、俺は。これじゃあ巨人だった時と何も変わらないじゃないか。

 エレンに散々言ったのに。俺が出来てないんじゃ世話ないな。

 

 「……そうですね」

 

 「アタシにも子供がいるけどね。家出した子を心配しない親なんているわけないさ」

 

 俺の場合は家族じゃないんだけどなぁと苦笑しながら、頷く。

 

 「アンタ、この後どうすんだい」

 

 「えと……」

 

 何も考えていなかった。この後のこと。うーん、ずっと逃げ続ける訳にも行かないし……

 俺が悩んでいるとスプリンガーさんは見かねたように口を開いた。

 

 「家に帰るのが怖いんなら、一日くらいウチに居ても構わないよ。謝罪の言葉でも考えとくんさね」

 

 ありがたい提案だ。俺はすぐに頷いた。

 

 「本当に、ありがとうございます」

 

 「いいよ、まぁタダってのもアレだからね。とりあえず、洗濯物干すの手伝ってくれないかい」

 

 「はい!」

 

 リヴァイ兵長に壊滅的と言われた俺の家事だが、洗濯物を干すくらいなら出来る。任せて欲しい。

 俺はスプリンガーさんと一緒に意気揚々と外に出た。いい天気だ。

 村の皆も、大人達は家事をし、子供達は駆け回って遊んでいる。

 

 「いい村ですね」

 

 

 「だろう?この()()()()は小さいが、のどかでいい所さ」

 

 

 スプリンガーさんが自慢げに答える。

 ラガコ村と言うのか。はて、どこかで聞いたことがあるような……

 と考えようとしたその時。

 

 「あれ、霧ですかね?」

 

 風上の方から何やら霧のようなモヤモヤとしたものが見えた。この世界ではああいう気象もあるのだろうか。そう思ってスプリンガーさんを見るが、彼女も怪訝な表情をしていた。

 

 「んん?何だいありゃ」

 

 違うのか。じゃあ何だろうなアレ。

 その霧のようなものはあっという間に近づいてきて村に到達した。視界が俄に悪くなる。

 何だこれは。

 無味無臭のガス状の何か。

 吸い込んでも特には異常ない。

 横を見るとスプリンガーさんも困惑してその霧らしきものを払っているが、特に異常は無さそうだ。

 

  「この視界じゃ洗濯も無理だね。ほらアンタも一回家入りな」

 

 スプリンガーさんは家に入っていったが、俺は外でその霧を眺めていた。

 

 

 やがてその霧が村一帯を包み込んだ頃。

 

 

 誰かの叫び声が聞こえた気がした。

 

 

 その刹那、辺りが真っ白になるほどカッと光り、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 




どうか伝えてくれ……。去って行った人外好きの同志達に……私は約束を違える気は無かったと……タイトル詐欺をするつもりは無かったのだと……どうか……


とにかくここまで書こうと思って今力尽きました。
ここから不定期更新になります。というか続くかも若干怪しいところがあります。
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