【悲報】目覚めたら巨人だった【敵じゃないよ】   作:佐東

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そうだ私、エタる小説が許せなかったんだ……。

と思い出したので続きます。言い訳をすると、普通に授業が始まって忙しかったのもあります。

ちまちま投稿していくので、読んでくれる方はよろしくお願いします。



今話にて2回目のタイトル回収になります。


2

 

 意識を失っていたのは数日間だったような気もするし、一瞬だったような気もする。

 

 目を開けると、一見先程と変わらない景色が目に映る。

 どこまでも広がる青い空。霧のようなものは既に晴れている。

 

 しかし少し視線を下ろせば、そこは見慣れた地獄だった。

 村の家屋はほとんど倒壊し、大小の巨人達が闊歩している。そして、その巨人達を見下ろす形になっているということは。

 

 どうやら俺はまた巨人になってしまったらしい。

 

 目覚めたら巨人だったのも二度目となると理解がやや早い。しかし何故巨人になったかの理解は未だ追いついていなかった。

 

 なんだ。何が起こった?

 

 横を見ると、家の中から飛び出してきたように仰向けに寝転がる巨人の姿があった。手足が酷く細いので起き上がれないようだ。

 

 

 ……スプリンガーさん……?

 

 

 あぁ、声が出せない。クソ、喋れないのは相変わらずか。

 それよりも問題はこの巨人だ。見覚えがある。動きもせず仰向けに倒れる巨人。

 

 コニーのお母さんだ。

 

 ……コニーの苗字ってスプリンガーだったのか。言われてみればそうだったような気もするが……。原作でも衝撃のシーンの一つだ。なんとなく分かってきた。ラガコ村という名前に聞き覚えがあったのも当然だ。

 

 つまり、この村は今ちょうどジークの襲撃を受けたのだ。ジークの脊髄液を使ったガス兵器による不可避の攻撃。

 

 俺が、もう少し早く気付いていたら……いや、どうしようもなかった。大体、逃げ出した先がたまたま壊滅寸前のラガコ村なんて、誰が分かるんだよ!

 そう頭の中で言い訳をしながら、俺はスプリンガーさんの成れの果てを呆然と眺めていた。

 

 「……ゴェンナザィ」

 

 謝罪の言葉すらも上手く紡ぐことができない。あんなに俺に良くしてくれたのに。良く考えていたら止められたかもしれないのに。

 考えてみれば、俺はこれからの原作の流れを考えるにおいて、ラガコ村の住民を助けようとはしなかった。ただ、ラガコ村から出てきた巨人達から調査兵団の皆をどう守ろうかを考えていた。どうでもいいモブキャラだとでも思ってたのか?皆、こうして生きていたというのに。

 

 

 「あー、大体皆巨人化したかな」

 

 

奇妙な響き方をする声が聞こえた。

 振り返るとそこには俺よりも大きな毛むくじゃらの巨人。獣の巨人、ジークだ。

 

 やってくれたな、ジーク。

 

 俺はバレない程度にジークを睨みつけた。

 

 「ほら、皆立って」

 

 他の巨人達が立ち上がりジークに追従する。

 幸い俺は巨人になっても自我と意識を保てる特殊な人間であり、どうやらジークの脊髄液によって巨人化しても、ジークの支配下から外れることができるらしかった。

 今すぐこいつに殴りかかってやりたいが、俺がすべきことはそれじゃない。

 原作でもジークは流石戦士長と言うべきか、タイマンでライナーを圧倒した。ライナーにもとても勝てる気がしないのに、ジークに俺が勝てるわけが無い。

 ジークは俺が従順に命令を聞くただの巨人だと思っている。俺はその演技を続け、調査兵団の皆を手助けしつつ、機を窺うのだ。

 俺に意識があるとバレたら、きっとすぐにジークに殺される。今回ばかりは調査兵団の皆に味方アピールは出来ないかなぁ……。俺の巨人形態を見たことあるのは割と調査兵団内でもごく一部だからな。幸い俺はうなじを削がれても人間に戻るだけと分かっているから、最悪討伐されてもいいんだけど……あ、でも削がれ方によっては死ぬかも。うーん。

 そういえばピークとかも来てるはずなんだけど、何処にいるんだろう。姿が見えないな。

 

 突然、巨人達が歩き始めた。

 ん、声出さなくても命令出来るのか。俺にはその命令聞こえないから周りをよく見てないと俺が支配下にないってバレちゃうな。

 皆と同じようにゆっくり歩き始める。

 

 行動方針を定めよう。

 調査兵団を助けるのはもちろん、出来るだけラガコ村の住民達も、討伐ではなく捕獲に動いてもらえるよう努める。最終回で巨人の力が世界から消え去った時に人間に戻れるはずだ。

 ごめん、全員は助けられない。

 その代わり、皆を人殺し(化け物)にはさせない。誰も食わせずにこの騒動を収めてやる。

 

 てか普通に考えてジークって最初やってたことヤバいよ。原作でミケさんとかナナバさん達を甚振って殺したの忘れてないからな。

 

 巨人達はうろうろとしながらも、皆が北上し始めた。どうも、自由行動を命じられてるらしいな。そういえばこれは威力偵察。自由に動く無垢の巨人達が壁内人類にとってどれくらい脅威なのかを測るために特に指揮は取らないのか。

 好都合。

 多少おかしな行動をとっても奇行種ということで済まされるだろう。

 

 えーと、まずすべきことは何だ?この騒ぎって結構被害は少なかったイメージなんだよな。

 覚えてる範囲で一番最初に犠牲になるのはやっぱミケさんか。

 あ、いや、サシャが遭遇する3m級がいるな。詳しい時系列が分からないが、あれもかなり早い段階で起きていたはずだ。あれはジワジワ食われていくとかいう嫌な死に方だったからな、是が非でも回避したい出来事だ。

 えーと、3m級の小さいヤツ、小さいヤツ……何体かいるけど、多分見た目的にアレかな。普通に考えれば今ここで殺しておけば良いんだけど、今はジークの目があるし、何より気持ち的に出来れば殺したくない。

 

 皆がどんどんバラバラに移動していく。

 あの十体くらいの群れがミケさんが遭遇するやつかな。ジークもその後ろを歩いてるし、洋梨みたいなやつもいる。サシャが遭遇する3m級はまた違う方角に歩いていく。

 うーん、俺はどっちについて行くべきか……。

 いやそもそも今原作通りの流れなのか?団長はもう裏切り者を特定してるみたいだったし、ここにミケさんとか104期の皆は来てないんじゃ……。

 

 まぁとりあえず原作と同じという前提で動こうか。まず俺は3m級の後を追い、ジークの目が届かなくなった辺りで上手く無力化。ついでに周りの村民を適当に追い払って被害を無くす。

無力化の方法については、3m級くらいなら地面に埋めるとかが良いんじゃないだろうか。今の俺なら3m級程度では抜け出せないほどの、そこそこ深い穴が掘れる。そうして土を被せて埋めることで、日光を遮り無力化するのだ。壁の巨人達は百年以上日光に当たらなくても生きていたんだ。大丈夫だろう。

 そうしてついでに他の3m級程の小さな巨人達も無力化した後、あの洋梨がいる巨人の群れの方角に走る。無力化にも大した時間はかからないし十分間に合うだろう。

 

 よし。考えをまとめた俺は行動を起こす。のそのそと3m級の後を追った。

 ジークが巨人の群れと一緒に北上していく。確実にジークの視界から外れるまで待つ。万が一にでも見られたら一巻の終わりだ。

 毛むくじゃらの背中がようやく見えなくなったタイミングで、俺は3m級をがしりと片手で掴み上げ、もう片方の手で穴を掘り始める。さすがは巨人の手だ。みるみる穴は深くなり、恐らく5、6m程の深さの穴があっという間に出来上がった。

 そこに暴れる3m級を押し込み、土をかけて上から圧力をかける。巨人の本気で押し固めた土は岩のように固くなり、中の3m級も身動きが取れないようだった。平らな地面はピクリとも動かない。目印のために大きな木を突き刺しておく。

 うーん、墓みたいだな。まあ埋めた場所忘れるとか冬眠前のリスみたいなことになりたくないし仕方ない。一応他の小さい奴らも埋めておこう。俺は同様の手順でバラバラに散らばっていた小さな奴を見つけ出して片っ端から埋めていく。うん、5m級くらいまでが限界かな。最悪抜け出してきても問題は無い。時間稼ぎでも十分だ。見たところ普通に抜け出せなさそうだしな。

 やがて俺が通った場所は、所々にボロボロの木が突き立っているという奇妙な状況になった。

 疲れては無いが一仕事した気分なので額を拭っておく。ふぅ。そういえば巨人は汗もかかないな。

 

 なんだか前よりも身体が軽い気がするな。確かジークの巨人は動きが早いとかそういう話があったような、なかったような。夜になっても動けるとかはあったはずだが。力も何だか強くなってる気がする。

 

 

 小型の無力化が終わったので、俺は道中の村の避難を促しながら、ジーク達の向かった方向へ走る。小型がかなりバラバラに移動してしまっていて、それを追ったのでかなり奥まで来てしまったような気がする。

 急いで向かおう。村の避難勧告も忘れずに。

 

 ほーら、巨人だよぉー(激怖)。

 

 村に辿り着くと悲鳴がこだまする。俺を見るなり皆が鬼の形相で逃げ出していく。

 俺が巨人(化け物)であるのを自覚させられるので少し悲しいが、それはそれとして何だか少し楽しくもある。皆がわっと蜘蛛の子を散らすように逃げ出していくのだ。あれだな、子供の時にやってた蟻んこを驚かせまくる遊びに似てる。

 俺は両手を上に掲げ、子供を驚かすようなポーズで皆をビビらせていった。激しく足踏みをしているが、本当に近付くと怪我をさせてしまうので、足をバタバタさせているだけで、村には一歩も近付いてない。

 少し時間はかかるものの、突然の出来事にしては皆の対応は早く、馬に乗って逃げ出していく。

 馬に乗って北の方へ去って行く皆を見送り、俺は再び走り出そうとしたが、何やら話し声が聞こえるのに気付く。

 む、この家の中からか。

 少し気になりそこを見ていると、扉から二人出てきた。小さな女の子が、女性に肩を貸してよたよたと歩いている。

 

 「お母さん、頑張って……!」

 

 親子か。

 二人は家から出て数歩進んでから後ろを振り返り、俺と目が合った。

 向こうからすれば、家から出て振り返ったら家の向こう側にデカイ化け物がいたって構図だ。怖すぎんね。

 案の定二人は声にならない悲鳴を上げてその場にへたり込んだ。母親の方が必死に庇うように娘を抱きしめている。

 

 ……顔が見えたので気付いたが、これあれだな。名前忘れちゃったけど、3m級の被害者さんだな。なんだっけなー、名前。カ、カナ?

 

 とにかく申し訳ないほどに震えて縮み上がる二人。ごめんなさいぃ……。

 しかしどうしたものか。置いていくとその後に別の巨人がふらっと来る可能性もゼロではない。

 

 うーん…………。

 

 仕方がない。ちょっとだけ、ちょっとだけ我慢してもらおう。

 俺は二人をひょいとつまみ上げる。武器は持ってないし、一般市民にそんな度胸も無いはずだ。自害は無い。

 

 「いやぁああッ!娘は!どうか娘だけは!!」

 

 バタバタと暴れる。やめてぇ落としちゃうから。

 他の人たちが馬で去っていった方向を見る。まだ土煙を上げて去っていく一団が目視出来た。

 俺は手早く二人を手のひらで包み込み、風避けにしながら全力疾走する。

 馬小屋に馬は残ってなかった。そもそもこの2人じゃ馬に乗れるかも怪しい。

 幸いまだ村の皆は逃げたばかり。俺の走力なら容易く追い付ける。

 ドッドッドッとテンポよく地響きを鳴らしながらあっという間に村の一団に追い付く。そしてその集団の前に勢いよく躍り出た。

 

 「うぉおおおおおッッ!?」

 

 先頭の村長らしき人が鬼の形相で叫ぶ。そりゃビビるよね、ごめんね。

 俺はスライディングのような体勢で先頭の前に滑り込み、手の中の二人を優しく地面に置いた。

 

 「えっ、え?」

 「おっ、お前達……」

 

 両者共に困惑の様子。俺は居ると迷惑だろうから二人を置いて去って行く。

 少し離れて後ろを振り返ると二人が何とか馬に乗せられている様子が見えた。

 

 良かった良かった。

 

 馬に乗せられた娘がこちらに向かって何かを言っているようだ。馬の駆ける音や喧騒で聞き取れないが、俺の巨人としての高い視力はその口の動きを見ることに成功していた。とはいえ読唇術など習得していないので、分かるのは母音だけだ。

 

 『あ』『い』『あ』『お』『う』

 

 …………『ありがとう』、でいいのかな?

 

 どういたしまして。

 

 俺はそのままダッシュでジークがついて行った巨人集団の方へ向かった。

 次は、いるかも分からないが、ミケさんの救出だ。

 

 




正直、最終話付近の構想は決まってるんだけど、そこに辿り着くまでが長すぎるっていうね。気長に頑張ります。
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