【悲報】目覚めたら巨人だった【敵じゃないよ】   作:佐東

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つい最近、やっと

─────

↑これの打ち方を知りました。


7

 

 「全員起きろ!!屋上に来てくれ!!全員すぐにだ!!」

 

 上官であるリーネの声が響き渡る。

 ジャンは様子のおかしいユミルとライナーに声をかけた。

 

 「オイ、聞いたか。『にしん』とかいう訳の分からんものの話ししてねえで行くぞ!」

 

 

 

 

 屋上に行くと、既に塔は無数の巨人達に取り囲まれていた。日が沈んでからかなりの時間が経っているのにも関わらずだ。

 

 かなりの数だ。こりゃあ流石の上官方でも……

 

 「オイ……!あれを見ろ!!」

 

 コニーが叫ぶ。

 視線の先には他の巨人よりも一際大きな獣のような巨人が闊歩している。壁の方へ向かっているようだ。

 ライナーやベルトルト、ユミルは何だかただの驚愕とは別の表情を浮かべているようだった。

 

 「うッ……!!」

 

 巨人が塔に体当たりをしてくる。ビリビリと揺れが伝わってきた。ゲルガーが下を覗き込みながら言う。

 

 「オイオイ……見たところ小せえ奴らは居ないみたいだが、塔がいつまで保つか分からねえな」

 

 「新兵、下がっているんだよ。ここからは立体機動装置の出番だ」

 

 そう言ってナナバはブレードを抜いた。上官の四人は死地に飛び込んで行く。

 

 「なぁ、小さい奴が見当たらないって言っても、いつ入ってくるか分かったもんじゃねえだろ。バリケードでも作った方がいいんじゃねえか?」

 

 ジャンがそう言うと、ライナー達も同意した。塔の上から上官方にその旨を伝え、皆で塔の中に入っていく。

 手当たり次第に物資をかき集め、下層で扉の補強作業を開始した。

 ジャンはユミルと共に板などの木材を拾い集める。ジャンはふと気になっていたことを共に作業するユミルに尋ねた。

 

 「なぁ、お前といいライナーといい……お前らなんか様子がおかしくはねえか?」

 

 ユミルはジャンの方を向くこともなく、棒切れを拾いながらまるで独り言のように答えた。

 

 「……ジャン、ライナー達を信用するなよ。いざという時はクリスタを……いや、なんでもない」

 

 「は?何言ってんだお前」

 

 「……お前のことはいけ好かない野郎だと思ってたが、最近はやるときはやるヤツだと認めてんだよ……」

 

 「……?なんだそりゃ」

 

 ユミルはそれ以上喋らず、かき集めた資材を抱えて下層に降りていった。

 

 「何だアイツ……」

 

 取り残されたジャンは呆然と呟くことしか出来なかった。

 

 

 

 

 やがて粗方補強作業は終わり、一旦屋上に戻ることにする。見ると上官方はもうほとんどの巨人を討伐したようだった。

 リーネとヘニングが様子を見に屋上に飛んでくる。

 

 「もう扉の補強は終わったかい?」

 

 「はい」

 

 「こちらも大きいのはほとんど討伐した。何とかしのげそうだ……」

 

 ヘニングがそう言った途端、ひゅるるると奇妙な音が聞こえてくる。

 次の瞬間、馬小屋が吹き飛んだ。

 

 「馬が……!」

 

 皆が何が起きたのかも分からずに動揺してる間に、ジャンは視界の端で一体の巨人がこちらに走ってくるのが見えた。

 凄まじく速いその巨人は、大きく跳躍し、塔に飛びついた。上官方もあまりの速度に対応が追いつかない。

 

 「何だコイツ……!」

 「速い!!」

 

 塔の屋上に手がかけられ、巨大な顔がこちらを覗く。コニーが尻餅をついた。

 その少し青みがかったぎょろりとした瞳と目が合った。皆はぽかんとその顔を眺めることしか出来ない。

 もう駄目かと思ったその時。

 再びあの奇妙な音が聞こえ始めたかと思えば、岩が壁の方向から飛来してきてその巨人の後頭部に命中した。

 

 「ゴアッ」

 

 その巨人は間抜けな声を出し、そのまま塔から転げ落ちて行く。皆はその様子を呆気にとられながら眺めていた。

 コニーがぼそりと呟く。

 

 「あの巨人……オレよりバカなんじゃねえか?」

 

 あの巨人もコニーにだけは言われたくなかっただろうと同情を禁じ得ない。しかし否定も出来ないので皆が何も言えずに居た。

 

 不思議なことに謎の投石はそれっきりだったが、息吐く暇もなく、今度はさっきの倍以上の数の巨人が押し寄せてきていた。

 再び戦闘が始まる。

 だが今度の戦いは先程とは少し様相が違った。

 さっき投石を後頭部にくらった巨人が、奇妙に暴れるせいで結果的に周りの巨人が妨害されているような形になっているのだ。

 足が引っかかって周りの巨人ごと転んだり、上官を捕まえそうになった巨人の邪魔をして自分が捕まえようとして失敗したり。

 その結果、圧倒的な数の巨人相手にも上官方は渡り合えている。

 上官方もそれを理解しているようで、あの巨人の討伐はあえてしないことに決めたらしい。

 

 「やっぱりあの巨人、すげえバカなんじゃないか?」

 

 コニーが相変わらずそう独りごちるが、誰も答えない。

 

 奇妙な巨人だ。

 そしてそんな奇妙な巨人の動きに、ジャンは見覚えがあった。

 トロスト区で、暴れて周りの巨人を妨害していた巨人。相手を突き飛ばしたり、足を引っ掛けて転ばせるその動きには既視感があった。

 

 しかしそれとは見た目が違う。似ているといえば似ているが……。

 

 「ゲルガー!」

 

 ジャンの思考を遮るようにナナバの叫びが響く。真下を見下ろすと、ゲルガーが壊れた外壁から塔の中に落ち、それをナナバが助けに向かっていた。

 

 無茶な行動であったが、件の巨人のタックルによって二人の周辺の巨人は軒並み吹き飛ばされ、ナナバは無事にゲルガーを抱えて屋上に帰還した。同じタイミングでリーネとヘニングも戻ってくる。どうやら皆ガス切れのようだ。

 

 「へへ……酒だ……」

 

 「ちょっ!?どこから取ってきたの!!」

 

 ゲルガーが頭からボタボタ血を流しながら、手に持っていた酒瓶を掲げる。

 

 「塔の中に落ちてた……」

 

 「こんな時にまで酒が大事か!」

 

 「ゲルガーさん!そのお酒貸してください、手当しますから!」

 

 クリスタがゲルガーの酒を取り上げ、そのお酒で頭の怪我を消毒しながら手当していく。

 

 「あぁ……ひでぇよ。飲ましてくれよぉ……」

 

 頭から酒を被りながら悲しげにそう言うゲルガー。頭を打ったことで意識が朦朧としているみたいだ。

 

 上官方が皆戦えなくなったことで、できることはなくなり、全員で屋上に待機することしかできなくなった。

 下では巨人達が塔を叩いている。

 

 「壊されるのも時間の問題かな……」

 

 ナナバがそう呟いた。

 件の巨人が相変わらずの暴れっぷりを披露して妨害を繰り返しているが、塔の破壊は止まらない。むしろあの巨人が塔に飛びついた時のダメージが思ったより大きそうだった。

 

 

 

 それからまた時間が経ち、ついに塔の崩壊が始まった。

 しかし崩れ方は非常に緩やかで、段々と塔は傾き、高さが低くなっていく。

 

 「う、おおっ……」

 

 バランスが取れなくなり、その場にへたり込む。

 上手く行けば無傷で凌げるかもしれないが、下手をすれば瓦礫の下敷きだ。

 いよいよ本格的に崩れる。崩壊の速度が早まり、みるみる地面との距離が近くなり始めた。

 

 「クリスタ!!」

 

 そう叫ぶユミルの声を最後に、塔は完全に崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うおあああああ!?

 

 俺が投石を防ぐため飛び付いたのも響いたのか、巨人達の猛攻に耐えられず塔が崩れ始めた。

 緩やかな崩壊だが、皆が怪我をしてしまうかもしれない。俺は必死に崩れる塔を押し留め、出来るだけゆっくりと壊れていくようにする。

 

 塔はずるずると足元から崩壊していき、緩やかに瓦礫の山と化した。

 ナナバさん達は立体機動装置で何とか安全に着地したようだが、すっかりガス欠。問題は立体機動装置をつけていない104期の皆だ。

 見ると苦労の甲斐あってか、皆は瓦礫の山の上に居た。大丈夫……かな。

 

 あっ、ユミルの足とライナーの腕が瓦礫に挟まれている。皆が必死に瓦礫を退けているが、どうも骨が折れていそうだ。ライナーはどうでもいいとして、ユミルが可哀想。でもユミルも巨人か。多分彼女のことだし、クリスタを庇ったんだろうな。

 

 どうも全員死なずに瓦礫の上に居るようだが、もう戦える人はいないだろう。

 

 今は巨人達は瓦礫の下敷きだが、すぐに……あっ、まずい。

 

 俺は皆の方に駆け寄る。ずんずんと瓦礫を踏み越え近付いてくる俺に皆が血相を変えた。

 一番に動いたのはジャンだ。

 

 「お、おおお前ら下がれェッ!!」

 

 皆の前に出てガクガクと震えながらナイフを俺に向けている。コニーのやつかな。

 

 ……ほんとかっこいいな、ジャンは。

 

 しかしまずい、間に合わなくなる。俺はそんなジャンを勢い良く踏み越える。

 

 そしてその後ろに迫っていた巨人の顔を殴り飛ばす。殴られた巨人は十数メートル後方に吹き飛んで行った。皆が呆気にとられた表情でこちらを見ている。

 

 やべ、勢い余って殴っちゃった。

 でもこうでもしないと間に合わなかったしな。

 

 大丈夫、きっとジークはもうとっくに去ってる、はずだ。

 次々と瓦礫の中から起き上がってくる巨人を突き飛ばして倒していく。

 

 やがて夜が明け始めた。俄に世界が明るくなる。俺はちらと壁の方を見た。

 うん、やっぱりジークはいない。大丈夫、見られてないみたいだ。

 

 俺が一安心して胸を撫で下ろしていると、後ろから声がかけられた。

 

 「……もしかして……イオリさん、ですか……?」

 

 ジャンがぽつりと呟くようにそう言ったのだ。

 

 

 ………………え?

 

 

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