転生したらフェンリルだった件   作:ぐちロイド

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「」の名前では色で表記していますが、説明の方では名前で表記しています。


第16話 オーガ襲来

ジュラの大森林に、再び騒乱の火種が舞い込んだ。

リムルが人型の肉体を得て、ついに「味覚」という至高の娯楽を手に入れたことを祝うべく、村では大規模な宴の準備が進められていた。連もまた、ホウリンに「最高級のジビエ」をリクエストされ、ゴブリンライダーたちを率いるランガに狩りを任せていたのだが……。

 

ランガ「主(あるじ)よ! ! 緊急事態にございます!」

 

思念伝達と共に、血相を変えたランガが村へと飛び込んできた。その背後、ゴブリンライダー数名が負傷しているのを見て、連の目が鋭く細まる。

 

リムル「ランガ、何があった。……モンスターの乱入(ポップ)か?」

 

ランガ「……いえ。我ら、狩りの最中に突如として現れた『鬼人(オーガ)』の一団に強襲されました。彼らは我らをオークの仲間と断じ、問答無用で斬りかかってきたのです!」

 

リムル「オーガだと? ……Bランクオーバーのネームド級が、なんでこんなところに……」

 

リムルはシズから受け継いだ『抗魔の仮面』を顔に当て、連と視線を交わした。

 

リムル「連、行くぞ。宴の前に、まずは『誤解のデバッグ』が必要だ」

 

連「ああ。……不条理なPvP(対人戦)は、早めに終わらせるに限るからな」

 

連は少年の姿のまま、愛刀――カイジンが予備として打った業物の一振りを腰に帯び、リムルと共に戦地へと躍り出た。

 

---

 

現場の森は、凄まじい熱気と殺気に包まれていた。

そこには、里を滅ぼされた絶望と怒りをその身に纏う、六人のオーガたちが立っていた。

 

赤「……いたぞ、オークの黒幕め! その仮面、隠しても無駄だ!」

 

赤い髪を逆立てた若武者――ベニマルが、怒号と共に刀を抜く。彼らの瞳には、同胞を喰らい尽くした豚頭族(オーク)への、どす黒い憎悪が宿っていた。

 

リムル「待て、俺たちはオークの仲間じゃ――」

 

リムルの説得を遮り、六人のオーガが一斉に飛び出した。

 

赤「話は無用! 斬り捨ててくれる!」

 

連「……やれやれ。……リムル、赤、青、紫はお前が持て。残りの三人は俺が引き受ける。……いいか、殺すなよ? あいつらはただの『混乱状態(パニック)』だ」

 

連は地面を蹴り、残る三人のオーガ――老境にありながら凄まじい剣気を持つ白髪(ハクロウ)、可憐な容姿の裏に鋭い殺気を秘めた桃髪(シュナ)、そして巨躯を誇る黒髪(クロベエ)の前に立ちはだかった。

 

白「……若造。……我らの道を開けよ」

 

ハクロウが音もなく間合いを詰め、その一閃が連の喉元を掠める。

 

連(速い……! 剣術のスキルレベルがカンストしてやがる。……だが!)

 

連は『思考加速』を全開にし、最小限の動きでハクロウの剣を受け流す。ガキィィィン! と、森に火花が散った。

 

連「悪いな、じいさん。俺は今、夜の宴のことで頭がいっぱいなんだ。……こんなところで時間を食うわけにはいかねぇ」

 

白「……その余裕、いつまで持つかな?」

 

ハクロウの追撃。さらにクロベエの放つ重量感溢れる一撃が上段から降り注ぐ。連は『遊戯者』の権能を起動し、クロベエの攻撃の軌道を、指先一つで僅かに逸らした。

 

(物理法則の書き換え――ベクトル操作だ)

 

黒「なっ、……何をした!? オラの槌が……!」

 

連「隙だらけだぜ」

 

連はクロベエの懐に飛び込み、刀の鞘で彼の鳩尾を軽く叩く。同時に、シュナが放った拘束魔法が足元から伸びるが、連はそれを『空間跳躍』で回避。一瞬で彼女の背後へと回り込んだ。

 

桃「……っ、消えた……!?」

 

連「逃がさないぜ。……『縛る者(グレイプニル)』――限定出力、麻痺の楔(パラライズ・ネイル)!」

 

連の手首から伸びた細い鎖が、シュナとクロベエの動きを一瞬で封じる。ハクロウだけがその拘束を剣気で弾き飛ばしたが、既に連の刀の切っ先が、老剣士の眉間でピタリと止まっていた。

 

連「……詰み(チェックメイト)だ。……じいさん、アンタならわかるだろ? 俺たちが本気で殺そうとしてりゃ、最初の十秒で終わってたってことが」

 

ハクロウは目を見開き、やがて静かに剣を引いた。

 

白「……恐れ入った。……この若さで、これほどの理に達していようとは」

 

一方、リムル側も。

赤い炎を操るベニマルの猛攻を、リムルは『捕食者』の権能で軽々と無効化し、圧倒的な力で彼らを組み伏せていた。

 

---

 

リムル「……わかったか。俺たちはオークの味方じゃない。むしろ、この森を脅かすオーク共の動向を探ってたところなんだ」

 

リムルが仮面を外し、真剣な眼差しでオーガたちに告げた。

拘束を解かれたオーガたちは、自分たちの完敗を認め、その場に跪いた。

 

赤「……申し訳ない。……里を滅ぼされ、冷静さを欠いていた。貴殿らのような強者が、あのような醜悪なオークに従うはずもなかった」

 

ベニマルが悔しそうに拳を握る。彼らの里は、数万のオークの軍勢によって、一晩にして焦土と化したのだという。

 

リムル「行く宛がないなら……。――なぁ、俺たちの村に来ないか?」

 

リムルの唐突な提案に、オーガたちは驚きに顔を上げた。

 

赤「……我らのような、負け犬の生き残りをか?」

 

リムル「負け犬とか言うなよ。……お前ら、めちゃくちゃ強かったぜ。……それに、丁度いい。……今夜は俺の『人型獲得記念』の宴なんだ。……お前らの歓迎会も兼ねて、パァーッとやろうじゃねぇか!」

 

連も刀を鞘に納め、不敵に笑って彼らに手を差し伸べた。

 

赤「……宴、だと?」

 

連「ああ。……ホウリンが作った美味い飯と、俺が提供する『異世界の酒(試作品)』がある。……腹を空かせて、里の仇を討つ算段でも立てようぜ。……空腹じゃ、復讐もままならねぇだろ?」

 

連の軽快だが情に厚い言葉に、ベニマルたちは顔を見合わせ、やがてその顔に微かな、しかし確かな希望の光が宿った。

 

---

 

その夜、村はかつてない熱狂に包まれた。

中央広場には巨大な焚き火が焚かれ、ホウリンが腕を振るった肉料理や、採れたての野菜が並ぶ。

 

赤「……なんだ、この料理は。……我らの里で食べていたものより、遥かに洗練されている……」

 

ベニマルが、ホウリン特製のソースが絡んだ肉を口にし、驚愕の声を上げた。

 

連「……だろう? ……そこのホウリン。……俺の配下だが、料理に関しては世界一だ。……お前らも、遠慮せずに食え」

 

連は、ベニマルの隣に座り、ジョッキを傾けた。中身はリムルが再現した「麦酒」に近いものだ。

 

白「……連殿。……貴殿の強さ、そしてこの村の活気。……驚かされるばかりだ」

 

ハクロウが穏やかに酒を啜り、クロベエはドワーフのカイジンと「理想の鍛冶」について早くも熱論を交わしている。シュナはシルフィエッタに連れられ、村の衣食住の環境に興味津々といった様子だ。

 

リムル「なぁ、連君。……ポテチ、間に合ったよ!」

 

リムルが皿を抱えてやってくる。そこには、連が切望していた、完璧な黄金色に揚げられたポテチが山盛りになっていた。

 

連「……っ、これだ! これだよリムル!!」

 

連は一枚摘んで口に放り込む。パリッ、という快音と共に、塩気とジャガイモの旨味が脳を突き抜ける。

 

連「……優勝。……あぁ、生きてて良かった……。異世界転生最高だな、おい!」

 

シルフィエッタ「……主、行儀が悪うございますよ」

 

シルフィエッタが苦笑しながらも、連のグラスに新しく酒を注ぐ。

その光景を見ていたオーガたちに、ようやく笑みがこぼれた。

 

里を失い、行き場のない怒りに震えていた彼らは、この賑やかな宴の中で、自分たちが再び「独りではない」ことを知った。

リムルという寛大な主。

連という、底の知れない実力と優しさを併せ持つ「攻略者」。

そして、自分たちを「仲間」として受け入れてくれる多種族の村。

 

赤「……リムル様。……連様。……改めて、我らの剣、貴殿らに預けよう」

 

ベニマルが立ち上がり、正式に忠誠を誓った。

連はその拳をベニマルの肩に軽く当て、力強く頷いた。

 

連「ああ。……これからが本番だぜ。……オークの軍勢、そしてその裏にいる『バグ(黒幕)』……。俺たち全員で、一気にクリアしてやろう」

 

「……応!」

 

オーガたちの力強い返声が、夜の森に響き渡った。

悲しみから始まった出会いは、月明かりの下での宴を経て、揺るぎない「軍団(ギルド)」の誕生へと繋がった。

 

ジュラの大森林の夜は、明日の激戦を予感させながらも、どこまでも温かく、賑やかに更けていった。

連はポテチを齧りながら、隣で笑うリムルと、新しい仲間たちの顔を見て、心の中でナビに呟いた。

 

連(……ナビ。このイベントの報酬……最高だったな)

 

『解。……個体名:連の幸福度が最大値を記録。……物語の進行を、全力でサポートします』

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