気がついたら転スラ世界だった件   作:叡知の石板

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オーガの村を発見!

 

 目の前で巨大な黒い蜘蛛が脚をすべて切り刻まれた状態で転がっている。そして私が軽く指を引くとその胴体でさえも真っ二つに切断されて蜘蛛は絶命してしまうのだった。

 

「試すためとはいえ、ちょっと残酷だったかな」

 

 念願の倒しても良さそうな相手が現れたんだ。自身の能力を試してみたくなったのだ。で、結果蜘蛛の魔獣は私の空間操作によって体は切り刻まれてしまったということだ。

 

 やはり空間操作は理不尽なまでに強力な力だ。空間を断裂させてしまえば、いくらその身が硬かろうが空間そのものが切断されているので当然、空間に辻褄合わせるようにその場にあるもの全ても切断されてしまうのだ。

 

 範囲は私が知覚できるあらゆる場所に好きなタイミングで放つことができる。特別に大きな動作とかも必要ないから余計に理不尽である。

 

 なによりもこんな強力で扱いが難しそうな力が容易に扱えてしまうのは『理解者(ココロツヨキモノ)』のサポートとそのサポートを受けて適応させてしまう『自由人(アユミトメヌモノ)』のおかげだろう。

 

「蜘蛛の脚の身……なんか蟹みたいな身質してるな。案外食べてみたら美味いかもしれない」

 

 爪とか牙とか使えそうな素材はバラして後で売る用に空間操作で解体しといて、身は食料として保管しておこう。巨大な蜘蛛は一瞬にして解体され異空庫に放り込まれていった。

 

「さて、ぼちぼち日も傾いてきた」

 

 飛んできたときに湖があるのも確認している。周辺は湿地帯になっているようだ。その近くで野営する予定だ。水もついでに回収しておこうか。

 

 異世界転移初日ではあるが、この世界で生きていける力があると分かればなんとも気楽なものだ。サバイバルなんてロクに知識はないけど、快適さとかに拘らなければ生きていく分にはどうとでもなる精神である。

 

 さて湖に向かって移動をしていると、私の感知範囲に気になるものを発見した。色んなスキルの併用で周辺の地理をゲームのミニマップみたいにして脳内に浮かび上がらせる。

 

 村というには粗末なものだから集落というべきだろうか。そして棲んでいる者は角が生えた大柄の人型が特徴的な魔物……『理解者』によれば大鬼族(オーガ)のようだ。

 

 ん……? オーガ? ってことはリムルの主力メンバー予定のやつらじゃないか。思い出したぞ……たしか原作で豚頭族(オーク)によって滅ぼされてなかったか。

 

 つまり集落が健在ってことはかなりの序盤ってことがわかったな。下手したらリムルがまだ転生してきてない可能性すら出てきた。

 

「む……気取られた。老人のオーガだな。キャラが濃いから覚えているぞ。たしか指南役ポジの爺さんだ」

 

 名はたしかハクロウ……見た目そのままだから覚えている。そんでもってめっちゃ強い……おっと向かってきてる。

 

 さて、どうするか……。逃げたら追ってこなさそうな雰囲気はあるが……思考加速させながら考える。

 

 ここでの接触は未来のことを考えると不確定要素を多く生んでしまう可能性があるだろう。冷静にここは退いたほうがいいんだろうけど……どうしてかねぇ。

 

 転移してきてどこか精神が弄られてしまってるのか、ちょっとあの強そうな爺さんと戦ってみたいという気持ちも湧いてきている。

 

 よし……やろう! まだリムルとも関わってないんだし。大筋にはそんなに影響しないでしょ。

 

 私は隠匿していた気配をあえて解除し、向かってきている爺さんオーガの方へと歩いていく。

 

 やがて白髪の老オーガの対面する。

 

「ほう……人間か。ワシらの村を見ておったな」

 

 老オーガが油断なく腰に携えた刀に指をかけつつ問うてくる。

 

「たまたま見つけたもので。オーガの村だったから珍しくてつい、ね」

 

「ワシの目を以て底を計れんとはお主、何者じゃ」

 

 剣聖と呼ばれたオーガなだけあって、凄まじい迫力だ。それに私の力に勘づいてかより警戒心が強まったように感じる。

 

「何者……あーなんて説明したものかなぁ。まだ何者でもないんだけど、でもそうだなー」

 

 と、話しながら老オーガの腕に向けて空間切断を放つ。

 

「ぬぅ……ッ!」

 

 小さく呻きながらも老オーガに反応され躱される。予備動作とかないはずなのにたぶん直感で避けられたな。さすがは作中の強キャラ。

 

「何者でもないんだけどさ。ちょっとあんたとやり合いたいんで相手してくれよ、な!」

 

 空間とか重力とか操れば優位に戦えるんだろうけど、肉弾戦でどれぐらい戦えるのかも試してみたい。明らかに舐めプしている自覚はあるけど、単純な能力差だと私の方がずっと強いっぽいんだよね。どうにも。

 

 まぁ、なんだ。戦いは素人だから存分に相手からスキルを盗ませてもらおう。

 

 転移して老オーガの背後に瞬間移動しては捻りを加えながら拳を放つが、それも察知されていたようで刀の柄で弾かれ、凄まじい速度の居合いが返されるが身を屈ませて回避しながら流れるように老オーガに足払いを打つ。

 

「……殺意は感じられん。どうやら嘘は言っておらんようじゃな。良いだろう老い先短い老人ではあるが相手になってやる」

 

 後ろへステップにより足払いは躱される。私は距離を詰めて拳を数発打っていくがしかしうまく刀の峰でいなされる。私は身体能力にもの言わせ、そして相手は技量によって凄まじい速度の攻防が数回ほど繰り広げられる。

 

 私は大振りに蹴りを放つと刀の腹で受け流され、体勢を少し崩しつつもその勢いのまま相手から距離を取り仕切り直しとなる。互いに円を描きながら間合いを探り合う。

 

 うーん。圧倒的に身体能力がこっちが上のはずなのに全く攻めにいける隙が見当たらん。下手に攻めると一太刀入れられそうだ。やっぱりこの爺さん凄く強いな。実に滾る。

 

「思った通り……凄く強いねお爺ちゃん」

 

「ほっほっほ。だが、お主は力を敢えて制限しておるじゃろ。舐められたものじゃな……」

 

「だってすぐ終わったら勿体ないでしょ?」

 

「抜かしよる……!」

 

 老オーガの姿がかき消えるとどうゆうことか左右から挟まれるような気配を感知する。前に転がるように回避してーー次は上か。

 

 半身をずらして振り下ろされる刀を回避しようとしたときに気づく。上から来るのは剣気によるフェイントだ!

 

 そして強烈な気配が背後から現れる。

 

 なるほど分身しているわけではなく魔素を放出して威圧スキルを応用して存在感を与えてあたかも分身のように見せかけているのか。

 

 感知系のスキルに頼っているやつほど引っ掛かりやすい老獪な戦い方と言える。馬鹿正直に反応しちゃったから回避は間に合わない。

 

 私は思考速度を引き延ばし、凄まじい速度の一閃が迫り来るなか、腕に空間の層を複数を重ねていきなんとか背後からの居合いに腕を差し込み受け止める。

 

「面妖な。触れられぬとは」

 

 腕と刀の間に空間が何層にも重ねられているから間の空間が拡げれて刀が届かない状態になっているんだよね。無下限バリア的な。

 

「面白いでしょ」

 

 刀を引き、納めて再び居合いの構えを取る老オーガ。

 

 ここまでの一連の攻防だけでも得られる経験値がとてつもない。凄まじい速度で適応と最適化がされているのが実感できる。

 

 そのことに気づいたのか、老オーガは恐ろしいものみたような顔で。

 

「……随分と立ち振舞いが様になってきたようじゃな。ワシの技を見て盗んでおるのか」

 

「あはっ。わかっちゃう?」

 

 老オーガは構えを解いた。どうやらもう戦う気はないようだ。もうちょっと技を観たかったが相手からすればどんどん自身の技が効かなくなる上に相手が強くなっていくのだからクソゲーだよなって。

 

 制限していた空間操作を使わされたし、この戦いは私の負けだね。いやぁ楽しかった……またやりたいものだ。

 

「恐ろしい素質じゃのう……」

 

「照れるじゃないかぁ……それといきなり攻撃してごめんね」

 

「よいよい気にしておらんわい」

 

 攻撃仕掛けたことに頭を下げると、好々爺然として笑みを浮かべ、首を振る。オーガは戦闘種族らしく戦いになったこと自体はまったく気にしてないようだ。

 

「その……これから野営しようかなって思ってるんだけど、オーガの村には近づかないからさ。付近を使わせてもらっていいかな」

 

「ほう……だったらうちの村に来ればいいじゃろ。なにワシから言えば邪険には扱われんわい」

 

「いいの?」

 

「お主からは害意を感じられんからの」

 

 なんとも嬉しい提案だ。期待していなかったと言われたら嘘になるが、できることならちゃんとした寝床とかあるほうがいいに決まってる。

 

 それに他のオーガとも手合わせできたらより楽しそうだ。

 

 老オーガに感謝を伝え私は里へとお邪魔するのであった。

 

 ◇◇◇

 

 老オーガによって私のことを伝えられオーガたちには一定の信用を得ることができたようで安心。老オーガはこの集落でも相当信頼されている立場のようだ。

 

 オーガの集落の中に人間ひとりって状態なので奇異な目で見られてはいるものの隔意はなさそうだ。挨拶に回ってたらわりと好意的に返してくれたのでいても問題なさそうである。

 

 老オーガに連れられ集落でもそれなりにしっかりとした作りの家に案内された。

 

「族長にも挨拶する必要があるじゃろう」

 

 とのことだ。老オーガが声をかけると中から濃い赤色の髪をした壮年の偉丈夫が出てきて、それに着いてくる赤髪の若いオーガ。

 

 族長のオーガとおそらく後のベニマルになるオーガじゃなかろうか。たしか妹もいたはずだ。

 

「こやつが剣客殿を認めさせた人間か? とても強そうには見えんが……」

 

「ほっほっほ。見た目はそうじゃが、その力は侮れんぞ。それに才能も凄まじいの一言よ」

 

「そこまで言わせるほどとは……疑うわけではないが、気になるものよ」

 

 族長が赤髪の若オーガ……というか迂闊に名前で呼べないから気をつけているが面倒くさいな。魔物に名前をつけると進化する生態は斬新で面白いが不便が過ぎる。

 

 リムルも名前をつける訳である。名前がわかる人物は名前でいくか。声に出さなければ問題ないでしょ。

 

 族長がベニマルの方へ視線を向けると、ベニマルは得心がいったのか頷き、こちらを好戦的な目付きを向けながら前に出てくる。

 

「力を試される感じかな? 君では相手にならないと思うよ」

 

 とりあえず煽っておく。すると随分と短気なようでその顔を怒りに染め、手に炎を発現させる。

 

 ごうごうと燃え盛る炎が膨らんでいくようだ。それなりにベニマルとは距離があるのだが、それでも熱が伝わってくるほどだ。まともに受けたらただで済むまい。

 

「貴様、後悔しても遅いからな。焼き尽くせ! 鬼王の妖炎(オーガフレイム)!」

 

 ベニマルの手から人を飲み込むほどの巨大な炎の塊が放たれ、私に迫ってくる。

 

 挑発したらすぐ大技を放ってくるとはね。しかし問題はない。なんなら思考加速させて技の解析する余裕すらある。

 

《解。解析が完了いたしました。スキル『炎熱耐性』を獲得しました……最適化……『炎熱無効』に進化いたしました。また適応によりエクストラスキル『炎熱操作』を獲得いたしました。》

 

 ま、こんな感じにね。どうやら耐性を得るおろか無効にまでしてしまえるみたいだけど、そのまま受けてやるのも華がないよね。

 

「うん。凄い熱が伝わってくるよ。でも私には効かないね」

 

 迫る炎塊に手を伸ばし、空間操作にてまるで意思を持つように手へと纏わりついていき、自在に弄んでみせる。

 

「なっ……! 俺の炎が!?」

 

「なんと……!」

 

 どうやら驚いてくれたようだ。二人して目を剥いている。ハクロウは私ならなにかしでかすと分かっていたようで笑みを浮かべている。

 

「そして炎とはこうやって扱うんだよ」

 

 スキルにより自在に魔力操作ができる上に空間操作もある。つまりはついさっき手にした炎熱操作で炎を注ぎつつも空間操作で熱が散らさず酸素を際限なく送り続ける。

 

 炎の色が黄色へと変じ、さらに白へと変化する。本当はもっと温度の高い青へとできるけどさすがに被害が大きくなりすぎるから止めておこっか。

 

「どうだ美しいものだろう?」

 

 空間操作で完璧に制御しているので熱は外に漏れていないと思うがおそらく温度にして六千度ほどになるだろう。当然だがこの世界においても大抵の生物はまともに食らえばただでは済まないだろう。

 

「これが究極の炎……だというのか……!?」

 

 あ、別にそういうものではないです。単なる科学の応用というか……あ、ベニマルの私に向ける目が凄く尊敬したようなキラキラしたものになってる。

 

 あれ、もしかしなくても私……やらかしたのでは……?

 

 やっべぇ……調子に乗りすぎたぁ……これで変に拗れて原作になんか影響を与えてしまったらどうしよう……ほら、オーガ達ってリムルの初対面のとき敵対してたし。まぁでもリムルなら大丈夫か。

 

 とりあえず危ないので炎で軽く花のアートでも作ってやって自身へと還元させる。出したままにしたらエネルギーが勿体ないからね。

 

 あ、なんか。周囲をみれば他のオーガ達も見ていたようでみんなから尊敬の眼差しが……。まぁ、怖れられるよりはいいか。

 

「これよりももっと上の段階もあるけどさすがに危険すぎるからね」

 

「凄まじい力でした。それに絵を描いてみせるほどの制御……俺の完敗です」

 

 ベニマルの口調が恭しくなってしまった。

 

「私に敬語はいらないよ。それに君ならあれぐらいの炎いずれは扱えるようになるさ」

 

 いつかリムルによって進化するんだし、炎の扱いにおいては誰よりも強くなるだろう。

 

「貴方ほどの人にそう言ってもらえるなら自信になるってものです」

 

「うむ。息子も才能はあったが上には上がいるものだ。貴殿のおかげでより励むことだろう」

 

 ああ、族長からも敬意マシマシの視線が……困ることでもないしいっか。

 

「武術は修めておらんようじゃが、凄まじい素質はあるのじゃ。末恐ろしい御仁ですぞ」

 

 ハクロウのあの目は私に剣の稽古をつけたいって目をしているな。それはまぁ私としても歓迎だ。どうせならこの世界で最強を目指したいからね。そのために得られる力はなんだって欲しい。

 

「剣客殿に伺ったが、どうやら里で夜を過ごしたいそうだな。うちの家だと部屋が空いておるぞ」

 

「それは嬉しい申し出だけど、いいのかい?」

 

「無論構わぬ。貴殿ほどの強者を懇意にできるのであれば安いだろう」

 

 族長からの思わぬ展開に内心、ガッツポーズ。まさか寝床も確保できるとは思わぬ幸運に感謝だ。

 

「ありがとう。ぜひお願いするよ!」

 

 私の言葉に満足そうに頷く族長と喜びを隠せない様子のベニマル。

 

「そういえば名前を聞いてませんでしたね。なんとお呼びすればいいでしょう」

 

 と、思い出したようにベニマルから問われる。

 

 そう……名前だ。実は私には名前がないのだが、一応考えてはいたんだ。

 

 私はこの世界でリムルが魔王になったあとになるけどもそれとなく関わりながらも面白おかしくそれでいて誰よりも自由に歩んでいきたい。

 

 私の力の権能たるスキルの名前に因んで。

 

「歩……私はアユムだよ。よろしくね」

 

 ーーそれは、この世界で私の存在が刻まれた瞬間であった。

 

 

 




ステータス

 名前:アユム

 種族:人間

 加護:なし

 称号:異世界人

 
 魔法:なし

 技術:『瞬動法』

 技能:ユニークスキル『理解者ココロツヨキモノ』

    思考加速・解析鑑定・並列演算・支配無効・森羅万象

    ユニークスキル『自由人アユミトメヌモノ』

    適応・最適化・重力操作・空間操作

    エクストラスキル『魔力感知』『気配操作』『魔力操作』『地理把握』『炎熱操作』

    コモンスキル etc.

 耐性:物理攻撃耐性、炎熱耐性



 最初からリムルと一緒パターンにできる限り逆らいたいなぁとか思ってるけど話作るの難しそうね
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