ここって本当に法治国家だよな???   作:一般犯罪者

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以前数時間だけ公開していた作品の再投稿。脚注増やしたかったので一旦消しました。評価・感想をくださった方、申し訳ありません。


ここって本当に法治国家だよな???

 

ここって本当に法治国家だよな? そんな疑問を抱いたのは、数分前まで仲良く話していたクラスメイトが何やら王を名乗る男子生徒にぶん殴られて吹き飛ばされた時。

 見るからに犯罪でしかない。いや、少年法やらなんやらで実刑にはならないのかもしれないが、間違いなく退学になるレベルの。*1

 

 5月1日。ポイントが何やら、先生から説明があった後、件の男子生徒である龍園が突如教壇に立ち、自分がクラスを統治する、と宣言した。

 その時点で大概意味わからんことではあるのだが、それにブチ切れた俺の友達、石崎がその場で龍園に突貫。殴りかかるも、返り討ちにされた。普通ならこの時点で2人とも退学だよこれ。

 

 ぶん殴られた石崎はそのまま吹き飛んで、机に頭を強打して気絶した。死んでないよな?

 

「クク、訴えたけりゃ好きにするといい。だが、それでクラスポイントが引かれたらテメェらが周りからどう見られるのか、しっかり考えることだな」

 

 去り際に龍園がそう言い残したが、正直それはそれ、としか思わない。収入が減るよりも、普通にクラスメイトをぶん殴るやつと生活する方が嫌だ。

 いやまあそれで言えば石崎も大概ヤバい部類ではあるのだが。不良の文化で何かそういうものでもあるのだろうか。

 

「龍園さんマジかっけえ!」

 

 目覚めて数日後、石崎の言葉である。何があったんだお前は。*2

 どうやらこの学校では、暴力冤罪その他犯罪であろうと、生徒が主体となって訴えを起こさねば事件として立件されることはないらしい。それでいいのか国立高校。*3

 

 結局、一連の暴行が事件として立件されることはなかった。それに加えて、あろうことか龍園がCクラスの王(笑)という名のリーダーに就任してしまった。なんてこった。

 

「勉強会?」

「ああ。お前は講師役をやれ。あの小テストで95点取れるんなら勉強なんざいらねえだろ」

「意思の自由は?」

「勉強会1日につき5000ポイントやる」

「任せとけ龍園!」

 

 ポイントには勝てなかったよ。

 

 赤点即退学という中々ハードな中間テスト。Cクラスには中々に学力が厳しい生徒が数人在籍しており、このまま放っておいては退学してしまいかねない状態。

 それを見た龍園は、強制参加の勉強会を開催。一部学力がいい俺含めた数人を講師役に据え、徹底的に勉強を仕込ませた。

 二次方程式の概念すら知らなかった連中に勉強を仕込むのには苦戦したが*4、報酬のために全力を尽くした。結果全員で赤点を回避することに成功した。あれだけ教えて赤点ラインスレスレの石崎には肝を冷やしたが。あの龍園の目線、お前赤点取ったらたぶん殺されてたぞ。

 

 契約書とか作ってなかったし、まさか支払い踏み倒されるのではなかろうか。そんなことを思っていたが、後日きっちりと報酬分、総計60,000ポイントが振り込まれていた。ありがとうございます龍園さん!!*5

 

「本当に奢ってもらっていいのかよ?」

「いいよ」

 

 だって可哀想だし。

 

 龍園は中間テスト後、何やらDクラスに仕掛けることにしたらしい。既にBクラスに対する地味な嫌がらせをやらかしている彼が今度は何をしでかすのかと思えば、短気な奴を煽って暴力を振るわせ、訴えて、暴力に対する罰の程度を確認することにしたのだとか。

 中間テストの件で龍園の評価が上がったのか、今回もポイントを渡すから策を練れ、と言われたが、流石に断った。冤罪に加担してたまるものか。

 

「お前が弁護についてくれるなら百人力だぜ!」

「あんまり期待はしないでね。法律とか何も知らんから」

 

 だがまあ、流石に友人がボコボコに殴られて腫れた顔を見ては黙っているわけにもいかず。今回は名乗り出て、審議会での弁護を務めることにした。この時点で冤罪でもなく普通に犯罪だから別に良いだろ。

 自発的な行動なのでポイントは良い、と言ったのだが、龍園は律儀に報酬として10,000ポイントを用意してくれた。犯罪者というカテゴリで括れば、その中では意外と良い奴なのかもしれない。特殊詐欺の元締めとか向いてそう。

 

「……いや、罠でしょ」

「罠なのか!?」

「お前ら、櫛田と話したことは?」

「連絡先渡した時の1回だけ」

「何でそれでワンチャンあると思ったんだ」

 

 審議は、Dクラスから出てきた堀北とやらの発言により結論を延期することになった。とりあえず須藤が殴った時点で彼が悪いのは明白なので、そこに関する罰ぐらいは決めてほしかったが。

 そんでもって、数日後。石崎たちに櫛田から、会いたいとメールが送られてきたらしい。

 彼らを素直に行かせれば何をしでかすかわかったものじゃないので同行してみれば、そこに居たのは案の定櫛田ではなく、Dクラスの堀北と、隣に居たよくわからん男。あとついでにBの連中。何でいるんだこいつら。

 

「監視カメラの映像を提出されたくなければ、訴えを取り下げなさい」

「……うーん、お好きにどうぞ?」

「は?」

 

 それだけ言って、焦る石崎たちを連れて帰宅する。

 普通に考えて監視カメラの映像なんて都合のいいものがあれば前の審議で提出しているはず。まして自クラスの証言という信憑性の薄いソレを得るために奔走していた彼らがそのようなデータを手にしていたとは考え難い。

 それに、よしんば監視カメラが本物だったとしても、あそこまでボコボコにされたらどう考えてもCクラス有利の結果に終わる。軽く殴ったとか、そんな範疇で終わらない怪我だったからな。明らかに過剰防衛だ。

 

 結果。当たり前ではあるが、Dクラスが敗訴。彼らのクラスポイントを100ポイント、Cクラスに移す処置がとられた。どんまいDクラス。*6

 

「クク、良くやった。報酬に上乗せしておいてやる」

「そういやさ、BとDを脅迫で告訴できそうなんだけどやってみない?」

「あ?」

 

 この学校のガバガバ具合を考えれば、特別棟に呼び出しボコり、無理やり訴えを取り下げさせる、という可能性も考えられる。なので一応、録音と録画はしておいた。あってよかったボイスレコーダー、知ってて良かった端末の録画機能。*7

 端末にも荒いが音声は残っているので、これとボイスレコーダーを照合すれば彼女らがその場にいた証明ぐらいはできるだろう。

 

「ク、ハハ。いいぜ、その証拠を買ってやる」

「えポイントくれるの?」

「当たり前だ。使えるやつにはそれ相応の報酬を払う」

 

 マジでこの人、仕事さえきっちりこなせればいい上司なのかもしれない。犯罪者だけど。そこだけが惜しい。

 Dをこれ以上追い詰めて死兵化するとめんどくさい、との理由で告訴はBクラスに対してのみ行われた。まあDクラスからこれ以上搾れるポイントがないのも理由ではあるが。映像に映っていたため注意ぐらいはされるかもしれないけど、こちらから告訴しなければ罰は下らない。

 

 ちなみに、Bクラスからは30ポイントほどクラスポイントを頂いた。リーダーである一之瀬とやらを中心に結束していたらしい彼らの中に疑念が生まれた、と、龍園はたいそうご機嫌だった。よかったね。

 

「喜ぶのはいいけど、そろそろ期末テストだからね」

「うげッ……勉強か」

「まあでも、授業真面目に受けてたんでしょ? なら大丈夫だよ」

 

 当然の如く今回も開催された龍園の勉強会。俺は自称授業を真面目に受けていたらしいバカ共の面倒を見ることに全力を尽くしていた。これは地頭がまずいのか、それとも一応起きていただけで、授業内容は一切聴いていなかったのか。判別がつかないだけに怒るに怒れないのがなんともいえない。

 ちなみに龍園は椎名に対しものすごくたじろいでいた。曰く龍園も安心できるラインではないので真面目に勉強してください、とのことだが。彼の口から出る反論を悉く無言で押し潰していたのが本当に面白かった。数学80点取れてよかったね、龍園。*8

 

 良いものが見れたお礼に、後日椎名に彼女が欲しがっていた新刊を何冊かプレゼントした。ぽわぽわ笑ってたので多分喜んでくれたんだと思う。

 

「バカンス楽しみだな!」

「うーん」

「何だよ、楽しみじゃないのか? せっかく豪華客船乗れるんだぜ?」

「この学校が企画することだからね」

「ああ、確かに……」

 

 なんだかんだで友達である石崎と小宮、近藤。我らがCクラス三馬鹿にすら疑念を覚えられる学校はそろそろかえりみた方がいいと思う。多分そのうち先生方が恨まれて刺される。退学ってそんな気楽に宣告するものじゃないんですよ。*9

 とはいえ、流石に豪華客船の設備は見事なものだった。入っている飲食店はどこも美味しいし、スパやプール、温泉といった設備も、街にあるそれとは比べ物にならない。

  

 そうして到着したのは無人島。どうやら案の定バカンスなどではなく、サバイバルをさせられるらしい。島の環境については野生動物の有無といったような命に関わる質問にすら答えていなかったが、まあ流石にクマとか、危険なのはいないだろう。死んだら自己責任とか言い出したらドン引きする。*10

 

「俺も戻って良いの?」

「当たり前だ。フィジカルは並だろお前」

「ならありがたく。あ、リーダー当てするんだろうけど、変更には気をつけてね」

「あ? ……ああ、なるほどな」

 

 水上スキーやらバーベキューやら、色々楽しんだのち、大半のCは試験をリタイアして船上に戻った。そこからの一週間は本当に天国だった。飯は美味いしベッドはふかふか、おまけにCクラス以外の生徒や教師陣も出払ってるから各施設が貸切状態。戻ってきたらスパイとして選ばれた金田や伊吹を労ってやろうと決意した瞬間でもあった。

 

「金田お前その怪我どうした!?」

「潜入する際に、まあ、少し……」

 

 我らが龍園、やはり犯罪者。躊躇なく金田と伊吹の顔面を殴り飛ばし、追い出されたというていでBクラスとDクラスにそれぞれ潜入させたらしい。

 ニヤニヤ笑う龍園にドン引きしながら迎えた結果発表、Cクラスは100ポイントで3位。後から話を聞くと、BクラスとAクラスのリーダーを当てたのだとか。

 

「おいお前、やっぱりスパイだったんだな!?」

「いけ、石崎!」*11

「おいコラテメェ、何俺たちの友達にガンつけてんだ? ああ?」

 

 金田がBクラスに絡まれていたが、石崎をけしかけて追っ払った。何やら金田が嬉しそうにしていたので理由を尋ねると、石崎に友達と言い切ってもらったことが嬉しかったのだとか。これまでの人生でそういった存在が中々出来なかったらしい。

 

「金田、帰ったらゲーセン行こうぜ!」

「運動嫌いじゃないならバスケやろうぜ! 初心者でもフリースローとかなら楽しめるからよ!」

「俺の部屋にゲーム機あるんだ。今度一緒に遊ぼうぜ!」

 

 不良は情に厚いという言説、あれマジなのかもしれない。金田の様子を見た三馬鹿たちは立て続けに言葉を繰り出し、遊びの約束を取り付けて行った。

 ちなみに俺も図書館に誘わせてもらった。新刊を買い与えて以来俺のことを本好きと認定したのか、次々と布教してくる椎名の矛先を逸らすためという目的もあるが、まあニコニコ頷いてくれたのでヨシ。

 

「龍園さんマジですげえ!!」

 

 その後にあった二つ目の特別試験は、龍園が何らかの方法で得た情報により無双して終わった。ちなみにこの試験でうちのクラスはBクラスに昇格している。結果発表後、一之瀬たちの空気が死んでいた。かわいそう。

 

 そうして迎えた本当の夏休み。学校の都合で連れ回されて残りが二週間ぐらいしかないと知った時には汚い言葉が出そうになったが、まあ、楽しかった。

 ちなみに、金田を連れて行こうが俺に対する椎名の布教は終わるどころかその勢いを止めることすらなかった。流石はあの龍園を論破したとしてクラス中で恐れられている女、彼女のことを少々甘くみすぎていたかもしれない。

 

*1
意外かもしれないが、実は、日本では人を殴ってはいけないのである。

*2
光輝く忠犬の目

*3
多分良くない

*4
金田「失礼ですが、本当に義務教育を修了されているのでしょうか……」

*5
約束守れてえらい

*6
ギスギスした空気に平田の胃が死んだ

*7
よう実二次創作ご用達アイテム

*8
椎名「頑張りましたね、龍園くん」

*9
たぶんそのうち刺される

*10
割と言いそうだから困る

*11
スジモンバトル




合計3話で1年生編終わる予定
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